紙の本
しあわせいろいろ
2017/06/25 19:44
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
目次を見た時、あらすじの女性がタイトルのお話がなくて、ちょっとびっくり。けれど読んでみてなるほど。そういうことなのかと。順子を巡る数々の女性たち。それぞれが思う「幸せ」。そして順子の幸せ。誰もが、それでいいの?と疑問を持つ、順子の幸せ。でも当人がとっても幸せで、生き生きと暮らしているのがとても良かった。お金じゃないんだよね、ということがよく分かる。一番好感が持てた女性は、順子が奪った男性の妻。かっこいいです。順子の母、酷い生活だけれどこれは自業自得。しかし最終話でちょっといい方向へ。少し安心した。
紙の本
同級生たちの人間関係の描き方が絶妙
2019/01/30 17:29
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者はこの作品を発表する前に「ホテルローヤル」で直木賞を受賞している。「蛇行する月」には新設高校という設定で釧路湿原高校という学校が登場する。この高校は直子や清美という作品の主要な登場人物の出身高校になっているが、これは作者が卒業した釧路東高校(創立1979年)がモデルになっているのだろう。高校時代や卒業して何年かまでは「この関係は永遠と続くんだろうな」と思っていた友達関係は、就職、そして結婚、何にもまして子育てというイベントが続くと段々と縁遠くなり、年賀状のやり取りだけの関係になってしまう。それぞれの登場人物の20代前半から40代突入までの関係が絶妙に描かれている
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冒頭から容赦なく襲う圧倒的な閉塞感。北海道釧路の湿原に建つ高校を巣立った清美ら4人と、その周辺の女たちをそれぞれ主人公にした連作短編集である。
誰も彼もが背中を丸めるようにして生きている。そんな中で唯一、しあわせ、と言い切る順子の生き方が彼女たちに大きな影響を与える。
その生き方を目の当たりにしたときの苛立ちと戸惑いと、やがてやってくる力強い希望が、胸に沁みた。
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しあわせは当人の心のあり方なのだとつくづく思い染みる。行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。留まれず流れるものである当然さを受け容れているかが、それなのだろうなあ。苦悩や屈託、見栄や外連、それら生の蛇行を含めて見事とする、逞しい眼差しの作品。
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22日が30回目の結婚記念日だった。真珠婚式とか言うらしいけど、ケーキを買って帰るくらいはしてもそれ以上に特段のことはなく、いつも通りの1日で過ぎた。
さて、本書。高校卒業後、勤め始めた和菓子屋の職人と駆け落ちした順子を巡り、その時々に順子に関わった周りの女性の生き様を描く。
第3話、順子に夫を奪われた後、和菓子屋を切り盛りした妻が、10年近くも経って知り得た居場所に元夫を訪ねた話に、胸を打たれた。
離婚届と失踪届の選択を委ねられ、自分がこの世に存在しない方を選ぶ元夫。
別れたとしても終わることのない夫の罪悪感を同じだけ背負わなければならない元妻。
切り詰めた生活と報われない詫びと子供の病気を背負ってそれでも添い続ける今の妻。
どの話にも色々な男女の愛の形や生き方が描かれているけれど、一度契りを結んだからには出会っても別れても同じ量の喜怒哀楽を分け合わねばならない男女の責任、契りの重さにしみじみする。
うちには語るほどの波乱もなくて有難く。まあ、私には過ぎた嫁さんで30年間続いたことに改めて感謝。これからもよろしくね。
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「わたし、今しあわせ」。
高校卒業して1年も経たないうちに、勤め先の和菓子屋の主人の子を妊娠し、20も年上のその相手の男性と駆け落ちした順子。そんな順子にかかわりのある6人の女性が、月日の経過とともに順子と再度かかわりを持ちながら、自分の幸せを考えていく物語。
6人の状況様々ではあるが・・・やはり私も7人目の登場人物として、順子の暮らしを見ながら幸せって何だろう…と思わずにはいられない。愛する人と愛する家族には恵まれたけれど、まさに幸せはその一点だけしかない。暮らしがギリギリ過ぎて、まさに赤貧。娯楽やおしゃれにも全く縁がなく、平成の世の中で、一人だけ戦後まもなくのレベルの生活をしているようだ。そして、愛する息子の将来を見届けることは…できないんだろう。
それでも幸せなんだ、順子は。
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人それぞれ幸せが違うのに、歳月によって、その形も変化するのだから、何が幸せなのか当人すら分からなくなる。本書は色んなことを考えさせてくれる素晴らしい一冊でした。
あらすじ(背表紙より)
「東京に逃げることにしたの」釧路の高校を卒業してまもなく、二十以上も年上の和菓子職人と駆け落ちした順子。親子三人の貧しい生活を「しあわせ」と伝えてくる彼女に、それぞれ苦悩や孤独を抱えた高校時代の仲間は引き寄せられる。―わたしにとって、本当のしあわせとは何か?ままならぬ人生を辿る女たちが見いだした、ひとすじの希望。生きることへの温かなエールが胸に響く物語。
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釧路の高校を卒業してまもなく、二十以上も年上の和菓子職人と駆け落ちをした順子。籍も入れられない、貧しい親子三人の逃亡生活を、それでも彼女は幸せだと言う。
誰も順子のようには生きられない、という台詞。
そうなのだ。誰も、誰にもなれない。
私には私の、それぞれの幸せの形がある。
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私は幸せ、という順子は本当に幸せなのか?
