愛の年代記(新潮文庫)
著者 塩野七生
かくも激しく美しく恋に身をこがし、生きて愛して死んだ女たち――歴史資料の片隅に、わずかに残されたその華麗な生の証しをもとに、欲望・権謀の渦巻くイタリアの中世末期からルネサ...
愛の年代記(新潮文庫)
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商品説明
かくも激しく美しく恋に身をこがし、生きて愛して死んだ女たち――歴史資料の片隅に、わずかに残されたその華麗な生の証しをもとに、欲望・権謀の渦巻くイタリアの中世末期からルネサンスにかけて、《恋の歓び、哀しみ、憤り》など、さまざまな愛のかたちを抽出する。『大公妃ビアンカ・カペッロの回想録』『ドン・ジュリオの悲劇』など、胸ときめく恋の物語9編を収録。
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愛だけでなく...
2009/10/29 04:09
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある貴族男性の生殖能力を試すためだけに、彼との肉体関係を強要されるジュリア。屈辱の夜はしかし、彼女にとって、はかなくも美しい思い出となる...。清楚で純粋な人妻との不倫の末に、青年パンドルフォが思い知ることになる女というものの身の毛もよだつような恐ろしさとは...。妻の不倫現場をおさえた傭兵隊長フィリッポ伯。読んでいるだけで目をそむけたくなる残虐な復讐を、彼は妻に対して平然と行うのだった...。ヴェネツィアの美しい貴婦人に首ったけとなった純情な青年ガレアッツォ。彼女の昼と夜の二つの顔を見たとき、彼の破滅が始まった...。
『愛の年代記』というタイトルにもかかわらず、この小品集に描かれているのは、愛だけではない。そこには、猜疑心や嫉妬、憎しみ、狂気さえもある。しかし、これらの感情も強い愛の裏返しと考えるならば、やはりどれも愛の物語といえるだろう。それにしても、どれも情熱的なイタリア人が主人公のせいか、束の間の愛や不倫ばかりで、おだやかで永続的な愛など一つもない。
これまで読んだ塩野作品が歴史ものばかりだったせいか、どれも史実にもとづいているかのような先入観をもって読みすすんでしまったが、実際には著者のあとがきにもあるように、物語のほとんどが創作である。昔のイタリア人が書いた小説を脚色するか、あるいは実在の人物をモデルにした場合でも、自身の想像を膨らませて自由に書いている。
そんな創作ものの傑作は、やはり『女法王ジョヴァンナ』であろう。恋のため女であることを偽りつづけた修道士が、最後には教皇になってしまうという荒唐無稽な話だが、塩野の語り口はまことしやかに、それでいてユーモラスなので、ついついひきこまれてしまう。法王が最後に、女にしかできないことをやってしまうというオチ、それに続いて、女法王実在の証拠が次々と語られる段にいたっては、まるで笑い話である。特に「ヴァティカンのどこかに残っているはずと言われる、大理石の奇妙な椅子」は愉快だ。
イタリアルネサンスの女性
2015/12/27 16:26
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:十字軍の鏡 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イタリアルネサンス前後の女性の恋愛物語が9編。男性が読んでも女性は怖い、強いと思ってしまうお話です。でも本当にあった話なんだろうな。2回も繰り返して読んでしまいました。
女法王ジョヴァンナ
2019/11/25 20:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集。女法王ジョヴァンナが面白かったです。出産しなければ最後までばれなかったかも、などと思いました。
艶っぽい塩野七生
2023/12/21 18:03
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
剛直なローマ人の物語全15巻で塩野史観というものを世間に印象付けた作者塩野七生であるが、以前はこのような艶っぽい そして残酷な物語も書いていたのだということを、感じさせる作品である。ややよくにた色合いを持つ短編を集めた作品集であるが、レパントの海戦につながる話が特に印象的であった。
愛というより
2017/06/06 13:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
破滅・屈辱の物語が多い印象です。年上の人妻との恋のエピソードは女の一筋縄ではいかない部分を描いています。この本の中ではジュリアが気の毒でした。
恋も命がけ
2015/08/31 02:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きらきら - この投稿者のレビュー一覧を見る
中に収められている9話全てが激情の愛の物語。
もし舞台が日本の現代だったら、ただの昼メロ調なのに、塩野七生さんの手にかかると、
なぜ最後まで読んでしまうのだろう。
それに、巻末で著者が書いているようにこれらの物語は創作なのに、なぜか登場人物が実在したように錯覚してしまう(中には実在の人物も登場する)。
場所と時間を変えれば、人間のエゴな愛情の交錯が織り出す陳腐な愛憎劇。
「フィリッポ伯の復讐」のむごたらしさには目を閉じたくなる。
不義をはたらいた妻を拷問した後、奥行きのある壁の中に閉じ込め壁を再び塗り込める。
さながら現代のコンクリート殺人のよう。
「ローマでは、二十世紀の今でも、古い家の改装工事の折りなどに、壁の中から白骨が発見されることがある」とも書いてある。
古今東西、人間というものはエゴで醜い生き物なのだろうと思わせられた。