紙の本
粘膜にまみれた運命の歯車は 無慈悲に人間を飲み込んで行く
2010/05/30 17:22
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:御於紗馬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
粘膜シリーズも早くも第三弾。
帯には「シリーズ最新作にして最高傑作」とありますが、
ある意味これは正しい。
飴村行は一作ごとに、確実に腕を上げています。
ストイックなまでに今風の言葉を排除した地の文は
狂気じみた銃後と戦中の様子を淡々に描き、
登場人物の会話はややシモに走ることは有りますが、
ウィットに飛んだユーモアを感じさせます。
そして、悲惨な部分はとことん悲惨に、
残虐なところはとことんに残虐に、その筆は止まりません。
しかし、根底に流れるのは勧善懲悪であり、因果報応。
飴村行は海野十三や夢野久作の流れを組む
恐怖や推理や科学が渾然としていた時代の後継者です。
「新・冒険小説」と言っても過言ではないかもしれません。
本作品ではとうとう、メロドラマ的展開も身につけました。
どんなキャラクターでも、死ぬときは、コロッと死ぬ。
「一ページ先が、予測不可能」というのが
誇張でもでお世辞でもないのです。
ホラーの枠を越えた暴走する運命に酔い痴れてください。
予定調和的に全てが収まるのは、奇跡としか言い様がありません。
以下、蛇足:
実は『粘膜蜥蜴』を見かけた店頭で購入したために
ここでの書評が書けなかったのです。
どうしたモンかと煩悶しているうちに、
三作目が出てしまったのです。『粘膜蜥蜴』もお勧めです。
紙の本
グロテスクな中にもユーモア
2015/08/29 07:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は飴村行の「粘膜シリーズ」の第3弾だ。それぞれ3冊は独立した話だが、時には物語の端々がつながっていく。ぜひ第1作「粘膜人間」、第2作「粘膜蜥蜴」、そして本作の順番で読んでほしい。著者は1969年の戦後生まれだが、作品の舞台には第2次世界大戦を選んでいる。極限状態における人間の心理をリアルに表現している。暴力的な描写のなかにも独自の笑いを忘れないのが著者らしい。
投稿元:
レビューを見る
2010/5/28 Amazonより届く。
2013/3/28~3/30
旅行中の電車内で読了。
久しぶりの粘膜シリーズ、三作目。相変わらずのエロ、グロ、ナンセンス満開の作品。磨太吉、矢太吉兄弟、へもやんのキャラが良い。これまでのシリーズでは一番読みやすいかも。
投稿元:
レビューを見る
粘膜シリーズ。って、なんともすごいシリーズタイトルになってしまったものですね(苦笑)。
タイトルどおり、双子の兄弟の物語。戦争などの暗い時代の中で兄弟に降りかかるとんでもない災厄。双子であるが故の悲劇と喜劇。どうも陰惨でグロテスクで暴力的な雰囲気なのに、そこここに感じられるユーモアがポイントです。くすりと笑わされることが少なくありませんでした。
そして「黒助」の正体がああいうことだったとは! そうして因果はめぐるのですね。
投稿元:
レビューを見る
20100618読了。
「粘膜人間」「粘膜蜥蜴」に続く、粘膜シリーズ第3弾。
マタ・ヤタ兄弟が繰り広げるエロ・グロ世界。読後の気持悪さ、グロい描写は前作の方が強烈。
今回は純愛・ミステリ要素でややマイルド。
投稿元:
レビューを見る
昭和初期。双子の須川磨太吉と矢太吉には同じ好きな女がいた。カフェーで働くゆず子は美人で言い寄る男も多かった。二人もふられ続けたが、ある日、なぜかゆず子が食事を申し出た。が、それは凄惨な運命の幕開けだった…。
「粘膜」シリーズも3作目に入って作者の力量が上がったのがよくわかった。その分、荒削り・破天荒な魅力がやや無くなったように感じたのは残念。物語の最終盤で私の笑いのツボにハマるシーンがあって、電車の中で読んでいなくてよかったと思った。ヘモやん、最高!
