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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の心理療法の変遷を主に箱庭療法や描画療法などの視点から。
現在は、統合的アプローチがとられることが多いが、専門はあるにしろ、自分の使えるカードは多いに越したことはない。
専門を極めるにはケースをこなすしかないが、それだけの時間的物理的人的余裕がない今。
しかし、必要としている人は増え続けており、しかもこれまで見ないタイプが増えているという。
常に、「今」のクライエントに向き合いながら、最善を模索していく人たち。
こうした積み重ねの先に、新しいアプローチもできてくるのだろうが、実際のところは、セラピストがそうした個々のをクライエントと向き合い、あるいは一緒に見る、語るものごとをどう感じ、とらえていくのかによるところが大きい。
こころのことは見えない部分だらけ。
そこに深く関わるなら、それなりの覚悟が必要だというところには、多少なりとも相談業務に関わる人間として共感すると共に、ほとんど自己流の自分らは大丈夫かと不安も覚えた。
己がもつものを維持向上させることはもちろんだが、いろいろなことに揺らぎすぎて、感じる・みる・聴く力が衰えないよう、自分自身を知る努力はしつづけなければならないとも思った。
しかし、敏感でありすぎると自分がしんどくなるわけで、この点、河合隼雄先生のありようは理想だ。
葉月さんの本は初めて読んだが、想像していたよりも読みやすかった。
他の著作も読んでみたい。
ドクメンタリーの新星、最相葉月氏が贈る心理学の傑作です
2017/05/21 07:48
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、我が国におけるユング心理学の巨匠、河合隼雄氏の箱庭療法や中井久夫氏の絵画療法などをもとに、現代人の心の病に迫り、その治療の在り方、セラピストと患者の関係性を一つ一つ読み解いた内容となっています。内容的には、心理学というテーマで、少しとっつきにくい印象がないでもありませんが、本書を読み進めていくうちに、そのような印象は一切拭い去られるでしょう。本書は、現代に生きるすべての人の心に響く作品となっています。
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2016/10/06 Amazonより届く。
2018/1/29〜2/8
3年半ぶりの最相作品。今回は中井久夫先生を中心にセラピストの話。箱庭療法などの詳細が描かれており、非常に興味深い。個人的に存じ上げている人の名前も出てきて、ちょっとびっくりした。
もうすぐ、臨床心理士の資格から公認心理師へと資格の変更があるが、このあたりの治療の実践の場にはどのような影響が起こるのだろうか。昔と今では悩みの質が変わってしまっている、という話には恐ろしいものを感じてしまった。
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河合隼雄とエリザベス・キュープラー・ロスの本は好きでたくさん読んだ。心の中の風景や精神が寄って立つ何かが浮かんで来る気がして。
心の病を治す為に力を貸そうとする人たちに感謝する。そして、その世界の一面を見せて下さった葉月さんにも '′ありがとう''
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■逐語録(上)
第一章 少年と箱庭
第二章 カウンセラーをつくる
第三章 日本人をカウンセリングせよ
第四章 「私」の箱庭
第五章 ボーン・セラピスト
■逐語録(中)
第六章 砂と画用紙
第七章 黒船の到来
■逐語録(下)
第八章 悩めない病
第九章 回復のかなしみ
あとがき
文庫版特別書き下ろし 回復の先に道をつくる
参考・引用聞文献
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おや、新刊出ていると読んでみました。
確かに心を病んでいる人って今多いですよね。そして心療科といっても具体的に何をする所なのか、どういった治療をされるのかがわからなくて漠然とした不安感を感じるというか。河合隼雄さんという方はお名前だけは存じておりましたがそうか、日本の精神治療というかユング派の草分けだったんですねぇ。
