紙の本
かなり面白いルポ。
2016/04/24 23:57
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『最貧困女子』の姉妹版です。題名がショッキングであり、母子世帯の貧困率が56.4%、単身女性の3分の1の年収が114万円未満とかいうデータを聞くと「可哀想」と思う反面、パイの縮小から個人の問題に矮小化され、激しい攻撃感情が起こるのがこの問題です。
室井佑月さんの解説が光っているのでそれを読んでみるのもいいと思います。何といっても単に相手をフォーカスしたルポではなく、鈴木さんご自身が、話を聞いて自棄の感情が出たり、デキ婚なんて軽々しく言うな、とか素直な感情も含まれ、記述にとどまらない臨場感が迫ってきます。
時間の都合がつき、手っ取り早く稼げるのが売春です。しかし、デブ専でもトークがいいとか、可愛いが求められている時代ですし、景気が悪いから風俗の需要も落ちてきています。だから風俗をスルーして出会い系で個人的に援交し、自分で自らを売り込む営業する女性が描かれている部分があります。
そうすると、所得のほとんどが不定期ですし、どのくらいの稼ぎかの把握もできません。危険な目にあっても「ケツモチ」もいません。
養育費を支払う男性も少なく、鈴木さんはいろんな女性の話を聞いて、類型化を行います。精神科通院歴がある、極度の寂しがり屋、自己肯定感を完全に失っている。「女の集団になじめない」という独特のメンタリティ。そして出会い系という男による救済を求めるけど、簡便に寂しさを紛らわせるが、根本的解決にならない。
そんな母子家庭以前に何らかのスティグマを背負っている可能性がある、という残酷な現実を見せます。そして母子家庭に対する福祉を抑制することで政府は生保のスティグマ意識を本気で払拭したがりません。
しかし、生保で子どもがいじめられるからという理由で、福祉に甘えないシングルマザーは肯定しなければならない部分もあります。独立独歩で、子どもがいれば所得が低くても高いQOLを得ている場合があります。だから、たとえ「彼女たちに必要なのは売春をやっても、子どもを殺さず生き延びていることを褒める事。」というのはなるほどな、と思えました。子どもが自分の数少ない成功体験であり、それを手放したくないわけです。
私のような男性はピンとこないのですが、男で例えるなら無職であることが金銭よりも、どれだけ自尊心を傷つけるか?ってことに置き換えて考えると自助努力による精神論で片づけるのが短見であることがわかります。
しかし改めて思うのは保育所問題とかそうですが、点としての福祉問題は焦点になってもそれが線にならずに漏れる人がいて、貧困リスクも特定の属性を持つ人に集中的に発生しますし、データにすら「載らない」女性もいる、そういう人がいるんだよ、っていう可視化がようやく行われている「まだまだ」そんな段階なんだ、と改めて気づくわけです。
電子書籍
これが、現実なのか
2015/11/01 23:01
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投稿者:GAKI - この投稿者のレビュー一覧を見る
信じられない。
というか、信じたくないのかもしれない。
同じシングルの身としては、わかる気持ちの部分もあるし、なんで!と思ってしまうこともあった。
動揺してしまったよ、というのが本音。
でも、子どもが大切、というのが安心する。
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女性が弱者に追いやられてしまう現状は,日常事あるごとに垣間見えてしまう.知人にもいるが「養育費止めようかな」「養育費高いから再出発出来ない」などバカ男の身勝手な発言を目の当たりにするとムカついてしまう.職も生活も変わらず再出発できる男に比べ,女性は生活と子育ての環境をゼロから構築しなければならないというのに.シングルマザーへの偏見・差別,それに対する彼女たちの恐怖感.心を病んでしまうシングルマザーの多さにも納得せざるを得ない.それだけ闇が深いということなんだろう.
