みえてこなかった女性の貧困
2015/11/15 17:18
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
年収200万円以下しかないワーキングプアが1100万人を越え、生活保護受給者が増続けている。2008年のリーマンショックの時、派遣切りされた人が日比谷公園に集まり、日本の中の働く貧困層がクローズアップされた。しかし、女性の貧困はこれまで見過ごされてきたのではないだろうか。なぜなら、結婚するまでは、親元にいて、結婚してからは夫が世帯主としているからであり、派遣村に集まったのもほぼ男性ばかりだった。すでに、女性は雇用の調整弁として使われ続けており、女性が貧困状態にあることが社会問題化してこなかったのである。しかし、本当は女性の貧困化の方が男性よりも深刻なのである。女性の貧困状態(働いても暮らしていけないワーキングプア)を放置してきたからこそ、日本にこれほどワーキングプアが広がってしまったのではないだろうか。女性たちの貧困は、子どもの貧困にもつながっている。それは、単に母子世帯の問題にとどまっていはない、若者の非正規化にも広がってきているのだ。
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仕事柄、似たような家庭を多く見る。放課後学習会や、食事、洗濯、掃除、異性との付き合いなど、さまざまな支援の必要性を感じる。定時制の福祉的機能の充実は急務かと。
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「女性を取り巻く状況の変化があるにもかかわらず、企業で働く親や夫といった『男性による扶養』が前提とされ、女性が『個』として生きていく、支えられていく仕組みが不十分である現状を見ていると、女性の貧困という問題は、“見えづらい”のではなく“みえないようにしてきた”のではないかとさえ思えてくる」(p219)
この取材班のコトバどおりで、まさにここに女性の貧困問題が集約されていることが、本書を読む中でひしひしと伝わってきた。
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テレビ版で見た。本当にこんな社会のあらゆるセーフティネットから零れ落ちることってあるんだ。と驚かされるが、統計から読んでも実態として当然の帰結としてnの貧困の連鎖、そして生活能力が低い子供たちが増えることは将来の社会保障の弱体化にもつながることである。。一人一人の個人の頑張りだけにすべてを委ねているだけでは最早問題解決は難しいところまで来ているのではないだろうかと感じた。
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日本の女性の貧困の実態が信じがたい内容で記載された力作。
こういう作品をつくれるNHKの報道としてのすごさを感じる。
日本において子供の貧困率は16%(6人に一人)。一人親世帯の貧困率は54%。先進国でいずれも最悪レベル。
また20歳から64歳の働く世代である単身女性の貧困は3人に一人にのぼる。
さらに非正規雇用で年収200万円以下の若年女性(15-34歳)は300万人にのぼる。ちなみに雇用者全体の非正規雇用率は38%..
数字上でも深刻だけど丹念な取材から悲惨さの実態が浮かび上がる。
巻末の国谷キャスターの「人生のスタートで夢や希望が奪われる社会とは」というコメントにすべてがある。十代の後半の女性はもっとも夢や希望や楽しみのある時期のはずなのにそれすら奪われている。どうすれば彼ら彼女が再び夢や希望をもつことができるのか?
