生き残った人が意外だった
2019/01/30 12:03
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦闘機の不時着という方法を使って生き延びようとしていた藤倉は結局は死ぬんだろうなという気がいていたが、予想通りだった。だが、主人公の吉野は作者・阿川氏の分身みたいな存在だから戦死することなく終戦を迎えることができるのだろうなと思っていたら、生き残ったのは死ぬ確率が高そうに見えた鹿島だったとは。やはり、この当時の海軍予備学生たちは日本がどんな状況にあって、逆転勝ちすることなどけっしてないことを理解していたようだ。海軍というと潔さが信条かと思っていたら、予備学生たちと兵学校卒業生との暗黙という一面もあったのか興味をもった。やはり戦争体験者の記述を読むと、今の戦争ものはやはり絵空事に思えてならない
リアルでストレート。
2015/01/27 00:32
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は特攻学徒兵、吉野の手記の形をとった戦争小説です。
徹頭徹尾、戦争に反対して平和を望んだ藤倉ではなく、軍事的な教育に翻弄されていった吉野をあえて主人公に据えてるところがポイントだと思います。高等教育を受けてきた吉野ですら、度重なる死や、敗戦の空気の中で自分らしさを失っていく過程がリアルで、古い作品とは思えない程表現がストレートです。
それゆえに読みやすく、かつ心に響く戦争文学です。
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学徒動員され、特攻隊員の心情を日記形式で綴った小説です。
入隊当初は大学での万葉集の研究に名残を残し、戦争という波に飲まれていく主人公。徐々に死というものに対する考えも変化していく。 かなり前に読んだので内容もうすらうすらになりましたが今でも間違いなく自分の中で1番の戦争文学です。
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特攻隊となり散華する海軍予備仕官の青年の心情を、日記形式で綴る小説。万葉集を愛する純粋な大学生達だったのに、学業を中断して学徒出陣により召集され、日々の厳しい訓練に明け暮れ、飛行機乗りに仕立て上げられた頃には皆の気持ちも様々な方向へ。
誰もが懊悩する極限の状況で、若者達が死の恐怖や生への執着に立ち向かう…もし自分ならばどう振る舞えるのか、ふと考えてしまいます。
夢や希望を諦め、国の為に命を捨てるという事実を考え、組み立て、どうにか折り合いをつけようとしたり煩悶したり、受け入れたり。すさまじい心象風景が淡々と描かれています。
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生き方を4通りに分けた時、その目指したものがねじれるように四人に収まってしまった。
予備学生として従軍した阿川先生自身が、「死」に向かい順応していく、して行くように見せかけて懊悩するのその心理。彼らと年齢が近い分、今の自分に置き換えた時、非常時というくくりを取り外してしまえば、「人間はこんな風に変わっていくのだ」と振り返るような想いがしました。特攻攻撃の多くは学徒兵であったことは有名です。彼らの気持ちの部分に触れると、にがくて苦しくて、でもすごく側にあるような、そんな気持ちになります。
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何というか、描写が凄いの一言
藤倉悲しい。
この作品の中で、誰に一番感情移入をしたかと問われれば、
自分は間違いなく藤倉と答える。
藤倉が一番現代人っぽい感受性を持っており、でも、昇華の仕方は矢張り軍人らしさはあったかな
甘い物食べたがってた吉野がどんどん変わっていくのが、緩やかに教育に浸っていった感じで恐ろしいけれど、悲しかった。
教育の賜物と言うより、そうしないと生きていけなかったのやもしれない。
そう考えると、当時の世論的なものがいかに今と違う事なんだろう
最後の方の殺伐とした雰囲気の日記が、もう、ね。。。。
でも、日記を書く帳面も鉛筆もあったンだ。
特攻隊は死が近いから、意外と美味いモンを食べれてたンだね。
みかんとかいちごとか。
まぁ、輸送する術がないから其処で消費してたって感じだったけれども。
餓島とかにも届いてほしかったよねぇ……。うぅ。鼠輸送とかアホばかりなんだと。
吉野。最後のほうの殺気立ってる吉野。
吉野兄も悲しかった。
骨が見つかっていない人が多い事多い事。
今も、海や島の何処かに眠っているンだよね。
そんな方々に今の自分が生きている世界の土台を作ってもらったンだって思うと、
大事にしていかなきゃな、って思う。
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春の城より読み終わるのに時間がかかったのは,やはり死と向き合わざるを得ない特攻学生の日記という重い内容であったからである.戦争の虚しさ,不条理を知りつつも死と向き合うことから目をそらさない吉野次郎の姿から,いろいろなことを考えてしまう.吉野の生き方や死を現代の日本の基準,価値観からだけで判定してはいけないのではないか.
