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藍坂素敵な症候群
著者 著者:水瀬 葉月 , イラスト:東条 さかな
私立千歳井高校。那霧浩介が転校初日に連れていかれたのは医術部というちょっと奇妙な部活だった。部長・藍坂素敵。白衣を纏いメスを持ち、ちっちゃくてやたらと元気な女子。部員その...
藍坂素敵な症候群
藍坂素敵な症候群 1 (電撃文庫)
商品説明
私立千歳井高校。那霧浩介が転校初日に連れていかれたのは医術部というちょっと奇妙な部活だった。部長・藍坂素敵。白衣を纏いメスを持ち、ちっちゃくてやたらと元気な女子。部員その1、宵闇ヶ原陰子。傘を異常に溺愛するお嬢様。部員その2、黒崎空。いつもご機嫌斜めな金髪ヘッドホン女。三人ともかわいいのはいいのだけど、藍坂はなぜか手術をさせろと迫ってくるし、さらに街では《耽溺症候群(フィリア・シンドローム)》なるものが蔓延していて──。『C3 -シーキューブ- 』の水瀬葉月が贈るフェチ系美少女学園ストーリー!
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紙の本
心の奥底に潜む嗜好をデフォルメしたテーマが光る
2010/01/11 16:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙カバーイラストとオビのセリフで「お子ちゃまヒロインかぁ」と敬遠しかけたが、普段はフツーの喋り方だった。内容的には作者の既刊『C3(シーキューブ)』シリーズと同様な雰囲気&歪み方だが、歪む方向が少し違っていた。人の内面深くに潜む特殊な嗜好や癖みたいなものを極端にデフォルメして見せている。当初はタイトルが「藍坂、素敵な症候群」なのか「藍坂素敵な、症候群」なのかと考えたが、少なくとも前者ではない。もたらされる結果を素敵と感じるのは当事者のみである。行き過ぎたがために哀しく醜い所業が克明に描かれ、これをある覚悟を持って“治療”するヒロイン【藍坂素敵】という構図である。さらには彼女が創部した「医術部」の部員達それぞれにも背景と素敵との関係をしっかり持たせて奥行きを出すとともに、一見して残酷な素敵の“処置”にも、それを行う理由や可能にさせる条件(これは少し超展開?)を描いて、主人公【那霧浩介】の反目とその後の理解を織り交ぜている。これらの要素が縦横に絡まりながら展開される奥深さが素晴らしい。内心に罪の意識や葛藤を秘めながら、その明確な答えを見出だせないまま、秘密裏に人道に反する(ように見える)“手術”を独り黙々と真摯に行い続ける素敵の凛とした心持ちと、そんな彼女への恩返しと同時に孤立させないよう側に居る部員達との暗黙の繋がりが重層的に描かれていて心地良い。そして、そんな素敵の“素敵”な姿をいつまでも見続けたいと思った浩介に最大の使命がもたらされる結末である。読み終えた時には、こうした嗜好と症状を「罹患」と呼ぶならば、人はみな何かに罹患している、病んでいるとも言えそうで考えさせられる。なお、現時点ではラヴ要素がまだ細やかだが、今後の展開次第では面白いことになりそう。ただ、部員の【宵闇ヶ原陰子】と浩介との犬猿の仲はいずれ和解して欲しいところ。