市川崑はどんな監督だったのか
2016/01/27 07:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年(2015年)は映画監督市川崑の生誕100年だった。
それに関連してWOWOWが市川崑作品を一挙放映、それの解説をベースにこの本はできている。
市川崑作品といえば、本書のタイトルになった角川映画『犬神家の一族』を思い浮かべる人が多いだろうが、市川崑の評価はそれより以前の『炎上』(三島由紀夫の『金閣寺』が原作)、『ビルマの竪琴』といった文芸作品の方が高い。
それになんといっても、1964年の東京オリンピックの記録映画『東京オリンピック』。今見てもオリンピックの高揚感があまり伝わってこない作品、けれどそれもありかと思ってしまう不思議な出来上がりで、当時多方面から非難を浴びることになる。
以降、低迷期が続いたが、TVシリーズ『木枯らし紋次郎』で、市川崑は颯爽と帰ってくる。その頃撮った作品に『股旅』がある。暗い映像の中に描かれる青春像。これはよく観た。
そして、1976年の『犬神家の一族』。その後の横溝正史作品で市川崑は巨匠の名をほしいままにする。
時代劇や映画評論家の著者の春日太一氏は『犬神家の一族』のあと『細雪』を分岐点に市川崑は迷走していったという。
これから市川崑作品を観てみようという読者にとって、この本の第一章「市川崑の監督人生」を読めば、観るべき映画が選択できるはず。
そんな市川崑とはどんな映画監督であったのか。
春日氏は「「日本的ではない技法」で「日本」を描こうとした監督」としている。
私にとっては「スタイリッシュ」な監督というイメージが強いのは、『木枯らし紋次郎』の印象が強いかもしれない。
市川崑を語るに忘れてはならないのが、その妻で脚本家だった和田夏十の存在だ。初期の文芸作品の高い評価は和田夏十の功績が大きい。市川崑の作品を観るひとつの基準に、この和田夏十の脚本をさがすのもいいかもしれない。
もちろん、本書では市川崑の業績だけでなく、今なお観られ続ける『犬神家の一族』の詳細な分析がある。何故金田一耕助役を石坂浩二が演じたのかといった細かい内容は興味深い。こういう分析を読んで映画を観れば、さらに面白いのではないか。
あわせて、その石坂浩二へのインタビューも併載されている。
巨匠を改めて再認識
2016/03/29 01:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こうして巨匠のフィルモグラフィーを概観すると、一番ダメな時代に俺は出会っていたのだなと感じた。奥さんの内助の功があった時期が一番輝いていたところなどジョージ・ルーカスを彷彿とさせる。でもあらためて「犬神家」を思い起こすとショッキングなスタイリッシュ感覚を子供心に感じていたのだと少しこの巨匠を見直した。石坂浩二のインタビューはもう少し「犬神家」に突っ込んだ内容であって欲しかったが、充分面白かったです。「悪魔の手毬唄」などもこの手の評論してくれると面白そう。次回作も楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
著者のひと周り上な世代ゆえ、ぎりぎり金田一シリーズに間に合ったとは言え、その後の作品群に歯切れの悪いサムシングを感じていただけに、それらをすーっと晴らしてくれる軽快な読み解きは大変面白く、一気に貪り読む。リアルタイムで敬遠していた作品を見直したくもなりました。まえがきに記されたとおり、邦画現在どうしてこうなった?!の鍵もそこかしこに。そして、あのお方を「監督クラッシャー」とキッパリと。いやはや、こちらも長年のモヤモヤではありました。確かに。
投稿元:
レビューを見る
この人について語らねばならない、この作品についてきちんと記録を残しておかねばならない、という意気込みがいつも春日さんの著書からは感じられて、未見でも知らない俳優さんでも深遠の一部を覗き見た気になってしまう。
そこにあるのはかつてのことであり、ある意味では歴史だ。しかし、誰かが記すことでしか伝わらずに残されていかない。過去のことは現在に、そして未来に違った形になって届くはずなのだろう。
投稿元:
レビューを見る
一気読み。CSで放送されるたびに繰り返し見てしまう金田一耕助シリーズや黒い十人の女の魅力が、分析されていて面白い。この知識を得てまた見返すのも楽しい。日本映画専門チャンネルで放送があってタイムリーに読むことができた。
投稿元:
レビューを見る
市川崑の映像美へのこだわりってやっぱすごいんだな。あと、犬神家がミステリーを映画で成功させた稀有な例というのも、興味深い。引用されてたヒッチコックの話も面白かったんで原典読みたい。
投稿元:
レビューを見る
市川崑監督論の研究書。
久しぶりに仕事以外で小説でないものを読みました。
自分はちょうど「犬神家の一族」の封切から市川監督作品を見だしたので、それ以前の監督作品の解析は大変勉強になりました。
自分も監督の最高傑作と思っていた「細雪」が評価されていたのもうれしいです。