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読んだ期間*2010年10月26日〜11月3日
“かきつばたが咲いても、苺を食っても、ひとつひとつこれが最後の此の季節のめぐみとおもえるので、こころにしみてありがたいのである。”
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戦争に疑問を持っていたものの、世間と隔絶された環境で八紘一宇の理想を繰り返し教え込まれ、「殉国のこころざしをかき立てねばならぬ」と思いつめ、粗悪な燃料や生死に関わる不当な差別の中、弱いこころに悩みながら、さだめられた死を祖国のために充分意義のあるものにするため、自ら思想を変えようと努める。
しかし戦争末期になると燃料が不足し、何もすることがなくなってしまう。
「自分の愛した家、学園、美しい京都や大和の土地、万葉集、すべてをようやくに振り捨てて、気持ちをひとつにひきしぼってきた者が、いま唯一の自分の生き甲斐になりかかっていたことをまた捨てさせるのか。のびのびと生きることも、いさぎよく死ぬことも、われわれは共に封じられてしまうのか。」
そうして周囲の人々が次々と死んでいく。
思わず二度読み返してしまいました。
淡々とした文体ですが非常に鬱屈としていて、また日記という形式だからこそ、主人公の思考や感情がすっきりと素直に表現されています。
内地での訓練が中心であるため、戦争小説でしばしばみられる残虐な描写は少ないです。軍隊内から戦争の様相を冷静に見つめる一方で、抑圧され歪められていく一個人の青春期を描いています。
登場人物がほんとうに若いです。歳が近いのもあって深く感情移入しました。
沢山の事柄、執着を捨てて死ぬために危険な訓練をし、そして必ず死ななければならない。自分と同じ年頃でそういう現実に直面していたのだということを思います。
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時間が経つにつれ、変化していく心情。
生きたい、生き残りたい、そして「死んでやるのだ」という心の動きの狭間で、どちらにしても痛みが残る悲しさ。
読み進めて、藤倉のくだりで鳥肌が立った。嘘だ、と言いたかった。彼の苦悩は現代の、戦後教育を受けた私たちにも分かるはずだ。
最後の方は喪失感が途方もなく大きくて、言葉にならない。どうやって生きていくのか、私には分からない。
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文庫本の解説で安岡章太郎氏が「おそらく大半の人が、この小説を泣かずに読みとおすことは出来ないだろう。」と書いているのだが、私はまったく涙は出なかった。といってこの作品に不満かといえばそうではない。死に赴くなかでの主人公たちの心の葛藤や友情、両親や師への思慕など共感できる場面は多々あった。だが、そこを一歩離れて、彼らの直面している戦争の愚かしさを少なからず知ってしまった(想像の閾を出ないが)後では、ぼんやりとした憤りしか感じなかった。私が泣くのは、得体の知れない感動(美や偉大さが存する)によるときである。
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淡々としていますが、変に脚色していない分すんなり入ってきました。
時折、ほのぼのした場面になったり、クスリと笑わせてくれる場面もあるので
それがまた終盤で切なさを増幅させます。
中高生に読んでもらい!と思う作品ですが
専門的な用語に解説がありませんので(日記形式なので仕方がないのですが)
いくらか戦争の知識がないと難しいのかなと感じました。
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平和な時代の僕達から見れば悲惨な話だが、当の本人は淡々とそれを受け入れている。
以前読んだレマルクの西武戦線異常なしを思い出した。
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太平洋戦争で海軍の予備学生となった京大生仲間の運命を、主人公・中野の日記を中心に語っていく。最初は戦争や軍隊の規律(という名の体罰・リンチ)に反発するものの、日々の軍隊生活の忙しさや不毛な作業の連続から、少しずつ諦めの気持ちになる様子が日記を通してよく伝わる。しかし、戦争への疑問、学問への未練、好きな人への思いとともに、戦争で華々しく散らんとする勇ましい言葉も出され、不安定に揺れ動く。ずっと戦争や軍の在り方に反発していた友人が、一番最初に、飛行訓練中に亡くなる。救助に行った中野がみた友人の様子がとてもリアルに描かれていて、おぞましさすら感じさせる。中野はもっと辛い気持ちで見ただろう。昨夜まで一緒にいて語り合っていた友なのだから。中野は特攻で飛び立つがその消息は不明という形で終わる。終戦10年でこのような話が描かれていたことに驚きを感じながら、そんな時だからこそ、当時の思いを忘れないためにもリアルに描かれたのではないかと感じた。
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太平洋戦争末期の海軍に徴兵された予備学生の生活がリアルに描かれる。戦争反対をしなかったことを批判するに能わず。どうしようもなかった、敗戦がみえてたのに誰もが決し得なかった。こういった小説で、教訓を後世に残すべし。13.7.12