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開発経済学、という初めての分野の本でした(あとがきで初めてわかりました)
今まで、募金とかうさんくさい、と思ってなんとなく敬遠していた節があるのですが、貧困という状況をクリアに定義し、かつその状況がいかによりよく改善されうるか、ということがとても平易に記されていました。
この本の題名に一旦の回答を自分なりに文章にすると、No、ということになるのだと理解しました。
善意は貧困を救うためのキーファクターであることは確かであり、必要条件である、ということでしょう。
ただし、十分条件ではない。善意があれば貧困が解決できるわけではない、ということを腹落ちさせておくことが、より本来の意味で貧困という状況を少なくしていくことに繋がるのだと考えました。
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D・カーラン、J・アペル『善意で貧困はなくせるのか? 貧乏人の行動経済学』みすず書房、読了。綿密な社会参加とフィールドワークを基に、行動経済学の立場から貧困削減の手だてを構想する「開発経済学」の最先端の成果が本書に納められている。理論と現実が一致しない複雑な世界に立ちいり、ひとつひとつ解きほぐしていくスリリングな試み。
D・カーラン、J・アペル『善意で貧困はなくせるのか?』みすず書房マイクロファイナンスの実例が興味深い。従来金融取引から排除されてきた貧困層を対象に、融資・貯蓄、保険等々、小口金融の実践の総称。バングラデシュのグラミン銀行はその一つ。マイクロクレジットは貧困層向けの無担保融資でありながら、返済率は95%を超えるという。認識を新たにせずにはいられない。
D・カーラン、J・アペル『善意で貧困はなくせるのか?』みすず書房、「なにがうまくいって、なにがだめなのか」。お金を借りる・貯めるから、農業・購買の工夫、健康と学習にいたるまで「力をあわせる」上手な方法を本書は丁寧に紹介する。大切なのは数字の背後に潜む「どういう風に受けとる人の幸福につながるか」を理解すること。目から鱗の一冊。バナジー、デュフロ『貧乏任の経済学』(みすず書房)と併せて読みたい。
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開発経済学の分野は急速に発展し、今や、経済学のトップフィールドになっている、という。
M.I.T.やハーヴァードやイエールなどでも、経済学博士課程の学生の中で最も人気のある研究分野のひとつになってるんだって。
知らなかった・・・・。
この分野が人気を集める理由としては
社会実験による科学的証拠(エビデンス)に基づいた政策形成という大きな潮流が経済学全体に出現したことによる。
その中核をなす分析の手法は
医療分野の臨床治験の考え方を応用したランダム化比較試験と呼ばれる厳密な社会実験の手法。p315
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ややタイトル詐欺。善意はあんまり関係ない。
途上国、貧困層に対する援助やその評価方法に行動経済学といわれる関わり方が変革をもたらしている。そんな状況を解説している本。
貧困層の行動原理はどのようになっているか。それは変えるべきか。どうすれば変えられるか。もっと効率の良い方法は。
実際に現場で活動してきた著者達だけあって理屈が通ってるだけで満足せずやってみよう観測してみようというという態度が一貫している。
「なにがうまくいって、なにがだめなのか」を社会実験ではっきり実証している点が単なる援助と一線を画している。
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現代には国際的な援助プロジェクトがさまざまに林立していて、それぞれが支援を求めています。ただ、営利団体と違って、こういった団体・プログラムが自らに課している評価や検証は甘いケースが多いので、その援助が実際に貧困層にどのような影響を与えるのか、投資対効果はどうか、持続可能なものなのか、そういったことを精査し続ける必要性を強く訴えた1冊。
医療の分野でよく使用されているRCT(ランダム化比較実験)の手法を用いて、支援をしたグループと何もしていないグループを比較することで効果測定します。「こうすれば、きっとこういう効果が得られるから投資しよう」という安易な”善意”ではなく、現実世界できちんと実験して効果測定することの大切さをひしひしと感じました。本書は全体を通して、このRCTのさまざまな事例を紹介してくれています。
寄付というのは投票行動でもあるので、われわれも安易に寄付するのではなく、その団体・プログラムがどういうものであるか理解したうえで寄付するという責任があるのだなとも感じました。
