胡蝶の夢(一)(新潮文庫)
著者 司馬遼太郎
黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良...
胡蝶の夢(一)(新潮文庫)
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商品説明
黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。
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江戸時代という厳しい身分社会を蘭学というメスで生き抜いた男たちの物語です!
2016/08/05 09:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、黒船ペリーの来航で沸き立つ幕末を舞台に、それまで漢方医学一辺倒だった状況が、にわかに蘭学へと変わっていく社会を描きます。そこには江戸幕府の蘭学者、松本良順が主人公として登場します。そして、悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった弟子の島倉伊之助が登場します。彼らが、身分社会の厳しい江戸時代をどのようにして生きていったのか、蘭学という視点から江戸時代という時代を見つめた見事な作品です。
手塚治虫、村上もとか、司馬遼太郎
2023/03/19 02:07
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
中島義道(著)『「時間」を哲学する 過去はどこへ行ったのか』を読み始めて、「荘子胡蝶」(13頁)の話になった時、なぜか本書を読みたくなり購入。極上無類の面白さに瞠目しているところです。
「江戸時代の武家の組織内での意地悪さというのは、世界でも類のないものであった。・・・ 家と禄とそして身分をひたすらに処世によって守らねばならぬ江戸期によってこの種の文化性ができた」(340~1頁)。
「幕末における「海軍」という文明受容は、明治以後のそれよりも、いっそうに不思議な作用があったと考えられていい。この文明への参加者たちは、その知的習得もしくは肉体的習得にはなはだしく労苦をともなううえに、つねに遭難という生命の危険にさらされる場であったために、新文明といっても浮薄な見聞者流になることからまぬがれ、多くは、封建武士のなかで独特の風骨をそなえる結果になった」(428頁)。
「幕府は日本国政府であるとはいえ、内実は徳川家にすぎない。徳川家は一面では大名同盟の盟主だが、一面では自領をもつ大名である。長崎は一大名としての徳川家の直轄領で、長崎奉行がその行政をおこなう。諸藩士の面倒を見る責任はいっさいないのである」(440頁)。
松本良順と島倉伊之助という主人公二人と彼らを取り巻く人々と時代・社会が織りなす小宇宙に呑み込まれてしまったかの如き充実の読後感。司馬遼で評者が一番インパクトを受けたのは『世に棲む日々』なのですが、それに匹敵する面白さを感じています。
外国語学習に興味がある人に
2005/09/10 20:19
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
大阪に出張する機会に時間が許す限り出かける場所が私にはあります。それは緒方洪庵の適塾。福沢諭吉も学んだというこの建物の中に、透明なケースに入れられてオランダ語の辞書ズーフ・ハルマが展示されています。この辞書を眺めていると、限られた教材でオランダ語の勉学に力をそそいだ若き蘭学者たちの熱い思いが伝わってくる気がします。趣味と実益を兼ねて外国語の学習を続けている私にとっては、どことなく勇気を与えてくれるような思いもして、とても楽しい時を過ごせる場所なのです。
そんな話をたまたましたところ会社の同僚が私に勧めてくれたのがこの「胡蝶の夢」です。幕末の蘭学者たちを描いた長編歴史小説です。とりあえず第一巻を読んでみました。
漢方全盛の時代にあえて蘭学による医療を目指す若き医師・良順、そしてその付き人的存在で外国語習得に異能を見せる伊之助。満足な辞書もなければ、十分な教科書もなく、ましてや録音教材などは皆無の時代に、次代の日本のためにオランダ語を身につけようと奮闘していく若き主人公たちの姿を大変興味深く読みました。
時代がまだついてきていないほどの最先端を走る彼らにとって世間の風は決して温かく応援はしてくれません。開拓者の宿命でしょう。いつの時代も外国語を身につけようなどという酔狂に走る御仁は奇妙奇天烈な異人扱いなのかもしれません。
主人公たちに自分の姿が重ならないでもないので、とりあえず第二巻へと進んでみようと思います。
幕末の動乱の中の医師の物語
2017/04/10 20:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:numa - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末の蘭学を学ぶために奮闘した人たちの物語。良順と伊之助が師弟関係となるところ、良順が漢方の試験を課された時に喧嘩のために覚えるのだからと基礎からではなく丸暗記で望むところの場面が爽快。なかなかできる人はいない。続きが楽しみだ。
青春小説家
2002/07/10 23:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
関川夏央さんの「司馬遼太郎の<かたち>」という作品の中で、関川さんは司馬文学をこう評している。「司馬遼太郎の本質は、少なくとも<坂の上の雲>までは青春小説家であった」青春小説家という言葉は、以前映画になった「恋愛小説家」という題名から誘発されて関川さんが作った造語だろうが、なるほど司馬さんはそうであったと頷ける言葉である。
この全4巻からなる「胡蝶の夢」もいわれてみれば、松本良順や伊之助といった主人公だけに限らず、幕末というまるで青春そのものといえる時代にあって、登場する多くの人々がその年令に関係なく青春群像といえる。
関川さんがいうように司馬さんは<青春小説家>として、彼らの熱情を生き生きと描いた。そんな彼らの物語に日本中がわいた。小説の中の時代も、小説として読まれた時代も、まだ青春そのものであったといえる。
不遇の天才
2022/07/31 12:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊之助という幕末に生きた天才をこの本を読んで知ったが、彼の生きざまの不甲斐なさのせいか、なかなか読み進めるのに時間がかかっている状況です。
別な次元の幕末
2017/05/06 17:39
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投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末に江戸時代の将軍を見る奥御医師で蘭学医の松本良順と弟子の島倉伊之助の出会い、及び漢方医から蘭学医への転換を図るための葛藤と行動。江戸時代の幕末に医術の進歩をはかりたい医師と弟子の話になっている。松本良順が、抵抗勢力である漢方医の親玉、多紀楽真院が牛耳っていた社会から脱却し、長崎でオランダの軍医に学ぶところを描いている。また、伊之助の天使的な記憶力と頭脳と道徳感のなさが問題を引き起こす内容も描かれているが、全体として今の時代にも通じるところがある。