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ウーマン アローン
著者 廣川まさき
【第2回開高健ノンフィクション賞受賞作】女ひとり、ユーコン川にカヌーを浮かべる。100年前を生きた「男」に恋をしてしまったのだ。漠としていても、心の芯がうずく「夢」探し。...
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ウーマンアローン
商品説明
【第2回開高健ノンフィクション賞受賞作】女ひとり、ユーコン川にカヌーを浮かべる。100年前を生きた「男」に恋をしてしまったのだ。漠としていても、心の芯がうずく「夢」探し。アラスカの大自然は、夢追い人にかけがえのない贈り物を用意してくれた。――伝説の日本人の足跡を訪ねるため、初めてのカヌーを繰ってアラスカ・ユーコン川下りに挑んだ著者。様々な表情を見せる自然、人々との交流。それは楽しい学びの時でもあった。電子版では口絵写真50点余をすべて大サイズで収録。写真集並みの迫力とボリューム!
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紙の本
創りもの(小説)には到底だせない感動
2004/11/30 12:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は「第二回開高健ノンフィクション賞」受賞作品。
女ひとりカナダ、アラスカを流れる大河ユーコン川にカヌーを浮かべ44日間、1500km先の小さな村にいくまでの感動的な旅の記録である。
著者はカヌーを漕ぐのも、川下りも、野生動物の生息する(熊)原野でのキャンプもなにもかもが初めて。
彼女をそんな苛酷な旅へとかりだしたものは何か? それは一冊の本、新田次郎著『アラスカ物語』との出会いだった。百年前、一人の日本人、安田恭輔がエスキモーの人達の危機を救った。鯨乱獲により捕鯨民族だったエスキモーは飢えと絶滅に追いやられた。その危機を救うべく内陸アラスカに新天地を切り開き、エスキモーを導いたのが安田恭輔だった。
『アラスカ物語』を読んだ感動が、著者をしてその村を訪ねたいとかりたてたのだった。
安田恭輔が率いたエスキモーの人々の新天地はビーバー村。村には道路のアクセスが一切なく、車もない。そこへいくには飛行機かモーターボートかカヌーで川を下るしか方法がなかった。アラスカを女性一人で行くリスクは大きい。熊の生息地で野営し、カヌーを漕ぎ、大河をたったひとりで下るのであるから。
しかし、この旅は近頃騒がれている何の情報収集もなく危機管理のすべもなく安易な「自分探し」の旅などでは決してなかった。事前に情報収集をし、考えられる危険を全て整理した上での旅である。
大自然が彼女に与える厳しさは想像を遙かに越えるものである。しかし旅の間に出逢った人々との触れ合いは、彼女の天性のあかるさとユーモア、大らかな人柄により国境も、性差もなく温かく繋がっていき、実に爽快である。
一方、自然の脅威の前では瞬時に五感どころか第六感まで働かせないと生死にかかわる。
体力、決断の迅速さ、勇気が要求される。寝ている間にも全身を耳にする著者。この危険な旅に彼女は熊撃退用の銃を持たず、ギターを買った。衛星電話の代わりにカヌーが遭難しても一ヶ月はサバイバルできるほどの水と保存食を積んだ。そしてGPSの代わりに地形図と小さなコンパスを買い、文明の利器であるハイテクノロジーに頼らなかったのである。
この旅で著者が感じ取ったもの;
それは「第六感という潜在的な感。鋭く様々な本質をつかむ直感。荒野で本当に必要なものはテクノロジーではなく、この第六感であるように思った。天候や川の表情、野生動物、すべてのことに意識を配り、緊張感を忘れなかった。その緊張感がなんともいえない快感であったことも事実だった。」
「ハイテクノロジー機器は確かにすばらしい。しかし、テクノロジーはそんなに信頼して良いものなのだろうか? どんなに機器を上手に使うことができるとしても、もしも、それが壊れた
時に、自分の力と知恵と感覚を使うことができなければ、それは何よりも危険なことだ。テクノロジーに頼りすぎて、その知恵や感覚を失ってしまうのが最も怖かった」と。
第六感どころか五感でさえもフルに使っているかどうか危ぶまれる自分を思わず振り返ってみる言葉だった。
激流と風の猛威の中、漕いで漕いで岸にあがるまでの戦いの様子は「全身の筋肉が、肺が、心臓が、悲鳴をあげながら漕いで、漕いで」と凄まじい。岸にやっとあがって大きな息とともに出た言葉「生きるってこういうことなのか」。
「事実は小説よりも奇なり」の言葉通り、まさにノンフィクションの力は作り物には到底だせない感動をよぶ。それはひとりの人間が命がけで得た、まごうことなき「事実」なのであるから。
気取らず率直な文章で、いつのまにか読者の胸にも熱い青春の血がたぎってきて目的地まで応援する自分を発見するのである。何ともすがすがしい読後感である。