紙の本
救急隊の設定をうまく生かした作品
2015/08/19 18:27
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈如月シリーズ〉を始めとして今までは警察小説が多かった麻見和史だが、今回は救急隊の話。人が刺されて、血がまかれて…という場面には残虐性が漂うが、今までの麻見作品に比べれば猟奇性は低い。事件が絶望的結果に終わらないのもこの作者にしては珍しく、ほっとした。トリアージという、救急の時の選別タッグのシステムに関する問題を取り扱っているのも興味深かった。
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警防課救急第二係 真田隊に出場要請が入る。
「少女を閉じ込めた。早く助けないと死ぬ」
匿名通報で出動した現場には、鎖で閉じられた冷蔵庫があった。
冷蔵庫より休出した少女の背中にはドイツ国旗のようなシールが。
3色のシールをトリアージタッグではないかと考え始めた彼らに第2の匿名通報が入る。
真面目で正義感の強い救急救命士の真田隊長。
温厚なベテラン運転士の木佐貫。
ムードメーカーな若手の工藤。
真田隊の当番日を狙ったような匿名通報に3人は事件を解明しようと動き出す。
「神様のカルテ」や海堂さんの本で救急病院の切実さを読んできたけれど、今回はその病院へ急患を運ぶ救急隊視線での物語。
「ときどき悔しくなるんです。僕たちは一分一秒を争って搬送しているのに、病院とは気持ちの温度差がありますよね。」
週に何度も救急を呼ぶ自傷の女性や住所不定のアル中の男性。病院の受入拒否に悶々とする。
普段目にすることもないけれど、確実に存在しているそんな問題がリアル。
消防士、救急隊、警察、教師、社会に影響力のある方々が誇りをもって仕事ができるように、この職業に憧れと尊敬をもたなくては。
そのためにこういう小説がもっと描かれるとよいな。
「真面目にやっている人間は、きちんと評価されるべきだと思う」
救助活動の助けにと行ったはずの行動が悲劇に。
途中でなんとなく結末が見えてきちゃうし、犯人への説得のあたりが強引な気もするけど、登場人物が生き生きと描かれていて最後まで楽しめた。
過去の事件も解決したけれど、なんともせつない余韻を残す。
「俺は毎回、後悔しないような仕事をしているつもりだよ。それを積み重ねれば、いずれ周りが評価してくれる。」
そんな真田さんの言葉に励まされつつ。
読み終わって、ふと思う。
一番かっこよかったのは工藤さんのお祖父さんだったかも?
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海外ミステリーで見られるある種のラッシュ・パターンとして代表されるジェフリー・ディーヴァーはリンカーン・ライムのシリーズや、ドナート・カッリージ『六人目の少女』を髣髴とさせる、エスカレート型連続誘拐事件が本書のプロットの主軸である。
最初の少女の誘拐からして奇妙である。監禁場所を告げる119番通報により、物語はスタートする。110番ではなく、119番。しかも声を機械的に変えられた犯人からの通報である。何とも奇妙に連続誘拐事件は、その幕を開ける。
サブタイトルにある通り、本書の主役は、消防署所属の警防課救命チーム。三人一組で出動する一台の救急車と、その救急隊員たちが、物語を通してずっとフォーカスされてゆく。
展開するテンポの良さ、ツイストを重ねるストーリーの面白さに加え、救命チームの活動が活写されてゆくところや、複数負傷者の出る災害現場でのトリアージタッグを主たる小道具として効果的に使ったアイディアなど、どれを取っても新鮮味のある一級のミステリと言っていい。
普段はあまりスポットを当てられることのない縁の下の世界で、日夜活躍する救命隊の使命感や苦労が、ストーリーの中で明らかにされてゆく点に関しては、とりわけミステリーとしての新機軸と言っていいかもしれない。
救急救命士が活躍するTVドラマももちろんあるようだが、プロットがここまで凝ったもので、しかも救急現場の現実と問題とをストレートに読者に投げかけてゆく王道的な作品は珍しいのではないか。救急車の安易な利用、受け入れ病院のないたらいまわしの現状、組織のあり方、過労働などなど、本書一冊でも様々な救急現場の持つストレスが描かれているように思う。
さて問題の連続誘拐事件であるが、難しい誘拐と言う犯罪が次々と発生し、しかも手口は次々とヒートアップしてゆく。そうした困難な事件と対峙するにつれ、過去の大規模交通災害でのトリアージ・ミスが明らかになってゆく。そこでは生と死を分かつ災害現場の緊張と判断の重さとが俎板に乗せられ解体されてゆく。トリアージという名の神のような判断を司る従事者の心の問題さえも。
救急救命士の誕生と救急車の高規格化という、日本救急医療にとっては大きな過渡期に当たる時代、そこに関わる医療機器関連において、ぼくも長らく仕事をさせて頂いていたことがあり、この作品で書かれている救急現場のプロフェッショナルたちの日常やその使命感などが、心に共鳴し、体験的に深部にまで入ってくる。訓練の場とは言え、生と死を判断するトリアージタッグにも限りなく親しんできた日々が今も蘇る。
このような珍しい現場をモチーフとして、新鮮な作品を、少しの緩みもないプロットで楽しませてくれた本書に出会えたことを、個人的にとても幸運に思っている。
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過去のトレーラートラック横転事故のトリアージミスが引き起こした連続傷害事件の真相に救急隊員が迫っていくという今までになかったストーリー。タイトルの意味も最後にちゃんと判明して、作品の出来自体は悪くないけど、やはり救急隊員が刑事の役割をしちゃうところが現実味がなかった。
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救急隊にスポットが当てられたミステリー小説。
犯人はなんとなく当たりがついてしまうけど、様々な問題に直面している救急隊の大変さ・もどかしさが伝わってくる作品でした。
真田隊、バランスの取れたいいチーム。今後の彼らも読んでみたい。
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救急隊に対して挑戦するかのような連続事件。現場に残されたトリアージタッグを模したシールに込められたメッセージの謎を追いつつ、次なる事件を阻止しようとする救急隊。彼らの仕事にかけるプライドが実にカッコいい作品です。
犯人の気持ちは分からないでもないのだけれど。あんなことをするだなんて、はた迷惑以外の何物でもないなあ、という印象。トリアージを巡る問題は難しく、まだまだ課題が多いのは分かっているけれど。やはり必要なことなのだし。あのバッシングも許せないなあ、という心境でした。
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石の繭をBSで観て、麻見さんの作品を読んで見ようと思い読みました。よかったです。
また他の作品も読みます。
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麻見さんの最新作。
今回は消防署警防課救急救助隊が探偵役。連続殺人未遂事件の真相を究明していく物語。
救急救助隊の内幕を良く取材している。抜群の構成力で作品に仕上げている。人物像もしっかりしているが、役柄が職業の違いでライフスタイルに変化が出ているだけで、性格的には似た雰囲気かな!
