- 販売開始日: 2014/08/01
- 出版社: 朝日新聞出版
- ISBN:978-4-02-273165-4
「粉もん」庶民の食文化
著者 熊谷真菜
タコヤキ、お好み焼き、もんじゃ焼き、うどん、おやき……全国津々浦々にある粉食品「粉もん」を、足と舌と膨大な時間を使って巡った、驚きと発見の書。たこやきのルーツと言われる「...
「粉もん」庶民の食文化
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商品説明
タコヤキ、お好み焼き、もんじゃ焼き、うどん、おやき……全国津々浦々にある粉食品「粉もん」を、足と舌と膨大な時間を使って巡った、驚きと発見の書。たこやきのルーツと言われる「ラジオ焼き」とは? 茨城県大洗がもんじゃ焼きの古里って本当? 讃岐うどんから生まれた「大阪ぶっかけうどん」とは……。日本だけでなく、アジア各地まで足を伸ばし、文化人類学的考察をも加えた瞠目の書。著者は日本コナモン協会会長。厳選「粉もん」レシピ&全国「粉もん」マップ付き。
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狭義の「粉もん」ではなく、粉食全般を語る本
2008/08/20 19:56
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
たこ焼きのことをおもしろおかしく書くような、内容の軽い本という先入観があった。読みはじめてみて、うれしい誤算と気づいた。
たこ焼きのみならず本来の粉もん(うどんなどの麺類)、戦時中の代用食として活躍しその後は日米の事情により日本に根づいた小麦文化や、おやき、もんじゃ焼きの話など、かなり幅広く「粉もん」を語っている。
わたしは数年前までこの言葉をよく知らなかった。お好み焼きやもんじゃ焼きなど水分たっぷりでドロドロのものがなぜ「粉」もんなのかと、思ったものだ。著者によれば、原料に粉がはいっていれば「粉もん」なのだという。少なくとも関東では、そういう分類で食べ物を語る流れは、それまでなかったように感じた。
実際、筆者は「関西では粉もんをポケモンと同じイントネーションで発音するが、関東ではウルトラマンに出てくるピグモンのように発音する」(大意)と記しているので(それは極端な例でありわたし個人は納得しないが)、やはり関東ではいくぶん馴染みのない分類と表現であるとは、いえるかもしれない。
もっとも、関西でもおそらく1980年代に定着した言葉ではないかと、著者は前書きで記している。概念はともかく、言葉そのものの歴史は、そう古くなさそうだ。
大まかに、目次を紹介すると
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第一章 粉もんのアイドル たこ焼き誕生
「一家に一台たこ焼き器」の真相、アジアに広がる粉もんのアイドル、たこ焼きに邪道なし、ほか
第二章 粉もん軸の食文化論 —— B級グルメ隆盛を可能にした製粉の技術革新
「粉もん」の知名度、B級グルメと食事文化、ほか
第三章 麺類万歳
魅惑の麺類、麺類の分類、創業一四○年の麺類店、天満「てんま」の大阪うどん、ほか
第四章 ふるさとのおやき
おばあちゃんメイドの食の文化遺産、一日一食は「粉もの」の粉もん王国、ほか
第五章 粉もんの地位 ——代用食の時代とアメリカの小麦戦略
史上最低の粉食(粉もん)時代、天皇も代用食を召し上がる、パンと牛乳の学校給食、ほか
第六章 粉もんロードの終着点 —— もんじゃ、にくてん、お好み焼き
町ごとに個性豊かなお好み焼き、北斎漫画の文字焼き、池波正太郎のどんどん焼き、ほか
第七章 粉もん礼賛 石毛直道 x 熊谷真菜
ほか、数カ所にコラムと、巻末から読む粉もんレシピ
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第三章によると、中国語では本来「麺」は小麦粉の粉を指し、後世になって穀物の粉にまで意味をひろげたそうだ。日本では細長く線状に加工された食品を指すのはご存知の通り。また、中国語の餅は饅頭型の小麦粉製品であるいっぽう、日本では米をついた食品を意味する。
