ロシアの文豪ドストエフススキーの短篇小説の世界が堪能できる一冊です!
2020/05/11 10:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーによる短篇集です。表題作にもなっている「白夜」は、サンクトペテルブルクに引っ越して以来、友人が一人もできず夢想的で非常に孤独な生活を送る青年が、白夜のある晩に橋のたもとで一人の少女と出会うという物語です。不器用な青年は少女に恋心を抱き、逢瀬の度に気持ちは高まっていくのですが、彼の前に少女の婚約者が現れその想いはあえなく散ってしまうというストーリーです。その他、ドストエフスキーの傑作短篇である「おかしな人間の夢」、「キリストの樅の木祭りに召された少年」、「百姓のマレイ」、「1864年のメモ」が収録されており、ドストエフスキーの短篇小説が存分に味わえるものとなっています!
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投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこはともなく喜劇的でもあり、妙な明るさがあって読後感は悪くないという不思議な話であった。これなた多様な小説家の一面なのだろう。
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「白夜」は爽やかなラブ・ストーリー。最後はナースチェンカに語り手の主人公が振られるのだが、後味がとても良く、幸福感に包まれる不思議な本。主人公が偶然知り合った少女に自らの「物語」を語っていく。ドストエフスキーとは思えないロマンティックな情景が優しい。出会いから微笑ましい。印象に残る言葉はナースチェンカの「あなたが私に恋をしないところが偉いなんて褒めて、あなたの愛情を嗤ったりして、あなたを侮辱してしまって」と謝罪する科白。なんとドストにこんな清涼剤のような作品があるんだ!そして「キリストの樅ノ木祭りに召された少年」のように有名な「マッチ売りの少女」を想起させるメルヘンチックなストーリーも。一方、「おかしな人間の夢」の主人公は「地下生活者の手記」と似ている。幼児虐待は彼の真骨頂のように思う。
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おすすめ資料 第286回 (2015.6.5)
「えっ!これが、あのドストエフスキー!?」と帯で紹介されているように、ドストエフスキーの一般的なイメージを覆すような短編小説集です。
(残念ながら帯はもうありませんが、Web上で帯の紹介文を読むことはできます。)
『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』からドストエフスキー・ワールドに入った人はきっとびっくりしてしまうでしょう。
多少の好き嫌いはあるかもしれませんが、こんな世界観も持っていたんだ、とドストエフスキーの意外な魅力が味わえます。
ぜひ手に取ってみてください。
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健気、ここにいます。
「白夜」の主人公みたいな人を健気というのではないでしょうか。
解説で訳者の方が述べているように、この作品たちは、(ドストエフスキーらしい)重苦しく、暗い印象より白夜という言葉から連想されるような薄明るい光に照らされている印象です。(決して春の昼間の陽射しのようではないけれど。)そのことで特に表題作の「白夜」の読後感は優しく、健気な主人公はいとおしい。
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面白かったです。特に表題の『おかしな人間の夢』と『メモ』は、ドストエフスキーの作品を理解するために役に立つと思い、学生時代にやったみたいにメモをとりながら丁寧に読みました。『罪と罰』のラストを彷彿とさせる、とても奇妙な、そしてなにか真理を含んでいるように思わされる夢。大胆なキリスト教的信仰告白。彼の作中人物たちが、苦しみにのたうちまわり、傷付いて血を流し、発狂し、殺し殺され首を括りピストル自殺をし、あらゆる痛みを与えられながらも、ほんの数人がようやっと掴んだなにものかを、言葉にするとこうなるのでしょうか? いえ、結論を出すにはまだ早いと思います。これだけが答えではない、むしろこれは彼の思想の一部に過ぎない、という風に思えてなりません。人生と社会秩序に反抗し、己の偉大さを打ち立てようとしたラスコーリニコフやイポリートは確かに苦しみましたが、一方で己を無にし他者に尽くしたアリョーシャやムイシュキン公爵もまた苦しんだのです。現実の世界には正義や信仰への報いも、悪や罪への罰もない。ドストエフスキーの作品はどれも、それぞれになんらかの真理と痛み、そして人間の弱さへの同情に満ちています。1つの思想に容易く収束させられるほど単純ではない。それでも、本書に収録された物語やメモには、彼の本心に迫るに足る思想があり、とても無視できません。大変興味深く読めました。