順子の状況は客観的には幸せではない。それでも、幸せを感じている彼女のありように、周囲の人間はいろいろ感じている。
何よりも、自分では絶対希望しない生き様に幸福を見つけた順子に、皆は慰められているのかも。今追い求めている幸せは、なくてもいいものだと順子に教えられる思いがする。
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高校の同級生たちと、関わる女性6人の
それぞれが葛藤し、苦しみ、前に進もうとする時期の話
桜木紫乃さんらしい、暗いけど希望が持てる話で
薄い本なので、あっという間に読み終えてしまった
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幸せの形は人それぞれ、なんて当たり前のことだけど社会生活に揉まれているとついつい世間の流れに身を任せてしまう自分がいる。
でもやっぱり、感覚を研ぎ澄まして心の声に耳を傾け、自分にとって大事なことってなんだろうって考えたい。そう思った。
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リアリティある女性たちの想い。
その時々、その年代で、感じることってあるよね。
幸せそうな友を羨む気持ちとか、自分の想い、行動に後悔したり、くよくよしたり。
そうそうと共感する部分は多々あれど、なんだかそれが心に痛い。
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6人の人達の感じること、考える事、それぞれの関係性、順子の生き方から伝わってくること、全てに共感しすぎて、胸が苦しいみたいだ。女性という業を思う。
そして、解説がとても良かった。
「そう!そうなんだよ!」と膝を手で叩いて合意する感じ。
順子は現在の自分とは完全に対極にある生き方、考え方なのだけれど、その強さに圧倒され続けて終わった。
自分を「しあわせだ」と言い切ることができる、笑顔を浮かべられる強さ。
でも、笑顔を浮かべて幸せだっていっても、痩せ細って皺だらけになっていくからには、毎日を生き延びていくための心労ってやつが容赦なく苛んでることだろうし、それを思うと、むしろもう、恐ろしい。
私は年齢もキャリアも直子に一番近いのだろうけれど、一番共感したのは、清美のラスト、心が「ひろびろと」するところだった。
でも、そんな清美も、数年後には、ひろびろとした心を別のものへと差し向けることができていて、そんな消息を物語の後の方で読んで、「どうやってそこにいくことができたの?」という、いつも通りの寂しさのようなものが湧き上がってきた。
リアルの友人たちのような立体的な存在感をヒシヒシと感じる物語だった。
何年後かに、また読んでみたいものだ。
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「東京に逃げることにしたの」釧路の高校を卒業してまもなく、二十以上も年上の和菓子職人と駆け落ちした順子。親子三人の貧しい生活を「しあわせ」と伝えてくる彼女に、それぞれ苦悩や孤独を抱えた高校時代の仲間は引き寄せられる。わたしにとって、本当のしあわせとは何か?ままならぬ人生を辿る女たちが見いだした、ひとすじの希望。生きることへの温かなエールが胸に響く物語。(背表紙より)
しあわせの基準って、ないですね。ほんとうにない。コレを読んでそう思いました。だからなにをしあわせに感じてもいいし、人に言われることでもない。みんな順子をかわいそうだと思っているのに本人は一番しあわせで。みんな順子をかわいそうであってほしいと秘かに思っているのに自分のほうがよほどかわいそう。どこかで会ったことのあるような人が出てくるこの現実的な物語。面白かったです。
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2017/1/10
自分が生きてる意味とか人生ってなにとか、考える余裕もなく、愛する人たちを守るために必死で生きてる順子が、幸せだって言い切る姿はとても美しいと思いました。
誰にも決められない。自分が幸せって思えるのが幸せ。