紙の本
目立たぬ時代ではあるが...
2007/08/14 15:36
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネロ帝の自殺後、ローマにはカオス(混沌)が訪れる。紀元69年の一年間にガルバ、オトー、ヴィテリウス、そしてヴェスパシアヌス4人の皇帝が、相次いで即位した。同じ国の軍隊同士が戦い、ローマでも市街戦がおこった。それらに乗じたガリア人は、独立国家を作った。同時代人の歴史家タキトゥスは、「すんでのことで帝国の最後の一年になるところだった」とその危機の重大さを記す。
しかし、この危機を回避し、パクス・ロマーナを再び取り戻したのは、四皇帝最後の人、ヴェスパシアヌス帝であった。シリア軍総司令官であった彼は、名将ムキアヌスとともに、ヴィテリウスを討ち、混乱を鎮めて帝位に就く。その10年の在位中、国はよく治まり、また彼の後を継いだ長男ティトウスも名君として善政を施す。
早世したティトスに代わって帝位に就いた弟のドミティアヌスは、ネロ以来の悪帝として後世に知られることとなる。これとても、人気抜群で若い死を惜しまれた兄との比較で、悪く言われたまでで、死後、皇帝としての栄誉を剥奪されたこの人もよい政治はおこなった。しかし、民衆の恨みをかった彼は暗殺され、その後政界にはふたたび不穏な空気が流れた。それを回避したのが、ネルヴァ、すなわち五賢帝最初の皇帝であった。
本巻が扱うのは、パクス・ロマーナ期における唯一の混乱とその回復というローマ史の中では地味であまり知られていない時代であるが、それでも、そこには魅力的な人物や特筆すべき事件にあふれている。個人的には、ヴェスパシアヌスの「充分にふくらまなかったパンのような」顔(表紙の肖像を参照!)とおおらかな性格とが、大好きだった伯父にそっくりで、それだけでローマ史中最も好きな英雄の一人になっている。
また、ユダヤ人によるローマ帝国への反乱、すなわちユダヤ戦争―特にユダヤ教徒にとっても、またキリスト教徒にとっても重要な、かつ怒りをもって覚えられるマサダ砦の陥落―が、彼らとは別の視点から描かれていることにも注目したい。それは作者の塩野が、西洋のキリスト教史観と異なる視点からローマ史を描いたことを示す好例である。なぜならこの事件を彼女は、迫害される哀れな人々というよりもむしろ、長い迫害の歴史から意固地になり、他民族との協調性を失った民族が選んだ無謀な集団自決として描いているからだ。
ローマが伝統としてきた多神教と、他のいっさいの神を否定するユダヤ教など一神教との対比は、シリーズのかなり前から言及されていたが、塩野のとらえかたは、一言でいえば「寛容の多神教」と「不寛容の一神教」だろう。これには多くの人が異議を唱えるだろうし、彼女とてこれほどストレートには断言していないが、現代の国際紛争の多くが、宗教、それもユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教の狂信的信仰に根ざしていることを考えるとき、このような視点が少なくとも現代の国際問題を考える上で大きな示唆をあたえてくれることだけは間違いない。塩野は、キリスト教がローマ帝国の国教となっていく過程を描いた巻(第14巻)でも、再び同じ視点から、西洋文明の基盤であるこの宗教に鋭いメスを入れている。
あらゆる宗教のあらゆる神々を神殿に祀り、完全なる信仰の自由のもとさまざまな民族との共存をはかってきた古代ローマの多神教と、自分の信ずる神以外をすべて排斥したユダヤ教やキリスト教の一神教。これらのうちどちらが、現代のわれわれにぴったりくる生き方か、各自これらの巻を読んで考えてみてほしい。
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リーダーの要件。リーダーシップに欠ける政治的トップは国の危機を招く。
2010/05/30 00:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風紋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1992年以来毎年1巻づつ刊行され、2006年に全15巻が完結した壮大なシリーズの第8巻目である。
本巻では、ネロの死からトライアヌスが登場するまでの30年足らず、68年夏から97年秋までが描かれる。この間、ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトス、ドミティアヌス、ネルヴァの7皇帝が矢つぎばやに入れかわった。
アウグストゥスにはじまるユリウス・クラウディウス朝は、ネロの死により崩壊した。
直後から、ローマ市民同士が血で血を洗う内戦へ突入した。わずか1年の間に、ガルバ、オトー、ヴィテリウスの3皇帝が相ついで即位し、そして自死または殺害された。
その虚をついて、ゲルマン系の一部族の指導者ユリウス・キヴィリスがローマに叛旗をひるがえす。反ローマの「ガリア帝国」は次第に勢力を拡大し、ライン軍団を構成する7個軍団のうち6個軍団が降伏し、敵に忠誠を誓った。ローマ史上、タキトゥスのいわゆる「一度として経験したことのない恥辱」であった。