(B)
投稿元:
レビューを見る
あらすじ
≪ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。≫
作品の世界観、時代設定はこれまでのシリーズと同じで、
読み始めの時の取っ掛かりこそ、なぜかすんなり頭に入ってこないような軽い抵抗があるんですが、
読み進めてしまえばストーリー運びの上手さもあるので、またあの世界が始まったなと、すんなり入れました。
物語は全部で三章に分かれていて、
第一章で主人公の磨太吉と矢太吉が出てきて、
それから家で飼育するフグリ豚の世話をする、
ヘモやんという72歳のじいさんが出てくるところまでは普通なんですが…、
って、いやいやフグリ豚ってww…、いきなりフグリ豚ですからね、金玉豚ww、おいおい。
そんで、そのヘモやんの唯一の楽しみというか生き甲斐が、メスのフグリ豚の梅子と毎日“やる”ことで…、
ちょwwちょぉーっつ、いきなりですかい(笑)
ヘモやんはかなりの面白キャラですけど、初めてこの世界観に触れる人はどんな反応するんでしょうかね。
でもこれこそ粘膜ワールドなわけで。
飴村ワールドなわけで。
さらに第一章は、カフェーで働くゆず子という女が出てきて、
恋してしまった磨太吉と矢太吉が争ったり、ヤクザの組長とゆず子を巡って命懸けの戦いしたりで、
まさかまさかのラブストーリー展開。
えぇーっ!!
思いもしなかった恋愛小説のような話に驚きました。
第二章は、第一章のラストで日本軍に召集されて、場面が一気に変わって第二次世界大戦真っ只中の船上から。
第二章はこれまたまさかまさかの戦争小説で、展開の変わりようにびっくりしました。
「粘膜蜥蜴」でも戦場のシーンはありましたが、
この「粘膜兄弟」でも戦場の描写は細かいとこまでリアルに想像出来たので、
飴村さんの戦場を描く才筆はかなりのものだと思います。
巨大サソリの登場も不気味で面白かったです。
それから、ちゃんとエログロ入れてくるあたりもさすがだなって思いました。
そして窮地を脱して逃れ逃れて、第三章は再び日本の兄弟の家から。
磨太吉とゆず子の穏やかな生活。
殺したヤクザの組長の子分との対決。
昔、父親を自殺に追い込んだ者への復讐。
磨太吉と矢太吉、兄弟の確執。
時たま矢太吉を襲っていた謎の黒い影、黒助の正体…と、
次から次へと、一体この小説はなんなんだ!!、という感じにもなりましたが、
お腹一杯になったんで、まぁ満足はしました。
「粘膜蜥蜴」にも登場した爬虫人や、死体と“やる”のが生き甲斐のじいさんの話が出てきたり、
ちょっとだけですけど「粘膜蜥蜴」とリンクしてるのは面白いと思いました。
爬虫人の亀吉が、のちの富蔵だったりしたら凄いなと思ったんですけどね。
今作にも「粘膜人間」「粘膜蜥蜴」にあったようなミステリー的部分が一応はあって、
子供の頃から矢太吉を襲う謎の黒い影・黒助の正体が、ラストで明らかになるんですけど、
一応伏線と驚きもあったので、この辺りは広義のミステリーとして評価されるんでしょうか。
年末のミステリーランキングに入るのかは分かりませんが、
今作もこれまでの粘膜シリーズ作品に負けず劣らず面白かったです。
それにしてもほんとこの作品は、恋愛、ホラー、サスペンス、ミステリー、戦争、冒険、エロ、と、
もう何でもありでジャンル分けは難しいし、読んでても、展開も何もめちゃくちゃだなと思う時もありますけど、
でもそこがこのシリーズ、この作品のいいところなんでしょうね。
このスタイルこそ粘膜シリーズなんですよね。
綺麗に上品に上手くまとまってたら、それこそ普通の作品にしかならないでしょうから。
投稿元:
レビューを見る
トカゲ人間がいる昭和初期のパラレルワールド、粘膜シリーズの3作目。
相変わらず超絶グロい。
が、シリーズの中では比較的ストーリーがまともで、ぶっ飛び感が減っている気がする。
読みやすくなった反面、このシリーズ独特の魅力が薄れたとも言える。
