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投稿者:本箱屋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
木にのぼることが好きで、そのおかげで
早くから敵を見つけることができるブンナは、
仲間のトノサマがえるたちから尊敬されていた。
ある時、木のてっぺんに穴を見つけ
その土の中で眠ることを考えるが、
実はそこが恐ろしい鳶の、
獲物の貯蔵場所であることを知り愕然とする。
土の中に隠れたブンナが聞くことになるのは
獲物として運ばれて来た、傷ついた者たちの嘆きの言葉。
雀、百舌、鼠、へび、牛がえる、そしてつぐみの
独白、後悔、あきらめ。母の話。…懺悔。
ひとり、またひとり、連れ去られていく者への憐みと
自身の身を襲うかも知れぬという恐怖。
去勢をはるために鼠を食らおうとした、へびの残忍さに怒り、
美しく悲しいつぐみの歌に涙する。
やがてブンナはそこで冬を越す。
そこで死んだ鼠は蝶や蛾になり、冬眠するブンナの糧となる…。
生きるものはすべて死に、だがまた何かに生まれ変わる。
残酷だが美しいこの世界のあり様を受け入れ
だからこそ今を精一杯生きようと仲間に呼びかける。
澄みわたる心の、喜びの歌。
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弱肉強食の世界を、偽りなく伝えてくれていると思う。
生きることを当たり前に思わせない、小学生にも読んでもらいたいなって思う。
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これは小学生の時に読んだ大好きな本。アニメっぽい挿絵が入ったりして一見童話のようだけど、大人に読んでもすごくいいと思う。自然の摂理というか弱肉強食の世界から、生きることの大切さまで色んなことを教えられます!
「ブンナよ、お前はいつでも死ぬ覚悟はできているか」
「みんなの命はつながっている。自分ひとりの命じゃないんだ。だから大切に生きようよ!」
この本にはなかなかいい言葉がいっぱい。小動物の世界なのにね。
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カエルの話。表紙で敬遠しないでください。人生の縮図がここにあります。何かを学び感じること間違い無しの一冊です。
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タイトルも、主人公がカエルだという事も知っていたけれど、読んだ事のなかった水上勉さんの代表作。これは児童文学だけど、大人が読んでも面白い。
高い木に登ったブンナが、そこで見る(聞く)弱肉強食の世界。生きている物には平等に太陽は降り注ぐし、雨風は厳しい。でも平等だけど世の中は弱肉強食で、強い物は弱い物に容赦はしないし、賢い者は愚かな者を蹴落として生きていく。どんなに冷酷な者にも親は居て、親は無償の愛を子に注ぐ。
いじめが再び問題化する今、こうやって読むと、とても感じるものがあります。
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水上勉の書き下ろし児童文学作品!!めっちゃオススメです。木登りが得意のトノサマガエル、ブンナが木の上まで得意になってのぼると、なんとそこは、鳶のえさ置き場だったのです。えさとして運ばれてきた動物たちの話が、人間の本性を表しているようで、とっても奥深いのです。水上勉が、母親が子どもに朗読してやるように書いた作品なので、読み聞かせにはもってこいです。ウチの娘たちが3〜4歳のころに初めて読んでやりましたが、その後、何度もくり返し読んでやっています。
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ブンナの素直な心がいい。
いつ地上に戻るんだ〜〜と思って読んでましたら、メインが木の上での話だということに途中で気づく(笑)
ねずみの死体から蝶が飛ぶ(?)シーンが美しくて印象的。
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水上勉は好きだけど、童話っぽいということで敬遠していた一冊。
しかしながらとても良い小説でした。