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女性たちへの取材で明らかにされる「貧困」は衝撃的。特に母子家庭の貧困は、最近はメディアでもよく報道されるようになってきたが、その「連鎖」については危機的とも言える状況が報告される。子どもの6人に一人が相対的貧困状態にあり、その割合は先進国では最悪なレベルであること、働く単身女性の3人に一人が年収114万円未満だと言われていること。その具体的状況を報告する。統計数字ではない、一人ひとりの生活が凄まじい。
この本には、「解決策」は触れられていない。しかし、いろいろ考えさせられる。
機会の平等がないこと、最低限度の文化的生活を送れているとは決して言いがたいこと、これは憲法違反でさえある、と思う。これは完全に政治、行政の問題。百万の単位で空き家があるのにホームレスの人たちが存在しなければならない不条理と同じ。同じ社会の中に、どうしてこれだけの「格差」(機会と結果の不平等)が許容されるのだろう? 不思議である。ベーシックインカムはわりといい解決策と思うんだけどなー。
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若い女性の間で深刻化する貧困の実態を取材して話題となったNHK「クローズアップ現代」に基づいたノンフィクション。奨学金で大学に入るが、正社員になることができず、奨学金の返済が重くのしかかる。「託児所完備」をうたう風俗業界が、シングルマザーの受け皿になっている現実。幼少期からきちんとした養育を受けずに育ち、早く自分の家庭・子どもが欲しいと若くして妊娠・出産するも、育児が思い通りにいくわけもなく、子どもをネグレクト状態にしてしまう人。ネットカフェに2年以上住んでいるという19歳女性を取材したところ、母も妹も同じネットカフェに住んでいたという話には仰天した。非正規雇用の若年女性の八割が「困窮」(年収200万円未満)状態にあるこの国の現実を、直視させられる本。
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小さい子供のいる女の同僚が何人かいて、働きながら育てる大変さをよく聞くのだが、あるときふと、この人シングルマザーだったらどうなるんだろう、と思ってぞっとした。今は忙しくても旦那と協力しながら時間をやりくりし、収入はダブルインカムだから余裕があるけれど、もし旦那が倒れたりしたら、あるいは離婚してシングルマザーになったら、収入は突然半分に、いや、自分もフルタイムでは働けないからさらに減る。一方で家の仕事は倍に増える。それが起こらない、とは誰にも言えない。日本の片親家庭の貧困率は世界的にも高く、たとえばデンマークの数倍はあるそうだ。何が違うのだろう。
ただ、鈴木大介の一連のレポートと比べると、違和感が残った。上から目線なのだ。同情。こうあるべき論。役人が高いスーツを着てスラムの視察に行く違和感。風俗産業が困っている女性にとってのセーフティネットとして機能していことを紹介しつつ「風俗がセーフティネットなんて恥ずかしくないのか」と言いたくて喉元まで来ている。そういうものなのだろうか? 救いはエスタブリッシュメントから降ってくるものなのだろうか?
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2015年の18冊目です。
「女性たちの貧困 “新たな連鎖"の衝撃」
これは、NHK クローズアップ現代で、取り上げられてテーマについて、取材した内容をまとめたものです。
以前番組を見たことがあり、改めて読んでみてその記憶が蘇りました。
女性たちの貧困は、パートナーである男性を何らかの理由で失ったことに起因することが多いように思えます。
離婚等によるシングルマザーが、貧困に陥るケースが紹介されていました。
一方で、彼女たちのセーフティーネットが風俗産業という実態も驚きでした。仕事をするために、公的支援を使って子供を預けるためには多くの手続きを経なければできないし、必ずしもうまくいくとは限らないとのことでした。
それに対して、風俗産業(全てではないでしょうが)では、勤める契約と同時に、住む場所の提供と子供を預かってくれることまでしてくれるそうです。貧困を脱するために必要な条件を一度に満たしてくれるということです。
社会保障、社会制度の歪?といっていいのかどうか?
少々、心配な状況です。
女性たちの貧困問題は、かなり心に重く響いてきました。
しかしそれは、この問題の解決の光明が見当たらないということから来ているように思います。
紹介例で、コンビニのアルバイトをしている女性が出てきます。良く利用するコンビニで働いている若い女性もそうなのだろうか?とふと考えると、身近な事として捉えなおせるかもしれない。
私は、自分の職場で働いている若手女性社員が、男性社員と同様に仕事をし、責任を持ち、昇級して、独立して生きていける為の「機会=場」を提供し続けるしかないと改めて思いました。
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NHKの「クローズアップ現代」で特集された『女性の貧困』をテーマにした番組を書籍化したもの。若年層の所得が年々減少し、将来に希望が見いだせない若者が増えている。そんな近年の社会情勢の中、日々の生活すら儘ならない困窮した女性たちが居ることは明確で、明日は我が身的な気持ちで手に取った。
例に挙がっているのは「奨学金の返済に追われるOL」を始めに、「親の育児放棄をきっかけに中学生の頃から家庭を支えることになったOL」「キャバクラで働きつつ高卒認定を目指すシングルマザー」「父親が分からない子供を妊娠し母性を感じない女性」など、自身の親やパートナーに問題を抱えている女性が主となっている。そのセーフティーネットとして利用される風俗業の実態も綴られている。
後半につれて“衝撃度”が増す一方、随分と極端な例が取り扱われている印象を持った。もしここに書かれていることが一般的な現実かつ日常であれば、世の中は相当荒れた状態になっている。
数々の事例を紹介し、あくまでも問題提起に留まった本作。自分のこれからの生き方を考えさせられる。
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クローズアップ現代の再放送を見たのかな?
