密航によって飛行機から人が落下してくる
2016/08/07 21:16
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投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本ではありえないが、密航者が飛行機から落下してくる。アフリカの貧しさなどの現実を突きつけられる。現在アフリカの奴隷制度の悲劇という副題のとおりである。
「奴隷社会」と銘打つ中身ってないよ
2016/10/26 06:22
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
アンゴラからの飛行機の主脚格納部に潜み、密入国しようとしたアフリカ人男性は、ヒースロー空港に着陸態勢に入った飛行機から墜落して死亡した。26歳のこの男性が、なぜこうした事態となったのかを、男性の足跡を追い、関係の深い女性を取材して明かしたルポルタージュ。アフリカの格差社会と矛盾が取材を通して明らかになるが、主な要因となっている女性との関係に、どうもすっきりしない部分が残る。女性の行動が納得できないのだ。私的には。結局、彼女に振り回された可哀そうな男性の物語の側面が大きくなっている。「奴隷社会」と銘打つ中身ってないよ。
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ある快晴の朝、着陸態勢に入った飛行機からロンドン郊外に転落し、命を落としたモザンビーク出身の黒人青年。無謀と見える密入国に駆り立てた背景に何があったのか。丁寧な取材が掘り起こす衝撃の事実と、アフリカの今を活写する傑作ルポルタージュ。
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飛行機から墜落死した一人の黒人男性の生涯から、格差の不条理を見事に表現している。これぞルポルタージュと言える内容で、一気に読みきってしまった。
このレビューを読むのが一番。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/1714
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ヒースロー空港の直前で着陸態勢に入ったアンゴラからのBA便の主脚格納部から墜落して死亡した26歳の男の人生を追うノンフィクション。主題はアフリカ人がアフリカ人を奴隷のように扱う現状と、行政の不正、絶対的な貧困なんだけど、僕が興味を持ったのは、その男性が欧州を目指すことになった要因の一つとなった女性の人生。実はこちらも凄まじい。
女性は82年生まれ。父親は英国人で母親はスイス人。母方は祖母がブラジル人で祖父がドイツ人。国籍はスイスとドイツで、望めばイギリス国籍もすぐに取れる。日常的に母親のフランス語、父親の英語、祖父母のポルトガル語とドイツ語に囲まれて育った。2歳の頃から家族でサハラ砂漠に渡り、ランドクルーザーで移動しながら、モロッコ、アルジェリア、モーリタニア、マリ、ニジュール、ナイジェリア、カメルーン、チャド、中央アフリカと行く先々で車を止めてテントを張った。そのように7歳まで暮らした。その後高校まではジュネープにある、国連の機関に働く人たちの子女が通う国際学校で教育を受ける。高校在学中にカメルーン出身で富豪、2歳年長の同じ高校の男性と結婚。18歳でイスラム教に改宗。そのあと同居することもなく、高校を卒業してイギリスの大学で学ぶ。2008年に南ア、ケープタウンの豪邸で一緒に住むようになるが、まるで幽閉されているような生活。ただ、お金の心配だけは無用であった。そこで、住み込みの庭師だった件の男性、墜落した男性と出会う。そして、二人でケープタンウの豪邸を脱出。男の故郷、モザンビークに逃げるが、資金もつき、路上での生活に。死の間際まで追い詰められて、母を頼って一人ベルリンへ。そこで生活を立て直して、ジューネーブへ再び。カメルーン人の夫と正式に離婚して、今はガンビア人の夫と暮らしている。
いやはや、こんな人生もあるんだ。何々人とか、国籍は何々・・とか、そんなことを完全に超越している。こんなふうに、いずれ地球人になっていくのかなー、と感じたのであった。
