北森さんにしては意外?!な作風。好きです。
2011/08/24 14:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白かったーーーーっ!!!!!
物語は空木精作という男の死の場面から始まる。
しかしこの空木という男は、「顔のない男」だった。
捜査本部からはじき出された原口と又吉は独自の捜査を実施し、
空木の家から一冊のノートを発見する。
しかしそのノートに沿って捜査を進めるうちに、
関係者の間で次々と新たな事件が起こる…。
「顔のない男」といっても、頭部がない死体ではない。
また、顔を潰されて身元不明の遺体でもない。
ひとは誰でもいくつかの「顔」を持っている。
心理学用語では「ペルソナ」と呼ぶのだったか。
「妻」の顔、「母」の顔、「娘」の顔、
「夫」の顔、「父」の顔、「息子」の顔、
他にもいろんな顔を、ひとは状況に応じて使い分けている。
しかし物語の冒頭で殺された空木には、
そういった顔がない。
外部との接触が全くなかったのだ。
故に、捜査は難航する。
聞き込みを行うにも友知人がいないのだ。
しかし刑事でありながら捜査本部とは別に
事件を(勝手に)調べる原口と又吉には、
空木が残した一冊のノートがある。
読者は原口らと共に、
そのノートに沿って事件にあたることになる。
うーん。
構成が好きだな。
原口たちの独自捜査部分と、
空木がノートに書いた記述とが
うまい具合に合わさって、
わたしたちは事件の真相に近づいていく。
が!
実はこれ、著者の意図するところだったりするのだ。
あぁ、まんまとやられた。
火サス的推理で真犯人はわかっていた。
あの人しかない!とまで思った。
だから、真犯人を指摘するところはちょっと興醒めだ。
でも、そこまでの過程が面白い。
また、ラストに仕掛けられた又吉へのどっきりも楽しかった。
北森作品の中でも一二を争うくらい好きな作品だ。
ただ、ぼーっと読むと混乱するので
集中力がいる作品でもあるのだけれど。
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昔読んだ『狐罠』が面白かったし、この本がわりとネットで評判いいようなので読んでみたんですが、ちとややこしすぎてイマイチ。
『顔のない男』そのものにあまり肉薄できなかったせいかなあ。
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長編かと思いきや短編形式をとった連作。
冒頭油断してさらっと読んでたらさっぱりわからなくなってしまった ^^;
よく読まないと置いてきぼりになるけれど、じっくり読めば味がでてくる作品。
ラスト、絡まった糸は解けるのだけど、少しもやもや感が残るね。
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殺人事件の被害者が社会とあまりかかわらず、悠々自適の生活をしている人間だった。
が、実際は探偵のようなことをしていた・・・。
その調査ファイルに基づいて、二人の刑事が捜査をしていく。
捜査は山あり谷あり。
二人のコンビも危うくなったり・・・。
結局表題の顔のない男とはそういうことなんだ。
面白い。
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多摩川沿いの公園で、後頭部から打撃を加えられた後から、さらに攻撃を加えられ全身を骨折した死体が発見された。空木精作は、周辺住民・友好関係が無い男だった。どういう人間だか解らないまま捜査は続けられる。空木の自宅で後追い捜査をしてた、原口(ベテラン刑事)と又吉(新米刑事)の二人の刑事は、一冊の大学ノートを発見する。捜査本部にその発見を報告しないで、二人はそのノートをヒントに捜査を開始する。空木を追ってるはずだったが、次々と新しい事件に遭遇する。ノートによって出てきた事件は、別々の事件のように思えたのだが・・・。空木とは、どんな人物なのか?ノートは、どんな目的で書かれたのか?そして、原口と又吉のたどり着いた真相とは・・?
これは、なかなか面白かったです。各章事に事件が解決されてるのですが、そちらもしっかりしていてその影にある空木の事件。面白いミステリーの見本ですかね?
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一人の男が殺され、それから派生していく事件の数々。
北森鴻、お得意の連作ミステリーというべきか。
はっきりしない被害者を探っていくにつれ、新しい事件が起こり、古い事件が呼び起こされる。人間は一人で生きてるのではないし、一人でないから、ビリヤードの玉のようにあっちにぶつかりこっちにぶつかりしていく。と、あたりまえのことだが、そんなことをしみじみ感じ入ったのであった。
やっぱ、北森鴻は面白い。
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他人とすり替わっていることは理解できたが、最後に出てくる結論と様々なエピソードが必ずしも強く結び付き、しかもその結果の説明がやや甘い。特に老女の自殺の件がどうもすっきりしない。不要な話ではないか。ちょっと凝り過ぎ。
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オール読物にて1998年7月~2000年7月までの7作の短編に、プロローグとエピローグ、そして間に6つの「風景」を盛り込んだ連作短編です。シリーズものではありませんが、やっぱりこの作品にも「三軒茶屋のビアバー」が出てました(笑) お約束なの?
