宇宙創成(上)(新潮文庫)
宇宙はいつ、どのように始まったのか? 人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古...
宇宙創成(上)(新潮文庫)
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商品説明
宇宙はいつ、どのように始まったのか? 人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古代から20世紀末の大発見へと到る意外なエピソードと人間ドラマが満ちていた――。有名無名の天才たちの挑戦と挫折、人類の夢と苦闘を描き出す傑作科学ノンフィクション。『ビッグバン宇宙論』改題。
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徒手空拳の僕らでも
2009/05/10 15:56
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の本は フェルマー、暗号解読に次いで 三冊目である。読みはじめたら止まらず 一気に文庫本二冊を読んだ。
ビッグバンに関してほとんど知識が無かったので 本書は読んでいて驚きの連続である。文系の僕にして かなり理解を得たという気になったのは 抜群の著者の話術である。実際 科学は サイモンシンという語り部を得た事に感謝すべきではないかと思う。それほど読ませるからだ。
本書を読むと勇気が湧く。人間は古代から その知恵を絞って宇宙を考え抜いてきた姿が感動的だからだ。実際人間は徒手空拳で ここまで宇宙モデルを組み立てて来ている。古代の人が 太陽の影だけで 地球の大きさを測ったわけだが 現代の僕らが持っている「道具」も大きく見れば 余り変わらないはずだ。なにせ 宇宙論を考えるにあたっても 僕らは現状火星にも行けていない状況である。そんな「徒手空拳」で 宇宙の歴史とモデルを考えていく人類の知性の働きには やはり感動するしかない。
繰り返すが 僕らは古代の人間と そんなに変わっているわけではないのだ。特に 宇宙に流れている時間から考えてみれば。
優しい眼差し、分かりやすい解説、スリリングな展開
2009/12/14 19:48
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇宙論を通して、科学とは何か、科学の発展はいかにして成し遂げられていくのかを分かりやすく伝えてくれる良書である。
科学とは(特に物理学は)、この世界を数学で記述することである。そして、その式はシンプルでかつエレガントであるべきである。また、その理論はよく言われるように検証(あるいは反証)可能でなければならない。そのため、実験や観測というテストに耐えなくてはならない。
科学の発展は、これらの試練を耐え抜いた時に起こるだが、さらに大きな壁となるのが人の心(先入観や偏見)である。第I章では、宇宙論が神話から、そして宗教から解き放たれて進んできた様子が、詳述されている。現在の我々からすると、なぜ天動説から地動説に切り替わるのにあれ程時間がかかったのかと思いがちであるが、宗教的な面よりも観測データに合わないことや重力の説明がつかなかったこそが、大きかったことが分かる。
それゆえ、近代科学はニュートンの登場を待たねばならなかったのだ。しかし、それですべてが終わったわけではない。それまでの常識を覆し新たな権威となった人は、わずかな矛盾に目をつぶり自説に拘泥しがちである。多くの天才たちもまたそれを逃れることができなかったことが分かる。さらに、現在に至っても政治や国家といった障壁が消えたとは言えない。
現在に近づくにつれ、科学者一人一人の人柄にも触れ、社会情勢の中で翻弄される姿も語られ、そのスリリングな話運びに捕らえられて、一気に最後まで読まないではいられなかった。科学が理論と技術、観測・実験が三位一体となりながら発達していく壮大なドラマが味わえる。
著者サイモン・シンの素晴らしいところは、過去の科学者たちに対する優しい眼差し(尊敬の念)である。現在の知見を持つ我々が、過去の科学者たちの誤りを一笑に付すことは簡単である。しかし、この本を読むことで、それぞれの時代が持っていた条件を考えれば、彼らが当時の最高の知性であったことが納得できる。
「科学的方法」の人間味
