紙の本
佐賀の乱・台湾出兵
2015/08/30 13:25
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投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
江藤新平が起こした佐賀の乱はあっけなく鎮圧され、大久保は江藤を極刑に処した。一方、士族の不満を解消するために彼は台湾出兵という愚挙に及んでしまう。
西郷と大久保の友情と葛藤を軸に明治初めという激動の時代を描いた長編。
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佐賀の乱から征台出兵まで。小説なのか、歴史書なのか、明治政府論を書こうとしているのか判然としない。結果、冗長な講義録のようなものになってしまっている。人物描写は克明なのに、情景描写が殆ど無く、文章が退屈。
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この本を読んで初めて知ったのですが、明治政府へ不満を抱く人達と、明治政府を支えようとする人達。二方の考え方の人達が明治初期という時代を作っていたんだと分かりました。又、幕末では官軍のトップだった西郷隆盛という人物がどれ程大きな存在であったかという事も改めて教えてくれる巻となっています。
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大久保利通の推進する新政府に折り合いをつけられない西郷どんは、辞職して薩摩に帰ってしまいます。そして、江藤新平は佐賀の乱、そして処刑されます。幕末から続く政治的変革期はまだ落ち着きを見せません。さて、どういう国家をつくればよいのか…。
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もはや、時代は誰かの手で止められるものではなくなっている。
明治維新後の政府というのは、幕末の志士を代表してはいるが、その実態はいわゆる武士ばかりで、政府向きの者はいなかった。
西郷隆盛を中心に回るこの書だが、中心に回っているはずの西郷が、実際には何も実施していない、というのが滑稽だ。
周りからおされ、回りには怯えられている西郷と言う人というのを大いにあらわしている。
こういうの読んでて思うのは、私は実務家なのか?と言う点。
こんな一流の武士や政治家や実務家と比べて劣っているのはともかく、今の立場なら、実務家として成果を挙げるべきじゃないだろうか?
建白書、ではないが、自分の将来に対する企画書でも作ってみようか。
テーマは、そうだなぁ、日本における実務教育論とか?
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征韓論から征台論へ移り変わる間のストーリー。多くは江藤新平が加わった佐賀の乱が中心だが、最終敵には、大久保利通が権力を握ってゆくこととなる。
この混迷ぶりを見るにつけ、幕末から明治維新にかけて起こった獅子の時代がウソのように感じられる。新しいものを創ることと、新しい物を積み上げてゆくための仕組みづくりでは、物事質の違いを感じさせたられる。ある意味現在は、民主党に賛成し、裏切られた気持ちになっているが、大久保利通ができるまでの過程なのかもしれない。
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西郷に続いて官を辞した江藤新平が、佐賀の乱を引き起こした。政府は大久保が全権を握り、これを完全にしずめる。薩摩との協力の可能性を恐れ、早めの対処である。一方、鹿児島では士族の集まりである私学校が設立され、のちの一大勢力となる。
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大久保利通のことが理由ナシに大嫌いな江藤新平は佐賀の乱を起こして大爆発。怒った大久保さんはナ、ナ なんと江藤さんを処刑したあげく晒し首にー?!!大久保さん…やりすぎです。
相変わらず鹿児島に引っ込んでブスブス燻っている西郷隆盛は薩摩ハヤトら「薩摩固有の元気」を維持するために私学校を興す。鹿児島県令・大山格之助綱良の許可を得て監督者は陸軍少将・篠原国幹。場所と人は変わって洋行帰りの村田新八はいとこの高橋新吉と語らって、自分は官職を投げ出し西郷のもとへ奔ることを告げる。まさに薩摩ハヤトの蛮性だなあ!そして副島外務卿は米国のアモイ領事リ・ゼンドルのすすめで台湾出兵を主張する。大久保卿も征韓論で下野した西郷のためとかを思ってそれに賛同するけど木戸さんは怒って下野しちゃう。西郷従道が計画を進める。そういえば大隈重信が自らの対外政策の思想書「海外出師之義」を太政官に提出した、とあったが、「兵は兇器であり、戦は危事であり、…」という内容を見ると、これは山田顕義が洋行のあと書いた「理事官山田顕義建白書」のような気がする。一時大隈の手に渡ったことは聞いていたが、まさか台湾出兵のときに引っ張り出されるとは。
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どこかで西郷が、若い者に問われた。その若い者が、自分は何事かをしようと思うが、どう心掛ければよいか、と質問した。
「そいは、思ウテ一ナレバ敵ナシ、ちゅう事でごわすが、そいで遣んなさればよか」
と、西郷はいった。かれは「思ウテ一」というのは、ちょうどメンドリが卵を抱いているような心境だ、という。メンドリが卵を抱いているとき、どんなにうまそうな餌を近づけても、またおどしても、メンドリは見むきもしなければまた逃げもしない、そういう意味だ、という。
西郷は倒幕運動のころにそのことを体験した。そのただ一つの目的のために思いをこらし、怖れもせず、わき見もしなかった。(p.12)
江藤は、敗れてもなお西郷を相手に議論をしていた。西郷からいえば敗れればもうしまいであって、あとはどう死ぬかでしかない。しかし江藤は自殺を考えていそうになかった。(p.61)
