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  • 販売開始日: 2016/04/01
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • ISBN:978-4-10-111014-1
一般書

井上成美(新潮文庫)

著者 阿川弘之

昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前...

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井上成美(新潮文庫)

税込 1,034 9pt

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商品説明

昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。「山本五十六」「米内光政」に続く、著者のライフワーク海軍提督三部作完結編。 ※新潮文庫版に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。

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みんなのレビュー30件

みんなの評価4.4

評価内訳

信念

2005/11/27 02:29

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:米内光政 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「信念を貫く」と人は簡単に言うが、人生を通してそれを実践した人間は、滅多にいない。口では奇麗事を言うが、腹と行動は全く正反対のことを平気でやってみせる政治家や、感情のこもらない修辞を尽くした駄文を吐くだけの官僚。
 そういうものに飽き飽きしているのなら、この本を読んでみるといいかもしれない。学校では教わらない人物だが、歴史上に確たる足跡を残している人物の伝記である。著者が、多くの関係者からの聞き取りや史料を駆使して綴ったこの作品は、ただの伝記という枠を超えて、時代の側面を伝え、人間としてのあり方を考えさせられる力がある。
 とはいうものの、実際にこの井上成美が自分の身近にいたとしたら、あまり親しくはなれそうにもなく、寧ろ煙たく感じてしまうというのは、著者自身も認めるところである。

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井上成美提督に敬礼

2019/01/14 23:31

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

阿川氏による「山本五十六」「米内光政」に続く海軍提督三部作の完結編である。誰もが知っている山本五十六、日本史を選択した受験生なら知っている米内光政と違って井上成美という人は海軍に詳しい人でないと知らないのではないか。いくら学徒出身とはいえ、海軍在任中の将校・阿川氏ですら彼の名前は知らなかったと書かれている。でも、ではどうしてあとの二人に比べて圧倒的に知名度が低い井上大将を阿川氏が取り上げたのか。これは、読んでみたらわかる。とにかく上司にも部下にも「それを言ってはおしまいだ」という身も蓋もない発言をずけずけと言い放つのだ。だから、戦後に生活が困窮したときも「いい気味だ」と思っていた人がいたことも事実だが、「今、私があるのはあの人のおかげだ」と世話をしていた人もいる。この人を選んだ阿川氏はさすがだ

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「坂の上の雲」とセットで読もう

2023/08/23 22:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:和田呂宋兵衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る

司馬さんが「坂の上の雲」で描いた、日本海海戦を頂点とする、日本海軍の栄光。
阿川さんの本作は、その後日譚として読むと興味深い。
国民的英雄となった東郷平八郎が、軍縮反対を唱える海軍右派に担がれ、
没後は東郷神社まで出来てしまう。
日清・日露戦争で中国大陸に得た権益の無闇な拡大に熱中する陸軍、
それを、夜郎自大となった「国民世論」が後押し、
その動きに海軍も引きずられ、ついには絶望的な対米戦争に突入。
この憂鬱な昭和史を、司馬さんはノモンハンの敗戦を切り口に描こうとして、果たせなかった。
阿川さんは、井上成美という風変わりな海軍大将を切り口に、見事に描いた。
いや、風変わりなどという、生易しい人ではない。この人、日本人だろうか。
軍人の神格化など、おかしいと思ったことは遠慮会釈なく批判、
「アメリカと戦争して勝てるわけがない」と、頑ななまでに言い続ける。
空気なんか読まない、いい加減な妥協はしない、身内親類、先輩後輩といった情実では決して動かない。
令和の今でも、いくら有能でも、こんな人は日本の組織の中では生きにくいだろうと思うし、
こんな人を大将というトップにもってきた日本海軍という組織に凄みを感じる。
最終章の、彼が聖書を熟読していたというエピソードが興味深い。
切れ味鋭い論理で正論を述べ、身内親類には冷淡と思われるほど厳しい反面、
部下や使用人には温かく接し、戦後は近所の子供たちにタダ同然で英語を教える。
金銭には潔癖で文字通り清貧の晩年を送りながら、軍人恩給の停止には約束違反と怒る。
これは、キリスト教徒、しかも英国のピューリタン(清教徒)の生き方に近いのではないか。
ふと、そう思った。