というわけで精神治療というか心療の歴史から入って著者自身が体験されたカウンセリングや自己分析が入っていて盛りだくさん。増え続ける患者に対してどう時間を取るかというジレンマとか現場は大変だなぁと思う一方、昔だったらこれぐらいなら・・・と家族で面倒見ていた患者さんも居たんだろうな、なんて思いました。それが良いのか悪いのかはわかりませんが。
人の話をただ聞くなんて自分には無理だなぁ。つい意見を言いたくなるし、口を挟みたくなる。読んでいて思ったのですが自分も自分のことを知っているようで知っていないんだろうな、なんて思いました。前から自分はちょっと普通とは違うなと思っていましたが自分の中の正義とか結論を前に出すきらいが強いのかもしれない。まあ普通の人なんて人は居ないのかもしれないからある程度は許容範囲内で何とか皆頑張ってるんだろうけど。ちょっと立ち止まって自分を見つめなおすのもいいのかもしれないな、なんて思いました。もっとも見つめなおした結果、タガが外れて精神の調和を来したりする可能性もなくはなさそうだから興味本位で入りこめる分野では無さそうだけれども。
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DSMを黒船到来とは、うまく名付けたなあと思う。
精神医学、心理学の、時代ごとの推移を本当に深く、でも分かりやすく概説してくれています。
現代の精神医学の抱える問題も、セラピストとクライエントの両面から描き出しており、その理解が深いがためだろうが、安易に批判的なスタンスはとっていない。とはいえ、ここに見ることのできる世界は、薄ら寒いと言わざるを得ない。
中井久夫氏の著作を読みたくなりました。
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最相葉月にしか書けない。このくどさというかしつこさというか、理論や分析で事象を切るのではなく、自身の違和感や興味を丁寧に丁寧に掘り下げていって、そこにあったのに誰も見向きもしなかった豊かな世界を見つけてしまう、というスタイル。読みながら静かな感動に包まれる。
社会の変化と症状の変化と制度の変化と診断治療法の変化とを、鳥の目と虫の目で立体的に浮かび上がらせているのも素晴らしい。自分でカウンセリングを受けた時の様子を誌上再録しているところの臨場感ったらない。
次回作も楽しみ。
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「私って〇〇な性格なんだよね」と言う自分と、実際の自分は違う、ということを多分誰もが知っている。けれど本当の自分とは、という事を知らない人は多い。自分のことはわからない。
普段、何も問題がなければ本当の自分なんてものと向き合う必要もないし。そもそも、本当の自分のことを知るのはとても大変だ。知りたくないもの、それが本当の自分なのかも。
最相葉月が日本を代表するセラピストたちに取材し、そのために自分も学校に通い学び、そして自分自身と対峙していく、このドキュメンタリーは彼女の魂の闘いでもあり、軽く読み飛ばせる部分は一つもない。読むといろんなことが起こる。心の中で。時間のある時にじっくりと読むべき一冊。
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心の病って何だろう、どうやったら治るんだろう、どうやって治すんだろう。このあたりの疑問に対して、カウンセリングの歴史を紐解きながら迫っています。
心の病が「ほどけて」いく過程がなんとなくイメージできましたが、思っていたのと全然違ってびっくりです。
医者って病気を治してくれるイメージだったんですけど、患者が自分自身の心の闇を理解し、改善する方法を見つけていくのを、カウンセラーは支援し見守っていくんですね。
まさに「ほどけて」いく過程が臨場感たっぷりに再現されていて、自分のことみたいです。
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自分がこの種の本に興味を持つのはなんでなんだろう。自分の心でも、自分で分からない。心理士や精神科医なら、それを解き明かしてくれるのか?そんなものでもない気がする。
この厄介な心がもし壊れたら、自分でもどう対処したらいいか分からないだろう。
セラピストという仕事に多少の懐疑を持ちながらこの本を読み始めたが、真の意味でセラピストになれる資質のある人って、本来はすごく少ない気がする。
