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一般書

日本奥地紀行

著者 イザベラ・バード 著 , 高梨健吉 訳

日本の真の姿を求めて奥地を旅した英国女性の克明な記録。明治初期の日本を紹介した旅行記の名作、いよいよライブラリー版で登場!

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日本奥地紀行

税込 1,320 12pt

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みんなのレビュー54件

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評価内訳

130年前、聡明な英国女性が見た日本の奥地

2008/05/03 20:27

16人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る

1878年(明治11年)の横浜に、ひとりのイギリス女性が船で到着した。

持病の影響で控えめな青春時代を送ったスコットランド地方出身の著者イザベラ・バードは、医者のすすめにより20代でアメリカとカナダを訪れて旅行記を出版したのち、社会奉仕活動などを経てふたたび40代から転地療養を兼ねた旅行をはじめる。オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ諸島などに滞在。日本には47歳で到着し、東北や北海道をまわった旅行(本書)を終えたのち関西をまわった道中で、48歳を迎えたことになる。

病気がちの一婦人による単身の旅行、しかも荷物運搬や案内人は必要に応じて雇った場合もあるが、原則として通訳兼随行者の伊藤青年以外には頼る者もない旅に出るという、その強い意志におどろいた。道路も鉄道も完備されておらず、人を乗せることには慣れていない日本の馬(多くは使役用)を利用した旅に出るには、思いきった年齢だとの思いがある。

だが著者は、地方の村や僻村での不衛生さ(*1)、人々の不作法(*2)を嘆きながらも約三ヶ月の旅行を終えた。しかも最後の四週間は各地のアイヌの集落を訪ねながら北海道に滞在し、現代の日本人がよく知らずにいるアイヌ文化や言語(語彙)についても、細かくつづっている。

随行者である伊藤青年は18歳で、面接時には紹介状もない状態だったが、三ヶ月のあいだにまたとない人材へと成長していく。著者の望みを察知し、有能で機敏に対応すると同時に、ずるがしこさや野心も持ち合わせた一癖ある存在でもある。

指示を受けずとも、著者が興味を示すその村の戸数や人口を聞いてまわったり、えらい外国の先生に付いている通訳であると自分を誇示したい場合には正装をする。自分が行きたくない僻地には、やれ道が悪い、たいへんな道のりだからやめたほうがいいと、難癖をつけたりもする。なかなか味がある。この紀行の最後、北海道でふたりは別るが、その後はどうなったのだろうと検索をした。その後も通訳兼ガイドとして活躍したようである。

だが、伊藤青年の存在が気になる人はいるようで、どうやら彼の存在をモチーフにした小説「イトウの恋」というものも、出ているのだそうだ。

閑話休題。

乳製品や肉をなかなか食べる機会がない著者に、伊藤は鶏を買ってきて宿屋にゆでるように手配する。だがその直後、鶏卵をとるためならばともかく、肉として食べられるのは哀れだと、飼い主が返金しやってくる、あるいは鶏が逃げてしまうなどの珍事も数回あった。道中の食べ物に関する苦労話は枚挙にいとまがない。

旅の序盤で日光の金谷家(のちの日光金谷ホテル)に滞在し洋風の食事ができたころや、東北地方で洋食屋に遭遇したこと、そして旅のごく最後のほうで北海道の海の幸を食べられたことを除き、著者はほとんどの日々を嘆いてばかりだった。これは著者がわがままというよりは、当時の日本の僻村が、人をもてなすほどに余分な食料を持たなかったことにもよるだろう。

あとがきによると著者はこのあと韓国やインド、ペルシャなどに旅をし、病院の建設などに携わったようである。60代でも日本を数回訪れている。旅の生涯を1904年に、72歳で終えた。

とても長い本だが、読んでみるだけの価値はじゅうぶんにあった。

----------
(*1)不衛生さについて
屋内や畳の蚤、人々の不衛生さからくる皮膚病の蔓延については、数え切れないほどの描写がある。著者は折りたたみ式の寝台(枠組みに布をつけたもの)を携行していた。

