紙の本
「イスラム国」の基礎を学べる書籍
2015/03/16 21:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まっしゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を購入し読破するまではアルカイダを始めとする他の組織とイスラム国の違いだけでなく、スンニ派とシーア派の違いについてすらも、その認識は怪しかった。本書では、それらについての知識も覚束ない人に対する入門書として、かなり分かりやすい書籍になっていると思う。
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入門書に最適
2015/10/13 23:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kazuo - この投稿者のレビュー一覧を見る
大概の人にはニュースでだけ追っているだけでは理解しづらい「イスラム国」を最初から学びたい人には最適。カリフ制国家の意味すらろくに知らない自分にはわかりやすく値段も分量もリーズナブルな良書であった。新書レベルのものをもう数冊読んでより理解を深めたい。
しかし、ここまで価値観の異なる「国家」と今後、いかなる折り合いがつけられるのだろうか?著者自身も当然、その解はもっていないが本書、終盤にイスラム国を欧米諸国(その際は当然日本でもあろうが)「国家承認」をしなくてはいけない可能性を示唆しているのが不気味である。個人的には(本書に触れられていないが)最悪の事態としてイスラム国が核を保有する可能性があると思っている。その事態に備えた対応を日欧米各国の為政者は今から考えておく必要があると考える。
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残酷さという意味でのイスラム国の恐ろしさだけでなく、狡猾さという恐ろしさを感じた。だけど、どうしてこんなにイスラム国が力を持つまで、対処できなかったのか。そもそもどうして、中東という地域を理解しないまま、利権欲しさに中東に介入し、多くの反感を生み出し続け、武器を流入させ続けてしまったのか。今、多くの情報が流れ、こうして一般向けの書籍がたくさん出て、なんとか状況をつかめてきたからこそ、そう思えるのだろうけど。イスラム国は、生まれるべくして生まれてしまったようにも感じた。「本質は宗教戦争ではなく、現実的な政治戦争」。これを知ることで、どうして宗教のことでここまで大騒ぎになるのか、理解不能でただただ恐ろしい異国の問題ととらえていたことが、自分の生きる世界の延長にあることとして、とらえられるようになる。
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2014年6月時点で「イスラム国」と呼ばれるようになった武装集団の最終目標は、失われたイスラム国家の建国であるという視点で、中東情勢および組織を分析している。「イスラム国」が他の武装組織と異なっている点を所与としているというか、原初から異なっているかのように予言的に特別視している点は納得できないけれど、結局は昔からある覇権争いに他ならないという視点は納得した。中東の今を理解する一助になった。
ツイッターやYouTubeに代表されるテクノロジーはテロ組織のありかたすら変える。プロパガンダに曝される僕らは、何を見て何を見ていないのか、それを流している個人・集団の目的は何なのかを冷静に考えて行動しなくてはいけないと思いました。
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著者のロレッタ・ナポリオーニ氏は対テロリズムのコンサルタントなどを務めている、国際関係と経済学出身の方。
解説は、私が大好き・池上彰さん。
書き始められたのが2014年6月。
邦訳版の出版が2015年1月。
刻々と情勢が変化する間に執筆されており、発行から半年過ぎた現在では、また更に変わっていることは大前提として。
読み終わった本日(2015年7月21日)から3~4日以内でも、「ISが犯行声明を出しているテロ」と「ISとつながりがある組織が起こしたテロ」と「ISの犯行だと見られているテロ」が入り乱れていて、場所もイラクとシリアを中心にトルコのクルド人地区から中央アジア、そして西アフリカまで…。
関連するニュースを毎日追っているだけでも意味がわからなくなりそうな、中東とその周辺域で起きている問題を整理し、今まで断片的に持っていた中東問題の知識をつなぎ合わせていくために、この本はとてもわかりやすく手引きをしてくれた。
正直ニュースを見ていると、当のイスラム教スンニ派とシーア派だけでなく、それぞれの国家のその時の政府・ばんばん生まれる武装集団・更に中東情勢にかまう国や国際組織全般の思惑が重なって、報道のされ方や繋がりの有無まで瞬く間に書き換えられて行き、「今まで断片的に持っていた知識や読み取った繋がり」ですら役に立たない気持ちにさせられていくのだ。
その点本書では『ISの目的』『タリバンやアルカイダとの違い』、そして『7世紀から続く宗教戦争を装った政治権力闘争』と『便乗する代理戦争』を、今現在のそれぞれの思惑と国際情勢に惑わされずに理解するために、入門書としてすごくわかりやすかった。
読んでよかった。
