堂々の面白さ、第3巻
2023/04/10 00:35
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
「蘭学」「医学」という切り口で、幕末期日本を新たな視点で剖解して見せてくれる傑作長編の第3巻。実に面白い。
それにしても、第二次長州征伐で先駆けを命じられた井伊家について、「藩主井伊直弼が桜田門外で水戸浪士に殺されて以来、藩情が一変し、長州風の尊攘派が実権をにぎるようになっていた。幕閣はこの点でも甘かった。彦根藩に出陣を命ずると、かんじんの藩主井伊直憲が病気と称し、士卒だけを出発させた。士卒のなかには長州派の尊攘家が多く、-もはや将軍の命をきく必要はない。と揚言する者もいた」というのには笑った。やはり、徳川幕府は滅ぶべくして滅びたことを改めて理解し得た挿話であった。(慶喜もヤル気失せるわな。)
司馬氏の歴史傑作第3巻です。
2016/09/11 09:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書では、二人の医学者、松本良順と伊之助の人生を描いています。ポンぺの帰国とともに江戸の医学書の頭取となった松本良順は、緊張した時局の中で不眠に苦しんでいました。他方、語学の天才、伊之助は「七新薬」という蘭方の医書を刊行するが、その特異な性格が周囲に受けいられず、再度、佐渡に逼塞してしまいます。この二人の医学者はどうなっていくのでしょうか?ぜひ、本書第3巻をお読みください。
幕末の医師の主導権争い
2017/05/20 18:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
医師の蘭方と漢方方とのせめぎあいや蘭方の中での権力闘争が描かれている。2巻目よりはやや興味は薄れるが、当時の幕府の御医師の状況が良く理解できる。あまりこの手の歴史小説は読んだことがないが、医師から見た幕末の動向が垣間見える。
投稿元:
レビューを見る
正義・因循の両論は、争いの段階になればもはや根も葉もない。逆に、根も葉もないからこそ争いが血を見るのであろう。実態のあるものには、ひとは決して他人を殺すほどの昂奮はしないものだ(176頁)
吾等は、樹木を崇拝するにあらず。…沙漠に立つれば一目分明のごとく、森林は人々に崇高の念をおこさしめ、黙思沈考の余裕を置かしむ(180頁)
投稿元:
レビューを見る
第三巻から徳川慶喜や新撰組が登場し、話が急展開する。松本良順はあくまで幕府の立場で活躍する。もう一人の主人公の島倉伊之助は故・佐渡に帰り時勢の中に現れない。今後彼がどう活躍するのかが非常に楽しみ。
十四代将軍・徳川家茂について詳しく触れられているのが印象に残った。家茂は大変な時代に十代で将軍になってしまった誠実な青年。その誠実さと責任感の強さゆえに短命に終わってしまう将軍なんやけど、政治的実力は別として、勝海舟ですらほれ込んでしまうほどの人柄の持ち主だったらしい。僕と同じ紀州出身ということもあり、すごく感情移入してしまう人物。 物語の本筋からは逸れてしまうけど、家茂の事をもっと詳しく知りたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
江戸に戻った松本良順は、幕府の中枢に近づいていく。
良順が治療した一橋慶喜、徳川家茂、または新撰組(近藤、土方)などについて、それらの要人の素顔を見事に描写していて興味深い。
特に新撰組については、衛生面を守らせ、豚や鶏を飼わせたというエピソードは面白い。(豚や鶏に残飯を食わせ、且つそれらを食とする)
第三巻は幕府の第二次長州征伐の失敗のところで終わり、いよいよ次巻では倒幕の舞台となりクライマックスを迎える。
投稿元:
レビューを見る
内容(「BOOK」データベースより)
ポンペの帰国とともに江戸の医学所の頭取となった松本良順は、緊張した時局の中で不眠に苦しんでいる一橋慶喜の主治医となり、阿片を用いてこれを治す。一方、語学の天才・伊之助は「七新薬」という蘭方の医書を刊行するまでになったが、その特異な性格が周囲に容れられず、再び佐渡に逼塞する。また、赤貧のなかでポンペ医学を修めた関寛斎は、請われて阿波蜂須賀家の侍医となる。
投稿元:
レビューを見る
本筋から離れるが、良順つかえる将軍一橋慶喜は、無能な人物と思っていたが、朝廷、薩長との駆け引き、さらには腹を据えた人が垣間見られ、もっともっと知りたい人物となった。関寛斉もそう。