ただ、自分は映像的には評価している「東京オリンピック」ですが、聖火ランナーのやらせについて言及しなかったのはちょっと物足りなかったです。
しかし、市川作品の映像美に虜にさせられた「犬神家の一族」の詳細な分析も納得ですし、石坂浩二のインタビューで晩年の苦労もわかり涙しました。
読書感想から離れてしまいますが、自分は高校・大学と映画のクラブに所属していて、鑑賞、製作とどっぷりつかっていました。
崇拝する監督の一人が市川さんで、大学時代に監督をした時に真似をしてくわえ煙草で演出していたことを懐かしく思い出しました。
投稿元:
レビューを見る
市川作品をそんなに観ている方ではないものの、それでも著者と同じく市川崑を自分の中でどう整理していいかわからず、もやもやしていたのですが、おかげでだいぶ晴れました。非常に読みやすくファン以外でも楽しめると思います。作品を未見でも大丈夫ですが、「犬神家」はさすがに詳細な解説が入るので観ておいたほうがいいです。
投稿元:
レビューを見る
巨匠といわれる市川崑監督の作品がもう一つしっくりしていなかった理由が少しわかった気がする。
巨匠の映画製作の裏には奥様の強力な後ろ盾があったという事、そしてミステリーを映画に本格的に導入して成功したのは犬神家の一族が最初なのではないかという視点がもの凄く興味を引いた。
投稿元:
レビューを見る
前提知識があれば、楽しめます。市川監督がアニメをやっていたことに、静へのこだわりみたいなのの根拠としていました。アニメといってもディズニーなので、動かすことにこだわる作品群ですけど。
投稿元:
レビューを見る
筆者の春日太一氏は最近、書籍も多く、ラジオなどの出演も多い若手の時代劇研究家だ。
私は彼の「あかんやつら」を読み、かつてあった日本の時代劇の凄みにはまった一人だ。
ラジオにもよく出演し、語り口も分かりやすく聞きやすい信頼できる批評家の一人だと思う。
たまたま、角川シネマで市川崑特集をやっており、ちょうどこの本の存在を知った事と被り、この本を読んで市川崑の「破戒」を見た。
筆者が本書で評価している様に非常に画の綺麗な美しい映画であり、ある部分の会話ではコメディ的な皮肉もありつつ、そしてクールな、非常に客観的な人物が配置されていたり、確かにその評価の通りだと感じた。
特に、弱い男と強い女という対比は「破戒」でもそうだった。また、その女性に「歴史は傑出した個人が動かすのではなく、大衆が動かしていくものでいつの日か自然と変わっているものだ」と言わせるシーンには主人公を突き放すような女性の強さとクールさが現れているように思った。
本書は「犬神家の一族」の分析と主演の石坂浩二のインタビューがその半分を占めており、機会があればぜひ観たいと思わせられる内容だ。手軽に読めて、市川崑の映画を観たくなる少し厚いパンフレットの様な本だった。
投稿元:
レビューを見る
市川崑は脚本家の奥様、和田夏十の内助の功に支えられていた。
監督は奥様の没後は迷走…。和田夏十さんのすごさももっともっと検証されるべきでしょう。
「木枯し紋次郎」の主題歌、上條恒彦「だれかが風の中で」の詞まで書かれていたとは。すごいね。
吉永小百合を「監督クラッシャー」と断言するのもツボ。
戦後の日本の映画界の駄目っぷりも露わに。「東京オリンピック」は人選ミスって駄目じゃん。
角川が仕掛けた金田一耕助ブームがミステリへのめり込むきっかけだっただけに、石坂浩二インタビューは嬉しいおまけ。
見たくなる映画やTVが一杯出て来て、それだけでお釣りが来る一冊ですね。
投稿元:
レビューを見る
映画監督市川崑の解説本でありオマージュ本。市川崑業績
解説,角川映画の第一弾として話題となり,代表作の一つに挙げられる『犬神家の一族』から作風を紹介するとともに,金田一耕助を演じた石坂浩司のインタビューという三部構成。
『犬神家の一族』は市川監督自身によってリメイクされているけれど,そのリメイク批判は徹底している(私は珠代役は松嶋菜々子が好ましい)。
石坂浩司へのインタビューがあるためか,内容は石坂さんをヨイショしすぎ感あり。映画プログラムに石坂さんの面白い論考があったのですが,資料として,その点は見落としていると思われるが残念。
投稿元:
レビューを見る
市川崑は…
著者と同世代のアタクシにとっては「竹取物語」のようなワケのわからない映画を撮るヒト、でした。
でも後に大映時代の作品や金田一シリーズを通して見直しましたけどね。
「おとうと」「野火」「悪魔の手毬唄」が良いです。
本書は金田一シリーズ好きには興味深いエピソードが満載です。石坂浩二のインタビューもあります。
この著者の良いところは、ダメな役者にはきちんと名指しで批判するところです。
今回は吉永小百合を"監督クラッシャー"とまで言いきっています。
誠に正しい評価だと思います。
「映画女優」はなんでこのヒトが主演なの?と不思議に思い、「つる」はこんな役を演りたがるのはこのヒトだけだろうな、と妙に納得してしまったもんですよ。
投稿元:
レビューを見る
竹取物語…映画館に観に行ったなあ…(遠い目)
市川昆は石坂浩二の金田一耕助を生み出した!この一点で全てオッケーです
金田一シリーズについてたくさん書いてあったので満足