紙の本
再チャレンジできる社会へ
2014/07/09 20:45
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
若年無業者になる原因の多くは、「ゆとり世代の甘え」と思っていました。本書を読んで、「伝統的な社会システムや教育システムと、急速に変化した労働市場との齟齬が若年無業者を生み出す原因(154ページ)」という、根の深い構造的な問題であることが理解できました。
さて、私の身近な知人の話です。彼は大手スーパーに内定するも、ゼミの教授との確執により単位を落とし、大学を卒業できませんでした。やる気を失い、数年後に大学を中退。親が探してきた働き口も蹴り、中退後、ずっと「無業」でした。そして親許でインターネットやゲーム三昧の毎日を送りました。時々会っていた友人たちには、見栄を張って、「きちんと働いている」と嘘をついていたようです。結局、昼夜逆転の不規則な生活がたたり、大腸がんで急死。50歳でした。
彼にとって、「教授との衝突」は些細な出来事だったに違いありません。ところが、このことが発端で負のスパイラルに陥り、浮上できないまま人生が終わってしまいました。
一度何らかの事情で脱線すると、レールに戻る仕組みがないため、「無業」から脱することは至難の業です(173ページ)。しかも、「無業」は、怪我や病気でも起こりうるわけですから、誰の身にも起きえます。政府は大会社(資本家)に好都合な新自由主義的な政策ばかりを並べるのではなく、「無業社会」への対応(若者の再チャレンジ対策)も真剣に考えないと、足元をすくわれるでしょう。
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NPO法人育て上げネット理事長と立命館大学大学院准教授による共著。働かない若者の現状を2013年に出版した「若年無業者白書」をエビデンスとして著している。
本著と「若年無業者白書」の画期的なところは、働かない若者を「求職型」「非求職型」「非希望型」の3つに分類していることだろう。働かない若者にも様々な事情が存在しており、病気やかつての職場の労働条件の悪さなど、ちょっとした躓きで誰しもが働けなくなる可能性があることを著者は主張している。なぜなら我が国は「日本型社会システム」と著者が呼ぶ独特の社会構造となっており、一度でもその社会から離脱すると復帰することが難しいからである。また、育て上げネットに来所する若者の4人に3人は「働く自信をつけたい」と思っており、働きたくても働けないという苦しみの中にいることが伺える。
働かない若者が増えると、それだけ税収は減少し、生活保護費などの社会保障費が増大する。このコストギャップを考えてみても、若者が働けるような取組みが早急に求められており、著者は3つの方策を提案している。それは「緊急避難的な救済」「就労支援」「労働市場に再参入しやすい機会と仕組み作り」であるが、3つ目は企業も含めた社会全体で問題意識を共有し、時間をかけて変えていく部分になるだろう。そのためにも、本著は「働かない」=「怠けている」という誤解を解く助けとなる一冊である。
なお、タイトルにもなっている「無業社会」とは、「誰もが無業になる可能性があるにもかかわらず、無業状態から抜け出しにくい社会」と定義されている。
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いつ自分がそちら側に行くかは分からないと、読んでてぞっとした。彼らを支援する仕組みは作って置かないとまずい
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社会はつまづいた人間に冷たいところがある。少しでも現状を変えたいと思っている若者がいたら、手を差し伸べる環境を作っていきたい。
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Honzで紹介されていたもの
"働くことができない"ってなんだよと、思っていたがどうやら様々な事情で精神的に苦しんでいる人が多い模様。
納得できない部分はあるにしろ、そういった人たちがいることは事実で、生涯のコストギャップが一人あたり1億5千万にもなるというんだから国としても力をいれて解決すべき課題だ。
こういった社会的課題を解決する事業をやってる人たちって楽しいんだろうな。
すごい。
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働くことができない若者の実態。これからの日本の未来はどうなってしまうのか?負のスパイラルに陥った若者は、本当は「働きたい」と思っている人が多い。今、そういった人たちへ支援する団体が少しずつ増えている。しかしあまりの数の多さに驚きだ。
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無業社会とは、誰もが無業になりうる可能性があるにもかかわらず、無業状態から抜け出しにくい社会のこと。
なんと日本の若者の16人に1人は無業状態。
しかし彼ら若者は公的支援の対象とされず、世間からも「甘え」「自己責任」などの言葉でかたづけられてきた。
無業の若者の実態を明らかにし(彼らの多くは就業経験も働きたいという希望もあるのだが、一旦無業になると抜け出しにくいという日本社会の構造的問題がある!)、問題提起しようという本。
この問題はどの世代にとっても無縁ではないし、深刻。若者のひとりとして辛い。
問題認識した後は、個人レベルでどうしたらいいのか、、?
