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電子書籍
遺作集 花見川のハック
著者 著者:稲見 一良
俺はもうまもなく死ぬだろう…ガン宣告を受けてから覚悟の10年、残された日時に刻みつけるように小説を書いた作家・稲見一良。男らしいやさしさを追い求め、花見川の自然を呼吸し、...
遺作集 花見川のハック
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花見川のハック 遺作集 (角川文庫)
商品説明
俺はもうまもなく死ぬだろう…ガン宣告を受けてから覚悟の10年、残された日時に刻みつけるように小説を書いた作家・稲見一良。男らしいやさしさを追い求め、花見川の自然を呼吸し、ときに少年の憧憬さえ甦る。本作品集は、腹水がたまり、半身になりながら、虫の息で、原稿用紙に鉛筆をなでるように書いた遺作の数々である。死を目前にして、透徹したまなざしで、人生を見つめた珠玉の物語。人は、こうやって生き、こうやって死ぬ……。
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まさに魂の短編集
2021/05/08 13:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
遺作集ということで、超短編のようなものもありますが、どれも稲見さんの魂がこもっている力強い作品でした。稲見さんの作品の特徴は圧倒的な行動で示す心情にあると思います。この短編集でも、形はいろいろあれど、どれも登場人物たちの行動に熱い思いを感じました。淡々と、淡々と、ただひたすら行動で、言葉より行動で表すという小説書きとしての矜持を感じました。それでいて、時折見られる名言も心に響きます。あらすじレベルで終わっている作品があってもこの短編集の価値は計り知れないとおもいます。
紙の本
血肉はぎ取るように書かれた物語
2002/05/15 10:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:踊るらいぶらりあん - この投稿者のレビュー一覧を見る
サブタイトルに「遺作集」とある。その通り、単行本は著者が亡くなった直後に出版された。彼の生前に書かれた他のどの作品よりも、自己投影の色合いが濃いように見える。著者自身も、死期が近いであろうことを意識していたと思わざるを得ない。
実は私は、単行本が出たときに一度この作品集を読んでいるのだが、あまりにも似通った作品が多いのが鼻について、そのときはこの本の良さが理解できていなかった。稲見一良の魅力を理解するのは、それなりに人生経験を積んだ大人にしか無理なのかもしれないと思う。
稲見一良の作品を読むにあたって、作家本人についての予備知識があるかないかで、読者の受け止め方は大きく変わってくるに違いない。大阪生まれでテレビ番組制作などに関わってきた人で、肝臓ガンの宣告をうけた後に執筆活動に入った。主に鳥を獲物に狩猟をよくする。1994年にガンでお亡くなりになった。
ガンの摘出が不可能だと知ったあとでデビューした作家は、文字通り血肉はぎ取るように執筆していたのではないかと想像する。だからこの人の構築する物語世界はどれもこれも、著者の体験に基づいた、著者にとってなじみ深い世界であり、描かれる男たちはみんな著者自身である。たとえ舞台がアメリカの森であっても、登場人物がアウトローの殺し屋であっても。登場人物の一挙手一投足、どれをみても読者は彼らの後ろがわに著者本人の姿を透かし視るはずである。
最後に収録されたわずか2ページの掌編「鳥」は、小説というよりは辞世の句と言った方がふさわしい。一読して涙する人もいるに違いない。