文庫の最後についてるラグーナ出版のエピソードが良かった。執筆時期が違うから当然かもしれないが、最相さんの筆も軽く、働いている人達のなんとも言えないアッケラカンな感じに救われた。
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本書にも記載があるが、イタリアの精神科病院の廃絶は世界初であり、数年前に映画にもなった。その事実を数年前に知った私はとても驚いた。いったいどういうことだと。しかし本書を読み、統合失調症は改善する、完治する人もいるということを知り、ショックを受けた。統合失調症は2種類ある。私の母は、幻聴や妄想に苦しめられるタイプで、幼いころから近くで母の症状を見てきた私にとって、その病気が治ることは奇跡だと思っていた。外泊の時、症状が悪くなると病院から医師や看護師が自宅に着て母に注射を打ち連れていく。とても長い長い廊下を歩き、その先の棟は、鉄の扉でかんぬきがさしてある・・母が亡くなりもう18年近くなるが、ずっとずっと、不治の病だと思っていた。
本書での圧巻は、医師の中井久夫の件だ。一昔前だったから可能だった時間の取り方、患者との接し方。
読み進めるほど心が震えた。この人のような先生に診てもらっていたら、母さんだって良くなっていたはずだ。母の人生の物語を私とふたりで紡いでいけたはずだ。
そして河合先生の深さ・広さは、いうまでもない。私は先生の著書をこの先も繰り返し読むだろう。
文庫版特別書き下ろしの、鹿児島でラグーナ出版という就労支援事業所を立ち上げた精神保健福祉士や医師やそこで働く精神疾患の人たちの話が興味深かった。統合失調症などの症状や苦しみを綴った文章を募集して掲載する雑誌を出版しているらしい。
中井氏が言っていた言葉は忘れてはならないと思う。
「言語は因果関係からなかなか抜けない。因果関係をつくってしまうのは、フィクションであり、治療を遅らせ停滞させる。河合先生と交わした会話で、いい治療的会話の中に、脱因果的思考という条件をあげたらおおいに賛成していただけた。つまり因果論を表に出すなということです。」
これは、人との関係にもあてはまると思う。言葉を交わしてもそこに寄りかかってはいけない。それは人を想うことに比例すると思う。
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この本を読んで、精神医学についてなにかがわかったとか理解したという感じではないけれど、読みものとしておもしろかった。なんだか読後感がすがすがしいような。
絵画療法を実際おこなったときの記録を読んで、なぜだかすごく心やすまるというか、心がひろがるような、静かに感動するような気がした。著者がセラピスト役、絵画療法の第一人者である精神科医中井久夫氏がクライアント役、となって、絵を描いたときの記録が、なんでもないやりとりのように読めるんだけど、中井氏のひとことひとことがなんだかとてもよくて。口絵に載っている、そのときの絵もとてもよくて。
河合隼雄氏もたびたび登場する。
どのセラピストも、治すとかそういうことじゃなくって、クライアントに寄り添うというような姿勢なのが心に残った。
クライアントの症状が解消されればうれしいけれど、解消されなくてもいい、というような言葉も印象的だった。
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絵画療法やロジャーズのカウンセリングを本書でメインに取り上げられており、著者自身が一昔前に風靡した療法で認知療法などを取り上げられていないことをここに言っているけども、心理史について著者なりにまとめたことがしっかり書かれているし、カウンセリングにおいては「沈黙」が大切なことなど著者がエッセンスと感じたことがしっかり書かれている。なにより、著者自身が中野久雄さんなどに直接インタビューをして、この本を書くために大学院に進学して心理学の勉強をはじめたことなどその姿勢にとても驚かされた。
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普通にかんがえるなら取材対象として、精神領域は難しいと思う。患者、治療者の内面にここまで踏み込めているのは、著者の力だと思う。著者が独白した自身の患っている病の為か。患者や医療関係者が読んでも深く感じるだろう。それでいて初めて、基礎知識のない人が読んでも新たな見識をもたらしてくれると思う。