ヴェスパシアヌスが内戦を収拾した。叛乱を制圧し、フラヴィウス朝を創始した。「健全な常識人」だった彼は、「なかったことにする」寛容な措置で内外ともに報復を抑え、新たな繁栄の礎を築いていった。その長子ティトス、二子ドミティアヌスも堅実な路線を継ぎ、善政をしく。
しかし、元老院を圧迫したドミティアヌスは、暗殺に斃れた。
元老院はただちに議員のネルヴァを皇帝に推す。内乱の記憶は、まだ人心にまだなまなましく、異論は起きなかった。五賢帝時代の幕開けである。
連綿とつづく『ローマ人の物語』の特徴は、リーダーの人間学である。リーダーシップが、これでもか、というほど書きこまれ、分析される。
本巻では、ことに負の側面からリーダーの要件が剔抉される。反面教師となるべきリーダーの特徴である。すなわち、ガルバにおいては人心把握の失敗、オトーにおいては実戦の経験不足、ヴィテリウスにおいては消極性、無為。・・・・なにやら、現代日本の宰相を思わせる特徴ではないか。
その立場にふさわしくないリーダーの下では危機が起こり、続く有能なリーダーによって危機が克服される。こうして「ローマ」は栄え続けてきたし、繁栄は危機の後にもやってきた。
著者はいう。歴史は、史料に立脚して書かれる。史料は不確実な性質をともなう。歴史家は史料を信じるが、作家は史料を疑いの目をもって利用する。このちがいは、「人間性をどう見るか」による。自分は、この長大なシリーズを書き続けるにあたって、一つの判定基準を採用した。すなわち、ある皇帝が成したことが共同体すなわち国家にとってよいことだったか否かは、彼が行った政策ないし事業を後の皇帝たちが継承したか否かによって判定する、という基準である、云々。
タキトゥスをはじめとする同時代人にとっては悪名高いネロも、その勢力を削いだがゆえに元老院から憎まれて功績を抹消されたドミティアヌスも、この「判定基準」で見なおすと、評価されてよい側面が浮き上がってくる。
通説に与せず、個性的なまなざしで史料を洗いなおすところに、埃をかぶった史料の中から血の通った人間を救出し、21世紀の読者のまえに生き生きと現前させるのだ。
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2010/03/06 皇帝オトーがわりと好き。
いまが絶頂期ならば、すでに衰退の影が見えているということか。ローマの国家観が滅びてしまったことを惜しんでいるのが伝わってくる。
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普通の人ならさらりと飛ばしてしまうだろう時代を克明に、しかも「とはいえ面白いのよ」と描き出す著者の文章には脱帽。この人は本当によく人を見る力があるんだなと改めて思う。
でもこの巻は次の五賢帝の前座でしかない、と少し歴史を知っていれば思ってもしまうけれど。なんだかカエサルの時代が懐かしい。
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いつかうまくいかなくなることがわかっていてもその時点で必要な改革があり,これを読んで使命感を新たにした政治家がいたに違いない。
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(2016.07.20読了)(2009.07.05購入)
この本で扱われている期間は、紀元68年から98年までの30年ほどです。
この間に7名の皇帝が登場します。ガルバは、在位7か月。オトーは在位3か月。ヴィテリウスは、在位8か月。ヴェスパシアヌスは、在位9年6か月。ティトゥスは、在位2年3か月。ドミティアヌスは在位15年。ネルヴァは、在位1年4か月です。
落ち着いて統治できたのは、ヴェスパシアヌスとドミティアヌスの二人だけでしょうか。
皇帝ティトゥス在位中の79年夏にヴェスヴィオ火山の爆発によるポンペイやエルコラーノの埋没が起こっています。
ティトゥスとドミティアヌスは、ヴェスパシアヌスの息子たちです。親子三人による統治は、トータルで26年9か月に及びます。
皇位争いによる内戦が何回かありますが、ローマ帝国としては、比較的安定していた時期なのではないでしょうか。ローマ史を勉強したことはなかったので、この本に出てくる皇帝の名前には、馴染みのない方ばかりです。
【目次】
はじめに
第1章 皇帝ガルバ
第2章 皇帝オトー
第3章 皇帝ヴィテリウス
第4章 帝国の辺境では
第5章 皇帝ヴェスパシアヌス
第6章 皇帝ティトゥス
第7章 皇帝ドミティアヌス
第8章 皇帝ネルヴァ
〔付記〕一ローマ詩人の生と死
年表
参考文献
●前線(26頁)
ローマ帝国にとっての「前線」とは、ライン河とドナウ河とユーフラテス河につきる。
●財政再建策(27頁)
ガルバは、帝国の財政再建策でも誤りを犯した。その実行を宣言したまではよかったが、具体策となると失笑を買っただけであった。ネロが贈った金銭や物品を返せ、としたのである。ネロは贈物をするのが大好きではあったが、有力者や金持に贈ったのではない。ローマ社会では下層に属する、歌手や俳優や騎手や剣闘士に贈るのが好きだったのだ。
●嫉妬(76頁)
