電子書籍
玩具ロボットSF
2019/06/05 22:03
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投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高い場所から歌う玩具のロボットが落下するイメージ。それを描いた連作。ツインタワーのテロを再現するため人格をコピーしたDX9を使うとかもはやリアリティなど軽々飛び越えている。
紙の本
まさに奇想天外
2015/10/22 21:26
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
落下し続ける少女型楽器?
全く何のことか分からずに読み始めたが、短編ゆえの息抜きも忘れ、物語の持つ迫力に引き込まれ一気に読み終えてしまった。
読後感は、「せめてもう一話」。伊藤計劃にも似た無情感と寂寥感、そしてカタルシスがないまぜになった感情のシャワー。
一番印象に残ったのは、9・11を追体験するためにDX9を落下させるという、まったくもって意味も必然も現実性もない話を、そう、でっち上げる筆力の凄さ。
そして「二つのタワーの間には、何があるのだろう?」という問いかけ。
それこそが、事件以後の世界に住む我々みんなの生きるキーワードではないだろうか。
この本は、まさに多感な少年少女に読んで欲しい一冊である。
紙の本
SF・文学性の両面で優れた作品です。
2015/09/02 00:26
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞候補&日本SF大賞特別賞受賞作で、表題作の他に4作品が収録されています。日本製少女型ロボットDX9が普及した近未来の南ア・アフガニスタン・ニューヨーク・東京を描いたSF短編集で、各国を代表する建築と各国が抱える紛争を「DX9の落下」を通して描く技巧派作品です。
この「落下」っていうのがミソで、南アの場合は日系企業が見捨てた耐久試験場で落下し続ける大量のDX9、東京の場合は疑似的な飛び降り自殺をするための意識の筐体として毎日団地の屋上から落下するDX9が描かれています。論理的な作品じゃないですけど、伊藤計劃に似たような訴えかけてくる凄みがありました。
また、解説に載っている宮部みゆきさんの
「人間が神に問いかけるように、DX9が人間に、「かほどの試練を与えるならば、なぜ我らを創り賜うたか」と問いかけてきても何の不思議もありません」
という引用文がとても印象的でした。
ただのSFと侮れない作品でした。ぜひ一読を。
電子書籍
得意分野かな
2019/12/31 20:57
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の得意分野の本である。
表題作は。
淡々とした語り口であるが、戦場と埃とゴミの臭いがする部隊をうまく表現している。
その舞台の中の人形との対比が見事である。
そのほかの作品も各々個性はあるが同じ基調を持っている。
紙の本
ヒトとは
2015/09/29 12:27
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投稿者:ゐづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
DX9が連作全体を通底するガジェットな訳だけど、過度に主張してきていないなという印象を受けた。アンドロイドを題材にしながらも、やはり氏の描きたいのはそれに対照されるヒューマニティなんだなと改めて。特に表題作と「ロワーサイドの幽霊たち」が印象に残った。前作収録の「人間の王」を読んだ時も思ったけど、この人は虚実の混交が本当に卓越している。
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≪本の感想ではありません≫
東西冷戦が指導者・思想家に引っ張られた対立なら
昨今の紛争は人々の民族、宗教の意識に姿を変えて
湧き上がり、制御不能になった状態なのかと。
そこに米国中心の指導者たちの思想に動かされる
人々、国々と民族の意識がが互いに異なる地平で
ぶつかり、決して交わることない視点で争う。
で、日本はというと機械、技術の面で世界にかかわり、
思想や意識とは距離を置きながら、なんとなく
世界に組み込まれ、覇者側に染まる、と。
いや、この短編とは直接関係がないのだけど、
この本を読んで、場を支配する空気というか、
なんとなく、現代の世界と安倍以前の日本の
立ち位置がそんなかんじだったかと。
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難しいし重いし暗いが、発想の面白さと奇抜さが良い意味でとっぽくて抜き出ている。
解説を読むと、自分の見たものや趣味を反映させているようだが、それもまた非常にディック的でヤバくて良い。
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SFは現在と地続きなんだと実感させられる作品。紛争地帯、テロの現場、そして斜陽の北東京の団地が描かれます。そう遠い未来ではないですが、実感を持って迫ってくる。
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文章が詩的過ぎるな、というのが気にかかっていたが、それは自分がSFとして期待をしていたからであって、意図していたのはSFチックな設定を借りた文学だったのだろうなと、読み終える段になって気付く。
DX9に仮託されているものは明記されないが、いずれの短編でも死後の永遠性と、肉体と現実を超越した普遍的な「意識」の世界の象徴として描かれている。宮内が描きたかったのは911以後の血生臭い世界において、脱臭された世界を目指す人々の思いと、それを実現し得る技術の存在であり、ここで数々描かれるその他ガジェットや設定は、そのための装置でしか無いように感じる。
そしてDX9を経て人々が得るものは、そのモデルたる「初音ミク」によって、ここ10年の日本音楽界が経た過程と酷似する。だからこの物語が夢想であるとも、浮足立ったSFだとも思えず、ただ愚直にこの世界線の先にある未来として、心の通わせられる文学の世界として読み取ることができた。傑作と呼んで良いのではないか。