物語構成が基本的に同じパターンに成りつつある。麻見ワールドでそれも一興なのだが、別の角度で本格をやってみる時期かも!
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救急隊員の目線から事件を解決していく。
今まで読んだことのないシチュエーションだし、救急隊員の内情なども詳しく描かれていて、お仕事小説としては興味深く読めた。もちろんミステリとしても面白かったのではあるが、やはり救急隊員が刑事さながらに独自に捜査していくのはちょっとなぁ、、、と違和感を覚えざるを得ない。単なる好奇心で動いているようにしか見えなくて、使命感・正義感云々を掲げられても、白けちゃう。あくまでも刑事捜査のお手伝い程度に収めてほしかったかな。
犯人の動機にしても、わざわざこんなややこしい復讐の仕方するのかな、なんて思ってしまった。謎めいた事件なだけに、掴みは良かったんだけど、最終的に事件の動機とのバランスは悪いように感じた。
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トリアージタッグになぞらえて、どんどん被害がひどくなる事件、真相を追うのは、救急隊の真田・後輩の工藤、謎の医師茂刈。
新しいシリーズが出た。麻見和史の作品は安心して読めるから好きだ。今回は塔子のような女性が主要登場人物にないのが新鮮。でも、チームワークで事件を解決していくところが読後感よし。
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最初は、少し固いというかこなれていないというか、そういう印象を持った。
しかし、読み進めていくうちに、それが味になった。
トリアージタッグを題材とするミステリーというアイデアは十分活かされている。理に勝るような創話という感じは、多少するけれど。
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舞川市中央消防署・警防課救急第二係の隊長・真田健志。
真面目で責任感の強い彼は、血気盛んな後輩・工藤、
運転のエキスパート・木佐貫と三人一組を組み、救急車で出動する日々をおくる。
ある晩、「少女を閉じ込めた。早く助けないと死ぬ」という匿名の通報が!
犯人と思しき相手が告げた通り、監禁された少女は衰弱しており、その背中にはトリアージタッグを模したシールが貼られていた。
黒、赤、黄、緑に色分けされた紙片は本来、災害現場などでの治療優先順位を示す。
しかし、犯人が残した紙片は、被害者をどれだけ痛めつけたのかを表し、次の事件を示唆するものだった。
かつてない怒りを覚えた三人は、事件に関わることを決意。
彼らは、人々の命と街の平穏を守ることができるのか!?
(アマゾンより引用)
なかなか面白かったけど、「こいつ犯人じゃないの?」ってのが予想通り犯人だった。
犯人の立ち位置からして、不自然に存在がピックアップされてるもんだから(笑)
でも、内容としては面白かった(*´∀`*)
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麻見さん作品、初読。
救急隊のお話。
さらーっと終わってしまったので、続編も期待してます。
麻見さんのほかの作品も読んでみようと思います。
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消防士さんです
事件に巻き込まれます
誤解からスタートしたのですが、狡猾な犯人に振り回され・・・というか、事件解決にむかう不思議な主役
この人の作品は特徴があるのですが、事件の謎を解く人のモチベーションがわからない
おせっかい?
2016.4.29読了
2019.10.30再読
読み返したことを忘れているkitanoであるが
面白い、前回のややトゲのある感想が嫌だ
400Pを超す長編ですが一日で読んでしまった
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前隊長の病気による長期休暇により、若くして救命チームの隊長になった真田。3人一組の彼らのチームに、事件性のありそうな匿名の通報があり、出動することに…すると業務用冷蔵庫に閉じ込められた少女がいた。二件目は廃校の焼却炉内に中年男性が、そして更にリストカットの常習者で真田たちのチームもよく知っている女性が自宅の床下収納庫に閉じ込められていた。連続する事件、そこには5年前のトレイラー横転事故が関わっていた。
現状の救急車の出動やトリアージ、トレイラーの事故、いろいろな社会問題が出てきて読みごたえがあった。