紙の本
初期大江健三郎の真骨頂
2016/03/05 01:15
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投稿者:じゃんぐるジム - この投稿者のレビュー一覧を見る
随分前に読んだため詳細は思い出せないが、大江健三郎の初期長編、短編のほとんどを読破した者として、
この「叫び声」はかなりの良作だと言い切れる。とくに朝鮮人の主要人物が女子高生を惨殺する描写は、カミュの「異邦人」を凌駕する迫力があった。いつかまた読み直したい。
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投稿者:55555 - この投稿者のレビュー一覧を見る
若若しい感じを受ける作品です。壁を打ち破ることの出来ない若者たちの青春の挫折を書いた作品。
プロットがよく練られていて、すらすら読める。
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十七歳の虎、十八歳の呉鷹男、二十歳の「僕」の三人の《黄金の青春の時》とその結末を描いた長編小説。「現に青春にある者が、それも自分が内面において衰弱し、病んでいることを自覚している者が、恢復をめざして青春を書いた小説」
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僕が思う良い小説ってのは実は読むのがどれだけ苦しかったかってことに起因しているかもしれない。
この『叫び声』はまさに僕が思うそれ的な小説だということが出来る。(今回は電子辞書が手放せない位生きていく中で聞くことの無い響きの言葉が頻出していてそういう面でも苦しんだ;; 純文学度が高いってこと?)
自分の核をどれだけ深く下げて生きていくかが、精一杯生きるってことなのかなとも思った。ずっとどうにか追いかけてきたんだけど呉鷹男の第四章怪物で完全においてかれてしまった。
僕が一番好きな小説家、伊坂幸太郎さんが影響を受けた本ということで何度かあげていたので読みたいと思っていた。
確かに影響を受けているなと感じた。特に、伊坂さんの中で一番僕が好きな『砂漠』はまさに伊坂版『叫び声』だなと気付いた。(全く違うけれど雰囲気や設定が?)
誰もが一度は経験する《黄金の青春の時》を経て、絶望的に帰ることの出来ない現状を嘆く。奇抜な仲間に対して一歩引いた主人公の立ち位置から見た青春模様。はぁ。
読んでいる期間は(読んでいる以外の時間でも)溜め息が止まらなかった。むなしい・・・ 何が言いたいのか分からない僕もまた、むなしい・・・
(2008.08.09)
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人種も年齢も違う4人の青春劇。
最初は本当に明るい青春劇のような始まり方なのですが、(一人のアメリカ人青年の呼びかけで、ヨットでアフリカに行こうという計画の元に4人が集まる)少しづつ、それぞれの倒錯している部分が事件を引き起こしていって、それがすべて最初にアメリカ人青年が起こしたある事件に起因していて、ラストもそれに終わるという…。
叫び声を上げたい気持ちがよく伝わってきますね。堕落した青春時代は楽しいよなぁなんて思ってたけど、中盤越えた辺りからどっと深みにはまっていきました
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伊坂幸太郎の最オススメ作品だったので読了
まだ俺が読むにはレベルが足りんかったかも。
昔の本に求められてた面白さって、今の本にみられるような、キャラの個性とか巧妙な伏線とオチとかじゃなくて、一つ一つの表現の美しさ・絶妙さだと思う。今の小説を読みなれてると、そういう部分を純粋に面白いと思えるためには、かなりの読書的鍛錬が必要になるんだろう。ときどき「お、面白いかも」とか思ったり、作品に入り込んだりせきるんだけど、まだやっぱり客観的に読み流しちゃったりするなあ。
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相変わらず盛り上がりまでがスローな大江健三郎氏のご本。
物語の2/3を過ぎたあたりからガンガン負の方向に展開していってもう大好きです。
物語の最後は最低でした。
読むんじゃなかった、金返せ!の最低ではなく、鬱なシメ方というのでしょうか、こういう類の最低な話は素晴らしい。
11.05.08
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この人独特のヌメっとした文章で下品なことを書いた場合、なんとなく高尚なもののように感じてしまう、これ即ち錯覚。くだらなさがたまらない。
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文章がエロい。性的な意味ではなく。
個別の文章と全体、両方を見てキラキラした美しい要素を感じる。
ジャギュア、いいね。
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「性的人間」に連なっていく、青春の渇きや絶望的な生を描いた、印象的な作品。三人の若者がそれぞれの希望と絶望から生まれる妄想のような日常をそれぞれのやり方で必死に生きる姿は、今も僕らの心の中に眠る憧れのある形なのかもしれない。
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著者の作品は初めてなのですが、少し難しい本であると感じました。
落伍する若者を描いているためか、そこに何か寓意があるのではないかとか、これは主人公の成長を描いているのかなど、考えながら読んでしまったためです。
安保闘争の時期の作品で、主人公の仲間はみな外国の人間だったので、そうしてもそんな気になってしまいます。
もう少し、話を純粋に楽しめばよかったですかね。
といっても、やや暗い気持ちにならなくもないですが。
ここにファンタジーっぽさを加えると村上春樹のようになりそうです。
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図書館で予約したら、昭和40年代の年期の入りまくった本が届いた(笑)。
真ん中辺りで主人公が死んで、伊坂さんの「魔王」はここからきたの?!って思ったけど、実はそうではなかった…
大江健三郎さんの頭の中は凄い。
よくこんな本を書けるもんだな…
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僕(主人公)という人間が大学生のころに出会った4人の物語。僕、ダリウス・セルベゾフというアメリカ人、虎、呉鷹男が共同の目的の元、一つの屋根の下で生活を共にする。ダリウスが造船中である友人たち号(レ・ザミ)というヨットで外国に行く話を持ちかけた。3人は同意する。それぞれの思いのもとレ・ザミに思いを馳せる。そうした中、様々な出来事が起こり4人の考え、行動、態度、環境にも変化が訪れる。そういったストーリー。言葉のユーモア、人物描写の鮮やかさがこの本には溢れている。
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うわぁぁぁーーーーーっ!