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2012/9/9-0750AM
ロンドン警視庁に緊急通報が入る。
ロンドン西部、リッチモンド・アポン・テムズ区、モートレイクのポートマン通りに人が倒れて死んでいるように見える、とのこと。
普段は静かな住宅街に、多くの警察官が集まり、現場での捜査が始まった。
しばらくすると、警察官は上空を気にし始めた。
現場はヒースロー空港から13キロ程度。
被害者は、どうやら現場上空で着陸のために車輪を出したとき、格納部から墜落したようだと考えられた。
身元確認などで捜査は難航するが、次第に状況が明らかになってゆく。
亡くなったのはモザンビーク出身の男性、ジョゼ・マタダ。
死亡した日はマタダの26歳の誕生日だった。
おりしも事件の日はロンドンパラリンピックの閉会式。
世界が一つにまとまり、スポーツの祭典が大団円を迎えるその日に、アフリカから逃げ出してきた一人の若者が息を引き取った。
「未だに、世界には命の危険を冒してでも、海を渡る事を熱望する人がいる。彼らが、命と引き替えにしてまでも手に入れたいものとは何なのだろう」(p.27)
集団として“移民問題”を論じるのではなく、今回の事件について、一人の男性の生涯を取材することで、社会の不平等な実態を暴くドキュメント。
「慎重な性格だった」と家族が語る男性が、飛行機の車輪の格納庫でヨーロッパを目指すなどという無謀な行動に出たその理由について、ともに考えられる作品。
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帯文:”ロンドン郊外の住宅地でひとりの黒人青年の死体が見つかった。所持品は僅かな現金と携帯電話のみ。SIMカードに残されたデータを頼りに事件の謎を追い、真相に迫るなかで見えてきたものとは!? 難民問題が生んだ衝撃の実話――。” ”彼はなぜB777から墜落し、路上で息絶えていたのか?”
目次:序章 異様なほど晴れ渡った朝、突然 第1章 ルアンダ発ヒースロー行きBA76便 第2章 いったい彼は「誰」だったのか? 第3章 空飛ぶ棺 第4章 ジュネーブへ 第5章 現代のおとぎ話 第6章 ケープタウンでの運命の出会い 第7章 悲劇の始まり 第8章 嫉妬と狂気の果てに 第9章 モザンビークへ 第10章 永遠の別離 第11章 絶対に越えられない壁 第12章 ジュネーブで出会った第三の男 第13章 最後の日々 第14章 モザンビークの現実……他
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[その先を目指して]着陸態勢に入った飛行機から落ち,ロンドンのアスファルトに叩きつけられた一人の男。新聞のベタ記事を飾るようなそのニュースに興味を持った著者は,「空から降ってきた男」の素性を知ろうとするのだが,彼が直面したのは,移民をめぐる大陸をまたいだ一つの厳しい現実であった......。著者は,日本人として初めて英国外国特派員協会賞を受賞した小倉孝保。
着眼点だけで満点を与えたくなるノンフィクション。ニュースで数字として取り上げられることの多い移民問題ですが,マタダという男性の人生を通して見ることによりその複雑な背景事情を浮かび上がらせることに成功しています。
〜欧州を目指す人の波の裏に何があるのか。普段は集合体でしかとらえることのない移民現象を,マタダの人生を通して,具体化してみせることが可能だと思った。〜
それにしてもこの終焉は切なすぎる☆5つ
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「貧困は相対的なものである」この意味を正しく認識し直した。比較対象を認識しなければ、貧富の差に気付くこともなく、貧しさに悩むこともない。生きてていくのがやっとであったとしても、生まれ育ったコミュニティで生活していく、それが幸せだったのかもしれない。1日あたり何ドル以下の極貧生活という表現に意味はない。
物質的豊かさを求めて、故郷を捨てて国外まで出稼ぎに行く。グローバリゼーションの影の部分がこの事件なのであろう。
しかし、もう過去には戻れない。