開発経済学という今世界で非常に脚光を浴びている学問分野を、とてもわかりやすく、読みやすくまとめてくれている。語り口もとても軽妙で痛快。こういう入門書が他の分野にもあればよいのに、と思うくらいの良書でした。
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貧乏人の行動経済学についての話で、善意で貧困はなくせるのか、という部分はミスリーディング。それに期待すると期待はずれになる。そのせいで、いまいちな本に感じた。
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タイトルへの答えを言えば、”No”だろう。ビジネスの世界では、これから導入しようとする戦略などがどれほど有効か、効果があるのかよく吟味した上で実行されるが、開発の世界となるととにかくいいことだからやってみるということが多く、それでは本当に効果のある開発は行えないと指摘する。また、貧困国にくらす彼らも我々と同じ人間であり、マーケティングや心理学的な考え方をしなければならないということがよくわかった。新開発経済学3部作のほかの2作も読むことにする。
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ぉー、これも完全に登録忘れてた。
もっと援助哲学的な話かと思ったら…このタイトルの意味は、もっとプロジェクトの効果の検証をしっかりしなさい、RCTは素晴らしい、というものでした。想定外でちょっと拍子抜け。しかも、何やら開発世界に関係のない人向けに書かれた本なので、開発学の、特に研究や評価などに慣れ親しんだ人にはちょっと物足りないのかも。
だけど、その分さくっと読めて、具体例を知ることはできるので、良いかな。
例えば、マイクロファイナンスはもてはやされているけれども、よくよく検証すると、マイクロファイナンス自体よりもそもそも貯金の方が効果があるかもしれないという示唆があったり。グループ連帯責任はいい面もあれども、例えばちゃんと返せる人にとってはただの負担で旨味がないからあまり意味がない、とか。
この、マイクロファイナンスの話に費やされているページが一番多い。
タクシーの運転手が超興味ありそう(乗り出して話を聞いていた)だったのに銀行融資を結局使わなかった話もなんか面白かったな。
あと興味深かったのは、マラリアの予防のための蚊帳の普及について、低額でも「売」った方が人々の意識が変わって(無料配布よりも)「使用」に繋がるという意見がある中で、ケニア西部で、明らかに無料配布が効果を上げたんだったり。
RCTにもかなり限界はあると思うんだけどね(結局場合分けが永遠になったり)、でもなるべく評価し効果的な支援をすべく努力した方がいいのは事実だし、この筆者は、必ずしも証明されたものだけやれというのではなくチャレンジは常に大切、と言ってはいるので、まぁバランスは取れているかな。
澤田教授が後書きで、開発学の入門書として推奨していたのが印象的。
後で知った話。
この作者、IPAの創設者の一人だった!
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善意で貧困をなくせるのかー。よくユニセフの寄付募集など目にするが、貧困な人々が求めている支援、実情と支援側の思いにかなりの隔たりがあり考えさせられた。もちろん、金銭的援助によって解決することもあるが、善意で貧困をなくすことは、現実的には難しく本質的に必要なことを見極めることが大切と実感した。
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行動経済学の見地から途上国の貧困問題を取り扱っている一般人向けの入門書。難解な式はなく、事例が豊富で分かりやすい。タイトル以上に経済学。各分野の言及もあるけど、とくにマイクロファイナンスが多かった。「人間は理性的」から出発しない行動経済学は面白そう。
澤田教授の解説も分かりやすい。日本のODAについても触れてくれている。彼によると、日本は保健教育で寄生虫対策をしているとのこと。現場で実績があるのですね。
全編を通して、援助の効果を測ろうと訴えている。「大事なのは貧しい人たちの役立つようになったかどうか。貧困問題で本当に前進したいのなら、定量化可能な実証済みの方法で改善し、その改善を同じ手順を踏んでさらに改善するというやり方に慣れなければならない(147p)」完全に是。
「うまく機能しているシステムを見るだけではそこに投入されているどれか1つの要素だけの効果を抽出することはたいてい不可能。できることは現場で試すこと。一度に1つか2つちょっと足したり変えたりして機能させるものを探す。p246」ことしかできないのだと思う。その心構えは援助に関わる人は持ってないといけない。
以下、引用。
53
開発解決策の場合、売り込む必要があるとは考えないで、中身さえ価値があれば採用されると思っていることが多い。参加することを選択してもらう必要がある。
64
