0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中で亡くなったそうです……さぞ、心残りだったと思われます。「てのひらの闇」のあとのエピソードか、位に……軽く、しか考えず、読み始めたのですが、どんどん引き込まれていってー。最後の長編、とのご本人の覚悟のある筆さばき。
藤原氏、最後の長編小説
2010/11/10 08:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤原作品に名作は多いが、その作品数は決して多くは無い。ほんの10作程度だ。類稀なる筆致を持ちながら、残念ながら3年ほど前に若くして亡くなってしまった。だから本作品が、氏の最後の長編小説となってしまった。この作品の著者校正中に力尽きたとの事。最後まで作家だったのだなと、心から頭が下がる。あまりに惜しい才能、合掌。
江戸川乱歩賞と直木賞をW受賞した、あまりに有名な氏の作品「テロリストのパラソル」を初読した時には、面白いをはるか通り越して衝撃を覚えたもの。しかしストーリーの面白さもさることながら、東大文学部卒と言う経歴を持つだけに、藤原作品ではその文章のウマさ、語彙の多さ、会話文の軽妙さ、そして正しく美しい日本語に魅せられる。本作品でも、その点においては藤原作品の集大成とも言える完成度だったと思う。
何せガッチガチのハードボイルドである。人が殺され、暴力もある。しかし艶やかで美しい。藤原作品を読んでいると、作品そのものにガンメタルの色さえ感じる。暗く艶やかに輝く、そんな作品だ。本作品でもコンビニを取り巻く流通業界の影、そして人間の業をテーマに見事に織り上げてある。
それこそ藤原氏の「残り火」ともいえる、最後の長編。じっくりと隅ずみまで楽しんで欲しいと思う。
投稿元:
レビューを見る
先ずは、本作でとうとう藤原伊織作品を完全制覇してしまった。それもあってか感慨深い作品だったけど、やはり単純に面白かった。
「てのひらの闇」が好きだっただけに続編で「コケたら?」といった一抹の不安があったものの、たんなる杞憂であり、前作の設定を活かしつつ十分に単体でも楽しめる作品だったと言える。
相変わらずハードボイルドでありながらも知性を感じさせる丁寧な言葉遣いで、大人な会話が繰り広げられていくのだが、会話のやりとり自体が魅力な上に、その会話から事件の確信を突いてく様にはつくづく文章のうまい作家だったと感心させられてしまう。。
ミステリとしては特別なギミックがある訳でもないのだが、このキャラクター達が織り成すストーリーだけで十分に愉しめる。それは上述のように会話のやりとりであったり、そこから垣間見る人間性であったりといったスパイスが巧みに利いてるからではないだろうか。
ストーリー上では主犯の異常性に関しての背景が曖昧というか、、、なんか釈然としない気がしないでもないが、藤原伊織の遺作ともあって若干のひいき目もあり、このままでも十分だったんだと納得してしまう部分もある。。。。
いずれにせよ、藤原伊織作品の新作にはもう二度と出会うことのない寂しさは読了後の後味として残った。
改めて藤原伊織さんのご冥福をお祈りします。
投稿元:
レビューを見る
帯に「藤原伊織、最後の長編小説」とあって、ああ本当に亡くなってしまったのだなと改めて思いました。もっとたくさん書いてほしかった。「人は二度死ぬ、二度目の死は人に忘れられたとき」といいますが、作家は作品が読まれ続ける限り二度目の死を迎えることはないのですね。
投稿元:
レビューを見る
藤原伊織氏の作品は主人公が本当にかっこいい。この作品の校正の途中で亡くなったらしく、途中から文章が藤原氏にしては粗い印象を実際に受けた。でも、キャラもストーリーも魅力的で読み始めたら続きが気になって止まらん。大きなトリックがある訳でもないけど、サスペンスとしてオススメです。
投稿元:
レビューを見る
親友の柿島が死んだ――。とおりすがりの若者たちと思わしき連中からの暴行が行き過ぎた結果、意識不明となって入院していた柿島は、一度は助かると思われたにもかかわらず、容態が急変。あっけなく逝ってしまった。その報を受けた主人公・堀江は、警察に煙たがられるのも一向にかまわず、独力で犯人を捜し始める。はじめはただのオヤジ狩りだと思われていた事件は、調べるにつれて妙な点が目立ち始めて……
やっぱり藤原さんの小説はいい……!
エンターテイメント色の強い作品にもいろいろありますし、大衆向けのスナック菓子のような、軽い娯楽として楽しめるチープな美味しさの小説も、それはそれで大好きなんですけども、藤原さんの小説はそういうのとちがうよさ……なんだろう、上質な娯楽、贅沢品。日常の嗜好品というよりも、お気に入りの喫茶店で美味しいコーヒーを飲む贅沢な時間っていう感じ。(へんなたとえでごめんなさい……)
ハードボイルド! アクションや暴力シーンもあるんだけど、全編を通して流れている、親しい友人を悼む思いが、物語を引き締めています。
藤原さんの描く男性主人公は、ストイックで頭が切れて、仕事ができて腕っ節が強くて女と酒に弱いです。そしてそこがいい……!
