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時代背景は1970年、舞台は仙台、25歳年上の版画家:柚木と結婚した紗江は歳は違うものの大恋愛の末に結婚したこともあり、ラブラブな毎日を送っていた。
そこに紗江より二歳年下の東北大学の学生で、柚木に弟子入りしたいと言う眉目秀麗な青年:寺島東吾の出現により、3人での生活が始まるのだが、綺麗に噛み合っていた歯車が少しずつ狂い始める・・
前回の本格小説 といい、私は自分より5〜10歳位上の登場人物が出てくる本が好きだ。
でもって、時代背景も昔、私が子供の頃に既に大人になっている人たちが出てくる、そういう本が好き・・
携帯電話のない頃の恋愛小説は、心の機微が実に丁寧に書かれていると思う。
あるものをないと想定して考えることなんか出来ないから、今の若い人たちに対して、ないことを想定してごらん?なんて言うのは甚だナンセンスだとは思うけど、言い直しが利かなかったり、デートだって1回ごとに完結されたり、電話だって日に1回出来ればいい方だったり・・郷ひろみの唄じゃないけど『会えない時間が 愛育てるのさ 目をつぶれば君がいる』ってね・・・
そういう時代に恋愛できたこと、つくづく良かったな・・・って思う今日この頃・・・
自分の置かれている立場上、空想の中で遊ぶ。
だからか、小説の中に理想だったり好みの男性像を見ることがある。
実に平和だ(笑)
今回もまた見つけちゃった・・・
寺島東吾・・・いい男だ・・・・・^_^;
この本を”最後まで”読んだ人なら、わかるだろうな・・・
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冒頭のシーンを最初に読むのと、読了後読み返してみるのとは、読む速度の違いがすごかった。
木口木版をちゃんと見てみたい、仙台に行きたいなと思った。
小池真理子さんが描く男女の激しい恋の表現は、誰にも劣らない
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2009年12月4日。主人公と一緒に恋を体験できた気がする。だからこそ、切なく、苦しくなることも多く、特に読後は不安定な空虚さに襲われた。読後、再度冒頭を読み直して救われ、主人公のその後の人生を想像した。個人的に、この始まりかたや終わり方がいいなと思う。小池氏の文章は、普段人にはとてもさらせないようなみっともない、でも自然な感情や行動が書かれており、それによって作品と自分が近づけるのだと思う。
それにしても、1960年代の日本は今から考えると別の国のようだ。当時の若い世代も時代や環境というものがあるとはいえ、現代のそれとの違いについて考えてしまう。
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「ヒーローはイケメンであれ」
です。
胸がきしきしする場面ばっかだった記憶が。
気持ちを文字にしてみるとすごく重い。
でもなんか、ぴったりハマる。
そうそう、この気持ち文字にしたらこういう感じ、っていうのがぴったりハマってて切なくなる。
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
木口木版画家・柚木のもとを訪れて弟子入りを志願した青年、東吾。柚木の歳若い妻・紗江は、どこか謎めいたこの青年に強く惹かれていく。ある日、柚木が急逝し、東吾は詩画集『水の翼』のための木版画制作を引き継ぐことに。同じ家で二人きりで過ごす紗江と東吾は、互いの想いの強さを偽れなくなっていく…。芸術と恋情のはざまで引き裂かれる男女の運命を描く、恋愛小説の白眉。
柚木と紗江の関係がなければ東吾との関係はなかったのではないかと思える痛さがなんともいえない。
痛いというより重い鈍痛。。。。それを感じる作家さんだなぁとおもう。
仙台という土地柄のにおいまでする物語でした。
賣茶翁のどらやき 食べたくなりました。
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主人公サエの女っぽい部分、執着しちゃうところとか、弱い所、すごく共感できた。こうなっちゃだめなんだろうな。。。と。でもサエの強さはすごいな、と思った。感覚で生きている所はすごくうらやましいと思えた。
でもこの小説は時代背景が学生運動とかそんな感じで、それはいまいちよくわからなかった。最後の東吾の別れ方、死に方はかなり納得できない。なんかすべてをちょっとつまらなくしてしまった気がした。
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美しいものを生み出す人々がたゆたう宇宙に、
すっぽりと入り込むような感覚。
凄く人間臭い部分も、
ドロドロした部分も多々あるのに、
どこまでも透明で儚くて、
触れた途端に壊れてしまいそう。
切なくて悲しくて、
だからこそとても美しい。
☆☆☆★ ホシ3.5つ
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主人公に共感でき、世界に引き込まれる物語だった。
恋、芸術、時代がうまく調和していて、この物語こそハッピーエンドで終わってほしいと思ったし、美しい少年を強くイメージした。
その後の続きがあるなら是非読みたい。