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おかしな人間の夢、がすごい。宗教の真髄を余すところなく語っている。ゾクゾクする。
百姓のマレイは好きなテイスト。
白夜は下手だが、最後のまぜこぜになったねじれた感情の表現が秀逸。
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ドストエフスキーは「罪と罰」は小学生の頃、所謂子供向けダイジェスト版で読んだ。「白痴」は高校生の時分に父親の本棚の文学全集から引っ張り出して読んだ。辻原登さんの「東京大学で世界文学を学ぶ」で「白痴」を恐ろしい小説と取り上げていたので40年振りに読もうと思い、反射的に本屋で手に取った。
読み始めて、あれ、ムイシュキン侯爵の話じゃないと気付く。年かな~。白痴にも白夜の情景があったような気がして勘違いしたかな~。う~ん。
さて、「白夜」。孤独な主人公が泣いていた少女と出会う。人付き合い出来ないくせに、彼女に喋りまくる主人公。二人の心が同調しているのは判るけれど、ドストエフスキーってこんなメンドイ人だったのか。面白くないわけじゃないけれどねえ。これを今の作家が書いたら、ボロクソに云われるんじゃないかな。
第3夜でこの話読んだことがあるような気がした。高校の時代に白痴を読んだとき、この小説も読んだんだろうか。白痴に似たエピソードがあったんだろうか。
「おかしな人間の夢」などの短編。ドストエフスキーってやたら深刻な顔をして、難しい大作を書いた人という印象だったから、意外に思う処があった。
「おかしな人間の夢」自殺を考え、ピストルを前に、ふと眠りこけて、見た夢.地球じゃない星で会った敬愛に包まれた人々。アーサー・クラークのSFを思い出したが、読み進める内に、大〇隆〇の理想世界のイメージに似ているなと感じた。キリスト教徒のイメージする理想ってこういうものなのだろうか。共感する部分もあるが、判らない部分も半々。
妻が死んだ後の手記もある、互いに傷つき合う存在だったと解説にあった。詳しくは判らない。
これからドストエフスキーをどれだけ読むかわからないが、その時にきっと本書のことを思い返すだろう。
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『白夜』
不幸比べから始まり、どっちなのよ⁈という流れになり、やっぱりそっち行くんかよ!という結末。
ナースチェンカは、白痴のナスターシャのような、どっちやねん女だった。
『キリストのヨールカ祭りに召された少年』
かなり短いストーリー。号泣した。貧しく、母親がいなくなり、少年もまた孤独死。死んで母親と再開する。
『百姓のマレイ』
貧しいと心が荒んだりする。でも、ロシアの民衆にもこのような心の持ち主がいたんだとドストエフスキーは伝えたかったらしい。
『おかしな人間の夢 幻想的な物語』
『一八六四年のメモ』
この二つの短編は思想哲学的なものだけで面白いものではなかった。
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「百姓のマレイ」がよかった。主人公がふと、子ども時代に、農奴のマレイに優しくしてもらったことを思い出す。身分も学歴も関係なく、徳のある人はいるんだということ。色眼鏡で見てはいけないということ。ドストの人に対する優しい視線が心地よい物語。
一方で、ラストの「1864年のメモ」はよくわからない話だった・・・
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白夜: とある内気で空想家な青年が、橋で泣いている少女に出会う。彼はすぐに彼女を愛するが、彼女には一年前に別れ、再開を誓った人がいて、その人が現れないがために泣いていたのであった。
恋の初々しさを感じるストーリー。