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ある日、ロンドン郊外で一人の男が降ってきた。彼は何者で、どうして空から降ってくることになったのかーー。
実在の事件のルポルタージュであるが、ミステリーのように読ませる。
一人の男の人生を通して、アフリカの現在を垣間見ることができる、著者の狙い通りの良書と思った。ただ、Amazonの内容紹介やコメントでの「グローバル社会の闇を独自の視点で暴く」、「傑作」等の文句は言いすぎな感がある。
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「物質的繁栄が真の豊かさではない」とは、ソレを食い散らかした後に言えるセリフ。
インターネットやら衛星放送やらで外の世界を見せつけられるアフリカの若者に罪はない。
賄賂を要求する役人に騙されるばかりで、パスポートどころか出生証明書すら手に入らない。イカロスよろしく「飛ぶ」ことを選んだジョゼ・マタダ。哀れに思いこそすれ、愚かと責めることはできない。
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遠い昔の話でも、全く知らない国の話でもなく、現代のロンドンで起きた青年の墜落事件をきっかけとして、アフリカに未だ根付く奴隷社会の実情が紐解かれて行く。
選択肢がある、ということはどれだけ恵まれたことだろうか。そしてそれは過去の人々が必死で勝ち取った権利なんだということを、この本を読んで改めて思う。
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ロンドン五輪に引き続いて行われたパラリンピック閉会式の日。ロンドン
郊外の住宅地。通行人からの通報で駆け付けたスコットランド・ヤードの
捜査員たちは、路上に倒れている黒人男性を発見する。
周辺住民の話では警察が到着する前に「どすん」という何かが落ちる
ような音が聞こえたと言う。捜査員たちは空を見上げる。上空には
ヒースロー空港へ向かう旅客機がひっきりなしに通過していた。
頭部の激しい損傷、耳に詰められた丸めたティッシュペーパー。警察
は男性が何らかの理由で航空機の主脚格納庫に潜んで密航しよう
として格納庫が開いた際に墜落したとの結論に至った。
持ち物はアンゴラ紙幣2枚とボツワナ硬貨1枚に携帯電話。他に男性の
身元が確認できる持ち物はなかったのだが、携帯電話とは別にポケット
に入っていたSIMカードの通話記録からスイスに住む白人イスラム教徒
の女性と連絡が取れ、遺体の身元が判明する。
路上で亡くなっていたのはモザンピーク出身のジョゼ・マタダ。彼の身元
を確認した女性はジェシカ・ハント。本書はこのジェシカへのインタビュー
が大半を占めている。
以前のジェシカの結婚相手はカメルーンの大富豪一族の一員。その家で
使用人として働いていたのがマタダだ。
当初は平穏な結婚生活ではあったが、夫の家族から財産目当てだと疑わ
れ、使用人から監視される生活のなかで孤独感を募らせたジェシカが心の
安らぎを求めたのが物静かな青年であったマタダだ。
これがマタダがロンドン郊外で墜落死する遠因になる。前夫の支配から
逃れる為のふたりの逃避行。しかし、離婚も成立しておらず職もない
白人女性と貧しい黒人青年との放浪は時を置かずに破たんする。
ジェシカは母の助けを借りてヨーロッパに戻る。必ずマタダを呼び寄せる
との約束をして。
私はこのジェシカの気持ちがまったく分からない。抑圧された結婚生活
のなかでマタダに救いを求め、手を取り合って逃げ、マタダがヨーロッパ
に渡れるようにすると約束までしたのに、前夫との離婚成立後に別の
男性と結婚している。
「弟に注ぐような愛情」だとジェシカは言う。だが、マタダにしたらどうだった
のだろう。ジェシカとの結婚を夢見ていたのではないだろうか。
本書はサブ・タイトルに「奴隷社会」との言葉が入っている。アフリカのなか
でも、同じ黒人の社会の中でも貧富の差は明確だ。モザンピークは国全体
が貧しい。だから、マタダは故郷を離れ出稼ぎに行っていた。
出稼ぎ先で豊かな暮らしに触れた。貧困からの脱出を夢見たこともある
のだろう。その夢を実現できるかもしれないとの希望をマタダに与えた
のもまた、ジェシカではなかったか。
だから、少しでもジェシカへの近くへと危険を冒して旅客機での密航を
