アマノン国往還記(新潮文庫)
著者 倉橋由美子
モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だ...
アマノン国往還記(新潮文庫)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
商品説明
モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく、Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが……。究極の女性化社会で繰広げられる、性と宗教と革命の大冒険。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
アマノン国へ行ってみたい
2019/05/31 22:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
左翼の学生を描いた暗い作品(これは私の誉め言葉)「バルタイ」が昭和30年、そしてこの作品が昭和61年の作品、随分と作風が変わっているようにみえるが、よく読んでみると支配者側をシニカルに捉えているところは変わっていない。アマノン国という名前から昔よく水曜ロードショーでon-airされていた女性だけの国、戦闘的な「アマゾネス」を想像するのだが、アマノン国の女性たちは戦争を好まないようだ。半分近くのページが奇妙なセックス関係になっていて、「バルタイ」のような作品なのかと思っていた私はびっくり、「男性に政治をさせるより女性に政治をさせる方がうまくいく」ということをいいたい作品でなかったことに安心、結末は夢落ちなのか、夢落ちでないのか微妙ではあるが、嫌いな結末ではない
この生ヌルーい冒涜の冒険
2007/12/11 22:45
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
宣教師Pの旅立ちは、熊野灘から補陀洛を目指す小舟を連想させる。辿り着く先アマノン国とはどんな仕掛けが待ち受けているやらと思うと、鎖国して一千年、多様な宗教が入り乱れ、首都トキオから離れた宮殿に人々から忘れ去られたエンペラが住んでいるという、しかしもの静かな文化の発展は一神教"モノカミ"国を遥かに凌駕する社会だった!、、、実にしょーもない設定とも言えるが、この人工受精により女性ばかりが住む社会に挑むPを、粗暴で力の支配を好むというステロタイプな男性像に設定することで、女性的社会と男性的社会、日本的と西洋的、実際的と観念的、支配層と大衆、といった対立軸を浮き出させている。
だからこの作品は、異境の地の冒険譚のような体裁ではあるが、読者の価値観がどこにあるかによって、誰にとっての冒険と見るかが少しずつずれてくる奇妙な構成となっている。然るに、読者が自分の対手にステロタイプのイメージしか抱いていないと、自分サイドへの風刺としか受け取れないことになってしまい、それと裏表の賞揚を見落としてしまいかねない。理屈に気を取られて余計な被虐感をいちいち味わってもしょうがないのであって、なんでもかんでも相対化される生ヌルい混沌の世界を楽しめばいいのではないか。そうするだけの喜劇性は備えている。どこまでも攻撃的なPと、底なしの寛容さ、お互いに罠を張り巡らせての応酬は緊張感を孕みつつも、鋭い刃を掲げるいつもの倉橋節は幾重もの粘膜によって包み隠されて空気は澱みきっているし、要らぬ心配から目を反らせるだけのエロチズムも豊富に。いや、そこに辟易するかどうかも対立軸なのか。
そんなこんなで、えーっ、そのオチかよー、というラストも用意されていて、同じく新潮社の純文学書下し「虚構船団」の向こうを張ろうとした、往時の星新一、筒井康隆的展開のサービスを試みてすべったのか定かではないけど、「補陀洛」の正体がそれでは少々がっかりだよー。宇宙の構造としては面白いので、これはこれでありかもしれないが。あるいは幾百世を越えても変らぬものを示唆したものか。