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投稿者:RIKA - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに文庫本を手に取り、再び小池真理子の小説にはまった。
代表作なら昔も読んだことがある。「恋」「無伴奏」「欲望」。全共闘時代を背景に、男と女を描いた作品たち。「恋愛」といえばそうなのだが、男と女のかかわりは、これほど独特で、襞があるのだと、とぎすまされた文章で見せてくれる、小説を読む醍醐味に浸らせてくれるようなストーリーだった。
世代がまったく違う私は、等身大の世界としてではなく、自分よりもずっと大人の別世界を覗き見るようにこれらの作品群を読んだ。本作も、主人公は全共闘の時代を生きた世代である。
夫がいて、娘も大きくなり、特に不自由のない生活を送る沙織。ふと、人生に必要なものは何なのかと考える。そんなある日、一人の男に偶然再会し、若い日を回想することになる。それは、学生運動のさなか、過激派グループの活動に巻き込まれていく激流の中で出会った一人の男、吾郎だった。
ストーリーは40年前の「あの時代」へ。「あの時代」を生きた人間なら、と語られるその時代を私は知らない。
しかし何か異様な熱気にたくさんの若者が揺さぶられた時代だということはわかる。沙織もまた、その熱気に翻弄された一人であり、ごく平凡な女子学生にすぎなかった、と、物語の中で描写されている。
恋愛に溺れるアパートの女子学生、思想をふりかざす男たち。家庭を夢見る恋人、過激派グループのリーダー、取り巻き達。
そして吾郎だ。
吾郎と過ごした日々がストーリーの中心である。
幻のような、時間を止めたような、甘美で説明のつかない関係が、狭いアパートの中でただ続いていく。
その生活に憧れたり自分を重ね合わせたりはできない。
やっぱり男と女の間は、人と人との関係は独特で、”これが恋愛”という定型があるわけもない。
ただ思うのは、周りをシャットアウトするような1対1の濃厚な関係は人生に足跡どころか大きな裂け目のように刻まれていく、ということ。精一杯生きた若い時代を振り返る、主人公のような年齢になったら私もその境地に立つのだろうか。
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投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構な長編でした。
時代は1970年代で、その頃の学生運動が主題として物語が進んで行く。
連合赤軍とか耳にした事はあるけど、元は学生運動だった事とか、仲間うちでリンチ殺害していた事とか、無知で何も知りませんでした。
熱い時代ですね。
若い人達がしっかりと自分の思想を持っていた時代。
ただ、主人公の女性の事は好きになれなかったし、共感部分も少なかった。
単に流されているだけで、自分が何をしたいのか、そうする事で人にどう影響するのかを考えているようには感じなかった。
そこがまた妙にリアルでした。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな恋愛は絶対に嫌だなと思いながらも、他人のことと思って読むと、おもしろい。時代ものは、共感しにくい。
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◆あらすじ◆
パリの美術館で、槇村沙織は三十数年ぶりに秋津吾郎に再会する。
彼こそは、学生運動の果ての壮絶な静粛リンチから身ひとつで逃走した二十歳の沙織を、半年間匿ってくれた男性だった。
運命の再会は二人に何をもたらすのか───。
殺意と愛情がせめぎあう極限状況で人生を共有しあった男と女ゆえの、根源的な結びつきと、身体も魂も貫く究極の悦楽を描き尽くした著者最高の恋愛小説。
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「学生運動(と、その後の彼らと
彼女らの)小説」。そのカテゴライズで良いのだが、それだけでは無い。タイトルにもなっている「望みは何と訊かれたら」?この答えをとにかく分かっている様な分かっていないような明暗が入り混じる世界に放り込む小説だ。
学生運動の持つ青臭く初期衝動だけの感情も、その渦中で起きる事件も、その後の人並み以上の幸せも、学生時代をフラッシュバックさせる再開も、全てこの問いに主人公を答えさせるための舞台装置。
ラストの「答えははっきりしている。たが、言葉にできない」を読者に納得させるために全て必要なディテール。
「完全なる飼育」の世界と「自己批判」と言う名の思考停止状態には共通の闇と快楽があることを見い出したのは、さすが恋愛小説の名手。
あの時代を知らない人が彼ら/彼女らの当時と今を追体験できるという特典付きの秀作、お勧めです!!