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イデオロギーの根底にあるものが何かを理解せず、己の価値観で地政学的要素に手を加えようとすると必ずカウンターを受ける。しかも巧妙に間隙をぬって。その動きの縮図こそがイスラム国の台頭だったと理解した。
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イスラム国の第一義的な目的は、「ユダヤ人のユートピア」イスラエルのような存在をスンニ派ムスリムによって形作ることにある。
なるほど、これだけで、世界中から閉塞感に苛まれる若者を呼び寄せ、混迷極める中東で勢力拡大を繰り返している要因の香りが漂ってくるではないか。
しかもその組織が、スポンサー国家に頼らず自主財源を確保し、その資金を統治地域の安定に供出しているという事実は、彼らがただの戦闘集団とは質的に異なる証左である。
今後欧米諸国と中国、ロシアが彼らとどう対峙するかはわからない。
ただし、これまでの物量的軍事攻撃では彼らを倒すことはできないだろう、それがこの著書の警告である。
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「もしそうだとしたら、「イスラム国」による国家建設モデルは、「アラブの春」よりもすぐれているのだろうか。」
イスラム国がほかのテロ組織とどの違うかについて書かれている。彼らは、カリフ制国家の建設を目指す。国家の定義が、主権、領土、国民の3要素から成るのであれば、イスラム国は立派な国家だと言える。
本書は、イスラム国が、ユダヤ人が求めた国家”イスラエル”に根源は似ていると説明している。イスラエルも自分たちの国の復活を欲した。そして、同じようにイスラム国も失われたカリフ制国家の再建を目指した。ほかのイスラム組織は打倒西欧社会を掲げ、アメリカに攻撃した。しかし、イスラム国は地盤の強化に努めている。
暴力と恐怖だけで支配するのではなく、インフラの設備を整え、住民の良い評判を得ている。改宗する者は受け入れると言っている。
アラブの春、ジャスミン革命、雨傘革命、そのどれもが成功しているとは言えまい。一方で、イスラム国は着々と自身の望みに近づいていると言える。イスラム国のやり方のほうが正しいのか、という疑問が浮かぶ。
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「イスラム国」とは一体何なのか、と思い勉強のために購入。
残虐な行いや暴力的な振る舞いばかりしているのかと思ったけど、支配地域では住民に生活支援をしたりインフラを整えていたりするということがわかり意外だった。
やり方は暴力的であるし受け入れられるものではないけれど、彼らは国家建設に本気なんだと感じた。恐ろしい限りだけれど。
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昨今のイスラム国の動きを鑑み、読書の
優先順位を上げた。著者がテロ組織の
ファイナンスが専門という点も興味が
あり、手に取った一冊。
著者は、イスラム国をソーシャルメディア
で残虐行為を発信しつつも、単なる武装
組織とは一線を画し、内実は、財政基盤
を持ち、制圧地域のインフラを整備して
人心を掴む等、テロ国家の建設を目指し
ていると主張。このテロ国家が実現する
と、従来の近代国家にとって究極の試練
となると、警告している。
巻頭の用語集も充実し、読み応えある
一冊でした。
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「イスラム国」を理解するに最適な書籍のひとつ。(彼らはテロリスト集団であり「国」では全く無いので、この呼称は止めるべき。マスコミは、多く人もいうとおり、ISISとかISとか呼ぶべき)
タリバンやアル=カイーダ組織が弱体化する中でなぜISISがシリアとイラクにまたがる広い地域で勢力を持ったのかを解き明かしている。
彼らは目指す国家建国に必要な要素を充分に理解して活動しているというのが筆者の一番いいたいこと。彼らの目標達成のための戦争は宗教的使命を果す戦いではない。極めて現実主義的な政治戦略を取っている。タリバンのように頑なではなく柔軟な制作を取れる体制にあり、改宗を受け入れる者は受け入れる、彼らが課す税を支払う者は受け入れたり出てゆくことを認め、誘拐した外国人も身代金を支払えば開放する。
彼らが居る地域は長い年月に渡る戦争で荒廃した地域であるため、ここを立て直し「国」とするためには現実路線を取ることが必要でそれを充分に認識している。資金が充分に必要であることを認識し優先している。初期はサウジなど豊かな国の金持ちなどからの支援で立ち上がったが、その後はテロをビジネス化することに成功した集団になった。
彼らはこの地域で「カリフ制国家」を宣言した。スンニ派におけるイスラムの宗教的「純化」を実行している。ジェノサイドという言葉にふさわしい行為をおこなう。カリフ制国家の理想を腐敗などの無い、開放された嘗てなかった新しいイスラム国家の建国・新しい政治秩序の構築という理想が世界各国にいる若者を惹きつけていると分析している。
同時に「グローバリゼーション」と最新のテクノロジーを充分に理解し活用して活動する集団でもある。SNSの利用の仕方は卓抜したものがあると分析している。
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テロ集団ISISは、本当にあ後に「国」を作るのか米を中心とした国々が壊滅出来るのか。ここ数年で決着がつくのだろうか?