インパクトの強い特集でした。
それ以外の話も入っております。
NHK取材班が作っている話なので、国に思うこととかをきちんと取材していますが、やはり前回紹介した「出会い系のシングルマザーたち」の方は、もはや国のことなんて眼中にないというか、シビアな世界だと思います。
こちらの本が、風俗店への取材だとすると、「出会い系~」では、もはや風俗店という組織で働けるのも選ばれた女性である、という事実が述べられています。
ですので、私こちらを後に読んだのですが、こちらを先に読んでから「出会い系の~」へと読み進むことをお勧めします。
冒頭、
「高学歴の女性の活躍の場は広がったかもしれないが、そうでない女性の働く場はむしろ狭まっている
」という話から出てきます。
「いい学校を出て、有名企業に入れば幸せな生活が送れる」
わけではないという話を学生時代から聞いて育ってますけど、実際のところ今でも大多数の日本企業では学歴というものが大きく影響する世界だなというのが10年ほど働いてきての実感です。
この本でも第二章で契約社員の方の「正社員への高い壁」として
「正社員は入社試験を受けて入ってきたんですよ。あなたにSPIを受ける力がありますか?しばらくここで働いているから正社員になれるなんて、不公平でしょ」
というエピソードが掲載されています。
バブル期の入ってくれ入ってくれと言われて入った人たちの中で生産性が低い人材を切ろうにも正社員という壁が逆にあり、四苦八苦して退職させている一方で、明らかに能力が高く、会社への貢献度が高い人間が入社試験を経て入っていないというだけで、何かのきっかけでいきなり契約満了とされてしまう。
日本の企業の力の使い処、間違ってるだろう。そう思うのですが、本当にそのように働きたければ外資系転職しろよ、と言われるのが現実だと思います。
そして次のページからは「四年制大学を卒業したけれど」
という話が始まります。この「愛さん」についてはああ、テレビで見たところだと思いました。
四年制大学を卒業しても、正社員として就職することが叶わず、有利子の奨学金返済に追われるというエピソード。
実際に私の周りにも、奨学金返済に現在進行形で追われている人が何人かいます。
4年生大学を卒業し、正社員として就職し、家賃補助やその他福利厚生を受けながらも30歳を超えてもなお、まだまだ返済が負担だと話すわけですよ。
それが時給制で2年で昇給10円、月額手取り14万の生活で母一人子一人の中母に仕送りもしているという中では負担が大きくのしかかります。
結局彼女はあこがれの業界を離れ、学生時代アルバイトしていた店に戻り就職活動を並行して行っているが芳しくない、というところでエピソードは終わります。
四年制大学を卒業して、正社員になりやすい、なりにくいっていうのは本当年度による運が大きいな、というのが実感としてあります。
バブル期―バブル崩壊―好景気―リーマンショック―人材不足
と、個別の能力よりも国全体の流れで採用されやすい、されにくいというのがあります。各企業はその年のトレンドから決めた採用計画を完遂することが大事。
日本の生産性が低いのも、自分で書いていて納得してしまいます。生産性よりも、就職活動の形式を保つことの方がまだ優先度が高いほど、この国には余裕があるんでしょうね。
この本には悲しいフレーズがたくさん、掲載されています。
「大きな幸せは、期待して外れると嫌なので、小さな幸せがちょこちょこある方がいい」
「どんなに理不尽な条件でも、生きるためには黙って受け入れるしかない。この国は結局、そういう我慢強い女たちが支えてるんですよ」
「将来の不安とか、そういったことは極力考えないようにしている。母子家庭をこういう状況に追い込んでいる国とか社会へのいら立ちが出てきてしまうから」
「二カ月間の給与明細を見て、あーこうなるんだって、生活が上向くことはないって、先が見えてしまったんですよね」
契約社員から正社員になった人の実感がこれ。頑張ると、頑張っただけ報われない。
「教育をきちんと受けないまま社会に放たれてしまうため、文章を見せられても、よく理解しないままサインをしてしまい、騙されて借金を負う女性も少ないないそうだ」
この話戦前じゃないんですよ。平静になって27年経つ今を生きる人の実感としてこれですよ。
巻末には前回の本と同じような所感が出てきます。
「「貧困」とは「お金がない」だけでなく「教育」や「情報」が欠如している状態だともいえるのではないか、というのが取材を終えての私の実感です。」
と書かれています。教育機会もなく、情報も欠如している彼女たちは、当然この本に触れることも、おそらくないでしょう。
