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  • 販売開始日: 2016/12/30
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • ISBN:978-4-10-201017-4
一般書

悪霊(上)(新潮文庫)

著者 ドストエフスキー , 江川卓/訳

1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。―...

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悪霊(上)(新潮文庫)

税込 979 8pt

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商品説明

1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。――聖書に、悪霊に憑かれた豚の群れが湖に飛び込んで溺死するという記述があるが、本書は、無神論的革命思想を悪霊に見たて、それに憑かれた人々とその破滅を、実在の事件をもとに描いたものである。

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みんなのレビュー53件

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評価内訳

ニコライ・スタヴローギンの内面

2006/01/11 13:20

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 19世紀ロシアにあらわれたニヒリストと呼ばれるテロ集団を題材にした物語。ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーに率いられた彼らは、巧みに県知事に取り入り、暴動や放火をかげで操る。そして、転向者のシャートフをリンチして殺害する。暴力や殺戮場面の連続には少々気がめいるものの、ドストエフスキー文学特有の個性的な人物群は、忘れがたい印象を私たちの中に残してくれる。
 シャートフは短気で喧嘩っ早いが、根は純粋で正義感にあふれた青年である。その友キリーロフは、人生に何の意味も希望も見いださず、虚無を生きようとするあまり、いつ何時自殺をしてもかまわないと常々公言している。しかしその一方、子供好きで、友への思いやりももっている。彼は自らがシャートフ殺しの犯人であるという遺書を書いて自殺させられる。ピョートルの父で、西欧かぶれの衒学者ステパン氏は、ロシア的知性に失望し放浪の旅に出るが、最期にロシア民衆の精神に真の救いを見いだす。旅先で死の床につく彼を看病する心優しい聖書売りの女性ソフィアも魅力的な存在である。
 しかしこの作品中最も深刻な人物像は、主人公ニコライ・スタヴローギンであろう。虚無と暴力のいずれかに生きることしかできず、最後に自ら死を選ぶ彼の内面はどのようなものだったか。同じく死を選んだキリーロフとの次の会話が、その一端をのぞかせてくれる。
〈「かりにきみが月に住んでいたと仮定してみる...そこで、滑稽で醜悪な悪事のかぎりをつくしてきたとする...きみはここにいても、月ではきみの名前がもの笑いの種にされ...唾を吐きかけられるだろうことを確実に知っているわけです。ところが、きみはいまここにいて、こっちから月を眺めている。だとしたら、きみが月でしでかしたことや、月の連中が千年もきみに唾を吐きかけるだろうことが、ここにいるきみに何のかかわりがあります、そうでしょうが?」
「わかりませんね」とキリーロフは答えた。「僕は月にいたことがないし」何の皮肉も交えず、彼はこうつけくわえた。」〉
 ニコライはここで、自分がどんな罪を犯そうとも、世間からの非難など気にしないということを主張している。しかし、彼がことさらに月のようなはるか彼方の世界に自己の悪行をおきざりにしようとする理由は何か?それは彼が自ら犯した罪をおそれ、そこから遠く離れようとしているからではないか?一方、精神にいささか異常があるものの、良心には一点の曇りもないキリーロフにこの比喩は通じない。そもそも自分への罵倒を月面上で聞くのと地球上で聞くのに、どんな違いがあるのかが彼には理解できない。キリーロフが皮肉なしに上の言葉を吐いたのは、ごく自然なことであった。
 本書が発表された当時、出版社の検閲により削除された「スタヴローギンの告白」の章において、ニコライは、神父のチホンに向かって、かつて自分が少女を犯し、自殺に追いやったことを告白し、世間にそれを公表すると明言する。しかし、チホンも指摘するように、そこには、自分がどんなにすごい悪人かを人々に見せつけようとするニコライの虚栄心が垣間見える。そこに真の悔悟はなく、存在するのは社会に対する意地の悪い挑戦だけである。ちょうど月にいる人々に何を言われようとかまわないと言ったのと同じ態度なのだ。
 さらにこの告白では、ニコライがおびえているものが明らかにされている。それは死んだ少女の亡霊である。ある意味でそれは、彼の罪が作り出した良心の呵責ではないだろうか?亡霊の正体が何であれ、ニコライは最後までそれに悩まされ、それにより自ら命を絶った。彼にとってそれは、月の世界の出来事とは到底考えることのできない現実であった。

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埴谷雄高の『死霊』と併せてお愉しみください

2005/09/20 09:27

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る

 成る程,確かに,これは埴谷雄高の『死霊』のサンプルですね。と言うか,サンプリングのレヴェルではなく,もうカヴァリングです。この作品に『カラマーゾフの兄弟』とカントの『純粋理性批判』とを加えて,それを掻き混ぜると,『死霊』の出来上がり,と,こうなる訳ですね──大雑把に過ぎますか──。
 ドストエーフスキイの諸著書について,良く言われるように,これも,リーダビリティは高いです。読ませますね。しかし……,まぁ,私などが大先生の作品にけちを付けても,袋叩きを通り越して,完全無視されるでしょうが,やはり気になったもので。
 それは全体の構成です。各章の接続が貧弱なんですよね。シークェンシャルに書いたのではなく,各々のピースを,用意しておいて,パズルのように配置しました,という感じ。この不連続感は,この作品が連載物だった,ということに起因しているかも知れません。19 世紀のことですから,現在の,コンピュータでのエディットなどは勿論無かった訳ですし。
 後,登場人物の中では,キリーロフに若干の共感を憶えました。某教授は某誌において「スタヴローギンに強く心を惹かれていた」と書いてらっしゃいましたが,私には,完全無欠である彼は遠過ぎます。
 読了後,『死霊』も,もし完成していたら,この結末だったのかな? と考えました。んんん……,やはり,この他に,書きようは無い気がします。■

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印象に残る作品。

2016/01/08 11:26

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あかーきぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る

最初、ステパン氏の話が滔々と続く序章で挫折しそうになったが、主人公の貴公子ニコライ(スタヴローギン)が漸く登場する辺りから、物語は段々と面白くなってくる。ピョートルの動きは忙しなく、そしてあざとい。スタヴローギンへの彼の心酔ぶりは異常な程である。何とも言えない不気味な感じが作品全体を通して漂っている。それは、思想に取り憑かれた人々の末路、主人公の持つ性格の所以であろうか。救いが無く、全体的に暗い雰囲気であるが、ドストエフスキーの長編作品群の中で、これが最も印象に残った。本作については恐らく好き嫌いが分かれるだろう。

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2004/11/02 20:09

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2007/07/28 23:23

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2007/12/13 09:16

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2008/01/17 18:54

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2008/05/29 01:39

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2008/08/07 23:17

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2009/06/30 19:07

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2009/09/22 16:52

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2009/10/26 20:54

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2009/11/20 22:43

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2010/08/03 09:59

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