他者を殺して食べることなしには生きることができないという、忘れがちだけど当たり前の事実を、とてもわかりやすい形で示しています。
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いろいろあった中学校の時、売店のおばさんにこの本を
勧められて読みました。それから人生変わった気がします。
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ずいぶん前に古本屋で購入したのですが、この頃は図書館で借りた本を読むのにかまけてずっと積んであるだけでした。連休中は図書館に行かなかったので読む物がなくなりそう言えば前に買ったなあと引っ張り出してきました。
とても素敵な話でもっと早く読めばよかったと思っております…
この世は弱肉強食で生きているものはなんらかの形で他者の命を食べて生きながらえている。その事を頭では納得していても実際死の差し迫った状況に置かれた際、観念出来るのだろうか?私もスズメみたいにあさましく他者を売っても生きながらえようとするだろうなあ…
あとがきが又素敵でした。
「いったい誰が人なみでいることをわるいときめたか。また、人なみでないことをダメだときめたか。」
水上勉さんはやっぱり素敵だなあ。この頃読んだ本の中では一番でした。最後の辺りは泣いてしまいましたよ。
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この本はもう20年以上前
ある事で悩んでいるときに、偶然手に取った本です。
今でも何かの時に思い出し読み返していて
もうボロボロになってしまっています。
ジャンルは児童文学。著者は水上勉さんです。
もともとは1972年に『蛙よ木からおりてこい』という題で刊行されました。
青年座によるお芝居や、アニメ化もされているので
聞いたことがある方も多いかもしれません。、
内容のエッセンスとしては
生きとし生きるものはすべて
生命を頂いてその中を一生懸命に生きているんだ。ということ。
(ああ、文章にしてしまうとなんて陳腐)
主人公のトノサマガエル、ブンナは
自分の力試しに高い椎の木に登ります。
ある秋の日に、とうとうてっぺんまでたどり着き
「ここは天国だ」と有頂天になりますが
やがてその場所が実は恐ろしい鳶のえさ置き場だったと知ります。
ブンナはそこにあった土に隠れながら
鳶にさらわれてきた雀、百舌、鼠、蛇、うしがえる、などの
後悔、ざんげ、あきらめ、自慢、
母への思念を聞きます。
さまざまな動物たちが生への思いを語り
そして鳶にさらわれ、また息絶える。。。
ブンナそれに怒ったり驚いたり悲しんだりしながら
やがて、命の流れに気が付いていきます。
最後のページでブンナは仲間たちにこう呼びかけます。
「おーい、みんな、がんばって生きようね、きょう一日をね、
生きられるきょうのよろこびを・・・・きのうのかなしみなんかわすれてね・・・・
みんな声をあわせてうたおうよ」
この本は巻末に
「母たちへの一文」--あとがきにかえて--
という文章が付されています。
水上氏は、この文章を
母が子供たちに朗読するために書いたそうで
私も、母としての視点で読んでいたことが多かったのですが
最近はいっぽいっぽ手探りで進んでいる自分個人の視点から
読み直していることに気が付きました。
お子さんがいらっしゃる親御さん。
生きる意味を探しているお若い方。
今、悲しい報道ばかり錯綜している今の世に
心が揺れている、そんな方に。
小さなカエルのブンナからの
大きなメッセージが伝わるのでは。と。思います。
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時々、まさにちょうどそれを必要としていたんだ、というタイミングで、そういう本に出会う事があるけれども、この本はまさしくそういう本でした。
内容は全く知らずに、ただ単にカエルが主人公だという情報のみで手にとって読んだのですが、これはとても大事なことを教えてくれる本でした。
こどもにも読めるような語り口調の文章でありながら、その内容は重く、せつなく、でもとても大きなメッセージを含んだものだと思います。
「きょう一日を生きてゆくよろこび」。この命は、おおぜいのいのちの一つ。それは、ただ単に食物連鎖の話をしているだけではないと思う・・・。