こうしたちょっとした話題や、わずかではあるが巻末のレシピ、粉もん年表など、新書サイズにしては情報が詰めこまれていて、読みがいがある。
欲をいえば、粉の食ではなく「粉もん」という表現をあえて使っている以上、もう少し軽い話題(関西らしさ)があっても、よかったように感じられる。
巻末のたこ焼きレシピは、とてもうまく焼けるもので、これだけでも価値はあるかもしれない。
粉もんファンのための手軽なガイドブック
2007/09/25 21:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
名著「たこやき」の著者による、こなもんガイドブックだ。
「たこやき」は、リブロポートから刊行された時に読んだ記憶がある。その本が講談社文庫から刊行されていたとは知らなかった。(ただし今は絶版らしい)学術書?麺の文化誌並ではないか。
タコヤキストから、日本コナモン協会 会長になった著者によって、日本全国のこなもんが網羅されている。
こなものの原点、ハッタイコ、タコヤキ誕生秘話、麺のうんちく、名店の紹介も楽しい。韓国、台湾のたこやきにまで触れている。鉄板粉もんの祖が千利休というのは、全く知らなかった。
話題としては、山梨のホウトウ、沖縄のソウキソバ、月島のもんじゃがなつかしい。しかし、個人的には、長野の「ねぎせんべい」が気になっている。
釜山やソウルで、チジミ、パジョン(ねぎチヂミ)を食べ、思わず(長野ではないが)田舎で叔母が作ってくれた、ねぎせんべいを思い出した。韓国系家系かもしれないと、以来密かに思うようになった。
戦後、アメリカが、あたかも親切のような顔をして、小麦粉とスキム・ミルクという余剰産物を学校給食に押し込み、日本人の食生活を、米から食パンへと改造してしまった。このあたりの経緯も五章で触れている。今なら、日本伝統のこなものも給食メニューにでるのだろうか?しかし、さめたお好み焼き、たこやきではうまくなかろう。
巻末には麺類学(麺の文化誌)の権威、石毛直道先生との対談「粉もの礼賛」もある。
「粉もん」マップに、喜多方が載っていないことに「極めて個人的な」不満が残る。はるばるドライブででかけ、無理して二軒で続けてラーメンを食べたのに。関西を拠点とする著者ゆえ、やはり東北、手薄になるのだろうか。宇都宮の餃子が載っていることからすると、喜多方からの付け届けが足りないのかもしれない。考えてみると、札幌ラーメンも、博多のとんこつラーメンも載っていない。ラーメン、もはや別の新書が必要な食文化なのだろうか。ともあれ今後の地図充実を期待したい。
著者、コナモン協会会長として、シンガポールやらインドネシアやら、広く日本のコナモン文化の普及に励んでおられる。
本書にはないが、広島でお好み焼きを研修するロシア人を昔テレビで見た記憶がある。シンガポールやインドネシアなら、それらしき材料も手に入るだろうし、味も、食感も受け入れられ易いだろう。何とジョクジャカルタでは、王女様がたこやきショップを経営しているという。
しかしロシアで、広島お好み焼きの店が成立するのだろうか。まず材料の入手が困難だろう。新鮮なキャベツも、かつぶしも手に入るまい。ましてオタフクソースの入手はどうなるのだろう。一生懸命修行していた男性、いまごろどうしているのだろう。ブリヌィやら、ピロシキ、ペリメニといったロシア料理があるので、彼等にとって食感としては必ずしも「想定外」の食べ物ではないのかも知れないが。
一方、普通なら到底入手不可能なはずの魚を使った「すし」が、ロシアのニュー・リッチに大受けだという。アメリカと違って、日本が戦略的に、すしを輸出したわけでもないのに。好みの変化、わからないものだ。
と、読みながら関係ない方向に想像が広がった。そういう広がりをもった本、いやたべものなのかも知れない。
ところで、そろそろ「たい焼き」の季節になったが、たい焼きには触れていない。それで言えば、どらやきにも。餃子には触れているのだが、たい焼き、どらやきのような甘い菓子は亜流なのだろうか?マップに、あんこ巻きは載っているので不思議に思う。
10月から12月にかけて、大阪で「コナ博」が開催されるというが、まずは手近なもんじや、うどんの店にでかけてみよう。