日本でもこのままではこうなります
2015/09/30 07:12
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投稿者:八頭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
すばらしいノンフィクションです。現代の戦争に参加した兵士たちの戦争後遺症のすさまじさがわかります。しかもそれは、参加した兵士たちだけではなく、その兵士たちの妻や子供にまで大変な影響を与えるのです。そしてここが重要であり、政府や軍部にとっては不都合な真実なのですが、『治す方法がない』!!アメリカ軍は多大な費用をかけて何とか精神を病んでしまった兵士を治そうとしていますが、目立った効果を上げていないどころか、日々兵士たちは自殺していてその数はイラン・イラク・アフガニスタンで戦死した兵士の数を上回りました。何もPTSDになった兵士はイラン・イラク・アフガニスタン戦争だけでなく、第二次世界大戦の兵士にも、ベトナム戦争の兵士にも起こっています。70年以上も苦しんでいる兵士がいるという事実から目をそらしてはいけません。
日本もアメリカの始めた戦争に参加できるように勝手に憲法解釈して平和憲法をねじ曲げ、自衛隊をアメリカの戦争に参加できるようにしてしまいました。今後、自衛隊員でアメリカの始めた戦争に行き、間違いなく今のアメリカ兵と同じくPTSDなどの精神障害をおって帰国するのは明白です。そして、今の日本にはアメリカ軍のような兵士を治そうとする施設はないと言い切っても過言じゃないでしょう。
戦争に参加できる国にした政治屋たちやその政治屋たちに賛成した人たち、こういう真実を何一つ知らないままでしょう。一人でも多くの人に、政府や戦争賛成の人たちが隠そうとしている真実をこの本を読んで学んでほしいです。
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投稿者:ぽにょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
このまま自民党政権のままだと、日本もいずれはこうなる。
この本を読むと戦争がどういうものかという一旦に触れることができるとおもうし、戦争が残す悲惨なものもわかる。
この本に書かれていることを理解し、受け止めた上で、集団的自衛権の行使などは語るべきである。
戦争が終わっても…
2021/09/24 20:29
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、アメリカの著名なジャーナリスト。
イラク戦争の兵士たちに同行するため、新聞社を辞め、2009年には兵士たちの素顔に迫った本を出したそうだ。
訳者のあとがきによれば、「ところが、それで終わらなかった。バグダッドで知り合った兵士たちが、帰還後に電話やメールで不調を訴えてきたからである」
それで生まれたのが本書だ。
「英雄」として帰国したはずの兵士たち、つまり帰還兵のその後が、抑えた筆致でつづられている。アメリカでは2013年に出版されたそうだ。
PTSDやTBI(外傷性脳損傷)で、内部が崩壊した帰還兵。その苦しみは、映画などで何となく分かっているつもりでいたが、本人や家族の声などをリアルに伝える本書を読むと、胸がつまる。
戦争が終わっても、戦争がもたらした傷に終わりはない―。(訳者あとがき)
この言葉が説得力を持って響く。
翻訳書の読みにくさ(難解さ)ゆえ☆-1。
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帰還兵の物語というとオブライエンの『本当の戦争の話をしよう』が思い出されるが、これはイラク戦争からの帰還兵を追ったノンフィクション。第二次世界大戦、ベトナム戦争からの帰還兵とイラク戦争の帰還兵は当然それぞれの苦悩があったかと思うが、帰還後の精神的ストレスについてはトラウマの症状が異なるという。前線があるかないか、明確な戦場が区切られていないイラクでは360度、気の抜けない環境であったことが指摘されている。
ノンフィクションではあるが、帰還兵のその後の生活、本人を取り巻く家族の苦悩、米軍によるメンタルケアの実情などが生々しく物語られていて、さながら複数の主人公が存在する小説を読んでいるかのようである。描かれている状況は悲惨だが、それにしても、アメリカがここまでのケアを実施するためにどれほどの予算が必要か、その想像にも慄く。
日本では戦争を知る生存者も少なくなり、過去の認識も歪んだまま安易に語られるようになった現在、戦争の爪あとがこのような形で残される、そしてこのような本がきちんと評価されるアメリカに敬服する。
なお訳者のあとがきに記載があるが、日本からイラクへ派遣された自衛隊員1万人のうち、帰還後の自殺者は28人とのことである。
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借りたもの。
現象が記されたこの本には、帰還兵が何故(どういう経緯で)自殺するのか、彼らの行動と内面に迫る本。
イラク戦争から10年――アメリカでは帰還兵達の自殺が社会問題となっていた。
従軍からPTSDと診断され、帰還した5人の兵士のその後を書くドキュメンタリー。
仲間を助けられなかった後悔、除隊せざるを得なかった事に感じる屈辱、直面した死の瞬間、それに起因する悪夢――
様々な苦悩から解き放たれず、もがき苦しむ帰還兵達。
日常に安息はなく、家族達も苦しむ様が綴られている。
進行していくリアルさに、読んでいて不安に駆られ手に汗握る。
中心となる人物アダム・シューマンは立ち直ろうと様々なカウンセリング・セラピーを受けるが、そこで彼は克服することが描写され無い。
足掻けば足掻くほど沈み、それはパートナーにも影響してしまう。
他の帰還兵たちもまた似たように苦しみ、健忘症、不眠症、それを治療するために薬漬けになっていたり、支離滅裂な言動、DVなど様々な問題を引き起こしている。
そして紹介される自殺者のケース……
この本の最後で、アダムも自殺してしまうのか――?