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途中から、読んだのを後悔したほど恐ろしくてたまらなくなったのだけれど、ものすごおおーーく引き込まれて夢中で読んだ。やめられなかった。小説らしい小説というような感じがして、読みごたえあった。衝撃的ですら。わたしは1964年生まれなので学生運動についてはあまり知らず、これまであまり深く考えたことがなかったんだけど。でも、ごくごく普通の学生でも、ちょっと文学とか哲学とかに興味あったりしたら、たちまち運動に引き込まれてしまいそう。あと、普通に分別のある人間だろうに、特殊な状況に置かれると、集団の狂気というか、リンチ殺人とかおかしいと思わないようになるのか、などと思うと人間って本当に怖い、としみじみ。現在の、原発のこととか、肉の食中毒のこととか、人間って集団とか組織になるとまともな分別をなくすんだろうか、とかまでいろいろと考えてしまった。恋愛モノとしては、わたしは、どろどろした、とか、退廃的とか幻想的とか、苦手なので、あまり……。これが初小池真理子だったのだけれど、「恋」も読んでみるべきなんだろうか……。
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本としてはとても読みごたえがあるし、
さすがに小池真理子さんって事で、一応★は4つにしました。
が、
内容は自分の好みから言えばものすごく気持ちの悪い本でした~。
学生運動盛んな時代に青春を過ごした人には、
あの時代は本当に特別なものなんでしょうが、
その時代を知らない自分には、その特別感がうまく言えませんが
なんだかうっとうしい。
(だからどーした。何がそんなに特別なわけ??って、感じ・・・。)
それに50も超えた男女のあられもない性描写は、なんだか醜悪・・・。
色々理解出来ない感覚が多かったせいか、
人間の内面の毒気にあてられたせいか、
読後感はなんともいえない気持ち悪さ・・・。
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この時代(政治と思想)の小説がとっても好き。60年代70年代の大学生を描いたものがたまらなく好き。
私らの時代には時代の核とよべるものはもう何もないからなぁ。核の有無は単純な善し悪しでは測れないけど、ぼんやりとした憧れがある。
安穏としているうちに終わりそうな今も好きだけど。
小池真理子さんの作品は3作目。
「恋」(これも政治と思想の季節が描かれている)、「瑠璃の海」。
「恋」はひょっとしたら今まで読んだ恋愛を扱った小説の中でもかなり好きな作品になったんだけど「瑠璃の海」があまりにも陳腐なフリンものだったんで萎えてそれ以来読んでなかった。
「無伴奏」も「恋」と本作と同じような時代が描かれているらしいので次は「無伴奏」かホラー短編集を読む。
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小池真理子にやられました。
モロー美術館の一角獣の前で再開!
名刺の裏に携帯ナンバー → これはやったー!!!
どろどろの恋愛小説! → これはやったー!!!
しかし、読んでも読んでも秋津吾郎が出てこない。
どろどろとした不倫だと思っていたのに。
しかし・しかし・・
読むにつれ引き込まれていきます。
「震えるほど怖いと思うのに、追いすがりたくなるほど恋しい。」
小池真理子の恋愛小説である。
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初めて読んだ小池真理子さんの著作。
去年の秋頃、とっても色っぽく年を重ねている女性の方とお会いする機会があって、その際におすすめの恋愛小説として小池真理子さんの著作を挙げられた。
彼女曰く、小池真理子は作家の中で特に美人で、きっとものすごくもてていた、そういう人が書く描写はすごく生々しくて、だから好きなのだそう。
それ以来ずーっと読んでみたくて本作を購入し、今年になってようやく読み始めたの。笑
読んでみての感想は、久しぶりにこんなどろどろした気持ちになった。
読んでいて気持ちがずーーーんとなる小説が(特に去年の夏、ロンドンから帰国後)好きだったんだけど、まさにそう。
本作については、読んでいる間はすらすら先が気になって読み進めちゃうんだけど、ふと本を置いた時とかにくるなんとも表し難い暗さが癖になっちゃう。
どうしようもなく、包まれる、
暗くて、痛くて、狂気的な感じ。
なんか、流されて生きるって怖いと思った。
自分の芯を持ってそれを信じ続けて生きるのって、今の私にとっては難しい。(自信がないからかな?)
