霜の降りる前に 上
リンダ・ヴァランダー、まもなく三十歳。警察学校を修了して秋からイースタ署に赴任することが決まり、この夏は父クルトのアパートに同居している。久しぶりの故郷で、旧友ふたりとの...
霜の降りる前に 上
商品説明
リンダ・ヴァランダー、まもなく三十歳。警察学校を修了して秋からイースタ署に赴任することが決まり、この夏は父クルトのアパートに同居している。久しぶりの故郷で、旧友ふたりとのつきあいも復活した。だが、その友人のひとりアンナがいきなり行方不明に。いなくなる直前にアンナは、彼女が幼いころに姿を消したままの父親の姿を見たと、リンダに告げていた。アンナになにが? 心配のあまり、まだ正式に警察官になっていないからと諫める父の制止を無視し勝手に調べはじめるリンダ。全世界で4000万部突破! スウェーデンミステリの巨匠マンケルの人気シリーズ。
目次
- プロローグ 一九七八年十一月 ジョーンズタウン
- 第一部 漆黒の闇
- 第二部 虚空
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ヴァランダーの家庭状況が・・・
2023/05/07 13:46
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「ファイアーウォール」で、娘のリンダから警察官になると告げられたヴァランダー。
新たな社会の幕開けとそれについていけないと自覚している彼だが、娘の進路選択を聞いてもとりわけ喜んでいるわけでもない。子供世代が親と同じ職業を選択したからといっても、しょせん時代も個々の考え方も異なるのが当たり前と見なされる現在、一口に「跡継ぎ」というくくりでは語られないだろう。
現実でも親子、または三世代にわたる警察官一家というひとを時々見かけるが、上の世代は裏も表も知り尽くした自分の職場を、子供世代が選んだことをどう思っているのか知りたいところだ。知っているからこそ就かせたくないと思う気持ち、逆に特殊な環境であるからこそ導いたり相談に乗ったりできるということか?
さらに今作ではリンダが実習直前という微妙なポジションながら、友人が不可解な失踪をしたことで警察の捜査と並行して自分なりの調査を始めるという設定なので、彼女の視点からすべての状況が語られることになっている。
するとヴァランダーやモナとの親子関係、小さいころの家庭環境など、今までよりもはっきりとしたことがわかるようになってきたのは面白い。
親には知られていない二度目の自殺未遂のシーンが彼女の心に深い痕跡をのこしたこと、その場を収めてくれた若い女性警官の存在など、今回の職業選択に強い影響を与えた要因が次々と明かされる。忙しすぎるせいもあるがこれらのことにまったく気づいていないヴァランダー、家族と言ってもその心の中は神秘の森だということがひしひしと胸に迫る。
また母親のモナという女性も気の毒なひとだと思う。シリーズではヴァランダーとの関係をさっさと終わらせ、経済的にも時間的にも恵まれていそうな新しい男性と再婚したことしか情報がなかったが、その再婚も修復不可能なほどの危機に陥っている。上巻終わり近くのモナのシーン、娘なら絶対に記憶から消したいものだろう。その場に残って慰めることはせず、当初の計画どおり友人の捜索を続けるリンダ。親との不毛な関係から距離をおきケンカを避ける彼女は、ストレスの多い警官に向いているともいえるし、自殺未遂から救ってくれた女性警官とはちがうタイプだともいえる。
そしてこの両親の老後の面倒まで視野に入れているのは、30歳前にしてはちょっと老成しすぎている感もある。
とにかく新しい視点が加わったことで新風が吹き込んだこのシリーズ、作者が存命ならどんな展開を考えていたのか返す返すも残念だ。