ストックホルムの密使(上)(新潮文庫)
著者 佐々木譲
イタリアは降伏、ベルリンも陥落した第二次大戦末期、孤立無援の日本では、米軍による本土空襲が激化し、戦局は絶望への道を辿る一方だった。日本政府はソ連仲介の終戦工作を模索する...
ストックホルムの密使(上)(新潮文庫)
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商品説明
イタリアは降伏、ベルリンも陥落した第二次大戦末期、孤立無援の日本では、米軍による本土空襲が激化し、戦局は絶望への道を辿る一方だった。日本政府はソ連仲介の終戦工作を模索するが、スウェーデンに駐在する海軍武官・大和田市郎は、瀕死の日本にとどめを刺す連合国側の極秘情報を入手した。日本が滅亡する前に、その情報を軍上層部に伝えるべく、いま二人の密使が放たれた……。
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スパイ小説風に戦史のプロローグを描く
2021/10/24 11:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐々木の所謂三部作の最後の一作である。これまでの『ベルリン飛行指令』、『エトロフ発緊急電』そして、真珠湾攻撃に際しての駐米大使館での物語である『ワシントン封印工作』はそれぞれ関連した一連の作品群である。
大部の文庫本上下2冊でたっぷりとした内容で、冗長のように見えてもかなり中身の濃い作品である。戦時中、ストックホルム海軍駐在武官であった大和田大佐は、連合国、そして同盟国のドイツの動きの詳細を本国に伝えていた。しかし、本部はその貴重な情報を黙殺してきた。戦争末期に同盟国のドイツは無条件降伏し、日ソ不可侵条約を結んでいたソ連の動きが怪しくなってきた。
そのソ連がポツダム宣言の受諾と連動して、条約を破棄して満州に攻め込んでくるという情報、連合国側が原爆の開発が完成した情報を大和田大佐は入手した。日本に送ったにも関わらず、政府は依然として動かない。業を煮やした大和田大佐は複数のルートでそれらの重要な情報を送ろうとする。
その担い手が風来坊で在仏の日本人である森四郎であった。ポーランド人スパイと一緒にモスクワ経由で日本にたどり着いた森は、海軍書記官に情報を手渡す。しかし、時すでに原爆は広島、長崎に投下されたが、終戦を回避しようと陸軍はクーデターを仕掛けて政府を襲撃する。この一連の動きは映画にもなった半藤氏作の『日本の一番長い日』と同じ状況を描いている。
実に興味深い記述であるし、読者を興奮させるシーンでもある。大勢の犠牲者を出した太平洋戦争も終わりを迎え、登場人物たちもそれぞれの終戦を迎えたわけである。三部作の最終作品にふさわしい盛り上がりを感じさせた。少し以前のスパイ作品を彷彿とさせる作品であるとともに、欧州のスウェーデン、スイスからユーラシア大陸を横断する逃避行は圧巻であった。
すでに80年近い年月を経過した大戦であるが、時とともに人々の記憶からは風化していく。本書が細部にわたって史実であるか否かは別として、大戦の終結の仕方や文民統制ができなかった当時の軍政の在り方など、現代人には是非知っておいてもらいたいと思った。