紙の本
同期シリーズの完結編
2018/09/03 22:18
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は今野敏の警察小説、同期シリーズの最終回である。この同期で登場するのは警視庁の警察学校での同期生である。とはいってもそれだけでは相当数に上る。中でも特に親しい3名の同期の話である。
主人公は警視庁刑事部捜査一課の宇田川である。さらに公安部公安総務課に在籍していた蘇我である。第一作はこの2名だけであったが、前作の『欠落』ではやはり同期の女性、大石が加わった。蘇我は、理由は不明だが、警視庁を懲戒免職処分となり、追放されてしまった。しかし、公安なので身分は警察官ではないが、仕事は警察の仕事をしているらしい。
大石はきわめて優秀な警察官であることを認められ、これまでは捜査一課所属であったが、本書では特殊捜査SITへ配置転換となった。大石も蘇我同様仕事の内容については口外することができない立場である。
ある殺人事件が発生し、捜査本部が発足した。もちろん、宇田川はそのメンバーになるのだが、捜査は難航した。この事件には大石が異動早々にかかわっていたことが分かった。所謂潜入捜査である。その異動は警察庁警備局警備企画課からの極秘の指示らしい。
加えて、被害者は薬物の売人であることが判明した。すると、厚労省の麻薬取締官が乗り込んできた。官同士の縄張り争いである。こうなると、糸は縺れるばかりで、なかなか解きほぐすことは難しくなる。
しかし、同期の3名は捜査本部の別動隊として潜入中の大石救出に向かう。通常の小説ならば、無断で捜査本部とは勝手に別動隊を作り、勝手に捜査をしてしまうであろう。ところが、本書では上下関係に信頼ができているせいか、全て上司に報告の上で捜査を行う。ここが今野らしい。
また、捜査本部では所轄署の刑事とチームを組んで捜査に当たるが、所轄の刑事で素直な者は少ないようだ。問題を抱える刑事もいる。こういう描写が読者に現実味を感じさせる。どこの組織でも人がいて成り立っているので、少し屈折している所属員が必ずいるはずである。
しかし、その種のひねくれと毎日顔を合わせて、同じ目的を達成すべく動くのは誰でも御免である。ストーリーだけであれば、それを描く必要はないのだが、今野敏はそれを自然に描いている。本シリーズはこれで完結だと言っているが、今野の場合はシリーズは他にいくらでもあるので、さらに面白いストーリーやキャラクターを提供して欲しいものだ。
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「同期」「欠落」と続くシリーズの完結編。
警察学校時代の同期3人の絆を描いた作品。
1作目も2作目も、いまいちで改めてレビューを見直しても、全く内容が残っていないシリーズ。でも、2作は読んだから、とりあえず3作目も読んでみるか…そんな感じなので、登場人物の背景が全く記憶にない。
捜査一課の宇田川の目線で描かれているが、公安を懲戒免職になった蘇我や、特殊班に属し、今回は潜入捜査をすることになる大石などの人物像がよく分からず、面白さがやっぱり分からないまま…淡々とした流れは、隠蔽捜査シリーズや安積班シリーズと変わらず、登場人物だけが変わった感じ。
今野敏って、こんなに作品に代わり映えのしない作家さんだったかなぁ。
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警視庁捜査一課特殊班の同期女性刑事大石が、しばらく研修だと言って連絡不能になる。同じ頃半グレの刺殺死体が発見され、その男はどうやらコカインの売人らしかった。捜査線上に地元ヤクザが浮かぶが、そこに大石の影が見えてくる。どうやら麻薬ルートを押さえるため、潜入捜査をしているらしかった。警視庁を退職したとされる、同期の元公安刑事蘇我と共に、彼女の救出作戦指令を受け、別働隊となり捜査にあたる宇田川。
まぁ謎も捜査展開も登場人物も、全てが今一つ。
そもそも事件に使われた車の持ち主である、フロント企業の社長の当初証言は、複数のベテラン捜査官により、嘘は無いとして釈放されたのではなかったか。これを覆すのには相応の理由が必要だと思う。
後は犯人が、一度ガサ入れしたマンションに、のこのこ現れたこと。いくら大石が誘導したとはいえ…
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警察の同期を描く警察小説シリーズ第三弾。
シリーズ完結ということで、部署や年齢や階級の異なる警察仲間が集まって事件解決をするのは佐々木譲の道警シリーズにかなり近似してきているので、ここらへんでやめるのは良いのですが、完結したようなラストではないので、続編が出るかもしれませんね。
蘇我の存在があいまいで不審者のようで、キャラが変人風になっているのが残念です。
シリーズの最初のように公安と刑事の垣根を超えた友情をもっと前面に出した方が好きです。