2011/12/18 21:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハードカバー時はタイトルが『ビッグバン宇宙論』で、その通りにビッグバン理論の解説に焦点を当てている。最近の本はどれも超ひも理論とかもっと多様化した最新宇宙論の話を扱うものが多いようだけれど、本書はビッグバン理論が定説となるあたりで終わっている。宇宙論の新しい本だと思って読むと話題の古さにがっかりするかも知れないけれども、エピローグや訳者解説にもあるとおり、本書が焦点としているのは、ビッグバン理論という説が、いかなる紆余曲折を経て定説となったか、ということを上下二巻に渡って綿密にたどることにある。
この点、『フェルマーの最終定理』などとは異なる点だ。シン自身『フェルマーの最終定理』で書いていたけれど、数学における証明は永遠で、一度証明がなされたら後から覆されるという性格のものではない。対して、自然科学における仮説は、つねに反証される余地があり、天動説から地動説、ニュートン力学から相対性理論、というように、新しい理論によるアップデートを免れない。
サイモン・シンは以下のように述べており、科学的方法が機能するとはどういうことか、というのが本書の狙いだということが読みとれる。
「ビッグバン宇宙モデルは、二十世紀に成し遂げられたもっとも重要かつ輝かしい科学上の偉業といってまず間違いはないだろう。しかしその一方で、ビッグバン・モデルが初めて着想されてから、練り上げられ、検討され、検証にかけられ、証明され、最終的に広く受け入れられるまでのなりゆきは、ごく一般的なものだったと見ることができる。(中略)ビッグバン・モデルの発展は、科学的方法が機能するときの典型例だったのだ。」291P
その科学的方法の特徴について訳者は、人は間違うということをあらかじめ組み込まれており、集団的努力によって間違いを修正しながら前進できることだと述べている。
ビッグバン・モデルのライバル、定常宇宙論が非常に大きく扱われているのは、試行錯誤のプロセスとしてなくてはならないものだからだろう。研究の進展ごとにビッグバン・モデルと定常宇宙論、どっちが整合性のある説明をしているか、というチェック表を用意して、当時の研究者たちにとってどっちが説得力があるように映るのかということまで検証している念の入れようだ。
こうした試行錯誤、論争による理論の検証、洗練、意外な発見などの紆余曲折をたどることで、「科学的方法」とはいかなるものなのか、ということを具体的に読者に追体験してもらうことが眼目なのだろう。だからこそ、宇宙論全体を通覧するのではなく、ビッグバン理論にのみ焦点を絞って、具体的な科学的議論のプロセスを詳細にたどるというスタイルを選んだというわけだ。
そして、十分な紙幅をとってなされる解説はどこをとっても非常にわかりやすい。基礎的な部分からそのメカニズムがきちんと伝わるように書かれているのと、絶え間ないトライアンドエラーのプロセスを含めて具体的に述べられているので、発見のドラマとわかりやすい説明が同居したものとなっている。
いろいろ面白いエピソードはあるけれど、膨大な量の写真を解析し変光星のカタログを作る作業を行った女性の集団、「ピッカリングのハーレム」の話は特に印象的。なかでも、当時知られていた変光星のほぼ半数を発見した「変光星の魔人」ヘンリエッタ・リーヴィットが、変光星の一種セファイドの変光周期と光度が関連していることを見出し、その結果、天体間の相対距離を知ることが可能になった過程は面白い。天体の距離、そして宇宙の広さを測るきわめて重大なワンステップを踏み出したこの発見は、あまり取りざたされることがなく、リーヴィットの知名度も低い。スウェーデン科学アカデミーが1924年に、彼女のこの発見に対してノーベル賞にノミネートしようと調査を始めたとき、その三年前に既に亡くなっていたことがわかる、というほど天文学界では地味な人物だった。こういう人物をきちんと紙幅をとって叙述するところがいい。
他にも物理学史の入門書のようなものをいくらか読んだけれど、ここでの説明は他のに比べても抜群に詳しく丁寧で、結果的にもっともわかりやすいものとなっている。宇宙論の最初の一冊としていいんじゃないだろうか。
「フェア」な視線と語り口
2011/01/18 13:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Genpyon - この投稿者のレビュー一覧を見る
