鬼才 五社英雄の生涯
著者 春日太一
『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』『陽揮楼』『吉原炎上』『三匹の侍』『人斬り』……極彩色のエンターテイナー、映画監督・五社英雄。五社作品の持つ情念に魅せられた著者は関係...
鬼才 五社英雄の生涯
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商品説明
『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』『陽揮楼』『吉原炎上』『三匹の侍』『人斬り』……極彩色のエンターテイナー、映画監督・五社英雄。
五社作品の持つ情念に魅せられた著者は関係者への徹底した取材を重ねるが、その生涯を描き出すのは困難を極めた。稀代の“ホラッチョ”五社の証言は、背中の彫り物ひとつをとっても同じ人物のものとは思えないほどときにブレる。どこまでが真実でどこからが嘘なのか? これは、全身エンターテイナー──「人を喜ばせる」ことに生涯をかけた男の、ハッタリ上等、虚々実々の物語である。
テレビ界出身だった五社英雄は、長らく日本の映画評論界から不当に無視に近い扱いを受けてきた。その言動は常に毀誉褒貶の対象だった。真っ白なジャケットとズボンで敵だらけの現場に乗り込み、水たまりがあればそのジャケットを脱いで女優にその上を歩かせて周囲の度肝を抜き(しかも翌日にはまた新品同様の白ジャケットで現れる)、80年には銃刀法違反で逮捕され、一時は映画界を追放されて、すべてを失った。
しかし、現在の時代劇やアクションは五社の存在なくしては語れない。今では当たり前の、刀がぶつかり合い、肉を斬り骨を断つ効果音。これらを最初に生み出したのも五社だった。テレビの小さな画面でいかにして映画に負けない迫力や殺気を出すか? 悩んだ末に辿りついた発想だった。
自らの人生も「演出」した男はなぜその背中に鬼を掘り込んだのか? 台本にはなかった「なめたらあかんぜよ!」の秘密とは?
虚実ハッタリ入り乱れた生涯に翻弄されながら、春日太一が渾身の取材で「鬼」の静かで哀切な真実に迫る。
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映画は賭けだよ
2016/11/10 08:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
五社英雄という名前を知っている人も少なくなったのではないか。
亡くなったのが1992年だから、すでに20年以上前になる。
五社が撮った作品でいえば有名な「鬼龍院花子の生涯」は1982年の作品だし、さらに遡って五社の名前を一躍有名にしたTV時代劇「三匹の侍」にいたっては1963年だから半世紀以前のことである。
そういう映画監督の生涯を一つの作品としてまとめるには書き手の並々ならない思いがあるにちがいない。
作品となるまでの経緯はこの本の「おわりに」で著者自身が自ら綴っているから参考にして欲しいが、五社英雄への愛だけでなく著者が映画というものに関わってきた積年の思いもまた、この本の原動力になったといえるだろう。
さて五社英雄であるが、私の印象でいえば生涯テレビの世界から来た巨匠と言われ続けた監督という感じがする。
それほどに五社の撮った「三匹の侍」の印象が強かったということだろう。
残念ながら当時の撮影事情から「三匹の侍」の原本は見られないらしいが、テレビという媒体が急速に広がっていく過程において、この時代劇が果たしたものも大きい。
本編が労作であるゆえに本の構成として残念なのが、やはり五社英雄の作品一覧のようなものが付いていればよかった。
きっとこの本を読み終わった読者は五社英雄の作品を観たくなるに違いない。
だとしたら、主演俳優や主要なスタッフ名は列記してもらいたかった。
「映画は賭けだよ。らくにいこうぜ」と言った五社英雄には似合わない小さな繰り言かもしれないが。
テレビと映画の間
2016/09/04 09:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:脳天さかおとし - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭から五社自身が語っていた身の上話のウソが暴露される。ウケるためだったら平気でウソをつく見栄とハッタリの塊のような男の肖像が、丹念な裏取りで描かれる。
テレビという当時見下されていたメディアから上から目線を見下していた映画界に殴り込みをかける気負いから、元からのハッタリ気質に磨きをかけ、映画の見世物としての原点に戻って成功していく。
一方で安定したサラリーマンというテレビ局員としての地位をなかなか捨てきれない小心さも描かれる。その地位を思いがけない形で放棄せざるをえなくなり、退路を断つつもりで背中に入れ墨を入れる。
振幅の大きい、大胆さと小心さ、ハッタリと繊細さが混ざった一人の男の軌跡がそのまま作品に反映しているのが浮き彫りにされる。
どの作品が誰に企画だったかといった原点にまで遡って調べてあるのが貴重。
赤い玉の伝説
2016/08/19 12:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:才谷 - この投稿者のレビュー一覧を見る
豪放なイメージしかなかった五社英雄の、初めて焦点が当てられた等身大の繊細な部分に何とも言えない切なさを感じた。
……で、ますます五社映画が好きになった。聖飢魔IIの「赤い玉の伝説」もますます好きになった。