途中から読み始める時、どこまで読んだっけって前後を読み返す事が多いがなぜかこの本はどこまで読んだかが明確で少し時間が空いても展開を覚えている、脳みそにストーリーが直結して記憶している感じ、そのくらいインパクトがあった。
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版画家の柚木に弟子入りした東吾に柚木の妻・紗江は強く惹かれていき・・・
この人には、こうであって欲しいなってトコに、居てくれるのが心地良い。
出来上がった版画はもちろん、桜や藤などの四季折々の自然の描写も美しく、印象的だった。
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仙台の静かな家で創作の世界に浸る木口木版画家の柚木宗一郎と紗江。紗江は年の離れた柚木の、美を生み出す神の手を愛し、23歳で彼の妻となったのだ。そこへある日から柚木を崇拝する美しく寡黙な青年、東吾が弟子として加わった・・・。
舞台は1970年代、学園闘争、仙台、という作者の得意の設定。話の展開自体は面白かったのだが、東吾が話す“美”論はワケが分からなかったし、そこに絡んだ結末はまったく納得できず。東吾に共感できなければ最後の最後で余韻も何もなくなる気がする。
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文学作品として,ここまで手が込んでいるものを見たことがない。
三島由紀夫の死になぞらえて,
一人の芸術家が死ぬ。
その過程に,詩人 壬生幸作 の詩がある。
「水には翼があるのだ,ときみは言ふ
青い地平の遥か彼方で
空の青
海の青
月の青とが解け合ひ
混ざり合ひ,滲み合ふためにこそ
水は今こそ翼を持ち,羽ばたいてゆかねばならぬのだ,と
在るものを壊し
無と共に受け入れ
まことの美が誕生する瞬間を静かに待つ
。。。。
」
文学作品の中に,文学作品を入れる手法はいろいろある。
木口木版画の作家とその弟子が登場する。
いろいろな脇役を配置している。
誰が,最後に亡くなるのか。
全く予断を許さない展開。
芸術家が隠れた意図を持っていることは読めたが,
一世一代の嘘に騙され,最後の展開を読めなかった。
推理小説としてすごい。
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東吾の匂い
木版の匂い
インクの匂い
本の匂い
煙草の匂い
匂いの中で何故これほど惹かれ自尊心すら見失って
やみくもに身を投げ出してしまいそうになるのか。
底に渦巻くのは生と死、愛と芸術がとりまく。
小池小説の最高峰といってもいいかもしれない。
《文中より》
ふと、紗江は自分今の自分が柚木の側ではない、明らか
に東吾の側に東吾の世界にいると感じた。
紗江は柚木に「いとおしかった。いとおしくてならず、
立ち止まった石段の途中で紗江は胸の熱さに抗しきれな
くなって、思わず涙ぐんでしまうことすらあった。」
紗江は柚木と死以外の形で別れることはなかっただろう
断じてそれ以外の別れ方は考えられない。
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純文学作品であり、そこにオリジナルの詩や独特の政治概念を詰め込んだ作品。
堅苦しさをあまり感じさせず、展開も申し分ないほど自然的で読みやすい作品でした。
ただ、まさかあのような結末になるとは思ってもいませんでした。あえてここでは書きません。是非、読んで味わって頂きたいですね。
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うーん。
共感は全くできなかった。
美を愛し、才能を愛するっていう男女関係もあるのかなっと。
1970年代にまだ生まれていなかったのもあって、学生運動などについてピントこない点もあた。
ただ、結末はびっくりしました。
驚きました。。。
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主人公の紗江は、親子ほど年の違う天才版画家、柚木の若妻である。二人は仙台のはずれに居を構え、世間の喧噪と隔たれた生活を送っていた。 ある時、柚木のファンという東吾という美青年が訪れる。柚木は天才的芸術家らしく気難しい。当然、この青年の訪問も喜んで受け入れない。しかし、東吾は弟子入りを乞い、ついには柚木から承諾を得る。東吾は内弟子ではないため夕方には自宅に帰るものの、昼間3人の生活が始まった。 その生活の中で、紗江は夫を愛しながらも、若い東吾に心惹かれていく自分に気づく。どこか近寄りがたい雰囲気をもつ東吾との距離を縮めようとする自分の情動に葛藤を覚え、悩み苦しむ。 そのような生活の中、柚木に大仕事が舞い込む。東吾は柚木の傍らにいて、彼の技に心奪われ、この芸術にのめりこむ。この大仕事は、柚木の命を削り取り、ついには完成はるか前にして彼の命は尽きる。師匠の志を受け継いだ東吾は、柚木の生前以上にこの仕事に入り込み、埋没していく。と同時に紗江との二人の生活が始まった。これから先は、本書を読んでほしい。 小説が、判る、判らないというような判断をする類の文書でないことは理解している。しかし、ここまでわからない文書も珍しい。ただただ、困惑と混乱が残る小説だった。