アメリカは正式には発表していないが、昨年一年間でISISの兵士6,000人以上を殺害したとの発言があったらしい。彼らの兵士の数は1万人台から多くて3万人と見積もられている(実態はほとんど漏れてこない)。6,000人の兵士が殺害されたとなれば弱体化しているといえる。資金不足が起こっているとすれば今までに無い行為がなされることもあるのだろう。
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今、人質などでメディアに出ている「イスラム国」とは何か知りたくて、読んだ。
各章に分かれていて読み易かったと思う。
「イスラム国」集団が拡大したのは本書ページ60の
中頃に書いてある通りだと思う。
発生の経緯などは良く理解できたが、歴史的、地理的、考え方(宗教などの)異なる我々には解り難しいのかも知れません。
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中東の混乱を他国の介入で納めることができるのか。ましてや大国の代理戦争や資源争いの後遺症があった場合は。テロが許されることでないことは承知の上でそれでも命がけの行動に出ざるを得なかった人々がいる。暴力は暴力を生んでしまう。戦争の世紀を経たのだから、もう人類は暴力の空しさに気付きたい。
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2014年中頃から世界を騒がせ、さらに今年に入ってからは邦人を人質に取り更に注目を集めているイスラム国。しかしその正体は未だに謎であるが、本書はイスラム国がこれまでのテロ集団と一線を画した存在であることを浮き彫りにさせてくれる。
テロ集団といえばタリバンやアルカイダ、国内であれば革マル派や中核派、オウム真理教、あるいはしばき隊のようなものまで思い浮かべるかもしれないが、そのいずれもが暴力集団であるのに対し、イスラム国は単なる暴力集団とは言えないところに難しさがある。例えば、何かを記念して旗を掲げようとしたとき、住民が反対すればイスラム国は旗を掲げないのである。一方、他のテロ組織では自らをアピールするために反対する住民を処刑してでも旗を掲げる。こういう譲歩ができる所、住民の意を汲んで対応できるところが、単なる暴力集団とはいえないところなのである。そして、それ故、住民に信頼されるのである。また、はじめから「国家建設」をビジョンに掲げて行動している組織であり、領土を広げ、資源を確保することに余念がない。しかもその資源を売って資金を得ているのである。これだけを見ても、これまでのテロ組織とは違うといえる。
イスラム国は意外なことに、支配地域の住民に概ね支持されているという。イスラム国がシーア派に差別されてきたスンニ派の側の組織であり、シーア派を攻撃しているのであればスンニ派の住民から支持を受けるのは当然である。また、水や食料の配給だけでなく下水の整備や道路の補修、電気の供給といったインフラ整備、さらに孤児の養子縁組、ワクチン接種まで行っているとすれば住民が支持しないわけがない。ここをみても国家建設というビジョンが見えてくる。
さて、なぜここまで勢力を拡大できたのかについては多くの謎があるが、そのひとつは、欧米各国の「これまでのテロ集団と同じである」という思い込みによる対応の遅れであり、もうひとつはメディア戦略である。イスラム国の掲げるカリフ制国家こそがムスリムの理想の国家であると掲げ、さらに、首謀者はほとんど姿を見せず神秘性を演出。加えて、「建国」に参加できるという喜びなどを訴えている。こういうプロパガンダを巧みに行うことで、在欧米のムスリムの若者だけでなく、外国人をも引き付けているという。そのため、世界中から人々が集まってきており勢力に衰えが見えないという。ただし、こうやって集まってきた外国人は、地元民に共感も同情も抱いておらず、組織への参加は冒険や軍のサマーキャンプのようなものと考えており、いずれ内部で対立が生まれるかもしれないという。しかし、勢力を拡大しているという事実、世界中の若者の共感を呼びつつあるという事実は重く受け止めないといけない。
今この時点においても事態は動いており、今度どのようになるのか分からない。「国家建設」というビジョンを掲げ、少なくともそれを実行し続けている今、情勢の如何によっては、本書が発する警告 ―― 『近代以降の歴史で初めて、武装組織がテロリズムの最終目標を実現することになる』 ―― つまりテロリストが国家を作ってしまうことが本当にあり得るかもしれない。
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イスラム国について、成立までの流れ、意外としっかりとした組織、目指すところなど基礎知識が入手できる良書。
テロという手段を取っているので、欧米社会から同意を得るのは困難であろうが、狙いとしているものは国家建設であり、アルカイダと違うということは理解できた。
さらにイスラム国を理解するためには、まずアラブ世界の歴史を知る必要がありそうだ。