紙の本
内容が内容なので多くは語れません。
2018/05/07 02:24
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いきなりウェールズ語の発音ルールが載っていてくじけそうになるが(私には語学のセンスがない)、そこはサラっとスルーしますよ(クイーンズ・イングリッシュと意味を取り違える可能性があることがわかるだけで十分)。
第一章がドラマの収録現場で女優とマネージャーの会話から始まるので「おや、バックステージものかな?」と思っていたら第二章からごろっと展開が変わり、「えっ、そんな話になるの?!」と驚愕。「バックステージもの」という勝手な印象がぐんぐん塗りかえられていく快感。
内容については語れませんよ!
事前情報がないほうが楽しめるのは私が体験済みだから。
1977年発表の作品ということもあり、電話もろくに通じないというレトロ感満載の環境が本格ミステリ風味を盛り上げるというか、「あぁ、やっぱりこういう時代だからこそ楽しめる内容ってあるよね!」と実感する。
登場人物は多くはないし、人物造形などどちらかといえば類型的。なのに彼らの会話はとてもリアル! だから登場人物の心理戦にもハラハラするのか(特別感情移入できる人がいないにもかかわらず。あ、チャッキー警部はお茶目です)。
媒体は新聞だけど、現代ならばブログやSNSなどで同様の展開が起こりうることもこの作品が古くなっていない要因かも。
そしてタイトル<薔薇の輪>の意味がわかるとき(circleではなくringだというところもポイントかと)、散りばめられていた違和感が美しく形作る論理マップが完成!
かといって本格推理のみの無味乾燥な物語ではなく、人生の(もしくは人間の)残酷さが冷徹なまでにクールにつき放して描写されていて、みぞおちを殴られたぐらいの衝撃を伴う。
あぁ、人間ってやっぱりダメな存在なのね。(2015年8月読了)
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ロンドンの女優エステラ。その絶大な人気は、体が不自由でウェールズに住んでいるという娘との交流を綴った新聞の連載エッセイに支えられていた。エステラの未来は順風満帆に思われた。服役中の危険人物の夫が、病気のため特赦で出所し、死ぬまえに娘に会いたいと言い出すまでは……。勃発した怪事件に挑むのは、警部チャッキー。
巨匠の技巧が冴える、本邦初訳の傑作ミステリ!
解説=福井健太
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クリスチアナ・ブランドの未訳だった長編。
登場人物の設定やストーリーの展開は良かったが、結末がやや予想通り過ぎたので、もう一ひねり欲しかった。
ただ、未訳長編が刊行されたのは有り難いので、他作品の復刊・初訳にも期待したい。
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某角川映画原作作品のように、最初は倒叙作品の演出(エステラ視点で固定)にして徐々に視点を切り替えていく形にした方がすっきりとまとまった気がする。クリスチアナ・ブランドは多くの登場人物がそれぞれ大騒ぎしている中に伏線とミスリードを上手く盛り込んでくるのが得意だと個人的に思っており、登場人物の少ない「薔薇の輪」は本領発揮があまり出来ていない。なおマスコミと芸能人に対する皮肉な視線はいつもの筆使い。スヴェンガーリについては「悪魔スヴェンガリ」という映画を例に挙げた方が分かり易かったような…本筋に全く関係ない所では、矢鱈に"まんいち"という言葉を使用していたのが気になる。
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有名女優の周りに多くの人々が侍り、依存して生きていくというような状況ができあがったのはいつ頃の時代からなのだろうか。本書は1977年の作品ということなので、スターとその取り巻きが当たり前に描かれていても年代的にはおかしくない。厳密には主人公の女優に依存しているというのとも少し違うのだれど、このような関係が悲劇を生む、というのは古今東西どこでもありそうな話のようだ。
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40年ほど前の作品ということで古くささは否めない.アガサクリスティの作品を読んでいるようだ.結末も何となく予想できたもので,ちょっと期待はずれかな.
