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投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編3つ。「故郷忘じがたく候」は朝鮮の役(慶長の役1997年)の時に薩摩に連れてこられた韓国人70人位、その400年の歴史。600年代に百済や新羅が滅んだ時に、自ら日本に亡命してきた韓国人とは違った感情がある。また日本に土着したものの日本の歴史に巻き込まれ、アイデンティティーで悩まされる状況が描かれており、複雑な心境になり同情する。「惨殺」は戊辰の役で人手不足のため少ない人数で官軍の指揮官として東北鎮撫のために仙台藩に派遣された世良修蔵の末路。高圧的な姿勢が仇となり惨殺される内容だが、難しい奥州鎮圧を、周りの空気を読めない人間に対処させた官軍の人選ミスといったところか。「胡桃に酒」はガラシャ夫人の半生。夫になった細川忠興の異常な妻に対する執着心と行動は初めて知っただけに驚きだ。妻に対する異常な嫉妬心や執着心の強さが書かれているが、どこまで作り話なのかと思ってしまう。また秀吉の妻狩りも初めて知ったが、その異常さにも驚く。情事の描写もあり、ちょっと未成年には読ませられない。
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表題はとても感動的にうまくまとめられています。でも司馬さんにとっては韓国は物語であって、そのなかに入っていくものではなかったことを改めて確認しました。昭和の限界かな。
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申すもはばかることなれど
日州どのがおんひめは
衣通姫もただならず
―――胡桃に酒
秀吉政権下、薩摩軍により拉致された朝鮮人。望郷の念を抱きながら暮らす陶工を描いた表題作。
明治元年、奥州遠征をした官軍の悲しい結末を描いた「斬殺」
細川ガラシャの薄幸の生涯を描いた「胡桃に酒」
3作目が読みたくて買いました。
うーん、やっぱり凄惨な一生。
そして表題作が予想以上に良かった。
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at first imp/
…実は司馬著作の中で一番好きかもしれない。しかも父子揃って。
おもしろーい。とにかく!つか、モロ趣味!題材が素敵すぐるうううう
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薩摩焼の沈寿官家を訪ね、沈家のドラマティックな歴史と14代目のエピソードを紹介。
14代目さんの韓国へ行った時のお話には、14代目さんだからこそ言える言葉があった。
韓国の大学での講演で、韓国人学生を前に
「これからは前をみて行かねばならない。あなた方が36年を言うなら、私は370年を言わねばならない」
韓国の血を受け継いではいてもすっかり薩摩人である寿官さんは、陽気で冗談がお好きらしいのだが、このあとの韓国人学生から贈られた歌にはただ涙を流すしかなかったと。
細川ガラシャの話も収録されている。
「胡桃と酒」
細川忠興との結婚は食べ合わせが悪かった。
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授業で新聞記者の女性の話を聞く機会があった。彼女は、小泉総理(当時)の訪朝が話題になっていた頃、拉致被害者とされている、横田めぐみさんのご両親を取材したそうだ。横田夫妻は川崎にお住まいで、さらに川崎には、在日朝鮮人が多く住まう地域があるらしい。彼女は、当然のように朝鮮を母国にもつ彼らにも取材した。日本人拉致被害者についてどう思うかという質問を投げ掛けると、「仕方がない」という思わぬ返事が返ってきたらしい。
この本を手にとったのは、この話を聞いた直後だったからかもしれない。内容は、豊臣秀吉の行った朝鮮出兵の時代に、日本に拉致されてきた数十名の在日朝鮮人の話であり、彼らの故郷への思いが客観的に綴られている。彼らは、顔や体つきは日本人と見分けがつかなくとも、内に秘める愛国心のようなものはしっかりもっている。
対象的に、日本について何も知らないに等しい自分が恥ずかしくなった。もっと日本について知りたくなった。
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朝鮮の役で日本に連れてこられた人たちの子孫のお話と幕末の仙台藩の苦悩、そして細川ガラシャを主人公とした短編衆。ガラシャの話はごく一般的な内容です。
2009.6.23読了
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司馬遼太郎を薦められたので読んでみる。
短編3作品を収録。
表題にもなっている「故郷忘じがたく候」は面白い。
なんでこんなにコンパクトに描写して情景が想像できるんだろう。
うっかりするとあらすじ小説になりかねないくらいの展開の速さなのに。