嫉妬とは、相手に対して能力的に劣ることの無意識な表れに過ぎない
●皇帝の責務(86頁)
ローマ皇帝の二大責務は、安全と食の保証である。安全とは、外敵に対する防衛に加え、帝国内の安定の維持もある。
●戦闘の利点(107頁)
戦闘という人類がどうしても超越できない悪がもつ唯一の利点は、それに訴えることで、これまで解決できないでいた問題を一挙に解決できる点にある。圧勝でなければ意味をもたない理由もここにある。
●神の介入(163頁)
古代のローマ人は、人間の担当分野である政治に神が介入してくるような政体を、考えたことさえもなかった
●小麦(198頁)
主食を輸入に頼るようになって以後の本国イタリアの必要量の三分の一は、エジプトからの輸入が占めている。
●休日(238頁)
ローマ人には日曜を休む習慣はなく、神々に捧げられた祝日が休日になる。
ローマ人にとっての休日は、神殿で神に祈りを捧げた後に、競技や闘技を楽しむものであったのだ。
●医療と教育(241頁)
現代の福祉制度を知っている我々の考える国家による社会福祉には、医療と教育もまた欠かせないのではなかろうか。
ところが、ローマ人はこの二つは、国家の責務とは考えていなかった���である。
●官邸の組織化(303頁)
ドミティアヌスは、いわゆる「官邸」の組織化も断行した。皇帝に集中してくる大量な実務をさばく、秘書官システムの整備である。
ドミティアヌスは、秘書官の全員を、騎士階級から登用している。
☆関連図書(既読)
「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
「ポンペイ・グラフィティ」本村凌二著、中公新書、1996.09.25
☆塩野七生さんの本(既読)
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
(2016年7月24日・記)
(「MARC」データベースより)
繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた―。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場するまでの三十年たらずの時代を描く。
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ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。このころのローマはまだ元気です。
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第8巻は紀元68年、第6代皇帝ガルバから、紀元96年第12代皇帝ネルヴァの死まで。29年間に7人の皇帝が続く、内乱と混乱の日々、ヴェスヴィィオ火山の噴火によるポンペイの埋没もこの時期。
「まず持って人間には、自らが生きた時代の危機を、他のどの時代の危機よりも厳しいと感じてまう性向がある」
「政体が何であるかには関係なく統治者と被統治者の二分離は存続せざるを得ないのが現実」
「平凡な資質の持ち主は、本能的に、自分より優れた資質の持ち主を避ける」
「独裁体制の国家では、その国の持つ軍事力の真の存在理由は、国内の反対派を押さえることにあって、国外の敵から国民を守ることにはない」
「人間が人間を裏切るのは、恐怖よりも軽蔑によってである」
「戦闘という人類がどうしても超越できない悪が持つ唯一の利点は、それに訴えることで、これまで解決できないでいた問題を一挙に解決できる点にある。リーダーの第一条件は、自軍の兵士たちをコントロールする力量」
「自由と独立の二語・・・他者を支配下におくことを考えた民族で、この二語を旗印にかかげなかった民族は皆無である」
「他民族に長く支配された歴史を持つ民族は、精神の柔軟性が失われてかたくなになる。また、何に対してであろうと過敏に反応しやすい。そして、過酷な現実を生き抜く必要からも夢に頼る。ユダヤ教では救世主待望がそれに当たった」
「多神教の民族では、政治と宗教は分かれているのに反し、一神教の民族では、宗教が積極的に政治に介入してくる神権政体にならざるをいない」
「ユダヤ戦記(山本書店)・・・史書の傑作」
「ユダヤ戦役・・・純粋を至上の生き方と信ずる人にとって、不純ほど唾棄すべきものはない、純粋であればあるほど、少しの不純も許せなくなる」
「人間であることの宿命は、何かを成せば成したで、それによって起こる新しい問題に直面せざるをえない」
「トライアヌス・・・運命とは何が機縁で変わるか分からない、人間の運不運を幸運の女神に気まぐれの結果にしたがる人の気持ちもわからないではない」
「人間とはなぜか貴種には甘く、高貴な生まれでも育ちでもない人物が強権を振るおうものなら、ヒステリックなほどに反撥する傾向が強い」
「人間にとっての最上の幸運とは、自分のためにやったことが自分の属する共同体のためになること、私益と公益が合致すること」
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繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた―。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場するまでの三十年たらずの時代を描く。
