スリリングなストーリー!さすが藤原伊織氏の作品です!
2016/02/19 09:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、藤原伊織氏の代表作「テロリストのパラソル」や「ひまわりの祝祭」のような長編ではなく、中編小説ですが、中身はとても深い内容が詰まっています。読者は読み始めるとすぐにストーリーに引き込まれ、藤原伊織ワールドに浸っていることでしょう。ある有名が画家の個展で、一枚の絵画が一人の女子高生に破壊されます。この事件は、レンブラントの代表作「ダナエ」が破壊されるという伝説の事件も伏線として描かれ、その背後にあるギリシャ神話などが見事に描かれ、単なるミステリーにとどまらず、知的に楽しめる作品になっています。
本当に惜しい人を亡くしたと思う。
2009/11/20 10:42
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤原伊織さんが急逝されて二年。残された作品をじっくり読ませて頂こうと、いくつか読まずに取ってあったうちの一つがこのダナエでした。読み始めて、やはり惜しい人を亡くしたなと痛感。比類なきこの読み応えと作品の渋さ深さ。といって読み辛い事は全く無い軽快な文章、本当に素晴らしい。
まずダナエ、というタイトルに興味を魅かれる。よほど芸術関係に詳しい人でなければ思い当たることは無いだろう、巨匠レンブラントの作品の名前であるというこのダナエというキーワード。これがもちろん物語に深く関わってくるのだが。
若くして世界的な評価を得て画壇を登り詰めた宇佐美。物語はその宇佐美が開いた個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が何者かに切り裂かれて硫酸をかけられるという、ショッキングなシーンから始まる。短編であるだけに、間延びさせず冒頭から疾走する感じに好印象。犯人はどうやら、受付の女性たちが目撃した少女らしい。その少女から、次の犯行を予告するような電話も入ってくる。少女は一体誰なのか。そして目的は一体何なのか。物語が進むにつれ、驚くべき人間関係と真犯人が明らかになっていく。ラストはもう見事というしかない場面設定と展開。ミステリー的な要素で物語が描かれる中、人間関係を重視した叙情的な読み応えが非常に胸に来る。
ダナエというキーワードの扱い方、そして人間関係、人間その物の描き方か絶妙。宇佐美と言う画家のキャラクタも非常に良く立っていて、物語に入り込める。終り方もベタではなく、未来に向けて展望を残すような気持ち良い感触。この読み心地というのは藤原氏独特の物だと思う。返す返すも、惜しい事だと思われた。
他に「まぼろしの虹」「水母」の2編を収めた短編集になっている。まさに氏の魂の作品、手にとってみられてはいかがだろうか。
4.5点。やはり良い作家だった・・・
2015/10/19 12:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初に読んだ『テロリストのパラソル』に感銘を受けて、何作か読んだものの『向日葵の祝祭』で満腹感を覚え、しばらく遠ざかっていました。
作者が亡くなったことは耳にしていたが、ふと手にする機会があって本作を読みました・・・
短編集ですが、どれも藤原調ともいうべきハードボイルドでありながら、情を捨てられない主人公の悲哀が描かれています。
久しぶりに読んでよかったと思える作品でした。
あと一作しか未読の作品がないのが残念なところ。
ただ、ほとんどの作品が政財界(ヤクザも)の大物をバックにおいて、話をまとめたり、主人公の背景に深みをもたせようとする点は鼻につきます・・・
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか探偵ものと勘違いして購入。短編集でした。藤原氏の「ダックスフントの・・・」と比べたら、表題の「ダナエ」、三作目の「水母」ともに楽しめました。
でも、やはり短編集は私には合わないみたい。心に残るものが薄いねえ。
投稿元:
レビューを見る
2009/5/8 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2021/10/6〜10/8
5年半ぶりの藤原作品は、最後の短編集。「ダナエ」、「まぼろしの虹」、「水母」の3遍。独特の文体は相変わらず。表題作「ダナエ」が一番良かった。直木賞を同時受賞した小池真理子さんの解説も素晴らしかった。
投稿元:
レビューを見る
「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母」の3編を収録。
有名画家が描いた経済界の重鎮の肖像画が傷をつけられる。犯人は、画家の別れた女との娘だった。父と娘の裏側にあるものが描かれている。
女子サッカーのシュートを見る男二人。一人は両親の離婚に悩む普通の男もう一人は自首直前のやくざ者。これが複雑に絡まって、面白い。
映像作家であう元妻の作品を見て、懐古と疑問を感じた主人公。そこには彼女にまつわる過去があった。これもよくできている。
藤原伊織はやっぱりすごい。
投稿元:
レビューを見る
藤原さんが書く男性は魅力的だなぁ。愛するろくでなしというか、モテるオトコ。
ルーズなんだけど、どっかクレバーでタイト。
石田さんもそうですが、藤原さん、車谷さん、乃南アサさん、内田さんとか、制作会社とか代理店勤務経験者の作家さんの文体って共通点があるように思えます。
ここが! という風には即答できないのですが……。
私的にはすとんとハマることが多いな。
投稿元:
レビューを見る
大好きな作家の一冊、遺作が未完の為、事実上の最終作品かな?