タイトルから想像する、原因やメカニズムを言及する本ではない。
原因は何なのか?ストレスから来た心の病か?脳に外傷を受けたため自制心がきかなくなったためなのか?……
果たしてそれらを治療することは可能なのか?彼らはイラクに派遣される前の生活に戻ることができるのか――?
丁度、『ナショナルジオグラフィック日本版 2015年2月号』(http://booklog.jp/item/1/B00S6RSJXE) には「爆風の衝撃 見えない傷と闘う兵士」という特集が組まれていた。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150123/432925/
彼らは脳に傷を負ってしまったのか?
アメリカの精神科医や心理学者が帰還兵達にどの様なセラピーやカウンセリングを行っているのか、その効果、即ち克服することができるのかを知りたくて読んだが、結論はなく、今も続く進行形の物語だ。
文章には随所に“ここで得た教訓”と書かれている。
これをどう活かすべきか?
治療、反戦運動、DVの原因……答えはまだ見えない。
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アメリカの対イラク戦争に派遣された兵士たち。
イラク、アフガンで見た惨状。
「敵」の攻撃(爆破)によりむごたらいい戦友の死…。幼児を抱えたイラク兵を撃つ…。
帰国後、PTSDになり、自殺に至った者も多い。
本書で取り上げるのは、自責の念にとらわれ、苦悩する元兵士本人やその家族の苦悩を、淡々とした客観的視点で描く。
「戦争に行く前は『いい人』だったのに、帰還後は別人になっていた」。
「戦争」が、兵士やその家族を「破壊」していく様子が、痛いほど伝わった。
もちろん、アメリカ兵たちも、他国の兵士や民間人を殺害していて、他国側の人々にも肉体的・精神的苦痛を負わせているのも事実。
「国家のため」従軍して、肉体的にも精神的にも「破壊され」戻ってくる…。
格差社会が生み出した「志願兵」。「生きる」ために兵士になった(ならざるを得なかった)アメリカの「ごく普通の」若者たち。
20代の兵士でこのような精神的ダメージを味わっているのだから、中東の子どもたちは、どのような苦痛を負っているのかと考えると、深いため息が出てくる。
ありきたりな表現になってしまうが、「戦争というものは、何も生み出さない、人間にとって必要のないもの」ということをつくづく感じた。
「訳者あとがき」にも触れられているが、後方支援にあたった日本の自衛隊の方々の中にも、自殺、あるいはPTSDになった方々がいる。
「戦争」というものが、いかに愚かしいことかを痛感する。
多くの人に読んでもらいたい。
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最初のところで手が止まって積読だったが、8月に入ってもう少し読み進めてみたところ止まらなくなった。本当にしんどい。誰かのため国のために行った行為であることも、ここでは何の役にも立っていなかった。ただひたすら傷ついている兵士、彼らから傷つけられる家族たち。
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数人の帰還兵が更生する過程を描いたレポート。実際には全てが更生するわけではないが。邦題のように、なぜ〜なのかというものへの明確な答えが示されているわけではないので、どちらかというとエピソード的、だがその分リアリティに富んでおり、凄惨さが伝わってくる。
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誤解を恐れずに言えば、今の政府は戦争をしても構わないと考えているのではないだろうか。為政者は絶対に戦場には赴かない、為政者より間違いなく未来への時間を多く持つ若者が行くのだ。突然、自己の未来が消滅する可能性だって勿論生じることになる。運よく戦場から生還できても、PTSDやTBIで人生がボロボロになってしまう虞もある。現に、2003年から2009年までの5年間に亘るイラク支援に派遣された自衛隊員の1割から3割がこのような障害に苦しんでいるようだ。おそらく政府は彼らを見殺しにするだろう。そして、これからも。
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たとえ、戦場で死ぬことがなかったとしても、無事帰国したあとに、自殺する兵士たち。
なんとか、自殺の手前でとどまっていても、何年も苦しみ続ける兵士たち。そしてその家族。
のこのこと海外まで行って、するべき戦争なんてないと思う。戦争を決める人たちは、決して最前線で戦うことはないのだ。やってられない。
そして、日本。のこのこのと海外にまで行って戦争する国の、子分としてついていくなんて全くばかげている。情けない。そんなことにならないようになんとかしなくては。今が瀬戸際。
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国会で議論されている今だからこそ
読んでほしい一冊!