どちらにしても個人的には相変わらず苦手。面白いから読んでしまうんだけど。
投稿元:
レビューを見る
ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。
へもやんに育てる高く売れるスグリ豚。豚とのSEXにはまる変体。磨太吉と矢太吉の双子。カフェのゆず子にいれこむ。ヤクザに誘拐された0のを助ける。はり吉の拷問。すずり豚の金玉はらしぼった薬で痛みは消える。ヤクザの死体は豚のえさ。訓練の後、召集令状でナムールへ。中隊長の女、蘭子。
とんでもないマゾ。ゲリラの襲撃に敵前逃亡。虫の息の蘭子を犯す磨太吉。
矢太吉がやる前に死んだ。逃げる途中でゲリラにつかまりリンチ。眼球をえぐられる。親指を切り落とし手錠を外し銃を奪う。途中で会ったヘルビノ爬虫人の亀吉に港まで案内させる。港の手前の崖から落ちて死ぬがお守りのおかげて蘇生。無事帰国。死体の軍服と交換したので死んだろ思われていた。
ナムールで死んだと思ったポんタと決闘。
父の仇、詐欺師を殺し矢太吉が逃走。ゆず子を犯すために戻ってきた。
兄弟で殺しあう。生きかえる代わりに、矢太吉の前に突然現れる黒子になった。憎いので殴りまくった。
梅子さいこうーとへもやんは毎晩叫んだ。
ゆず子は最初の結婚でヤミ堕胎手術のせいで子供できない体だった
投稿元:
レビューを見る
<>可愛い知人から紹介されて読んだ一冊。可愛い女の子が持っていたら、だいぶ理解に苦しむ話だった。グロが苦手なので、途中ダウンしそうになったけど、この玉手箱的なフシギ感はなかなかにすごかった。シリーズ読んでしまいそう。
投稿元:
レビューを見る
待望の「粘膜」シリーズ第3弾。でも前2作に比べると少し落ちたか・・・。最後は納得いかないが、しゃぶしゃぶは牛肉派の僕ですが、豚肉も食べたくなりました。
投稿元:
レビューを見る
人体切断、獣姦、拷問云々、相変わらず超インモラルな変態小説です。ただ前二作と比べ、勢いが落ちた感じがします。「蜥蜴」で推協賞を取った手前、嫌でもミステリ(的な要素)を期待しちゃうわけですが、「人間」にあった我武者羅に突き進む感じが薄れてしまった気がします。
投稿元:
レビューを見る
吉太郎が出てきたり、ヘルビノが出てきたり・・・と過去2作を読んでるとつながりがわかるんだけど、面白さでは粘膜蜥蜴を超えられず。
粘膜シリーズの集大成ではあるけど、最高傑作ではない。
ただ、へもやんとフグリ豚はよかった。
あいかわらず独特のキャラが冴えてる。
投稿元:
レビューを見る
飴村さんが上手くなったのか、読んでるコチラ側が
麻痺して馴れてきたのか分からないんですが、もう
既にこの世界観を普通に、当然の如く受け入れてしまって
いる自分がいます。というか...前2作に比べて、所謂鬼畜っぷりや
ぶっ飛んだ描写などは少し控えめになっていて、今作の
主人公の「磨太吉」「矢太吉」の双子兄弟が、割と普通な
人間に感じることすらあるんですけどw。
しかし、その分本筋であるストーリーが壮大になりつつ、
しっかり飴村作品として収拾するラストはもはや、唯一無二
なんではないでしょうか? 行き当たりばったりで展開されて
いるようでいて、しっかり伏線(なのか??)も回収するあたりは
所謂ミステリ畑の読者も惹き付けるものを持ってますよね。
単純にエログロ好きなサブカル寄りや、スプラッタなホラー
寄りのファン以外をも、面白がらせてる所以ではないでしょうか?
それにしても今作で登場する「ヘモやん」の存在の大きいことw。
こういうキャラを書かせたら本当に天下一品。ある意味、この
キャラが全てを持っていってしまいそうなのに、そうせず、印象的な
存在としてのみ扱うセンスが凄い。
あり得ませんが...実写化しても、この役を受ける俳優なんて
絶対にいないと思うw。
投稿元:
レビューを見る
粘膜シリーズ三作目。1番ストーリーがしっかりしていた。絶妙なファンタジック具合も良かった。一作目の耽美な感じももっと欲しかったけど満足出来る作品だった。