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第1巻から読みふけって、すっかりローマのファンになっている身としては、内乱で傷つけ合うローマを見るのはつらい。愚かな皇帝がいると、最初におかしくなってくるのは「信頼感」のようなものなのだろう。
ごたごたしている帝国を落ち着かせたのは「常識」であった、というのがおもしろい。ヴェシパシアヌスの、当たり前のことを当たり前にやっていくことで「信頼感」を取り戻していく動きに、とても共感した。
それにしても、その二人の息子たちも、その後を継いだネルヴァも、それぞれに一生懸命だったと思うのだ。読んでいると、どうも不運だったんだな、と感じてしまう。それと同時に、巨大な権力を持ち、なおかつ幸運に恵まれるというのは、奇跡的なものなんだなと思う。
カエサルとアウグストゥスのリレーは、やっぱりすごかったんだな。
2007/4/18
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文学的な歴史書、というところが面白いのだろうと思う。事実の積み上げではなく、筆者の推測、考えがところどころに色濃く出ていて、読んでいる方も楽しめる。
本書の対象の時代はわかりやすい英雄もいないし、血みどろの内戦もあり、史実の部分は少々読むのがつらい部分もあった。それでも、前世の皇帝のどういう政策を引き継いだかとか、後世の皇帝がどの政策を引き継いだか、あるいは引き継がなかったか、という点から対象者を評価しているところなどはとても面白かった。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA42951137?caller=xc-search
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20210516
ネロ帝の自死によってユリウスクラウディウス朝が崩壊してから、1年間にガルバ、オトー、フラヴィウス3人の皇帝が表れては消える内乱状態となる。
この混乱を収めたヴェスパニアウスはフラヴィウス朝を創設して、ティトゥス、ドミティアヌスへと続いていく。
・ガルバ、オトー、フラヴィウスは皇帝になったあと、何をすれば平和と秩序を維持できるのか、のヴィジョンがなかった。ただ、配下の軍団兵に推挙され、その地位に目がくらんだ近視眼的な行動である。ヴェスパニアウスは、ムキニウスからの協力を取り付けると、フラヴィウス派との軍事対決への対処と、帝国における自分の役割で市民と軍団兵の支持につながるユダヤ戦役の双方に適切に対処する。
・ヴェスパニアウスとティトゥスは壮年期まで皇帝を意識しなかったため、庶民的で民衆の支持も厚かった。ドミティアヌスは若くして帝位を意識し、告発による元老院のコントロールを公然と行ったことで反感を買った
☆プライドはよい仕事をするための必要条件ではないのかもしれない
・ドミティアヌスの構築した、ラインとドナウの上流地域の防衛線となる、リメスゲルマニクスはその後の皇帝たちも補強を重ね、方針を踏襲している
・ローマ繁栄の理由①インフラへの投資:街道、水道、会堂といった公共建築を地道に作り、補修し続けたことがローマ繁栄が長く続いた理由の一つ
・ローマ繁栄の理由②現実的、質実剛健の精神性:ギリシャ人のように空論をもてあそぶことを嫌い、安全と秩序の維持、食の保証を中心にした福祉の向上に価値観の中心においた
・ローマ繁栄の理由③高い公共心と市民、元老院、属州からのチェック機能:皇帝を始めとした有力者は公共建築を寄付することが求められた。カエサルは高い地位のものは低いものよりも行動が制限されるといい、共和政時代には元老院階級が最も戦争における死者を出した。
・ローマ繁栄の理由④実力主義:公職を務めるものは属州統治や軍団勤務などの実務経験があることが求められた。実力主義に例外が多く混入すると、いつしかそれらのものが作る独自ルールが生まれるようになる。
実力とはなにか、を明確に定義することが重要
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1年1冊のシリーズも西暦69年のネロ自死というローマの危機に始まり、軍人皇帝たちそしてヴェスチニアヌスによるフラビウス王朝の開始になりました。あまり知らなかった時代ですが、ボンベイの滅亡、ユダヤの反乱(マサダの砦)などで親しみのある時代でもあります。塩野さんの詳細な研究にはいつも圧倒されます。
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有名どころの皇帝の巻が終わった途端読むペースが落ちたが、読みはじめれば読んだでやはり面白い。
ドミティアヌス帝の孤独に共感。治世後半のティベリウスも同じだが、皇帝としてやっていることはきちんとやっていてもっと評価されるべきなのに非業の最期を遂げる。。。唯一心を許せたのはユリアだったのか…。