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かなり正直ベースで書かれているという印象。
ただ、逆にそれだからか、単に私の性格なのか、共感はあまり出来なかった。
日本の中にある難しい問題の中のひとつだと思います。
2018.7.7
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他の人にぜひ読んでほしいと強く思った。読書感想文の課題にしてほしいくらい。中学だと厳しいかもしれないので高校くらいで。
どんな人でも同じ境遇になり得ること、うまくいっていても板一枚下にはつらい境遇が待っていること、それらを知る心の準備をするため。それから、もしその境遇になったときにどんな方法があるのかをあらかじめ知っておくため。
その境遇になってからでは調べる気力もなくなり、抜け出せなくなる。
最貧困シングルマザーと聞いて「自己責任」とか「甘え」とか思い浮かんだ人は、本書を読んでみると考えが変わるかもしれない。いや、そもそも想像力が欠けているから批判しているのだろうから、批判は変わらないか。
それよりも「なぜ抜け出せないのか」「あれは使えないのか、これはどうだろう」と考えられる人にこそ読んでほしい。筆者がその考えを代弁し、一つ一つ否定されていく。
自分が、圧倒的に持たざる者で、子供がいて病に倒れたら、いったいどう抗えるのか。
救いの手を握れない理由は、とてもとても根が深い。地道に改善しようにも、頭・お金・容姿のなにかしらを持つ側の多くに想像力が欠けているのでは、訴えても効力がない。
現実が見えて、かつ力のあるものが制度設計をしないと、変わらないのではないかと思う。本書には、その視点の提案がある。
政治家にも読んでほしい。
福祉に関心のある議員に働きかけよう。
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出会い系サイトを利用して売春するシングルマザーを丁寧に取材したルポルタージュ。
2010年刊行、『出会い系のシングルマザーたち』の改題。
文庫化までのたった5年でも、ツールとか細かいところは変わってんだろうな。
だけど、困っている人ほど助けがえられない状況は変わらない。むしろ悪化しつづけている。
生まれたときに与えられた資源が少なくて、そこから能力を育てる余裕もなく、頼れる人もない。
生活も経済も精神もどうしようもなくて、母親たちは出会い系という「闇のセーフティネット」にすがる。
著者は「第三者的なルポ」にせず感情をもって、そういう人たちに相対してる。
その姿勢にとても安心できる。
でもまあ、「棄てるな」ってあんまり言わないでほしいかな。
私は心中するくらいなら捨てたほうがいいと思ってる。
これと同じ日に『原発ホワイトアウト』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062186179を読んだ。
てっぺんとド底辺。あまりにも違うのに、確かに同じ場所で起こっている。
どこか通じる問題は、人を大事にしない社会のあり方を根っこにしてつながっている。
読んでるだけで息がつまるような、でも知っておかなければいけないと焦燥にかられるような本を一気に読んだあと、室井佑月の解説がほっと息をつかせてくれた。
ぎりぎりでもこっち側にとどまっていられる限りは、へなちょこながらも何かはせねば。
絶対に生活保護は受けないという母親が、その理由を「子どもがスポーツを続けられなくなるから」と説明していた。生活保護世帯のくせにスポーツなんて贅沢だと言われるからと。
社会的援助は子供をきちんと育てるためでもあるはずなのに、こう言わせてしまう。
きちんと子供を育てたければ公的扶助より売春のほうがマシだなんてどんな国だ。
『ひとり親家庭』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/400431481Xに、日本では子供の誕生日プレゼントや趣味のための出費を「贅沢」とみなす人が多いというデータがあったのを思い出す。
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同じく鈴木大介氏が著者で、幻冬舎新書から出版された「最貧困女子」の姉妹版ともいえるのが本書。
本書の方がよりきめ細かく、様々な立場の人を取材対象としており、読み応えがある。
タイトル通り、売春を続けるシングルマザーだけでなく、風俗業者のスカウトマン、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」代表の明石千衣子氏に取材をしており、生を声を聞くことができる。
女で一つで子供を育てることが尊ばれるこの国において、彼女らのように、福祉を拒絶し、自らの精神を病み、売春を続けてまで子育てを行う姿はどう考えても健全ではない。
しかし、子供への差別を極度に恐れるがあまり、彼女らは出口の見えない生活を延々と続けるのだ。
貧困問題を語る上で必ず出てくる自己責任論。これは本書を読めば、本当に有害無意味であることが分かる。彼女らは、もう十分に頑張り過ぎているのだから。しかも、頑張り方が間違っている。いや、間違っているというより、他に選択肢がなかったのだ。