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『同期』『欠落』と続いたシリーズの完結編である。過去2作で、公安と一戦を交えてきた、警視庁刑事部捜査一課の宇田川亮太。完結編で相手になるのは…。
埋立地の運河で遺体が発見され、臨海署に捜査本部が立つことになった。今野敏作品で、臨海署といえば…。今野敏ファンにはお馴染みの、ちょっとやっかいなあの男が、ゲスト出演してくるとは。異なるシリーズのコラボは珍しいが、あくまで本作は『同期』シリーズだ。
このシリーズは、宇田川を含めた警察学校の3人の同期を中心に展開するのが特徴である。宇田川と同じ捜査一課だが、特殊班SITに所属する大石陽子。名前だけ書いておくが、任務に謎が多い蘇我。大石に対して恋愛感情はないが、3人の絆は固い。
今回の事件の直前、宇田川は大石を含めて食事をしていた。その席で、大石からしばらく会えないと告げられていた。そして、防犯カメラの不鮮明な映像でも、宇田川にはわかってしまった。この事案には、大石が関与している。ということは…。
宇田川たちは、あくまで殺人事案として捜査しているが、麻薬絡みのため、背後では、組対部や、厚労省の麻薬取締官、いわゆる麻取が動いていた。自分たちが格上だと言って憚らない、麻取。実際どうなのかは知らないが、ややステレオタイプなキャラクターか。
捜査一課長ら幹部も直々に集まり、限られたメンバーだけの極秘作戦が展開されるが、他の捜査員に感づかれないように動くのは、至難の業に思われる。特に、あの男に知られたら面倒になるが…。公安と麻取、敵に回してよりやっかいなのはどっちなのだろう?
完結編とはいえ、特別な演出があるわけではなく、ややあっさりしてる感がある。同期の絆が、事態を動かしたとだけ書いておこう。事件の構図そのものも、わかってしまえば単純なのであった。それにしても、前作に引き続き、大石は骨があるよなあ。
異動も多い警察官の世界である。宇田川が本庁捜査一課でキャリアを積んでいくのかは、わからない。公安や麻取に顔を知られているだけに、はてさて。そして、大石は、蘇我は、今後どのような道を歩むのだろう。
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「同期」シリーズ3作目だが、これで完結らしい。
なんか中途半端な気がするが、これ以上話が展開できなかったのだろうか?
潜入捜査中にピンチに陥った大石の救出に、同期の宇田川と蘇我が救出に立ち上がる。
話の軸は宇田川がメインに描かれているが、飄々とした蘇我と、男前な大石の方が記憶に残った。
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今野さんの本は初めて。なかなかサービス精神旺盛で面白さもあるので、それなりに良いと思うのだけど、詰めの甘いところがいくつか気になった。
まず、麻薬取引の疑いのある会社に捜査員(大石)を潜入させるも、潜入開始直後に殺人事件が起き、潜入捜査員を「救出できなくなった」とあるけれども、本来、麻薬取引の一端を掴んでから家宅捜索を入れ、その時に彼女も逮捕する形で「救出」を想定していたけれども、殺人事件が起きたのであれば、それをネタにガサ入れすれば済む気がする。救出できるかどうかというより、純粋な麻薬事件でなくなり捜査の関係部署が増え、誰が事件をコントロールするのか、成果目標をどこに置くのか、情報管理をどうするのか、といった問題の複雑化が事態の様相ではないか。ただ、問題の複雑化に捜査一課長がきちんと対応しているので、ストーリー上の大きな問題にはなっていない。
次に、麻布台商事の職員を尾行して潜伏予定のマンションを特定するシーン。この時警察は職員に職務質問をかけ、マンションの部屋番号を特定している。警察に特定されたとわかったら、それは職員の上司である潜在被疑者にも報告されると推定すべきで、大石が敢えてそこに誘導することに成功したのだとしたら、その理由や動きを丁寧に説明しないといけない。それも、「彼女は導くはずだ」で済まされている。
最後に、事件は解決するも、肝心の謎解きは十分に語られていない。何故堂島は矢島を殺害したのか、コカインの横流しが背景にあるとされるが、堂島を二件の殺人と麻薬取引で逮捕するのであれば、それなりの自供なり証拠固めなりが必要なはずで、もう少し丁寧に説明してくれても良かったのではないか。麻薬取引の実態について大石がどの程度の情報を持ち帰ったのかも明らかにされていない。
と、気になりだすといろいろ気になる小説。警察小説にある程度空想が入るのはやむを得ないとしても、もう少しリアリティに配慮した方が面白味が増すのではないか。
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「同期」「欠落」に次ぐシリーズ3作目で完結編とのこと。前作を読んだのが3年半前で、全然覚えてなくて、宇田川、大石、蘇我の関係をつかむのに時間掛かったけど、それでもまあ今野さんらしい警察小説。まあ、めでたし、めでたし!