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日本製のロボットDX9を媒介に世界各国のテロや紛争地区の近未来を描いた連作短編。
民族問題や宗教問題などの歴史的背景と問題の複雑さが各短編で描かれるので、正直作品を理解しきれたかどうかは自信がないのですが、それでもこの作品に備えられている力というものは十二分に感じました。
その力の理由に作品の独創性がまずあると思います。現代においても未だ解決の糸口が見えない民族や宗教の問題、それを近未来とDX9というSFのガジェットを使ってどう描くか。表題作や「ハドラマウトの道化たち」でのDX9の利用法や政治の統治法もすごいなあ、と思ったのですが、なによりすごかったのが「ロワーサイドの幽霊たち」。虚実を織り交ぜて語られる壮大な物語に心を奪われました。
そしてそうしたアイディアだけでなく文章も独特の詩情があります。だから理解しきれなくても、これは力のある作品なんだな、というのが分かるのです。
『盤上の夜』を読んだ時も思ったのですが、宮内さんは今までのSF作家とはまた違った世界を目指しているように思います。作中のSF要素もその世界を表現するために一番都合がいいのがSF的な世界観なだけであって、そのうち分類不能な新しい文学が宮内さんの手から生まれるのではないか、読み終えてそんな考えがふと湧いてきました。
第34回日本SF大賞特別賞
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日本の某メーカーが愛玩用として開発した少女型ロボット「DX9」。歌うことが主な機能の彼女らは、安価で改造しやすい低スペックの製品であったことから、世界各地で大量に購入され、本来の用途とは異なる目的のために改造・使用され、世界各地で降り続ける。ヨハネスブルグの高層ビルから、ニューヨークのツインタワーから、アフガンの戦場から・・・DX9が「降る」光景を共通項に、不穏な世界情勢の中でもがく人間像をリリカルに描き出す連作短編集。
少女型ロボットが、空から降ってくる。それも、時によっては雨のように大量に。
SFとジャンル分けするには、あまりに詩的で幻想的な世界。その一方で、舞台となるのは戦場であったりテロの現場であったり、現実の国際情勢を強烈に意識せずにはいられない設定となっています。読後感は「かなり伊藤計劃」ヽ( ´ー`)ノ伊藤計劃以降、こういうムードの世界観が流行っているんですかね。ただし、未来に多少なりとも希望を残すストーリーが多いところが、伊藤計劃との大きな違い。
確かに面白い作品です。洗練された筆運びにはただならぬセンスを感じます。この世界観が好きな人には、たまらない作品だと思います。
が、鴨的には残念ながらどうしてもしっくりこないところがあり、手放しで絶賛するには至りませんでした。しっくりこないところとは、語弊を恐れずに言えば「SFとしての説得力」です。耐久性の試験をするためだけに高層ビルを買収して毎日数千体もロボットを落っことすって、その会社はどんなコスト管理してるのか?安価で低スペックが売りのDX9に、どうやって人格転写できるだけの容量が確保できるのか?あの「9・11」をロボットを使って完全再現する意味って、結局何?・・・などなど、イメージ重視の人にはおそらくどうでも良い細かいことなんでしょうが、鴨にはそのリアリティの無さがどうしても引っかかってしまい、せっかく現実社会と地続きの舞台設定を採用しているのに何だかもったいないなぁ、という印象を得るに至った次第です。
と、ここで鴨がくどくどと述べるまでもなく、巻末の解説で大森望氏が「最後のところで論理よりも美を優先する反SF的な作風」と端的に表現しておられました。正にその通りの作風で、SFとして評価すること自体が筋違いなのかもしれませんね。気になる作家であることには違いないので、これからもチェックして行こうと思います。
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全体的に内省的で様式美に溢れてる作品。現代人の苦悩とかクソどうでもよくて、さすがに「北東京の子供たち」だけは読むに耐えなかったけど、「ジャララバードの兵士たち」、「ハドラマウトの道化たち」はエンタテインメントとして面白く読めた。事実の調査や盛り込みはすごいと思う反面、wikipediaを並べた小説(もちろん、この作品は違うけど)のように見えてしまって、やり過ぎはあまり好みじゃない。事実は小説よりも奇なりのフックを超えたやっぱり小説の方が奇なりを期待して、著者の近作を読もうと思う。
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素晴らしい。何でもっと早く読まなかったんだ、あたし。
今生きている世界について自分が何も知らないってことを教えてくれた。
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5篇全編に渡って、ロボット「DX9」が建築物の上から落下し続ける様子が描かれている。
物語の中には9.11以降、そして伊藤計劃以降の「閉塞感」みたいなものが漂っている。
「そこに留まり朽ちていくか、道を切り拓くべく出て行くか」。物語中で建築物からの落下を繰り返し続けるDX9は「留まり朽ちていく」ものの象徴として描かれていると思う。対比として描かれている作中の主人公たちは最終的には「道を切り拓くべく出て行く」ことになるが、全てがハッピーエンドとはなっていないように思う(シェリルは凶弾に倒れ、ザカリーは死に、璃乃はDX9へ接続するようになる)。
ある意味で「俺たちの戦いはこれからだ」的な展開とも言えなくもないが、未来への希望を描いているようにも感じる。
作中では史実と架空が交差して、フィクションとノンフィクションの間をゆらゆらと揺れるような浮遊感も読む人を不安にさせるのかもしれない。
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個人的にすごく好きだった。
多分実際に海外で育っているから、
取材旅行だけで適当な雰囲気の作とは違う
リアリティが好き。
文章の涼やかなとこも好き。