どんな戦争でも精神的に傷を負う兵士がいたに違いないけど、日本ではあまり注目されていないように感じる。
というか、見ないようにしている…?この現実を…。
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やっぱりどんな理由があっても、戦争はいけない。人を殺すことは自分も殺すこと。自分の周りの大切な人の心も殺してしまう。正義の戦争なんて無い。
では、どうやって戦争無き世界にするか?
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著者のデイヴィッド・フィンケル氏はワシントンポストで23年間記者として働き、2006年にピュリツァー賞を受賞。その後退職して従軍記者としてイラクに渡り、そこで知り合った兵士の「戦後」の生活-帰還兵の生活-を具体的に描いている。
戦争そのものが「不幸」だということ。そして、その不幸せな生活を送るのは決まって貧困家庭出身の若い兵士だということが強調されていて、その家族も支援者も同じように不幸になっていくことがよくわかる。悲しい。とにかく悲しい。日本もこれからこうなるんじゃないかと不安になる。
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帰還兵はなぜ自殺をするのかは教えてもらえないので自分で考えるしかないです。実体験を基にしたドラマ仕立てで、イラクでの米軍の実態や人間が壊れていくさまが伝わります。日本は、本当にこういう人たちを自国に作ってでも戦う覚悟があるのでしょうか。
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イラクに派兵され、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やTBI(外傷性脳損傷)を負った兵士・元兵士たちを追ったノンフィクションである。
ジャーナリストである著者は、長きにわたって軍に同行し、イラク戦争に従軍する兵士たちを取材してきた。そしてその報告をまとめた本を出版する。兵士たちとの関係はそこまでのはずだった。だが、関係は切れなかった。凄惨な場面に遭遇した後、本国に戻った兵士たちの多くが、あるいは自殺願望を持ち続け、あるいは家族に暴力を振るい、あるいは集中力をなくし、以前のような日常に戻れないと訴えてきたのだ。そこで著者は彼らとともに、もう少し歩むことになる。
静かに、しかし容赦なく、かつ丹念に、その筆は、歯車が狂ってしまった兵士たちを、そして彼らに翻弄される家族たちを描き出す。著者はノンフィクション・ジャーナリズムと称しているが、それぞれの人々の感情を克明に記しつつ、それについての判断を挟まない。読み手は登場人物1人1人に入り込んだように、ともにあがき続けることになる。
兵士たちは自分がなしたこと、なしえなかったこと、それによって失われた仲間の映像に、執拗に苛まれ続ける。そしてまた、他の誰もがPTSDに罹るわけではないのに、自分がそうなってしまったことで、自らが「タフ」でないと感じて苦しむ。
どうして自分はこうなってしまったのか。なぜいつまでも克服できないのか。出口は見えない。
そしてそれは多くの場合、怒りとなって、身近なもの、配偶者や恋人、幼い子供に噴出する。向けられたものにとっては理不尽な怒りである。やり場のない怒りは、兵士自身だけでなく、家族をも壊していく。
邦題は「帰還兵はなぜ自殺するのか」だが、その「なぜ」に答えはない。
原題の"Thank you for your service"のserviceは兵役を指すが、いったいそれが何のためなのか、読んでいるうちにわからなくなってくる。作中にも何度か「ご奉仕に感謝します」というフレーズが出てくる。国家に対して、何か崇高なものに対して、仕えたはずなのに、その結果得られたものは名誉でもなく栄光でもなく、壊れた「自分」なのか。
イラクに派遣された兵士のうち、かなりの数が自殺し、また自殺願望を抱き続けているものは多い。それに対していくつもの治療プログラムも組まれているが、特効薬というほどの解決策は見出されていない。そして必要とするものすべてが治療を受けているわけでもない。
戦場は苛酷だ。つまるところ、人が人を殺す場所であり、自分も死ぬかもしれない場所だ。先刻まで至極元気だった屈強な男が、血まみれで亡くなることもありうる場所だ。そうした場面を見聞きして、辛くもそこから生き残ったとして、心に傷を負うのは無理もないことだろう。
直接戦地で戦った兵士たちは多くの場合、貧困家庭出身の若者だった。心に傷を負い、除隊したとして、その後の生活は非常に厳しいものになる。運よく治療プログラムに登録され、運よく社会生活に戻る一歩を歩み始めるものもいるにはいる。だが「運よく」とは言ってももちろん、「何の苦労もなく」からはほど遠い。
私にはこの本を論評することはできない。個々の兵士たち、家族たちの苦しみを論じることはできない。
重苦しい気持ちのまま、「なぜ」が渦巻く。
最後のページを閉じても、「なぜ」は消えない。
これはそういう本なのだと思う。