世に棲む日日(一)
著者 司馬遼太郎
2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公は久坂玄瑞の妻、文(ふみ)。文の兄であり玄瑞の師である吉田松陰こそ、『世に棲む日日』前半の中心人物です。「人間が人間に影響を...
世に棲む日日(一)
商品説明
2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公は久坂玄瑞の妻、文(ふみ)。文の兄であり玄瑞の師である吉田松陰こそ、『世に棲む日日』前半の中心人物です。「人間が人間に影響をあたえるということは、人間のどういう部分によるものかを、松陰において考えてみたかった。そして後半は、影響の受け手のひとりである高杉晋作という若者について書いた」(「文庫版あとがき」より)
嘉永六(1853)年、ペリー率いる黒船が浦賀沖に姿を現して以来、攘夷か開国か、勤王か佐幕かをめぐり、国内には激しい政治闘争の嵐が吹き荒れていた。この時期、骨肉の抗争を経て倒幕への主動力となった長州藩には、その思想的原点に立つ松下村塾主宰・吉田松陰と、後継者たる高杉晋作がいた――。維新前夜の青春群像を活写した怒濤の歴史長編、ここに開幕。
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長州革命家列伝
2006/11/08 14:04
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
松陰吉田寅次郎—幕末の黒船来航に始まる動乱の最初期において尊王攘夷を説き、安政の大獄で斬首刑に処せられた長州浪人。彼の弟子で、師のめざした革命運動に一生をささげ、それにかたちをあたえた久坂玄瑞と高杉晋作。明治維新後、近代国家建設の原動力となった伊藤博文、井上馨、山県有朋。近代日本の成立に多大なる影響をおよぼした革命家三代の系譜は、長州藩のそれも松下村塾という小さな私塾に端を発したものであった。司馬遼太郎は、松蔭の幼少時から高杉の死までを描くことによって、長州藩の熱狂とパワーにあふれた革命家列伝ともいうべき物語を完成させた。
この書物中一番の魅力にあふれる人物は、なんといっても吉田松蔭であろう。狂気ともいえるその徹底した正義の観念は、少年時代に彼が叔父の玉木文之進から受けたすさまじい教育に由来するものであった。汗をぬぐうということさえも、自分一個の快楽を追及した公けに仕えるべき身(吉田家は代々山鹿流兵学師範)にあるまじき行為と、死ぬほど殴られる厳しい教育の中から自己犠牲と天下国家への献身という強靭な精神が育まれた。その一方で、天性の明るさ、屈託のなさ、人を疑うことを知らぬ無邪気さは、母親をはじめとする朗らかな家族の気質に拠るものであった。さらに長州藩がその家風としてきた自由な雰囲気は、臆することなくはっきりと意見をのべる習慣を彼に身につけさせたようである。
江戸留学の際、無二の親友との旅行に遅れるために、手形の発行を出し渋る藩に見切りをつけ脱藩する...黒船に乗り外国を視察しようとしたが、それが失敗すると国禁を破ったと自首し、獄に入れらる...獄中、囚人仲間と仲良くなり、たがいに勉強を教え合うサークルを作る。(その中の一人は、その後松下村塾で書道を教える。)...松下村塾では、ある日壁塗りをしていた門下生が、漆喰を落とし、下を通っていた松蔭の顔面につけてしまう。松蔭は「師の顔に泥を塗った」と一日中笑い転げた...幕府の取調べに対して、老中を暗殺するつもりであったと、言わなくてもよいことを告白し、そのため最後は刑死する...