他人を応援することや、思想や行動についていくのは、簡単。
簡単だけど、その分なにかを犠牲にするのかな。
なにかを犠牲にするって言うのも語弊があるな。自分のために使える時間なのに、他人のために貴重な時間を費やしてしまってる、というニュアンス。
確かにそれは誰かと生きていくことに必要なこと、、、だと思う。ある程度までは。
ただそれが過度になりすぎちゃうと依存度の高い、自分がない人生になっちゃうのかなって思った(・ω・)ノ
私も最近そうだから気をつけよう。
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この前に読んだ無伴奏と同じ時代背景。
またまた主人公に感情移入できず。
悪くはないと思うけど・・・
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いわゆる学生運動に大学生の多くが何らかの形で関わってきた1960年代後半~70年代前半期は過激派活動も活発であった。本作は、この時代に焦点を当てた、私より一回り半ほど年長の女性の青春回顧物語である。
本作は過激派内でのリンチ事件を題材にしていて、確かに著者の描く題材は他の作と違ってはいる。
しかし、著者の人物造形は過去作と大した違いは見出せない。そして、その青春の燃え滓が、現在の幸福そうに見える家庭の虚構性と、女の破滅願望を炙り出す様も同様だ。
ただ小池氏著の小説「律子慕情」でも感じたが、この狂騒の時代と称すべき70年代前半期の空気感は、同時代を生きた著者ならでは。
なかでもここで描かれるのは、高邁な理想を高らかに歌う政治的暴力革命肯定主義者たる男性(リーダーだけではない)による、同士女性への態度と行動が人間的に唾棄すべきレベルであることだ。
70年代的フェミニストと規程されそうな著者らしい切り方である。
一方で、主人公沙織の、自己決定の意思力の乏しさと、素敵な男性に飼われたいという幼児退行的願望もまた、当時の同性への痛烈な皮肉を感じさせる描写である。
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こ…これはすごい小説に出会ってしまった!「おすすめ文庫王国2010」で恋愛小説部門第1位だったものなんだが、なるほど、超・納得の作品。
あまり読んだことがない、70年代の学生運動の頃が舞台。主人公の沙織はセクトに所属し、リンチ殺人を犯してしまう。その恐怖から脱走、ボロボロになったところを年下の吾郎に拾われて…というストーリー。
壮絶なセクト活動でのあとの、吾郎との親鳥と雛のような生活が、本当になんとも表現できないけど、ぶおぉ〜っと心にくるわけですよ。
とにかく“読ませられる”作品。ラストまで完全納得の一作。
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学生運動や粛清などは出会うこともなく、当時の空気感なども全く想像できない世代です。程度の差はあれ若者全てが学生運動になんらか関係を持つ時代らしい、くらいの認識しかありませんが、松本沙織は受動的とはいえ相当奥深くまで入り込んだ数少ない若者だったのかと思っています。
学生運動よりはやっぱり恋愛小説だと思いたい。沙織の学生運動への関わり方も恋愛が主軸だし、秋津吾郎との関係も結局は恋愛だし、独特な恋愛の形を描くための土台として学生運動を極めて丁寧に忠実に描くことで、時代の異様さが異様な恋愛の形にリアリティを添えるよう意図されているのではないか。なにより、美しく惹かれる表題が恋愛小説だと位置付けている。
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大好きな小池真理子さんの作品。
学生運動の時代を舞台にしてます。
沙織が秋津に出会うまで、出会ってからのこと、離れてからのこと。情景的にも心情的にも細かく書かれていて主人公になりきって読み進めました。
小池真理子さんの作品を読むたびにこんな身を焦がすほどの恋愛をしてみたいと思います。