単なるミステリではない、少し感動的ですらある。
お勧め
投稿元:
レビューを見る
「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母」の短編集。
どれも、未完で終わっている感じがする。
作者が、食道癌を患った時と重なっているのか?少し残念
ミステリー一歩手前で終わっているようだ。
投稿元:
レビューを見る
テロリストのパラソルは読んだことがあります。面白かったなあ、と言う印象とこれから色々作品を出されるんだろうなと思っていたので数年前に訃報を聞いたときにはびっくりしました。
この前古本屋で見かけたので購入しました。
ダナエってギリシャ神話のペルセウスのお母さんだったのか。どこかで聞いた名前だったのですが。
なんて潔い、簡潔な人生だろう、と読んで思いました。周囲に居る人は大変かも知れませんが。どれも大変面白く読みました。
投稿元:
レビューを見る
中編集。
*ダナエ
*まぼろしの虹
*水母(くらげ)
藤原伊織らしいハードボイルドな雰囲気の作品だった。
「ダナエ」は画廊で絵に硫酸をかけられるという事件がおこるが、絵の作者は激昂することもなく…。
画家と、その義父の造形がいい。
話の展開は、甘い部分もあると思うけど、2時間ドラマなんぞにしたてるととってもいんだろうなぁ。
「まぼろしの虹」
ちょっと欲張りすぎたかなww
親同士が再婚して姉弟になった二人がいて、その親の関係に亀裂がはいって…。ひょんなことから、弟は義母の不倫相手の恋人の家族と出会う。
弟の人間関係への執着心のなさは、彼のバックボーンを描くことで必要だったんだと思うけど、恋人の家族、その母息子の造形に意味をなくしている感じだった。
「水母」
元の恋人が困った立場になっていると聞かされて…。
だめ男がこっそりがんばるっていうのが基本好きなんでねぇww
でもこの3篇の中で一番印象に残っていてよかったなと思うのが「まぼろしの虹」なんだから、よくわからんよね。
投稿元:
レビューを見る
テロパラで大好きだった藤原先生久々に読了。そこはかとない上品なハードボイルドの香りが素敵です。3作とも素晴らしかったです!!
投稿元:
レビューを見る
収められているのは「ダナエ」「まぼろしの虹」「水母(くらげ)」の中篇3篇。
タイトルとなった「ダナエ」の主人公・宇佐見は萩原朔太郎の詩の一節に象徴される「何物をも喪失せず、同時に一切を失ってしまった男」として描かれている。人もうらやむ成功を収めた今も、過去を引きずりどこか世捨て人のような生き方しかできない男。伊織さんは溢れんばかりのロマンティシズムとリリシズムをもって描ききっています。主人公の想いに思わず涙してしまったほどです。
こうした男のリリシズムは、この本に収められている「水母(くらげ)」の主人公にも共通しています。昼日中から酒場の椅子に腰掛け酒を飲んでいる男、酒を愛し、博打を愛し、考え方は堅苦しく礼儀正しいくせに放蕩を愛する男、仕事にはけっして妥協しないくせに私生活には逸脱を愛する男。自堕落に見えても矜持だけは持ち続けている男。直木賞を受賞した伊織さんの名作『テロリストのパラソル』の主人公であったアル中のバーテンダー・島村もそうでしたが、とにかく切ないほどにカッコイイのです。
投稿元:
レビューを見る
大好きな作家です。
本当に惜しいことに、2007年に既にお亡くなりになられております。
この作品は、亡くなられる直前に出版された短編(中編)集です。
解説を、これも好きな小池真理子氏が書かれております。
この解説もまた良い。
これだけで一編の小説というか、弔辞というか、そんなかんじになっております。
なにかと縁のあるお二方で、伊織氏が亡くなる前に、『デート』と称して二人で飲みに行っていたということです。
なんだかあまりにも美しすぎて泣けてきてしまいました。
で、肝心の作品。
なんとなく静かな語り口のなかで、大人のオトコの激情が、かなり抑えた文体で描かれております。
どうしようもない状況を、それでもグッと我慢して、だけどそれぞれの行動で自分の哲学を語る。
う~~~ん、渋い!
ハードボイルドの原点ですね。
成功した画家が個展に展示した絵を目茶目茶にされ、さらにまた脅迫が…。
それを何故か画家は軽く受け止め、更に何か考えがあるようだが、画家には何があったのか…?
『ダナエ』という聞きなれない言葉は一体何なのか?
複雑な関係の姉と弟と、彼らに付きまとう影。
『まぼろしの虹』とは、何なのか?
母親の不倫相手のオトコの別のオンナの背景とは…??
『水母』。昔のオンナの展示会に立ち寄った元敏腕CDの選択とは何か?
それぞれ、渾身の作品群です。
この短編集と同じ系統では稲見一良っていう、やはりお亡くなりになられた方の作品があります。
この人たちみたいな足跡を遺したいものです。
合掌。
投稿元:
レビューを見る
世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。