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大日本帝国軍隊の新しい「語り方」を

2008/10/02 00:06

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 最近は、戦前日本の軍隊そのものについて、もっと考え抜いておく必要があるのではないかと感じている。評伝と言う以上に、さまざまな素材が盛り込まれている本書は、その点でよい手掛かりがありそうだ。実は、半藤一利の『日本海軍の興亡』(PHP文庫)をとりあげたかったのだが、BK1にはリストアップされていないようなので、いまのところの「次点」を取り上げたい。
 井上成美というと、昭和も末のことだったろうか、一大ブームともなった「最後の海軍大将」である。陸軍が主導する独伊との三国同盟に徹底して反対し、戦時中の海軍兵学校校長時には、適性語である英語教育を「敵を知る必要がある」ということでむしろ奨励。そして戦後には田舎で英語を細々と教えながら清貧の生活を貫く、云々。そうした硬骨の人物としてよく取り上げられる。もちろん、本書もそうしたポイントを外さないのだが、周辺の人物に数多く取材することで、井上や周囲の軍人たちおよび彼らが所属した帝国海軍のもつ様々な側面を見ることができる。
 個人的には井上をどう評価するかには関心がない。井上の武人としての戦歴は芳しくないことから、軍人としての資質を否定的に見る向きもあるようだ。ただ、戦前日本の「軍部」について、見方をちょっと変えると井上評価はまた変わってこよう。1930年代に入ってからは「軍部の政治介入」といった表現や解説がなされるが、明治以降の歴史を顧みた場合、「軍」の問題は政治の重要な焦点であり続けたし、軍部出身の首相も少なくなかった。いわば軍部とは、官僚組織であると同時に、(かなり無自覚な)「政党」の一つであったと考えてよいのではないかと思う。
 井上のテーブルマナーへのやかましさも、三国同盟反対と言う非戦主張も、政党人としての外交感覚のひとつとして読み解くことはできないだろうか。それは単に「海軍には見通しの良い軍人がいた」というだけの話では済まない。「政治」のプレーヤーの一つとして、明治から戦前において海軍がどのようにふるまってきたのか、を改めてとらえ直す必要が出てくるわけである。たとえば、終戦工作をめぐっては「日本海軍の終戦工作」(中公新書)という労作があるが、これから議論されてしかるべき点も数多いはずだ。
 ところで、「ライフコース」としての軍人を考えたい場合も、井上をはじめさまざまな人物をとりあげる本書はいろいろ素材を提供してくれそうだ。第二次世界大戦で「職場」を物理的に失った人々は少なくないだろう。一方、日本の職業軍人は、概念としても職場を失ったわけである。井上をはじめとする高年齢層は、それは(残りの人生を生きるのに必要な)金銭的な問題に集約されるわけだが、中堅や若手となると金銭+(職業)人生をどう展望するか、という重い課題が出てきたことになる。
 今も昔も「軍隊もの」には一定の需要があるし、メディアでもよく取り上げられる。これからは、好事家や紋切り型ではない切り口からの「軍隊」研究が大いに待たれよう。

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阿川弘之 『井上成美』

2013/10/24 20:07

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pachi0 - この投稿者のレビュー一覧を見る

阿川さんの海軍提督三部作の最後を飾る井上提督の物語。

淡々と井上成美の人生が語られていくのだが、700ページ近くに渡る長編、膨大な量の聞き取りを著者は行ったことなのだろう。その取材力と、その結果を一冊の本に書き起こす文章力、ただただ頭が下がるばかりだ。

手が止まらないので、一気に読み終えてしまった。

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2007/02/10 06:52

投稿元:ブクログ

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2008/04/21 22:37

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2009/11/10 12:22

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2010/12/26 22:50

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2011/08/29 23:45

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2011/12/11 07:26

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2012/01/28 09:35

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2012/05/16 01:57

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2012/08/30 23:15

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2013/09/15 07:58

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