今回、脇役もとっても魅力的。てのひらの闇で出てきた素敵な女性陣に加えて、新登場の三上社長というオジサンが、すっごくチャーミング。
いままで読んだ藤原さんの著作の中で、一、二を競うくらいに好きです。
投稿元:
レビューを見る
「てのひらの闇」の続編です。
前作は続編が出るような話だと思えなかったのですが、こうなると主人公はすでに元サラリーマンっていう肩書ではなくなってます。
相変わらず魅力的な人がどんどん出てくるのですが、このシリーズもここで終わり。とても残念です。大原との仲が中途半端で終わってしまうのも残念。
投稿元:
レビューを見る
『てのひらの闇』の堀江さん、大原さん、ナミちゃん、再び登場。
柿島さんが死んじゃう?設定、動機、流れ・・・。なんとなく藤原伊織さんの小説に出てくる人々の痛快さが減っちゃった気がする。以前はまぁいっか、痛快だし!と切り捨てていた違和感が強くなってきた。三上社長もかっこよかったのに、だんだん変になっちゃったし。。。うーむ。
投稿元:
レビューを見る
面白いんだけど、いまいち盛り上がりに欠けた。登場人物の今後に思いを馳せるけど続編がもう出ないことが本当に残念。
投稿元:
レビューを見る
飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、夜の街中で集団暴行を受け死んだ。柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、事件そのものに疑問を覚える。これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか―。著者最後の長篇。
投稿元:
レビューを見る
正直、惜しい、と感じた。
なぜなら、本作は間違いなく藤原伊織のターニングポイント、
だったからだ。
今までだと、恋愛に関しては、互いに好きなのに、
主人公が自制してクールに終わる、というパターンが続いていたのに、
本作では、主人公がときおりクールを保てなくなり、困惑している。
困惑。
今までの藤原伊織作品で、この困惑は欠けていた。
といより、あえて、著者が書かないように努めていた。
それを崩し始めたのが本作だった。
恐らく、これはまだまだ続きがあったはずで、
最終的に主人公とヒロイン(大原真里)はくっついただろうと推測される。
てのひらの闇に続編があったのならば、
きっと、シリウスの道にも続編があったように感じられるし、
やはり、本作は著者のターニングポイントになっていたであろうに、
これが遺作となるとはほんとうにやるせない。
本作はキャラクターも活き活きしており、
著者の集大成とも言えるような作品だった。
自分のサラリーマン生活の集大成であり、
小説家として書き続けた小説の集大成でもあったはずだ。
まあ、サラリーマンに対する見方が、めちゃくちゃひねくれていたけれども。
とりあえず、堀江と大原真里は俺の中では、
くっ付いたということにしておきます(笑)
ほんとうにいい小説をありがとうございました。
投稿元:
レビューを見る
てのひらの闇を読んでから読んだほうが良い作品。
犯人の犯罪に至る心境の描写が少ないので、なんで?と首をかしげてしまう。
アル中ハードボイルドの作品をもっと読みたかったのに、残念。
投稿元:
レビューを見る
そういう訳で、ようやく新刊の続編へ。
あれから3年経っていて、タイケイ飲料が吸収合併された後、堀江、大原、柿島は夫々の道を歩んでいたが、あろうことか柿島が集団暴行を受け死亡する…。
コンビニ業界のきつい事情を背景に、今回もまた近しい人の不可解な死の謎に対して堀江が真相に挑んでいくが、前作と比べると堀江の暗い部分が強調される中で何に動かされているのか分かり難いところや説明の会話がくどくど続くようなところがあって、新キャラの三上や関根の造形は流石でも、全体的にやや落ち感はあり。
別冊文藝春秋に連載の後、加筆改稿作業を第8章まで終えたところで作者は病魔との闘いに力尽きたということだが、きちんと手を入れられていたら幾許の作品になったかと思う。
投稿元:
レビューを見る
ああ、そうか、もう、去る5月17日で3周忌なんだわ、と、平積みにしてある本書を手にとって、しみじみ感慨深げにつぶやいてしまいました。
巻末のエッセイで、我が逢坂剛が、「いおりんは・・・」「いおりんが・・・」と、共に直木三十五賞をとった同じ大手広告会社繋がりもあって、親しみを込めた愛称で呼んで懐古しているのを読んで、もうダメ、一気にドッと涙があふれてきてしまいました。
書店の中で、周りの人も怪訝そうな顔をして遠ざかる気配がします、もう、格好悪いったらありません。
確かに、これが最期の小説でした。何度読んだかわかりません。
『てのひらの闇』と本書を、これからも何度も何度も読む自分の姿を想像しながら、それはそれで至福の時に違いありませんが、でも、どうにもならないことながら、今さらながら59歳の死は無念でなりません。
あっ、突然ですが、ここで唐突に思い浮かびました。
ご本人にはとんでもないとばっちりですが、原寮さまにおかれましては、沢崎シリーズの第2作を、確か2008年頃に出されるご予定でしたが、いかがされましたのでしょうか!
投稿元:
レビューを見る
最終的には救われない。この結果で殺された友人は浮かばれるのだろうか。
知らなくても良いこともあったのではなかろうかと。
業界の特殊事情なども絡めて話が進んでいくのはおもしろいが、本筋のほうがイマイチに感じてしまうのは、やっぱり登場人物の設定が気に入らないせいかも。