活動されている著者の方々には頭が下がります。
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「日本の社会システムでは、労働市場からこぼれ落ちることと、社会からこぼれ落ちることがほぼ同義になってしまっている」
湯浅誠のいう「すべり台社会」のことだ。滑り台の向こう側にはセーフティネットは存在せず、ただどこまでも落ちていく。
そんな社会である。日本は。
滑り台の向こう側の底の見えない闇という恐怖があるからこそ、正社員は正社員の権利を手にした瞬間にそれを護持し、すべり台から落ちていった者を負け組と呼び、自分とは違うと意識せざるを得ない。
自分は勝ち組である。そう信じることで正社員という既得権益を必死でつかんでいる。
正社員の既得権益とはなにか。派遣・パート・アルバイトと明確に違うのは社会保障である。
国民年金の上乗せの厚生年金(公務員は共済年金)こそが正社員が守っている既得権益である。国民年金だけでは老後に生活していけないのだ。
年金制度の崩壊が叫ばれ、制度改革が急務である。しかし、年金が破綻して困るのは厚生年金の正社員たちだろう。
国民年金しかない人たちはスズメの涙ほどの年金に期待しているとも思えない。
年金制度を維持することは正社員の既得権益を守ることと同義である。
今まで必死に働いてきた俺らは年金貰って、そこそこ悠々とした生活を送りたい。働いてこなかった奴らのことなど知ったことではない。年金制度が崩壊するのは困る。
日本の労働市場は硬直している。
既得権益である年金制度と、中途者には絶望的に狭き門の採用制度の2つが、一度正社員になった人たちの思考を硬直化させる。
会社にしがみついて働くことが最大のリスクカットだからだ。
年金制度と採用制度を変えていかないと労働市場の流動化が望めないことが明白であるが、年金制度を変えようとすると既得権益を持つ人たちが抵抗勢力になり、採用制度を変えると言ってもロールモデルは欧米式の完全実力主義しか見ていない。
誰もが無業状態、すべり台の向こう側に落ちる可能性があることを書いた。
私の就活はリーマンショックの影響を引きずる2011年卒だった。
一次採用には30社以上全て落ち、4月に周りが内定をもらう中、二次採用の6月でようやく一社から内定が出た。
だから、そこしか選択肢がなかったという消極的な理由で今の会社に就職した。
そして社会人四年目になった今、思考は硬直化していると痛感した。
この本の前半では無業状態にある7人のケースが紹介されている。それぞれ理由は違うにせよ働いていない。
このケースを私は「グダグダ言わずに働けよ」と思いながら読んでいた。
もし、5年前の就活で無い内定のままだったら、自分が滑り台の向こう側に落ちていた可能性をすっかり忘れていた。
日本は問題が山積みである。そして、山積みの問題は手をつけられることなく次代にたらい回しにされる。
正社員も、非正規も、全て同じ人なのに制度上ではまるで別種扱いだ。その二つを隔てる者が年金制度ではないか。年金制度は制度自体を変えるべき問題の一つであると思う。
このまま何も変わらないままでは、確実に日本は没落すると断言できる。
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働きたくても働けない若者に焦点を当てた本。
その通りなのだが、日本の公的機関で若者の支援を重点にしているところはない。その上怠け者扱いされてしまうせいか、なかなかこの問題がクローズアップされなかったようにも思う。
アベノミクスで人が足りない業界には女性や高齢者、外国人もいう前に、この無業状態の若者をうまく活用することも入れた方がいいのでは。その方が憲法の勤労の義務と納税の義務も果たせ、後に続く世代にも希望を持たせることができるのではないか。
と考えるのだ。
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ニートと呼ばれる若者達に対する社会的イメージと、実際の若者達の状態のギャップを、定量・定性両面から解説している本。
私自身は若者とよく会い、サービス設計をしている立場だったので、何故彼らがこう話すのか、何故そう行動するのかが、この本を読んで解釈できてよかった。
働いていない若者は、決して怠けているわけではなく、本当は働こうとしているのに定職に就けない。自信がない、過去の失敗体験から抜けられない、コミュニケーション能力、起業の失敗など、様々な理由がある。そして、多くの若者は、一度仕事に就いた後に辞めている。つまり、一概に社会不適合なわけではない。そして、多くが病気を理由に辞めているという。