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同期シリーズ3作目。隠蔽捜査シリーズの次に好きなシリーズです。いつも通りの今野節全開で楽しめました。
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8月-7。3.5点。
同期シリーズ完結編。
同期の女性刑事が特殊班に異動、特殊任務に就く。
直後、連絡が取れなくなる。主人公宇田川たちは別事件の
捜査をしていたが、関連があり救出の方向へ。
公安から退職した蘇我もからみ、合同捜査の形に。
読みやすい。複雑な感じがしたが、結果を見れば単純に。
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2017.9.10.同期シリーズ。なんと、これで最終話という…後で知ったことなのだが。あまり、今野さんも愛着はなかったのかなって思ってしまう底の浅さ。同期の蘇我の仕事の謎は明かされないまま終わるなんて不完全燃焼気味。
今回は宇田川と蘇我の同期で優秀な女性警察官、大石の秘密任務に関わる話。ボンこと宇田川はある日大石から食事の誘いを受ける。自分だけかと思ったら上司も同席ということで若干拍子抜けする。翌日からは特殊任務に就くということでしばらく連絡が取れないらしく心配するものの優秀な大石のことだから無事に切り抜けるだろうと楽観的に捉えていた宇田川だったが…。
ドラッグ絡みで殺されたハングレの男の殺人現場に至る防犯カメラをみて仰天する宇田川。そこには大石が写っていたのだ。どうも大石は麻薬組織解明のために組織に潜入させられているらしい。そして折しも公安の蘇我から連絡が入る。大石の救出が難しいから手を貸せというのだ。蘇我は名目上、懲戒免職になっているが今も公安の下で働いているようだ。疑問符ばかりだが、宇田川は殺人事件の解明と大石救出のために相棒である上司と捜査に関わっていく。
面白かったが、読み終わってあまりにあっさりしていて拍子抜け。だいたい主人公の宇田川にあまり魅力を感じずのめり込めないからかもしれない。宇田川を宇田川たらしめる特徴がないのかな…と思う。
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同期シリーズ第3弾にして完結編らしい。
極秘裏に潜入捜査を命ぜられた後、音信不通となった同期の大石を救うため、警視庁捜査1課の宇田川がもう一人の同期である元公安警察官の蘇我と共に捜査を行う。宇田川達は大石を無事に救い出すことが出来るのか。
違法な潜入捜査、懲戒免職された後も秘密の任務を全うする元公安警察官。どこまでもハードな警察の仕事に同期の絆を絡めたこのシリーズ。
今野さんの他のシリーズほどの面白味はないけれど、つい読んでしまう。
でも、これが完結編というのもちと淋しい。
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同期シリーズ三部作の最後に相応しい物語だと思う。
警察組織内の対立で、思うような捜査が出来ないときに、理解ある仲間や上司がいることは心強いなと思った。
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「同期」シリーズ。
今野敏さんってこんなにするする読みやすかったっけ?
一作目は感動したけれど、こちらは予定調和を感じる。
女性が入ったからではない。
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植松や土岐のような人たちと仕事ができて良いなと思った。宇田川は大石や蘇我より劣っていると思っているようだが彼らと同じで優秀だと思う。日野や相楽は融通が利かずマイナスイメージを抱きそうだったがある意味良いアクセントになっていたように思う。荒川との解散の挨拶がなかったのがやや心残りだった。