他国の価値観が蘭学を通じて入り、今までの階級や社会制度の崩壊。興味深いのが良順の父、佐藤泰然。実子をすべて養子にし、順天堂は弟子に継がしている。晩年は横浜でさらに新しく渡来する事物を吸収しようとするような親の影響は計り知れなかったと思う。
投稿元:
レビューを見る
長崎医学伝習所開設に続き、小島養生所開設に向けてポンペや松本良順が奔走する。地元長崎に日本初の西洋式病院が開設されたことは初めて知りました。長崎という街は独自の歴史があって、長崎の街をまた散策してみたくなった。
奥御医師の視点から幕末という時代を見ているのが、今まで読んだ幕末物と違ってとても面白い。読み進めていくと時代はドンドンと変わっていく様を見ることができ、楽しみだ。(^o^)/
投稿元:
レビューを見る
ポンペの帰国から、14代将軍、徳川家茂の死までの本巻。
後半は幕末に活躍したビックネームか連ね、本筋ではないが動乱の行く末に無知な自分には興味を以って読み進めることができた。
相変わらず膨大な資料をかき集めた内容、時に電話をかけての取材もされているようですね。あえて難を言えばフィクションとノンフィクションの境がわからないことかな。
投稿元:
レビューを見る
ポンペは、ただ一人で長崎の医科大学7教科を教授した(彼の学生時代のノートを頼りに)比類がない。しかし主人公伊之助が彼の蔵書を勝手に読むのが不快で、ついに放逐した。その主人・松本良順もストレス解消の面もあったろうが遊女が好きで、葵の御紋服を与えるとは只事でない。しかし「落籍して妾とする」という便法をあらかじめ施しておいたことによって助かった(この時代らしい)。伊東玄朴は家定の死の直前に招致され「まる二日しか保たないでしょう」と断言し、的中したことで自身と蘭学を評価された。誰しも人格に多少の欠点はあるしかし
投稿元:
レビューを見る
文久2年(1862年)ポンペは日本を去った。松本良順もその年西洋医学所(東京大学医学部の前身)へ移る。着任早々今までの学制を廃止し長崎医学伝習所の制度をそのまま持ち込んだために守旧派の伊東玄朴によって追い詰められていた。しかしある失態から玄朴が罷免されため良順の西洋医学所は玄朴の拘束から解放された。
元治元年(1864年)孝明天皇が将軍家茂、一橋慶喜、その他公卿、大名たちを小御所にあつめ、「横浜を鎖港するように」という詔勅を発した。良順も奥医師として慶喜に従い京都に滞在している。この間面識のあった新撰組詰所の衛生指導や隊士の健康診断をしている。
慶応2年(1966年)第二次長州征伐において大阪城で家茂が病死する。
「いずれにせよ、家茂はみずからの能力で物事をひらこうとはしなかったが、かれほど時勢についての苦悩を感じつづけた者はなかったかもしれない。良順が介抱しているかれの病んだ心臓は、あるいはその象徴であったかのようにも思われる。」
慶喜が将軍になった。
司馬遼太郎「最後の将軍」YouTubeに朗読あり
投稿元:
レビューを見る
右往左往する幕府。伊之助は存在感無し。関寛斎などほかの人物も掘り下げられる。後半、新選組が出てくる。
脱線・小ネタが多く、どこまでが史実でどこからが創作なのかわからない。歴史書を読んでいる感じ。
投稿元:
レビューを見る
どうも小説として起伏に欠けるなぁ。
幕末の人物列伝いう虱潰し的な要素ももしかすると否定できないのかも。
投稿元:
レビューを見る
伊之助は、賢いというより暗記力の高い人であったからこそ、語学の達人となり得、医学も習得できたということだったんだな。所詮医学は勉強する上では暗記一辺倒のとこあるけど、臨床出たらそうもいかないことが、この人物を通してだけでも伝わり、一年後の自分にも重ねてしまった。
当時は色んな流派というか宗派というか、医学というのが普遍的ではなく、裏付けなしに治療を行なっているようで、怖いな、と思った。確かに今も先生によって言うことは違うけれども、根幹は皆同じで、医学教育の重要性を感じた。この状態から、今の医学になり得たのは、先人達の苦労のおかげだと思うのだが、今は伊東玄朴のような医者ばかりで、関寛斎のようなものは少ないのかもしれない。と言うより、伊東のようなものが悪目立ちしすぎて、どの時代も結局医学は発展しても医師の素質は変わらないのだなと思ったら、悲しくなった。
ついに良順が新撰組と出会った。4巻が楽しみだ。