著作の内容としては、ビッグバンにまつわる宇宙科学史といったところで、それだけであれば類書はたくさんあると思う。その中にあって、本著を読むべき理由は、著者サイモン シンにつきる。
あるテーマとその広い裾野の領域について、人類の歴史始まって以来のところから、人間模様を含めた具体的なエピソードをじっくりと説き起こし、それでいて、それらのエピソードを単なる羅列ではなく、手に汗にぎる一級のエンタテイメントとしてストーリーを構築していくところにサイモン シンの本領があり、この著作でも、そうした彼の本領が遺憾なく発揮されている。
サイモン シンには、こうした取材力や筆力に加え、「フェア」な視線と語り口がある。本著でも、たとえば、天動説と地動説などの対立する科学的見解が取り上げられているが、彼は、両論併記といったレベルの消極的公平性のために両論を取り上げるのではなく、積極的に両論の科学的妥当性を公平に取り上げていく。
個人的には、最初の「フェルマーの最終定理」が、テーマの大きさや文量の点から、最も好きな著作なのだが、本著では、テーマ自体がさらに大きくその裾野もさらに広いため、ともすればストーリーが散漫になりがちなところを、弁証法的ともとれる科学的方法を軸に、うまくまとめ上げている。
最後に、サイモン シンの著作には、科学的啓蒙書でありながら、不思議なことにある種の好もしい情緒があるように感じられる。この不思議な情緒は、おそらく、訳者の青木 薫さんが醸し出しているのではないかと、個人的には思っており、著者のストーリーにマッチして、彼の著作の魅力の一つとなっているように思う。
宇宙の謎がどのように解き明かされていったのか?
2017/04/29 22:16
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は宇宙に関する解説書ではありません。長い年月をかけて、人類が宇宙の謎を解き明かしていったその歴史を説明しています。非常に面白い内容になっており、宇宙に関する専門知識がなくとも読むことができます。
(下巻とレビュー内容は同じ)
科学史を兼ねている
2022/09/17 17:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔の「科学者」が宇宙論というものを神話や宗教から徐々に「科学」へ移行させる苦労をまず描いている。真実を極めようとする情熱は感動的であり、筆者はルポルタージュ的な筆致で、巧みに描きあげている。
ビッグバンと天才の頭脳
2017/04/06 16:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シャンクス - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰もが一度は不思議に思ったことがある疑問、宇宙はどのようにできたのか、星はどのように輝いているのか、を偉大な科学者の様々なエピソードとともに非常にわかりやすく描かれている。地球や太陽の直径を測定することから地動説や天動説、重力理論、光の性質そしてビッグバンに関する記述は素晴らしいとしか言いようがない。数多くの物理学者や天文学者たちの宇宙に対する好奇心、最高の頭脳による宇宙観測と宇宙理論によってもたらされたビッグバンは人類の知性と精神が成し遂げた最も偉大な成果のひとつである。この本を一冊読むだけで、ビッグバンなどを含めた多くの天文学現象に触れることができるでしょう。
観測技術の進歩や観測者の努力の成果の影響が分かりやすい
2023/05/30 05:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
神に寄り添った原初的な始まりから、知恵をつけ、知識を積み重ね、神の懐から飛び出し、あるいはそれを畏れ、革新の思考は批判に曝された。やがて訪れる技術の進歩と止めようのない社会常識の変化に革命的な考えが受け入れられる時が来る。地動説にまつわる逸話を始め、新規な考えの登場は疑念と否定を持って迎えられた。技術の進歩がもたらす観測結果の証拠が現れるまではその壁が取り払われない。理論だけでは意味がなく、しかも実験室で身近に扱うことが困難な天文については、両輪たる観測技術の進歩や観測者の努力の成果の影響が分かりやすい。