大久保が佐賀で江藤を殺してしまったのは、江藤の東京における論陣をおそれたからであり、さらには内閣のたれもが江藤の死刑に賛成すまいと思ったからである。
大久保の凄味は、右のような大方の動向も無視し、また常識的慣習も無視して、権力をもって江藤の首を打ち落としたことである。(p.86)
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元司法卿の江藤が佐賀にて早々と乱を起こしてしまう。というより不平士族に簡単に担がれてしまったといっていい。
これに対して大久保は、徹底的に弾圧し江藤をさらし首にしてしまう
江藤は、西郷率いる薩摩が決起することに期待したが全く動かなかった。
征韓論の敗退で不平士族のエネルギーが一気に昂揚する中、この矛先を逸らすため大久保らは独断で台湾征伐を実行する。
2008/03/10
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明治政府の迷走ぶりが記された巻。
西郷らが去った後、佐賀の乱、薩摩の独立国形成の様子、大久保の征台論への傾斜が詳述されている。
宮崎八郎の佐賀の乱への敏速な反応ぶり、私学校の設立で、鹿児島士族の憂憤をコントロールしようとした西郷。
鹿児島の漢学への執着ぶりを見ていて、
自分も漢学・兵書の類に手を出してみようかなと思った。
兵書例:孫子・呉子・六韜三略・春秋左氏伝
政治論:孟子・大学・中庸
鹿児島県令:大山綱良「島津久光の腹心・西郷の私学校設立への協力という矛盾した立場?」
水戸藩の藤田東湖「小人ほど才芸があって便利なものである。これを用いなければならない。しかしながら長官に据え、重職を授けるとかならず邦家を覆す。であるから決して上に立ててはいけないものである。」
数奇な運命の従兄弟:君子の才あり、外遊経験もあった上で、西郷派の村田新八・英学者で、日本発の英和辞書編纂、又後の日本勧業銀行総裁になるほど、経済の才がある、大久保派の高橋新吉、陽明学の春日潜庵・革新派の津田出、新国家構想の持ち主:横井小楠・勝海舟・福沢諭吉
などなど、個性的な人物が多々登場している。やはり、自分は司馬作品の凄みは、人物の描写であり、
特に明治以降の作品は現存資料も多く、ノンドキュメント性が高く、より精細な描写が多くて、
会ってもないのに、その人物の人柄に引き込まれていく感覚に陥った。
中でも大久保利通の心理描写は、度々引用される手紙の文書などで、非常に深遠な思考方法であり、
器は比較にならないが、慎重で言葉数が少ない、自分と似たタイプであるため、
むしろ西郷より、大久保を敬慕する気持ちが強くなってきた。
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司馬遼太郎に初チャレンジした作品。が、10作もあり読むのに2ヶ月超もかかってしまったww
舞台は戊辰戦争後の明治初期。西郷隆盛を大きな軸として揺れ動く日本政府の動向をあらゆる人物の観点から追っている。よくもここまで調べたなって感心してしまう
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佐賀の乱。国権の確立。
征台の悲壮な滑稽。
無計画な反乱というものは、結局は政府の統制装置を強化させる以外のなにものでもない(27頁)
才芸のある人間を長官にすえたりすればかならず国家をくつがえす(131頁)
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後半、にわかに征台論がクローズアップされ、西郷従道により強引に実行される。西郷どんは鹿児島に篭もり、政府に無言の脅威をあたえつづける。大久保利通とは征韓論で袂を分かち下野したのだった。この西郷兄弟について、長州人は全く理解できないとあきれ果てるばかりなのだ。薩摩人にも理由はある。江戸幕府が無血開場したことにより、江戸を焦土にすると振り上げたこぶしの下げ場所が無くなってしまった。この有り余るエネルギーのはけ口にされる隣国はたまらない。
行動があまりにもストレートすぎはしないだろうか。思考では理解できても感情が抑えきれないという場面は確かにある。確かにあるのだが、それでいいのかと苦笑せざるおえない。彼らの不満が政府に降りかかることを恐れ、大久保もこの案を了承するのだった。
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全巻通読後のレビュー。
全10巻という超大作であるが、もともと毎日新聞に連載された小説であるから、多々同じ記述が見られる。
しかしながら、明治維新後の日本の姿を鳥瞰的手法で世界史と関連付けて論じられている点で、日本近現代の始まりを理解する際の基礎理解には最適の入門書であると考える。
島津久光という超保守派の考え方から、維新を支えた革新派の面々の考え方が手に取るように分かる小説である。重要なのは士族の不満、百姓の不満がどのようなものであったか、であるが、それもこの小説では網羅されている。
物語は維新開始直後から、西南戦争(明治10年)を経て翌年の紀尾井坂の変(大久保の死)、さらに川路利良の病没までを描く。
明治維新は天皇の威を借りた王政復古という形でスタートした。それが後に軍の独走いうものを招くが、この時点ではそうせざるを得なかったということも、小説中で書かれている。
後の日本を支えていく山県有朋、伊藤博文、板垣退助、軍人で乃木希典、川村純義などが登場する。
西南戦争は8巻の半ばくらいから始まる。桐野、篠原ら薩摩隼人に担がれた西郷、悲劇のような最後の激闘である。西郷が桐野や篠原といった兵児(へこ)を最も愛し、彼らと生死をともにしたことは、西郷をうかがい知る上で、見逃せない点である。
西南戦争の中身についての描写は一流である。
時間がない方にも、8~10巻は読むことをお勧めしたい。