全身殴打による骨折、脳挫傷で死亡した男・空木精作。しかし彼は親の遺産のみで暮らしており、仕事も交友もない隠者生活を送っていたらしく捜査が行き詰まる中、捜査一課のベテラン刑事・原口と若手刑事・又吉は、空木が隠していたノートを見つける。このノートの中身こそが隠者・空木の外との接点であり事件の鍵となる。確信した2人はノートを他の捜査員にも原口を目の敵にしている師岡課長にも見せず、捜査を始めた。
「真実情報!」と題された、ねずみ講まがいのアルバイトのチラシ。その下に空木が書いた人物・梅沢を訪ねると、金を騙し取られ振込先の栄光商事の行方を探す依頼を探偵の空木に依頼したと言う。――『真実情報』
「隠語研究」と書かれたページを調べているところに新たに殺人事件が入った。被害者はストーカーに狙われていると警察に話していた女性だったが、「ネコ」という隠語からレズと勘違いされた可能性があったらしい。――『隠語研究』
ノートに名前のあった如月恵梨香。薬物依存症だった彼女はある日、道路に描かれたラッパを吹く天使を見つける。探しているうちに空木と出あった彼女は、天使と頻発している火事との関連性を教えられたという。――『堕天使考』
自殺にしか見えない老女・柳田クメの死。だが部屋に鍵が残っていないことから未解決な事件。ノートから捜査し始める一方で、クメの息子・壱輔は会社経営の当てにしていた保険金が払われず、焦りはじめていた。――『変貌要因』
外国製の目立つバイクの持ち主と盗もうとした男たちの間で乱闘が起き、結果ひとりが死亡した事件。証言の食い違いがあるものの不問にされていたのだが、当事者に話を聞くうち原口らは引っかかりを感じる。――『赤色凶器』
これまでの捜査で空木が栄光商事、強いてはオーナー・持田荘一を追っていたことが分かった。持田とはどんな人物なのか…元・薬売りの老人が昔の持田家について語りだした。――『遠景接写』
栄光商事の営業譲渡に関わった行政書士・雪山に辿り着いた2人。だが、段々と露悪的な表情を見せ始める原口に対して又吉は不信感を募らせていた。そうして…事件は思わぬ展開を迎える。――『仮面遊戯』
死者の残したノートから、追っていた何か(誰か)を辿っていく…という展開はありきたりなハズなんですが、そこで思わぬどんでん返しでひっくり返してくれるのが、さすがの北森作品。気を抜いて読んでいたせいで思いっきり混乱しました私。論理の崩れが起きないところは本当にすごい。
そしてこの話を長篇としてでなく、連作として構成してあることで、話が進むに連れて増していく不安感がさらに心にじわじわとくる気がします。真っ白い紙が墨で少しずつ侵食されていくような…もやもやとしたものに包囲されていくような…。
正直いって落ち込み気味の時にはきっついかも。でも一気に読ませる力を持った作品でした。
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公園で発見された暴行死体。被害者の空木はなぜ、どうやって殺されたのか。いくら調べても生活の痕跡が出てこない被害者。顔のない男。原田と又吉は、彼が残したノートを手がかりに捜査を進めていく。
話の展開に波があり、長編としての一体感には欠けるなあと思いながら読んでいたのですが、連載中は短編での連作だったようで合点しました。
もう少しそれぞれの短編の整合性を高めてほしかったと思います。
真犯人は中盤くらいでわかっちゃいました。
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北森さんの本はどれもテイストが違ってて、どれも面白い。
多摩川沿いの公園で発見された、空木精作の遺体。。
彼は親の遺産でひっそりと暮らす、近所に知り合いもいない、誰の印象にも残らない顔の無い男だった。。
しかし、空木には隠された顔があったのだった。。。
空木の過去を探っていく刑事と、その部下とのだましあいや、上司との確執。 そして最後に現れる黒幕。どれを取っても次はどうなるんだろうと読ませます。 実はこの本、短編だそうだ。それを長編に上手くつなげて書かれてる。 次々起こる事件が上手くつながって、最後にはひとつの結末へと導いてます。
本当北森さんって文を書くのが上手い。作家さんに対して失礼だが。
こういう作品がもう読めなくなってしまったことをまた嘆いた読後。
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お話は、殺された空木の目線、ベテラン刑事原口の目線、若手刑事又吉の目線など様々な人物の目線で進んでいきます。
あの事件はこの事件と関係があり、またある事件はこう繋がり…。結末もさることながら、様々に張り巡らされた伏線の数々にただただ驚くばかりでした。