この世に何も残してゆけない私だけれど、どうか願わくば、死んだあとは焼かれて骨つぼに収められるのでなく、土に還ってそこから虫や植物が生まれ育ちますように・・・。そうして私もまた、このイキモノたちのおおぜいのいのちのひとつに加わりたいなあ、と思うのでした。
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水上作品にしては珍しく可愛らしい、そんな印象の本です。
私は水上さんの作品では「般若心経を読む」が一番好きです。
この本に流れている思想は「ブンナ」にも描かれているのではと考えます。
そこで、ちょっとだけ「般若心経を読む」の紹介も書きます。
これは、小説ではなくて、水上さんがご自分の一生を、般若心経の教えに鏤められている「色即是空」と、照らし合わせて書かれているエッセィーです。
私は、それまで多くの「般若心経」の解釈や解説を読みましたが、
水上さんの本ほど、頭をガ〜〜〜ンと打たれ、
一言で言えば、
「壮絶」
なのです。
本の帯には、こう書いてあります。
〜〜〜〜〜〜
人間はなぜ瑣事に悩み、色に惑うのか。
悩み、惑い続けながら、なぜ「生」に執着し「色」に執着するのか。
自ら煩悩の熱い炎に焼かれ身悶えしながら、なお人間の真実に迫ろうとする水上勉が、一筋の光明を求め、「心経」を一休和尚に問い、正眼国師に質す。
その苦悩の果ての悟りとは、、、、、
〜〜〜〜〜〜
のたうち回り、自らを「愚かだ」、おろかだと、言い、
這いずり回って、その生を生き抜いた水上勉。
読者が「安心」できる本でした。
人間の極限に追い詰められた「愚かさ」は、まさに自分のものであり、
自分こそが、「この のたうち回っている水上勉である」。
「生きる」ということが、どんなに凄まじいものであるかを、教えてくれます。
そして、
「不浄である」人間に一縷の光を、確かに指し示してくれる本であると、私は思います。
人間が、間違いを犯す者であることは、古今東西、多くの哲学、文学で語られています。
間違いをおかす 故、
神(仏)は無謬である、と思いたい。
しかし、その神(仏)とて、人間が愚かな知恵で生み出したものである。
神(仏)もまた然り。
人は、神(仏)と共に、
愚かさを共有して、生きていかなければならないのでしょうか???
ひたすら、
愚かに、生きまくった水上勉。
ブンナもそうでしたが、
作者は読者に近い位置にいるんだと、改めて思うものです。
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この本は、童話であると作者はあとがきに記してますが、ファンタジーではありません。むしろ、テーマは仏教の思想に近く思われ、それを下敷きにした子ども向けの説法とすると本の位置付けが丁度よく納まります。物語は、カエルの住む下界から天界に近い椎の木の高みでひょんなことから死神に手を引かれた生者が死の間際に呟く悔恨の言葉や生に固執しあがく様を見ることになったカエルのブンナの話である。話自体に警句があふれ、凡人たる読者である実世界での行ないになぞらえてしまう。心配は要らない、パンドラの箱にも最後には希望が飛び出したように本書でも最後に救いが書かれている。
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いつ読むのが正解なのだろうか。それがこの作品を読んだ正直な感想。童話のような仕立てでありながら、残酷な地獄絵図さえ見せる生き様の物語。子供のころ読んだらうなされそうな気がする。
ブンナは両親とは死に別れ、ツチガエルの仲間と暮らす孤独なトノサマガエル。特技は木登りで、椎の木のてっぺんに登って生活がしたいと考えるようになり、登ってみるが、そこは鳶のえさ場だった。次々運ばれてくる獲物たち。生への意地汚いほどの執着、死の恐怖。
学生のころ、よくこの作品がの演劇が近所の公会堂などで演じられているのを広告で目にして、題名は知っていた。恐らく教育的な内容のものだろうな、と漠然としたイメージしかなかった。鳶のえさ場に落とされた、傷ついた獲物の姿、その言動は、まるで戦争映画の残虐な場面を集めたような生々しさで。仏教の曼荼羅のような、丁寧で鮮やかさな筆致に目が眩む。自分が子供だったら読みたくないと思う。子供にはかなりきつい内容、しかし大人としては教えたい、この葛藤。読み終わってしばらく経った今も悩んでいる。