確かに、しっかりと、その「叫び声」を聞いた・・・。
「人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫び声が自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」(ジャン=ポール・サルトル)
生臭さと、鋭利さと、ざらつきが一度に迫ってくるような、そんな小説。
エロスとグロテスクとタナトスに彩られ、眉をひそめるような嫌な感覚がびしびし伝わってくるのだが、それがまた生々しくて、小説の状況とは裏腹に活き活きとしていて、とても面白かった。青春群像劇特有の疾走感も良かったのかもしれない。
サルトルの言葉からイマジネーションを受けた大江は、社会から疎外された、僕、呉鷹男、虎の若者3人とダリウス・セルベゾフとの奇妙な同居生活、そして、彼ら共通の夢、レ・ザミ号での航海を目標とするところから端を発して、それぞれが声なき「叫び声」を発するにいたるまでの人間模様を鮮烈に描いている。
希望を打ち砕かれ、閉塞感が漂いながら、しかし、孤立な生き方しかできない若者たち。社会は決して受け入れてくれず、また、社会に馴染もうとせず、最後の居場所として集った若者たち。若者時代に感じたこうした何かを少しでも思い出せれば、彼らの叫び声はまさに真に迫ってくるものとして感じられるだろう。
大江の創作した若者たちはかなり極端である。そして、性的な色を放ち過ぎている。しかし、だからこそ僕らは矮小な自分として、こうした感覚が呼び醒まされてくるのだ。
大江の放つ「言葉」はみずみずしくも研ぎ澄まされている。1960年代という時代に対して、大江自身の「叫び声」として真っ向から対峙し、勝負した作品であったのではないだろうか。
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図書館で。伊坂幸太郎氏がエッセイで何度も面白いと取りあげていたのでじゃあ読んでみるか、と借りてみました。
大江健三郎氏の著書は2、3冊読んだことはあるのですが作者が年を取るにつれて文章が難解で独りよがりになる感じがしたのでこれぐらいならわかりやすいし面白いかも、とおもいました。死者の奢りも面白かったな。
一言で言うと多分青春小説だと思うのですが清くも正しくもない青年達がヨットに乗ってまだ見たことのないどこか、約束の地へ向かうという目的を持って集まり、当然のように挫折し人生からリタイアし、社会生活から逸脱し、現状から逃げ出していくというようなお話でした。結構重たい話のはずなのにやることなすことどこか間が抜けているからかなんとなく滑稽なお話に思えるのが不思議。それにしても作者の根底にある女性への憎悪に似た嫌悪はなんだろうか。まあ同性愛とは違うんだろうけれども同性とつるんでいる方が楽だとか楽しいって人は多いしなぁ。(まあ最終的に彼らのパトロンはそれっぽい人だったと知る訳だけれども)まあそれが良いとか悪いとかでは無く。
確かにあれは青春の黄金の時だった、というような文章が何度か繰り返し使われていてなるほどなぁと思いました。気の置けない仲間とバカみたいな事をして毎日を過ごすのはそれこそ夏休みみたいな感じで輝いて見えるんだろうなぁ。もっとも夏休みやバケーションは終わるからこそ後から輝いて見えるという事を青春真っただ中の若者たちは知っているのだろうか。知っているからこそ現状から逃げ出すために焦燥し、足掻いているんだろうか。ここではないどこかへ、大人にならないために叫ぶのだろうか。そんな事をおもいました。