マーケティングは効き目があるということを知っていることと、マーケティングのキャンペーンのどういうことに効き目があるのかを知っていることは違う。
補足:何を強調すべきかは対象によって異なる
168
25億人以上はおかねを貯めるのにも借りるのにもフォーマルな金融サービスを使っていない。
225
行動経済学的発想
人はインセンティブの金額だけに反応して選択するのではなく、タイミングにも左右される。家庭での意思決定のタイミングの重要性を利用してちょっと改善するだけで、大きな効果を挙げられる
231
学校の欠席率と寄生虫感染率が高いところでは、学校単位の寄生虫駆除は出席率を上げる推進力になり得る。
264
貧しい人たちの中には変化に手が届きそうなところまできている数え切れないほどの人がいる。真剣に生活を向上させたいと願い、そのためにはどんな苦労も惜しまない人たちだ。彼らに必要なのはその手段だけだ。
272
お金を払っても無償でもらっても蚊帳の使用率は50パーセントだった。有償だと保護される人は大幅に減り、蚊帳を提供する側はいくらか節約できた。
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表紙に、貧乏人の行動経済学とあるが、内容は著者の実証実験のまとめ。
途上国の子供に制服を無償で付与すると、登校率は上がるのか?(まともな服を持っていない家庭の子供ならば有効な施策らしい)
学校に来ると現金給付金という意味で親にお金を渡すと登校率は上がるのか?(一定の効果あり)
こういった実証実験を紹介してくれている。
惰性。現状維持が持つ抗いがたい力。禁煙然り、貯金然り。
この力が貧しさ脱却の妨げになっているというのは面白い見方だった。
祖先から代々引き継いできた農業方法を今も同じ方法で行っているのは、惰性であると。
鋤や鍬を使い労働力を以て生産する方法が惰性であるならば、村の有力者に現代の農業生産技術を教え、その効果を見せ、広めていくことが有効な手だと思う。
貯金もまた、その意味を正しく教えないと広まらないし、SEEDといった実際の生活に差し支えない貯金額で続ける方法でしか続かない。
貧しい人々の生活を豊かにする、幼い命を奪われないようにするための正解はない。
いろいろなことを試し、地域によって国によって民族によってその地域の仕事によって、カスタマイズしていかなくてはいけない。
その国の技術が発展していなければ、ご近所情報網を作ったり。
タダであげても効果がなければ割引にしたり。
また、貧しい国の性問題も取り上げられている。
印象的な言葉は、「少女たちは、知ってか知らずか、身体的安全ではなく経済的安全を選ぶというトレードオフをしている」。
どの国もコンドーム有り無しにより価格に差をつけている。
身体的リスクに対してお金を上乗せするのは、正しい経済活動と言えるけれど、なんだか読んでいて悲しくなってくる。
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開発における実践的な行動経済学を平易な文章で解説する。とても多くの示唆を与えてくれる。貧乏人の経済学とともにおすすめ。
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マイクロクレジットは万能ではない。貯蓄も効果がある。
p.297 結論:寄付をする
寄付は投票である。
p.301 7つのアイデア
マイクロ貯蓄
お知らせメールで貯蓄を促す
前払いで肥料を売ることで肥料の使用量を増やす。
コミットメント装置は役立つ。悪い行いは高くつき、よい行いはお金がかからないようにする。
p.313 解説:澤田康幸
開発経済学の入門書
・バナジー&デュフロ 貧乏人の経済学 県立 8F社会科学331.8ハ 市立331バ 大学331.87B18
・モーダック他 最底辺のポートフォリオ 県立 8F社会科学365.4サ 市立365サ
・本書
本書は、読者自身も貧困削減のために貢献できる、最後の1マイル問題(実践で効果をあげるにはわずかな部分でも整備されていなければ機能しない)などがメッセージであるという。
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行動経済学ってこういう感じなのか。
う~~ん。
なんか、結論としてはよく言われる能力の輪の範疇でお金を儲けて、それを寄付するのがよきってないようだったね。
人の行動が変わらんのは、惰性とかサンクコスト的な部分で新しいことをしないからってのはよくわかった。
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行動経済学の本。
求めてい内容よりややエッセー風だったけれども、それによって行動経済学への印象が柔らかいものへと変わった。
「善意」は貧困をなくす必要条件だけど十分条件ではないということを再認識した。
マクロファイナンスの内容が多めなので、それの実例を知る本としては優れているかも。