私が会う若者は、皆、好きなことなら頑張れるから…という事を口々にとなえ、経験や知識を持たないままにチャレンジをしようとする。しかし、どうしても業界リサーチや仕事内容を理解しているわけではなく、話してみると、あくまで自分が好きな分野だから、といった事を答えるのだ。
だから、受からない、通らない、自信がなくなる、を繰り返す。
もちろん、仕事が何でもいいとは言わないが、何故彼らが、好きかどうかにそれほどこだわるのかが分からなかった。それよりは、まずは正規雇用である程度仕事して経験を積んで、それを活かしながら好きな分野にずらしたり、広げたりする考え方もあるのに…と。
ただ、本を読んで、つまり彼らは仕事で辛い経験を持ち、そのまま自信を失ってしまい、身体や心を壊してしまった。そしてその状況を乗り越えるには好きなことで…という考え方になっているのでは?と思えた。これを感覚的に理解できたのは、本当にこの本のお陰だと思う。
世の中の多くの人は、好きなことを仕事にしているわけではない。そして、嫌なことややりたくないことも沢山ある。
そういった中で、今の仕事を辞める前に、相談したり視野を広げさせてもらえるようなサービスが必要なのだ、と感じた。
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若年無業者白書のコンビによる、いわば白書の解説とも言えるような内容。もちろん白書がなくても十分にわかりやすいように書いてある。こういう白書を作ろうとした背景、世情を解きほぐすという意味では、新書というフォーマットで、多くの人の目に触れてほしい中身。
職がある人にとっても、たとえば子育てのシーン、たとえば親の介護のシーンで出くわすようななんかしんどいなー、ムリしてるなー、でも休めないなー、という状況に対してハッと気づきを与えるというか、もしかして僕たちはおかしかったんじゃないだろうかという疑いを提起する一冊。
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ひとりひとり具体例つきで、データでは知れない状況を見れる本。
ただ、これもまた、一面的な見方であって、そっか実情はこうなのかと丸呑みしてしまったら、それはまた残念な読み方になる。個人に原因もあり、社会にも原因があって、また違う側面も、原因としてあるかも知れないと、感じました。
そんな簡単に悪をその人々をとりまく社会だと一つに限定しまうほど、簡単な問題ではない。
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2014年6月初版
工藤啓・西田亮介 著
==
無業期間の長期化は、もともと就職を希望していた人たちを、非求職型に、ひいては就職を希望しない非希望型に転換してしまいかねない。
解決策として、、、
①現段階で困窮している人を緊急避難的に救済すること
②すでに若年無業者になっている人に、早く就労できるように促していくこと
③また無業状態になったとしても、再び労働市場に再参入できるような機会と仕組みを、社会のなかに埋め込んでいくこと
…という一冊。
具体的な解決策はあまり示されていないニュアンスではありますが、「働く」ということの今の世における価値や意義、捉えられ方の変わり端を感じ取るには充分センセーショナルな一冊でした。
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結局は「人を育てる」ことをしない社会になってきているだけ。面倒なこと、コストがかかることはたらい回しもしくは自己責任なんだなぁ。
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7つの働くことができない若者の例がでてくるけど、どうもつかみどころがないような。NPOで若者の就業支援をしているのだからもっと生々しい例をあげれるのではないかという気もするのだが。
唯一納得いったのが、企業の採用担当者の「役員や社長が面接をする場合、インターンシップやアルバイトなどで働きぶりをみて推薦するのでなければ、多数の就職希望者のなかからあえて中途経験者や低学歴者を選ぶ相応の理由を見つけることができない」という意見。
もう1か所納得いった箇所は、背景編で、日本の社会システムでは労働市場からこぼれ落ちることと社会からこぼれ落ちることがほぼ同義になってしまっている。会社社会からの離脱は共同体や他者からのつながりも喪失しやすい状況に結びついている。さらに社会のなかに企業で必要とされる知識やノウハウを実践的に学ぶ機会が限られているため、一度企業社会や労働市場からこぼれ落ちてしまうと、再びそこに参入することが難しい。p174