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「空木精作」という男が殺害される。「空木」は,親の遺産で生活をしている生活感のない男。動機も,凶器も見つからない。原田と又吉という刑事は,ひょんなことから空木が残したノートを見つける。ノートは,空木が調査していた事件について書いているように思われた。それぞれの短篇の中で少しずつ「空木精作」の正体が描かれる。島海恭司は,「空木」を訪ね,栄光商事が輸入した違法オイルで妹が死亡したとして,「空木」に,「持田」がどこいるか,突き止めるのを手伝ってほしいという。「空木」は,自分こそが持田であり,自分の生活を確保するために,「持田」を名乗っている者を殺害する必要があると考え,殺害の計画を立て,進めていく。「持田」を名乗っていた者の正体は,諸岡課長だった。諸岡課長と通じていた高橋は,「空木」を殺害する。なかなか意外性のある真相であり,個々の短篇のデキ,全体の構成も秀逸。なかなかの作品。★4で。
○ 真実情報
付き合っていた女を殺害した男が,嫌疑を免れるために,自分がその女から詐欺に遭い,その女性の身元を探そうとしていると見せかけるという話。この話では,「栄光商事」という休眠会社が出てくる。
○ 隠語研究
関口美佐枝というコンピュータ会社に勤めるOLが殺害された事件。犯人は妹で,フリーターの妹が姉の保険証でクレジットカードを作り,借金を重ねたため,秘密を守るために姉を殺害したというもの。関口美佐枝は,昔,栄光商事で働いていたことがあったという。
○ 堕天使考
薬物中毒の症状がある如月恵梨香が,「空木」の死体の第一発見者である高橋千太郎を殺害してしまう。天使の絵をめぐる話。如月恵梨香は,栄光商事の持田社長の愛人だったという。
○ 変貌要因
栄光商事の事務所に出入りしていた柳田壱輔の母親が,自殺に見える形で死んでいたが,鍵が存在しない。自殺か,他殺か,死因が特定されていないので,保険金が支払われない。柳田が,妻を殺して保険金を得ようとしたという話。
○ 赤色凶器
島海恭司が,バイクを盗もうとした岡本晋を殺害してしまう。岡本晋は,栄光商事の従業員だった。ここで,空木が書いたノートは調査ではなく,殺人の計画なのでは…という疑いが生じる。
○ 遠景接写
恒松という配置薬の営業マンから,持田一家の過去を聞く。持田は,一家心中から逃げ出していたという。又吉は,「空木」が本当に追っていたのは栄光商事ではなく「持田」ではないのかという疑問を抱く。
○ 仮面幻戯
栄光商事の譲渡手続きを行った雪山という行政書士がメインとなる話。原田は,雪山が「持田」とつながりがあると考えており,雪山を泳がせるが,雪山が殺害される。又吉は,原田の捜査状況を諸岡課長に告げる。又吉は拉致をされるが,拉致をしたのは原田ではなく諸岡。諸岡こそが,「持田」として栄光商事で違法オイルを輸入していた。原田は,諸岡と又吉以外の捜査一課全員に,推理を語っており,捜査一課の協力を得て,諸岡を逮捕する。
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刑事が主役の短編連作? というか長編だよね?
人がバタバタ殺されていく話で、途中から誰が死んでて誰が生きているのかわからなくなる(笑)
とある男が公園で殺された。その事件を捜査していくうちに、その男と関係のある人間も殺されたり、犯罪を犯していたり、次から次へと事件が絡まり、最後は……
面白かった
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先の読めない展開!スピード感はないものの、続きが気になるぅ~~!!!そして、まさか、まさかのっっ!!!
また、それぞれの題がいい。
「真実情報」「隠語研究」「堕天使考」「変貌要因」「赤色凶器」「遠景接写」「仮面幻戯」なんて、北森さんらしくてついつい読みたくなっちゃいませんか?w
北森作品はシリーズが有名すぎて、こちらは地味な存在かもしれませんが侮るなかれ!北森ワールドに迷い込むこと請け合いです♪
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連作短編集の形をとったような長編小説というのかなぁ~
それぞれの章で、空木と関係のあった人物が描かれ
空木の人物像を読み解こうとするんだけど
これがなかなか見えてこない。
何かがわかると、謎が増えるって感じで全体像すら
ぼやけてしまって、やたらと転がされました(^◇^;)
設定が複雑なので、頭がこんがらがります。
それでも最後の方では、ヒヤヒヤのドッキドキで
予想外の結末が待ってました。
シリーズ物とは違うお話は新鮮で面白かったです。
本作に出てくる原口&又吉の警察コンビ。
陶子堂シリーズに出てくる警官コンビですよねぇ~
そして、三軒茶屋のビアバーも出てきます。
原口が通っていたのですねぇ~
マスターはいたけど、会話はしてないっぽいです。
陶子と鉢合わせになることはなかったのかなぁ~
こういう楽しさもあったので、得した気分です。