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虚偽にはりめぐらされた世界に、現実に起きた事件のあれこれを思い出させられたり。ひどい話だが、母親として「愛がない…わけではない…」というところが余計に曲者。
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障害を持つ娘のことを綴ったエッセイで人気を保っている女優エステラ。彼女の服役していた夫が病気のため特赦で出所、娘に会いたいと訪ねて来る。仕方なく娘の住むウェールズの田舎に案内するが、そこで事件は起こった…
登場人物が少ないしかなり昔の作品なので、ミステリとして驚愕の結末、というわけにはいかないが、エステラやその関係者の心理描写、真相を究明しようとするチャッキー警部と何やら隠し事をしている彼らのやりとりなど緊迫感があって楽しめた。
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コメディである。喜劇というべきか。
非常になんも考えずに楽しく読める作品だが、論理的というより推測に推測を重ねるタイプの推理なので、「え? その予想には根拠ないよね?」ってなる。まじものごとき憑くものも同じタイプだけれども、確認しないまま推測に推測を重ねるのってどうなんだろうってなる。テンポの良さを重視するがゆえなのかもしれないし、読み物としては楽しい。
ただ、ミステリかって言われると悩ましい。
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イギリスの作家クリスチアナ・ブランド、1977年発表の小説。邦訳は2015年。
ウェールズの田園地帯を舞台にしたミステリー。読み終えて、何だかとても物悲しくなる作品ですが、良いです。
ロンドンの人気女優エステラには心身に障害を持つ娘がおり、ウェールズの片田舎で人目を避けて育てられていました。そして、この障害者の娘のものとして新聞に連載されている日記が大衆的人気を博しており、女優エステラの人気の源泉となっていました。しかし、実はその日記はほとんどがエステラの秘書バニーの創作、現実との間には大きなギャップがあったのです。
そんな所へ、シカゴのギャングで15年獄中にあったエステラの夫が、心臓病が悪化したため釈放され、死ぬ前に一目娘を見たいとロンドンにやって来たことから騒動が巻き起こり・・・。
始めの方はコメディーなのかシリアスなのか良くわからないような物語りで戸惑うのですが、事件が起きてからの展開は息もつかせぬものがあり感心します。秘書が主導するエステラのチームと警部とのせめぎ合いが見事。たっぷり描かれているウェールズの田舎の風情も興味深いです。
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アガサ・クリスティと並び称されたクリスチアナ・ブランドの、未訳だった長編が、発行されました。
1977年の作品。
探偵役は男性のチャッキー警部ですが、話の本筋は乙女ミステリとても呼びたいような内容。
ロンドンの女優エステラ。
美人で気立てもいいけど、演技はそれほどでもない。
エステラの人気は、体が不自由なためウェールズの田舎で療養している可愛らしい娘とのやりとりを書いた新聞連載のエッセイに支えられていました。
エステラが若く恵まれなかった頃に結婚した相手はなんとギャングで、長く服役中。
この夫が、病気のため特赦で出所することになり、死ぬまえに娘に会いたいと言い出します。
エステラを支えるマネージャーの女性や娘の世話係夫婦、新聞記者まで、大慌て。
危険人物だが娘のこととなると感傷的な夫が期待するようなわけにはいかない‥
そして、事件が起こり?
閑静な田舎町に、マスコミも駆けつける大騒ぎに。
芸能界の内幕のちょっとビターな面白さと、思いがけない出来事の連鎖で、はらはら読ませます。
クリスチアナ・ブランドの作品って、ちゃんと出来ているんだけど~読み終わるとなぜか内容を思い出せないのがほとんど。
何年か後に読み返すのに邪魔にならなくて良いけど。
この作品はそんなに長くはないけど、わかりやすくて印象が強いですね。
どこか切なくて、バッチリ覚えられて、忘れられない~珍しい作品になりそうです☆
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★3.5
ブランドの長編は、人間関係の過剰なドタバタ劇を面白く受け止められるかどうかで評価が分かれる。ほぼ全ての登場人物達が荒唐無稽な言動をし、こちらはそれに振り回されて本筋を見失いかねず、悲劇なのか喜劇なのかも分からなくなってくる。ただし今まで読んだ作品は訳も古く、そのせいで余計滑稽さを感じていた面があり、その点では翻訳自体が新しい本作品は滑稽さがだいぶ抑えられ、コミカル程度で読みやすかった。
事件の顛末は想像内ではあったが、屈折した人間関係と身勝手極まりない醜い人間像は、ブランドらしい皮肉のスパイスが効いた巧い書き味に仕上がっている。
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イギリスの片田舎で起こった殺人事件。それに伴い姿を消した、障害を持った少女。一見殺人事件の謎を解くだけのミステリかと思いきや。なんだかもやもやと気持ちの悪い要素がいっぱい……読み心地はあっさりしていてさくさく読めますが。どの人もこの人もとにかく怪しくて、隠された何かがとても不気味な印象でした。
肝心のトリックについてはいまいち仕組み(と地理)がよくわからなくって、あまり理解できなかったのが残念。しかしタイトル「薔薇の輪」に隠されていたのがまさかそういう真相だったとは。彼らのしたことは表面的には悪どいことのように思えてしまいますが。それだけとも言い切れないかなあ。「スウィートハート」という呼び名があまりにも悲しい。
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クリスティに並び賞される(らしい)イギリスミステリー界の女王、クリスチアナ・ブラント晩年の傑作長編…というのは完全に聞いてきた話の受け売りで、この本を手に取ろうと思うまで、作者については全くの無知であった。
うん、確かにオモロい。20世紀の欧米ミステリーテイストに溢れた良い作品である。少々古臭い部分があるのは古典だから。例えば探偵役のチャッキーは今風にみるとカッチョ良くはないし、推理の冴えもちょっとなぁ…とは思うんだが、例えばホームズ、例えばポアロだって今風に見れば、人格破綻のイメージもあるわけで…。
トリック部分も今となっては「えー、そうなの!」と驚くほどではないものの、そこに至るまでの物語がきちんと書き込まれててそれを読むのが気持ち良かった。
古典ミステリーを読んで、ちょっと風雅を気取る時間も良いものだな。