(*2)人々の不作法について
外国人が珍しいとはいえ、集団で見物にくるなどは序の口で、安宿で就寝中に障子に穴を開けられたり、ふすまをすべて取りはらわれて見物されたことも一度や二度ではなかった。

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てらいも気取りも無い妹宛の手紙文が好ましい

2008/09/19 21:55

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者は英国地理学会の会員ではあるが、地理学者でも民族学者でもない旅行家の、スコットランドの一中年婦人である。しかし、観察力と文才はなかなかのものである。てらいも気取りも無い妹宛の手紙文が、好ましい。この著作以前にも旅行記を何冊か発行し、再版されていたとのこと。
 明治11年に東京から日光・会津を経由して日本海側から東北地方を北上し、北海道に渡り、門別まで行っている。その過程での観察と印象が、当時の東北・北海道の道路事情や和人と蝦夷人の生活事情、自然や風物の貴重な記録となっている。当時の人々の貧しい暮らしぶりと、なきに等しい道路事情に驚く。その中で暮らす人たちは、好奇心が強く、明るく親切で、礼儀正しい。森林や河川の自然の美しさも格別であったようだ。現代までに失われてしまったこれらのものに、惜別の感情を持たざるをえない。しかし、とても昔に戻りたいとは思えない、蚤と蚊と、貧しい暮らしぶりと交通状況である。外国の一婦人が、そのような環境で良く旅行を続けられたものだと思う。本人の強い意志と世界中を旅行してきた経験と、当時の日本人の人の良さによるものであろうか。
 この本は原著の前半でしかもいくらかの省略があるという。この本には無い後半は、奥地ではなく関西地方の旅行記であるとのこと。

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外から見た日本

2020/11/18 16:36

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る

明治になったばかりの頃の日本を旅した外国人の手記。
東京や横浜などの主要都市、日光などの観光地だけでなく、もっと北の岩手や新潟、果ては北海道まで旅路は続く。
当時はまだ道路の整備も不十分で、いかに困難な道のりだったかが綴られている。
すこしはずれた村落に行くと、文明の影はなく衛生状態も良くないと言うことがつぶさに書かれている。
こんな時代もあったのだなぁと言うのを感じる。

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明治維新当時の英国の旅行家による日本旅行記です!

2020/05/12 09:39

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、19世紀の大英帝国の旅行家であり、探検家でもあり、紀行作家でもあったイザベラ・バードの日本旅行記です。同書は、彼女が1878年(明治11年)6月から9月にかけて東京から北海道(蝦夷地)までの旅行の記録であり、明治維新当時の日本の地方の住居、服装、風俗、自然を細かく書き留めてあります。またアイヌに関する記述も豊富にあり、貴重な史料とも言える一冊です。「はじがき」はじがきには、「全行程を踏破したヨーロッパ人はこれまでに一人もいなかった」、また、「西洋人のよく出かけるところは、日光を例外として詳しくは述べなかった」という記述があり、他の紀行文とは一味違うことを著者自身がにおわせています。

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明治の日本の様子がわかります

2017/10/28 23:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

明治初期の日本を一人の外国人女性が旅行した記録です。とても詳細に書かれていて、特に日本に気をつかうこともなく、率直に書かれているのが気持ちが良いです。当時の様子がわかる貴重な本だと思います。文庫にしては値段が高いと思いましたが、この厚さと内容なら、むしろ安いぐらいですね。歴史に興味がある人は読んでおきたい一冊です。

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2005/01/11 16:49

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2007/01/17 00:01

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2007/07/03 19:20

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2008/09/17 13:38

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2009/05/13 23:31

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2009/12/15 02:00

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2010/02/21 13:07

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2010/09/07 21:36

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2010/07/15 17:47

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2010/08/22 20:09

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