この救いようのない現実を目の当たりにしても、やはり著者の言う通り、本当に貧困に苦しんでいるのなら、躊躇なく福祉が手を差し伸べるべきであるし、福祉の世話になったとしても、それによって差別や不利益を被ることがあってはならないと強く願う。
余談だが、出会い系にアクセスしてくる男性のクズぶりも印象に残った。
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数多くのインタビューをして、いろいろな事例を見せてくれてはいるが、突っ込み不足。最貧困シングルマザー問題をどのように解決していくべきかについての視点もない。今の政治が悪いのだ、的なところから抜け出していない。大学院生のレポートレベル。
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2016.01.27
ずっと読みたかった鈴木大介さんの本。
どうして今女性と子どもの貧困が社会問題になっているのか、どうして貧困になってしまうのか、それを少しでも知りたくて読みました。
子どももおらず、今は安定した職業に就いていますが、2年半前の私は無職。そしてその前は年収250万円ほどのいわゆるワーキングプア。実家がなければ、私もとっくに貧困に陥ってたはず。そうした漠然とした恐怖から女性の貧困問題に興味を持ちました。
『圧倒的に持たざる者』
このワードが心に刺さりました。
頼れる実家もおらず、幼児を抱え、精神を患っているため職に就けず、売春をして、なけなしのお金をもらってやっと食いつないでいる綱渡りの生活。
その孤独と不安は私には想像がつかないほど壮絶なものだと思います。
シングルマザーで生活保護を受けている友人がいます。未婚で子どもを産み、1人で子育てをしている彼女が生活保護を受けていると知った時、複雑な気持ちになりました。
『働いているのにどうして生活保護?』『親の援助は?』『どうして未婚なのに子どもを産んだのか』…
鈴木さんが冒頭で語っていた「自己責任論」を語りそうな自分がいました。
しかし、地方には本当にシングルの女性が子育てしながら十分な生活費を稼げる職業なんて皆無なんです!本当に!
もっともっと女性・子どもの貧困問題は多くの人(特に、男性)に関心を持ってもらい、老人だけでなく若年層の女性に手厚い福祉の充実を望みます。
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なかなか身につまされるアレでしたよ!! まあ、興味深かったんで良いんですが…やはり内容が内容だけに読み終わった後、ずーんと…胸にしこりのやうなものが残ります。
ヽ(・ω・)/ズコー
取材されているママさんの大半がなんというか、他人への依存度が高いと申しますか…ともかく誰か居ないとダメなんだな、と思わせるような人たちでしたねぇ…。
まあ、人間、一人では決して生きられないものだとは思いますけれども…誰もが自分のことを救ってくれるわけではないんだゾ! ということを彼女たちには申し伝えたいと言いますか…
けれどもまあ、こういう人たちってこのようにしか生きられないんでしょう、きっと…それにしても!
彼女らの子供たちが気がかりですねぇ…まあ、殺されないとは思いますけれども…劣悪な環境の中で大人になるしかないのですね! 彼らには強く生きてってもらいたいと…遠くから祈る僕でした。さようなら…。
ヽ(・ω・)/ズコー
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悲惨だとは思うけど、あまり共感も同情も持てなかった。
セーフティネットが機能しないのは、確かに制度の問題ではあるけれど、結局は無知なことが悪いんじゃないか、と思ってしまう。
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シングルマザーの売春の垣根が思いのほか低くなっている。自分の年齢や容姿など、簡単なプロフィールを登録した上で、異性に向けメッセージを書き込む。これに対して男性は返信することもできれば募集の書き込みもできる。出会い系サイトにおける売春交渉は、実質上いまだ野放し状態。風俗業界の経験もほとんどないシングルマザーが、どうしようもない事情の中で足を踏み入れていく。貧困に喘ぐ女性たちの実態、衝撃的な現実。身の毛もよだつ最底辺の世界が驚くほど身近にある。
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すごい個人的な好みだけど、ルポってこういうものなのかもしれないのだけど、語り口調が感情的でなんか嫌だった。解説の室井さんのところまでも。あぁ!!無情な!!!みたいな。
でも子どもに対する価値観は同じだったし、最悪な状態にあるシングル家庭がいることも痛切にわかった。
弱者に冷たい人が多い国だと思う。野次馬的というか、震災のボランティアとかは勿論大切なんだけど、深くは考えられない人が多い国なんじゃないかと思っちゃう。でももしかしたら、みんな自分のことで必死なだけかもしれないし。どうしたらいいんだろうなぁ。