決行したのではないだろうか。気温は氷点下に下がり、酸素の薄くなる
主脚格納庫に身を潜め、マタダ��何を思ったのだろうか。切ないわ。
著者はマタダの故郷であるモザンピークの村を訪ね、思ってもみなかった
貧困の現実に直面している。これは私にも衝撃だった。マタダの死によって
残された家族・親戚も辛い現実に直面していた。
昨今の移民問題の影も部分も理解出来る良書。著者がマタダを描く時の
優しさが余計に悲しみを感じさせる。
それにしてもジェシカなんだ。彼女へのインタビュー部分を何度か読み返し
たけれど、結局は自分のことしか考えていないんじゃないか?と言ったら
酷だろうか。
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・アイデンティティを保つムスリム
様々な国の血が混じり、アフリカなど色々な国を渡り歩き、数カ国語を操れるジェシカは自分が何者であるか分からなかった。しかし最初の夫の影響でムスリムになり、イスラム教徒というアイデンティティを保つことができた。キリスト教徒だった頃は宗教的な自覚をあまり持たなかったようだ。イスラームの何が人々をそこまで信仰深くさせるのか、まだ私にはまだわからない。
・差別する側とされる側
モザンビークがポルトガル植民地だった時にそこへ渡った人はポルトガル人の中でも裕福ではない人達だった。だからこそ植民地において富への執着がすごかった、という旨の記述がある。これがアフリカ全体に共通することならば、黒人差別はそのような貧しい白人の余裕の無さから生まれたのではないか。
植民地時代は白人が黒人を奴隷としていた。時代が変化した今は黒人が黒人を奴隷としている。ジェシカはメイドさんを人として扱いたかったが、大富豪の黒人一家はそうは考えていなかった。ジェシカはそこに大きな違和感を感じている。
・裕福を知ったマタダ
村にいた頃は大人しく良い子だった。しかし都心に出稼ぎに行き、世の中には富める人がいる事を知ってしまった。そして身近にジェシカが居るからこそ、尚更自分の境遇に嫌気が刺してしまった。最後の方ではイマームに家族はいないと言っている。貧乏社会と縁を切りたかったのだろう。
・汚職文化のモザンビーク
いくら役人に金を払っても出生証明書やパスポートが出来上がらない。富めるものは富み、貧しい者は貧しいまま。
・独立後の混乱
植民地から独立してもその後に待つのは内戦。独裁政権を転覆してから国内が収集つかなくなるのと同じ。
・法に守られる社会
アフリカは賄賂社会であり、金さえあれば警察だって何だって操ることができる。そしてムスリム文化も手伝って、夫婦の揉め事に警察は口を挟まない。家族、親戚間で解決すべき事柄だからだ。
しかし欧州では家庭内問題に法の力を及ばせることができる。人は家族単位でなく個人単位で見られるのだ。
・筆者のイスラーム理解について
筆者は終始ジェシカとマタダに性的関係があったのに、ジェシカは否定しているのではないかと疑っている。しかしムスリムに相当強く影響されていた2人が婚前交渉に及ぶ事は例えひとつ屋根の下にいた事実があっても考えられない。本来であれば同室に寝ることすら神に反している上に婚前交渉を冒すことは、当時究極に追い詰められ、神にすがるしかない2人には起こりえないと私は思う。
私の仲の良い敬虔なムスリムの友達は「イスラムでは正式に夫婦間以外の性交渉を認めていない点で非常に優れている。神に反することはできないから。」と言っていた。
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これは貧困と搾取が生み出した、一人の男の悲劇的な恋の末路だ。
ロンドン、ヒースロー空港近郊の道に頭から血を流した男が横たわっていた。
近所の住人は朝、外で大きな音がするのを聞いた。
現場検証に来た警察官は、ヒースロー空港へ着陸していく飛行機を見上げていた。
男の名はジョゼ・マタダ。
アンゴラ発ヒースロー行の飛行機の車輪格納庫に忍び込んで密航しようとしたが、高度一万メートル、マイナス60℃の酸素の薄い空気で体力を消耗し、着陸時に扉が開いたときに落下して時速200kmで地面に叩きつけられて墜落死した。
奴隷社会の絶望と、一人の女性に希望を賭けた。
アフリカ社会の現代を追うノンフィクション。