こういった逸話からは、およそ怜悧で現実的な革命家の姿はうかがわれない。そこに見られるのは、友や弟子をいたわり周りのだれからも愛される、明るく正直で純粋な人間の姿である。事実、松蔭は自身が志した尊皇攘夷を推し進めることはなかった。彼がやったことは、その強烈な存在感と人柄でもって後進を率い、育成したことだけである。
しかし、このような人格的魅力が原動力となって、幕末の日本が躍動し、明治維新という近代日本の礎となった革命を成功に導いたというのもまた事実である。そこには、ヨーロッパ諸国の革命にみられる機械的・物質的な要因だけで割り切れない何かがあるように思われる。正義を求める一個の純真無垢な魂が、高杉、久坂、伊藤といった共鳴者を通じて、最終的に日本全体に大きな震動をあたえた。人々はこの革命の核にある精神性に意識的にせよ、無意識的にせよ共感したのではないか?その精神性とは、端的には国家のために自己を捨て、命を張る愛国心である。
エドウィン=ライシャワーがその著書『日本史』の中で、日本が列強の脅威にさらされたとき、自国民を裏切ってまで欧米列強の側に立つことを一瞬たりとも考えるような日本人は、ただの一人もいなかった、と述べている。明治維新がナショナリズムの観点から論じられることはあまりないが、維新には欧米侵略に対する日本的ナショナリズムの勝利という側面があったことは否定できない。そしてその幾分かは、松蔭という長州出身の純粋人の精神に根付いたものであるというのは、決して誇張ではあるまい。
江戸末期の攘夷か開国かで揺れ動く我が国の物語!
2016/08/05 09:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、江戸時代末期にペリーが来航し、それまで鎖国を貫いてきた江戸幕府において攘夷か、開国か、加えて勤王か、佐幕か、で揺れ動いた時代を描いた長編作品です。倒幕の主導となった長州藩、そこで思想の原点となっていた吉田松陰とその後継者、高杉晋作を中心に物語が進んでいきます。激動の目を離せない日々を負った感動作品です。
タイトルが良いですね
2024/03/29 15:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉田松陰という人物形成は、どんな状況だったのかが生い立ちから描かれたプロローグ的な第1巻です。長州藩の特色や色々な人々との出会いや見聞から知識を経て思想を形成していく様を丁寧に描いています。
幕末のエネルギーを感じる作品
2017/05/18 22:44
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:四月うさぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半二冊が松陰先生、後半二冊が高杉晋作をメインに著されていますが、登場人物の多くが幕末の偉人であることや、政局のめまぐるしい変化などが細かく記されており、大変読み応えのあるシリーズでした。
幕末の長州に対しては、賛否両論、色んな意見があるかと思います。私は山口出身ゆえに長州贔屓ですが、新撰組や他の幕府側からの目線で描かれた著書を読み、彼らも同じように国の行く末を案じて行動を起こした有志の人々なのだと思うようになりました。
思想家として、活動家として、教育者として…松陰先生の多彩な可能性が刑死という形で断ち切られても、志を引き継ぐ若者達がその先へと未来を築いてゆく。幕末は、若い人達の力強いエネルギーが国を大きく動かした日本の変革期です。その余波は明治に繋がっているので、できれば続きを読みたかったと思います。
松陰vs晋作
2015/06/19 18:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1巻と第2巻が吉田松陰の伝記で、第3巻、第4巻が高杉晋作の伝記です。
吉田松陰は熱い言葉と思いやりで人を引き付けますが、高杉晋作は行動力で人を引きつけます。吉田松陰はガリ勉タイプ、高杉晋作は、いつ勉強しているのか分からに内に東大現役合格という感じの天才です。
長州藩の志士たちが、明治政府誕生まで生きていたら、すごい日本になったいただろうなと感じさせる小説です。
ふたりの生き方を対比して読み込むと面白いですよ。
面白い
2017/11/05 16:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっしー - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎さんの本を初めて読みましたが、淡々としていて読みやすかったです。
個人的に、幕末が好きなので面白かったです。
人物輩出の時代
2021/07/14 12:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代が動くときは何故か場所的 時間的に集中して人物が輩出される。幕末の長州がまさにそれに当たる。わずかな期間しか稼働していなかった松下村塾から数多くの明治の元勲たちが登場した。その中で吉田松陰と高杉晋作を取り上げている。吉田松陰の徹底した儒学思想にはむしろ反感を覚えた。高杉晋作もきっと魅力的な人物だったのだろうが、この作品からはその良さがどうも読み取れなかった。