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大聖堂(下)
トムの死後、大聖堂再建を引き継いだ息子のアルフレッドだが、大聖堂が崩壊してしまう。そこへ、ヨーロッパを放浪して修行中だったトムの弟子のジャックが帰還し、大聖堂に新たな光が...
大聖堂(下)
大聖堂 下 (SB文庫)
商品説明
トムの死後、大聖堂再建を引き継いだ息子のアルフレッドだが、大聖堂が崩壊してしまう。そこへ、ヨーロッパを放浪して修行中だったトムの弟子のジャックが帰還し、大聖堂に新たな光が……波瀾万丈の大ロマン小説、感動のフィナーレ! 巻末には養老猛司による「解説」付き。
スパイ小説「針の眼」など、スパイ・冒険小説で知られるベストセラー作家フォレットですが、この長大な大ロマンである「大聖堂」は彼が10年以上の構想を練って世に送り出した、もうひとつの代表作です。約50年かけて大聖堂の修復にあたる職人トムやその息子をはじめ、幾多の魅力的な人物が織り成す壮大な物語に、あたかも目の前に壮麗な大聖堂が出来上がっていくような気がするでしょう。
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紙の本
理知が暴力に打ち勝つ物語
2009/06/02 22:20
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は12世紀のイングランド。大聖堂建立を目指す建築職人、より善き神の道を歩まんと教会改革に邁進する修道院長、豊かな生活が一変した伯爵家の娘、そして彼らの仇敵である残虐きわまりない豪族の息子。こうした登場人物たちが切り結ぶ、およそ半世紀にわたる壮大な波乱のドラマを描いた小説です。
日本語翻訳版は上中下3巻合計で、約1800頁。これほどの大作でありながら、「巻を措く能わず」と形容するのがふさわしい見事な作品です。
この物語が展開する中世という時空は、「常に野蛮が支配する」世界。自分たちが暮らす土地の領主の恣意に翻弄され、民衆は吹けば飛ぶような軽い存在です。「つねに貪欲が叡智にまさり」「懼れが憐憫に打ち勝つ」というこの社会にあって、建築職人のトムやジャック、修道院長フィリップ、そして元伯爵令嬢のアリエナたちは、度重なる暴力に打ちひしがれ、完膚なきまでに打ちのめされ続けます。これほど苛烈な人生にあって人は折れてしまうことたやすく、むしろ諦念に身をゆだねるほうがどれほど楽に生きられるであろうことか、そのことに気づかない彼らの姿に読者として茫然とすることたびたびです。
しかし彼らは常に歯を食いしばり、歩き続けることをやめようとはしません。理知が最後には必ず暴力を凌駕すること、それをあきらめることなく信じる。その姿に読者は必ずや強く鼓舞されるはずです。そう、これは遠い中世のお話ではなく、暴力に満ちた現代に生きる私たちの物語なのです。
1800頁の物語が終わりに近づく頃、その先のないことに読者として心さびしい思いにかられたほどです。
しかし幸いかな、1989年に書かれたこの小説に2007年、続編となる新たな物語が紡がれました。ジャックやフィリップたちの時代からさらに250年を経た時代の人々を見つめる「大聖堂―果てしなき世界」。
その世界へと私も歩みを続けることにしようと思います。
紙の本
秀逸の群衆劇
2011/03/08 21:33
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鈴子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中世イングランド。舞台や建築、修道院に関する説明が綿密で、興味深く物語を支えています。その上で繰り広げられる愛憎劇の、何と生々しく艶やかで魅力的なことか!
大聖堂が建つまでを追った一大叙事詩は、上中下で微妙に主人公を換えていきます。スポットが当たると誰もが主人公になり、そして誰からも目が放せません。
随所に仕掛けられた伏線が、ラストに向けて収束していくさまも見事でした。読後感もとても良かったです。
紙の本
勧善懲悪 大団円
2022/05/10 19:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
大長編の物語も、ある意味お約束どおりの「勧善懲悪 大団円」を迎える。しかし、複数の筋書き 伏線 多数の登場人物を、綺麗にまとめ上げた作者の筆力には、大変に感銘を受けた。この作品を読み終えた後、「大聖堂 はてなき世界」...などの続編も読んでみたが、やはり本作が一番優れている気がする。
紙の本
大ベストセラーに納得
2021/11/03 07:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
最後はきれいにまとまりました!大聖堂という名がタイトルになっていますが、この時代の人はとにかく信心深い。神を恐ること尋常じゃぁない。だから大聖堂の建設が非常に重要になるのでしょう。最終巻では、アリエナが変われば変わるもので、謙虚で強く、冒頭からまずそこに惹かれました!一方、ウィリアムは相変わらずもはや夜盗、こんなん領主か?などいろいろ思いながら楽しく読め、最終章で、トムの妻が死んだ場所に戻った場面ではなんだかこの長い物語の終着を感じました。世界的大ベストセラーと言われるのも納得の作品でした。