電子書籍
倫敦塔・幻影の盾 他五篇
著者 夏目漱石著
留学体験に取材した『倫敦塔』,日露戦争にまつわる怪談『趣味の遺伝』,アーサー王時代の物語『幻影の盾』など七つの短篇.同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモア...
倫敦塔・幻影の盾 他五篇
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倫敦塔・幻影の盾 他五篇 改版 (岩波文庫)
商品説明
留学体験に取材した『倫敦塔』,日露戦争にまつわる怪談『趣味の遺伝』,アーサー王時代の物語『幻影の盾』など七つの短篇.同時期の『猫』と全く異質なこれらの作品の世界はユーモアや諷刺の裏側にひそむ漱石の「低音部」であり,やがてそれは『それから』以後の彼の全作品に拡大されてゆく. (解説 江藤淳・注 石井和夫)
目次
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- 倫 敦 塔
- カーライル博物館
- 幻影の盾
- 琴のそら音
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「琴のそら音」は傑作
2018/06/27 20:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石の短編集であり,七編が収められている。
中でも,「琴のそら音」は,怪談ものであるにもかかわらず,面白い。
主人公靖雄と友人津田君との軽妙なやり取り,迷信深い老婆が語る不思議な話,靖雄の取越苦労と露子への愛情・・・。
とても読後感が良かった。
電子書籍
幻影の明治
2017/12/23 20:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーサー王伝説におけるランスロットと王妃の物語「薤露行」。それと同時代の、やはり伝説と騎士道の物語「幻影の盾」は、タネ本は分からないが、日本の八犬伝など伝統的な伝奇小説風のストーリーを、イングランドを舞台に書いてみた印象もあって、ただ硬質な文体が魅惑的だ。
「趣味の遺伝」は、日露戦争で戦死した友人の墓に花を供える女性が誰なのか、その謎を解くミステリ風の構成、そして当時最先端の遺伝学を用いた科学小説的手法、そして戦争の傷跡を癒しながら、そのメカニズムの奇妙さに疑問を呈するという、七面六臂の高速展開小説で、その肌合いはチェスタトンも思い起こさせる。推理も一直線ではなく、現実の様々な日常に埋もれそうになりつつ、度々浮かび上がってくる経緯も面白い。
「琴のそらね」はオカルト的心情に引っ張られる主人公だが、そういう人の心理に分け入っていくのがうまい。ただこれはあくまで、合理的に説明できる世界から、非合理な世界を眺めるものであり、つまり近代合理主義の一つの一つの派生なのかもしれない。
イギリス留学中の体験風な「倫敦塔」「カーライル博物館」では、かつてその場所で起きた歴史を幻視する。知的スリルと郷愁を誘い出す手際はさすがか。
結局、伝奇、幻想、科学と、様々な方向性を模索しているようで、常に時代の流れを取り込もうとしているようにもうかがわれ、ダイナミックさが愉しめる作品集。