おかしな人間の夢: 自殺をしようとしていた男が、夢で別世界へ行き、互いに愛し合い真の幸福で満たされている人々に出会う。しかし、彼が地球から堕落を持ち込み、その世界は変わり、地球上と同じ状態になっていく。
彼は夢から醒めたとき、自分は真実を発見したと確信し、伝道を始める。己を愛するように他者を愛せよ、と。
幸福状態の描写が美しい。が、堕落を人々は喜んで受け入れていく。
「生を意識することは、生そのものよりも高尚なのだ」「幸福の法則を知ることは、幸福よりも高尚なのだ」
というのが、堕落した世界での価値観であるが、まさにそのような考えは身の回りでよく見かける。
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夢想家で人付き合いが下手な主人公の気持ちがよくわかって途中すごく辛くなった『白夜』。
でもドストエフスキーにしては明るくて読みやすいほうなんだと思う。
ナースチェンカ…主人公はさっぱりした気持ちになれてたけど実際あんなことされたらすごく怨んだり辛くなったりしそう…。
『キリストの樅ノ木祭りに召された少年』と、『百姓のマレイ』もよかった。
短編てこともあってわかりやすく、読みやすかった。
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タイトルに表記されてるのが短編。他は短短編。「白夜」ロマンティックとは一体なんなのかねと考えることが度々あり、これ(ここに書いてある)なんかなー。内容というより語り口調。「私はこの人好きかもしんないわ」と感じた時の高揚感。でもそれって今だけのことだし、けして確かな物なんかじゃない、その儚さを嘆く物なのかしらー。「おかしな夢」熱いおとこのー。夢ということにしといて、世の中に対する不満、むしろ生きてる人間の怠慢さに対してウガアア!って感じ。古典って多分正解はなくて、個々で味わえよ、っていう編集スタイルだよね。
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表題作である偶然出会った妄想青年と少女の恋愛物語が印象的。女のリアルスティックさと男のやせ我慢(ではないのだろうと思うけど)が感じられる。構成もすっきりしていて読みやすい。
農夫の話ではドストエフスキーの過去作も出てきて面白かった。
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読了。
ドストエフスキーの短編集。
うっすい本だからサクッと読めると思ったらえらい目に遭いました。
「白夜」
ちょっと結末がショックで声を上げてしまう虚しさでしたが、白夜という特殊な時間に起きた物語がまるで幻を見ていたような気分になりました。
個人的にあまり爽やかさは感じられず
女性不信になりそうなくらいショックでしたw
主人公が「貧しき人々」のマカールに似た不器用で自意識過剰なタイプでしたが、個人的にはマカールほど感情移入できませんでした。
「キリストの樅の木祭りに召された少年」
クリスマスの夜を過ごす不幸な子どもたちを想像して書いた物語。
妙にリアリティがあり、実際に当時のロシアで起きた出来事なのではと思うくらいリアルな描写でした。
クリスマスという賑やかな祭日と子どもの貧困のコントラストが、彼らの結末をより悲劇的なものに感じさせる。
たとえ哀しい最期でも彼らに救いがあってほしいという著者の願望が垣間見える。
「百姓のマレイ」
ドストエフスキーが9歳の時に体験したことを20年後シベリアの流刑地で回想したお話。
流刑地でろくでもない連中に囲まれて生活する中で人間に救いを求めていたドストエフスキーが、過去に農奴のマレイが見せてくれた愛情と教養、優しさの記憶を掘り起こすことで、救いを取り戻す過程がよかった。
「おかしな人間の夢」
「1864年のメモ 」
めっちゃ読むの疲れました。
自分では想像が追いつかない世界観で、苦痛すら感じるレベル。
人間は無私によって自分以外の世界と繋がることができる。
自分が苦しんでいる時でも、同じように苦しんでいる他者への共苦によって自身の苦しみから解放される。
共苦は自我からの解放でもあるんでしょうかね。
安岡治子さんの解説がないと厳しい...
ドストエフスキー自身が、一度死刑判決を受けて人生のどん底を経験しており
作品の根底に「復活」という救いの願望が潜んでいる気がしました。
そう考えると、不幸な子ども達への共苦によってドストエフスキー自身も救われていたのかもしれません。