マンシェットの名作
2020/05/18 14:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無駄のない文章で、とてもよく読み進められる。どこまでも救いがないというか、死屍累々といった感じがすごい。ただ、自分の中で腑に落ちないというか、消化不良の感もあるので、時間を空けてもう一度読みたい。
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"暗黒小説の傑作"を銘打つだけの価値充分にあり。
おかしいのだけれどおかしくない。狂ってるけれど狂っていない。
作品全体に流れる潔いまでにの乾燥感にウオオ!
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主人公たちが殺し屋たちから命からがら逃げる逃げる。彼女らが通った後は死屍累々(かな?)。
余計な心情も入ってなくて、スカッと読めました。
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まるで映画を見ているよう…登場人物の余計な描写や心情が一切排されると、小説はこう言う感覚を生むのか、と衝撃を受けた。ジュリーの精神疾患の危うさと同じくらいギリギリの所にいるその他の登場人物たち。ペテールを抱えて、写真で見たお城に向かってひたすら逃げるジュリーに姿は鬼気迫り、精神に異常を来した女性が執拗なまでに追い続けた結果だったとしても、ペテールが救われた事に変わりない。
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実業家の甥と、その世話係の女が誘拐犯にさらわれる。二人は命からがら誘拐犯の手を逃れ、どたばたの逃走劇が始まる。
話のプロットやミステリの本筋自体は別段珍しいものはない。
ただもう、世話係の女、本作の主人公?のジュリーが奮ってる。
ジュリーは精神病院を出たばかり。過去の経験から極端に警察を嫌い、抑うつの気がある。
誘拐犯たちをもって、イカれた女と言わしめるジュリーの逃走劇に、周囲がガンガン巻き込まれる。
ドンパチと派手な立ち回りの連続だし、ジュリー以外の登場人物も一癖ある連中が多いし、最後の場面にいたっては舞台となる建物までグロテスク。
その全てをさも当たり前のように、淡々とスピーディに描いていくテンポの良さが魅力。
ジュリーだって自分が何してるんだか、何がしたいんだかよく分かってないかもしれない。読者にもそれを考えさせる暇を与えない。
過度な心理描写を排して、目の前でまさに事件が展開されているような臨場感が持ち味の、良作エンタメ。
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素晴らしくスタイリッシュな作品。
他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。
ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが
そういう人は放っておいて問題無い。
無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。
シンプルだからと言って人物が記号化していたりはしない。
登場人物の衝動的で意味の無い行動が人物に深みを与えている。
元精神病患者の主人公、敵役の殺し屋、
内面と行動が伴わずただ暴力だけが積み重なっていく。
一度味わうとまた戻って来ざるを得ない独特の世界がある。
映画などとは違う「文章」の楽しみに溢れた小説。
ストーリー自体はわりとありふれたものだけれど
そぎ落とされた言葉の力は骨太な魅力で迫ってくる。
単なるハードボイルドとは一線を画す実験作とも言える。
文章を愛する人ならば食わず嫌いをせずに是非一度読んでいただきたい。
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警察なしで、憲兵隊なしで我々は生きられるのか?全能者である神の大いなる人の戦い
諸価値の崩壊はなにを意味するのか?
終わりの時には困難な時期が来ることを悟りなさい。
我々はなにを見ているのか? 神のサインを見だんだよ。
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普段、ロマン・ノアール系統は読まないのに
妙に文章が「入って来る」のが楽しかった*
どうも、こういう文体が好きらしいと
気づきましたとさw
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中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。
他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻学生の嘆き)。
とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者』のヒロインですね)の主役、セバスチャン・ジャプリゾ脚色で映画化されていることは知らなかった。訳者が酷評しているが、見ていない人間にそんなことを言うな、解説で! とは言え日本未放映の映画だからどっちでもいいか。『いかれた女を殺せ』というこの訳者が勝手につけた未邦訳映画タイトルは、むしろ岡村孝的な訳のように思うんだけど。
なお、いずれにせよ、絶版で読まれる機会の薄い本書が広く紹介され、新たにマンシェットのファンを生み出すきっかけを作ってくれた訳者・版元の功績は大きい。これを機に、中条さん、どんどんマンシェットを翻訳できないのでしょうか? 版元が売れると判断してくれない限り難しいとは思うのだけれど、本というのは売れ行きだけの文化ではないのだからねえ。
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久しぶりに、バイオレンスな小説を読んだ気がします。なんというか、黒社会を描いた80年代後半から90年代前半にかけての香港映画みたいな、もしくは今ほど有名になる前の三池崇史監督作品のVシネマというか。ある程度、物騒な話だろうとは思っていたものの、作品と著者に対しての予備知識を全く持たずに読んだので終盤は驚くばかりでした。かつてTV東京木曜夜9時に放映されていた映画のような、万人受けはしないけれど好きな人には病みつきになる魅力を持った作品だと思います。
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精神病院に入院していたジュリーがある日アルトグという富豪の甥のベビーシッターになるが、殺し屋のトンプソンに誘拐される。ジュリーは子供を連れて必死の思いで脱出する。果たして2人は無事に逃げおおせることができるのか?というのが粗筋。特異なのはジュリーにしろアルトグにしろ殺し屋にしろ、どこか行動が狂っていて、もはや善悪の区別が付けられなくなっている点。一切の心情描写を省いた文体がそれを強調する。物語の展開や殺し合いの描写は極めて巧みでハードボイルドとしては傑作だと思う。個人的には主要な人物があまりにもあっけなく死んでしまい、その狂気から何かを読み取る前に物語が終わってしまった感があって少し物足りなかった。ただそれこそが暗黒小説の特徴であるのではないか?といわれれば反論できない。
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即物的で無味乾燥な味の、いい具合な一品。ハードボイルド的に心理描写をやめているのに、何故かメランコリックなのが微笑ましい。
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「あ、光文社古典新訳文庫読もう」と思って、あらすじも読まずに適当に借りてきたら、フランスもののバイオレンスな犯罪小説だったというまさかの展開。こりゃあ自分からは読まないでしょう…。(まずフランスものってそもそもあまり手が伸びない)で。みんな頭がおかしくて偏執的な上に、破壊と殺しのオンパレードなんだけど、何故かさらりと読めた。多少頭のおかしいどたばた小説くらいの気分で。作者の腕なのか訳者の力なのかわからないけど、1回読む分にはおもしろかった。でも多分、やっぱりフランスものはあまり好みじゃないかも…。
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【本の内容】
精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。
しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。
ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。
殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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マンシェットをこれで2冊読んだ。
ともにタイプは似ていて、ハードボイルトというよりピカレスクに近い。登場人物の多くが自分の欲に忠実、ともすればその欲求すらあいまいな中で、逃走劇を繰り広げる。
当然、追うものも追われるものも己のことしか考えないので、通常の善悪の基準は当てはまらず、それゆえ感情移入がしにくい。本来は被害者であるはずのヒロインですら、逃走劇においては不要な被害者を生み出しているのだから。
マンシェットはどこまでも人間のエゴをギリギリの行動の中で描きこみ、その寂寥感が好きな人は良いかもしれないが。
どうしても読んでてスジっぽく感じてしまう。
皮肉なことに、自分の命を差し出してすら請け負った仕事を全うしようとする殺し屋が一番まともに見えてしまう。
しかし、この強いヒロインのキャラって、リュック・ベッソンの「ニキータ」やピエール・ルメートルの「その女アレックス」を彷彿とさせる。