斬殺は読めなかった。目がすべる。
胡桃に酒のすさまじさは凄い。これだけの出来事を惜しげもなく短編に使ってしまうのは凄いなと思う。仕掛けの上手さからいって確かに短編なのだが怖い作品。
関係ないけど、本編の引用と蛇足だけしている解説には驚いた。もっと肉声はないのか。
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秀吉の朝鮮出兵で,薩摩軍により日本に拉致された朝鮮人技術者達は,数代と薩摩に住み,白薩摩という名磁器を作り,薩摩人として暮らしながらも,故郷を想い,焦がれた。その他,細川ガラシャが美しく博学なばかりに,自分の運命を納得し,悲しいがまっすぐな生涯を閉じた話と,明治初期の官軍の奥州征伐に関わった長州出身の将校の悲惨な生涯を描いた,短編集。
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ガラシャの生涯を描いた短編がとても心に残りました。
http://blog.livedoor.jp/maikolo/archives/51044415.html
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司馬遼太郎による鹿児島の陶工、沈寿官についてのエッセイ的な小説。
沈寿官と言えば、鹿児島では有名な陶工として知られています。彼の祖先は、秀吉の朝鮮出兵時に朝鮮から連れてこられた(つまり日本に拉致された)陶工でした。彼等は鹿児島に焼き物の文化を伝え、薩摩焼などの工業製品製造に貢献しました。
当時の日本は、先進国であった朝鮮から技術を導入しようと躍起になっていた時代だったようで、彼らは或る意味その犠牲者でした。その優秀な製陶技術は、時間の経過とともに日本の文化として取り込まれ、現在に至っています。日本文化成立の立役者であり、現在も子孫達がそれを受け継いでいますが、かつて拉致された朝鮮人としての本国に対する想いは、今も昔も変わらないと思います。
歴史認識問題が話題になる昨今ですが、この本を読んで、日本にはそういう朝鮮の人達の悲しい歴史があることを認識しなくてはいけないと思いました。
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表題作も味わい深いが、細川忠興(というか中世という時代そのものの)狂気について触れた「胡桃に酒」が特に好きだ。
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「故郷忘じがたく候」は、薩摩焼にまつわる短編小説。
薩摩焼は、秀吉の文禄・慶長の役の際に、捕虜として連行されてきた朝鮮人が、藩主の保護の下に発展させたものであり、薩摩焼により、薩摩藩は財政を潤した。
その他にも、教科書では取り上げられない、きらりと輝く歴史の秘話を短編小説として取り上げられている。
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司馬作品ですが、偉人も英雄も登場しません。
秀吉の朝鮮出兵のさい、戦って破れ、鹿児島に連れてこられた人々の記録。朝鮮人としての姓を名乗りつづけ、製陶の文化と技術を日本に伝え、そしてその姓と技術を全うすることで、370年の永きに渡り一族の誇りを貫いた人々の物語であり、事実である。
我われが日常当たり前のように使う茶碗や皿の文化が、朝鮮半島から「伝来」したものとは誰もが知っている。だが、一言で「伝来」と語られてしまう事実の実相は、心ならずも連れてこられた人々の壮絶な歴史であったことを思い知らされる。
司馬の言葉ではないが、伊万里、薩摩焼などの九州の窯地では、焼き物・陶器を意味する、「ひばかり」という言い方がある。製陶の技術・土や釉薬といった材料・ロクロやヘラなどの道具など必要なモノはすべて、朝鮮半島から奪って持ち込まれたものである。だから日本の現地で調達したのはただ「火」だけだという意味である。必要なモノ、の中には技術者としての「人間」も当然含まれていた。酷い事実である。
『故郷忘じがたく候』と記して「ぼうじがたく」と読む。一読後その一言を改めて口にするとき、拉致被害者が北朝鮮で過ごした、あるいは現在も進行中の30年の重みを知る者は、この物語の主人公達の「370年」の重圧に押しつぶされそうになる。
この物語の深いところは、歴史に翻弄された一族の話で終わらないところだ。
薩摩人以上に薩摩的であり、日本人以上に日本人として、「ちゃわん屋」として生きてきた、あるいは生きざるを得なかった葛藤がまた、胸に迫る。
短編ではあるが、『竜馬が行く』や『坂の上の雲』を凌駕する司馬作品中の最高峰である。あくまで、ワタシ個人的には、ですが。
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表題作「故郷忘じがたく候」は、よかったです。。今まで読んだ、司馬作品の中でも、最もよかったものの1つです。。14代目が、中学校に上がった時の話は、なんだか泣けてきました。