NHKは他にも最近では老人漂流社会という特集を放送していたりとね、考えさせられる、というかずーんと重くなるテーマの放送をしています。
考える、というのはこの本に出てくる人たちが避けている行為。でも、考えることを出来る私は、そのことから避けずに取り組みたいと思う。
面接時に働く目的と、いつまで働きいくら貯めるという目標を設定させ、行方不明になったら探し出し、育児の悩みを聞き相談役を担うというデリヘル経営者。
妊娠をしたが育てられないという女性に出産するまでの寮を用意し、一方で子どもに恵まれない夫婦へ特別養子縁組をするというNPO法人「Babyぽけっと」。
諦めずに行動をしている人たちから何か、掴み取れればと思い、引き続き理解を深めたいと思います。
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今日も3歳の次女の顔にやけどを負わせ、死なせた実母、内縁の夫の事件が起きた。しわ寄せは子どもにくるのだ。ほんと、妊娠させた男や離婚した男が養育費も払わないのは腹が立つ。どうして母親だけが責められるのだ。寮から託児所から備えてる風俗産業があり、公的支援は全く負けているというのが印象的。正直、公が仕事を与えることはできないと思う。つくづく自分は恵まれていると思う。最後のネットカフェに母と19歳、14歳の娘がそれぞれの部屋で暮らしているというのは本当に衝撃的だった。まとまった資金がないことがどんなに不便というか、苦労することか。
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2016.02.08
どの女性のエピソードも、読んでて胸が苦しくなるものばかりでした。
『貧困』『貧乏』は、自己責任というイメージはいったいどこから、誰が言っているんだろうと思うくらい、この本に出てくる女性は、頑張りすぎるほど頑張って生きていると思います。
私も働いても働いても昇給も昇格もない会社に勤めていました。正社員ではあるものの年収は250万円以下。それでも、ハローワークや新聞広告に出てる求人から比べると良い給料。
このまま働いていても未来が見えないと思い、退職して今の職に付けましたが、退職後、職が見つかっていなければ非正規で働く羽目になり、上昇できず貧困まっしぐらだったはず。
巻末の、世界的に見て日本のひとり親世帯の圧倒的な貧困率の高さと、ひとり親世帯が無職の場合よりも有職の世帯のほうが貧困率が高いというデータには驚愕しました。
貧困の連鎖を断ち切り、子供が安定した職につき、安定した人並みの生活を送れるようなるには子供のうちからの努力しかないのでしょうか。
看護師、薬剤師、医者など、あまり年齢に関係なく全国どこでも働ける国家資格を取得して手に職をつけるしかないような…。
ただ、貧困家庭で育った子供は、落ち着いて勉強できる環境が整っていないことも多いでしょう…。
貧困の連鎖を断ち切るために行政が動き出すとしたら、スパルタでもいいから手に職をつけてあげてから社会に出す制度を作って欲しいです。
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読んでいて怖かった。明日は我が身かもしれない。主たる働き手の死や、職を失うことなんて、誰にでも起きうること。
一度貧困に陥ると、子世代も貧困まっしぐらで、生活を立て直すチャンスさえない、本当に胸が痛む。せめて、みんなが教育を受けられれば。
こういう女性と接している人たちの言葉は、みな重い。
中でも、第四章P110で風俗店経営者さんが言ってることは刺さった。「こうした女性たちが次々に子どもを妊娠していく。そして子どもをきちんと育てるのも苦手。社会に適応することが苦手な母親に育てられた子どもが増えていくことは、日本の国力が弱まることにつながる」
今日をしのぐのが精いっぱいで、夢も希望も持てない女の子が増えていく国に未来はあるのかな。
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http://www.gentosha.co.jp/book/b8307.html ,
http://www.gentosha.jp/category/joseitachinohinkon ,
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3458.html ,
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20140427