紙の本
人は1人だと認識する
2017/03/01 20:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビニール傘は、今の若者の生態を表現して一人から二人へとなるも、さほど変わらない日々を送る無機質さが悲しい。背中の月は逆に二人から一人になる、普通に出会って結婚していた矢先の悲劇。普通の幸せすら高望みなのかとこちらも切ない。
紙の本
とりとめもなく続く…
2018/01/23 11:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kaoriction - この投稿者のレビュー一覧を見る
コンビニで売ってる五百円のビニール傘。
アナタが手にしたその傘は、誰のもの?
何処で買ったの?
どこにでもある、誰もがひとつは持っている、小さな透明のビニール傘。
同じ街、似たような「俺」たち「私」たち。「彼女」に「彼」。俺は彼だし、彼女だし、私は俺だし彼でもあって彼女でもある。
誰が誰の傘を差していたとしても「透明な膜が俺たちを包む」。
安っぽい傘で自分の人生を守っているの?
*
本当はあの犬のように何かに守られながら、囲まれながら死にたかったのに、彼女はひとりで死んだ。
とりとめもなく続く私たちの人生。
一体、本当は誰のもの?
*
松田青子『スタッキング可能』をシビアでダークにした感じに思えた。鬱屈とした息苦しい感じ。
併録の『背中の月』もモヤモヤ、ムズムズ感が残るというか。社会学者の著者ならではの視点なのかな。
*
みんなのココロにビニール傘なんていらない日が来ることを願うばかりだ。
*
第156回芥川賞候補作。
投稿元:
レビューを見る
社会学者が書いた短編2つ~「ビニール傘」和歌山の専門を出てミナミの美容室に入って最初に仕事を教えてくれた男の子と同棲を始め、先生の彼氏に誘われて食事に行った辺りから店に居づらくなり、キタ新地のガールズバーでバイトしていたが、仲良くなった同僚が「今から死ぬよ」とメッセージを残して本当に死んでしまった。和歌山に帰ろう。「背中の月」デザイン事務所に勤める妻・美希から昼頃「頭が痛い」とメッセージが入っていて帰宅していたら脳梗塞で死んでいた。環状線から見える廃屋で空想を広げ、1時間も前に着いてしまった職場で辞表を作って社長の机に置き、家に帰ってジャージに着替え、築40年のマンションに鍵を掛けてその鍵を郵便受けから中に落とし、大阪港に行く~テーマは…何もない田舎から大阪に出て馴染めず田舎に戻る女、と大阪の片隅で妻と肩寄せ合って暮らしていた男が急病で妻をなくし、ていうもので、目新しくないが、書き方が新しい? いろんな人の視線で書いておいて、後で種明かし・という?
投稿元:
レビューを見る
大阪が好きだ。
暮らしたのは累計で10年足らずだし、孤独と苦悩の思い出しかないのに、それでも好きだ。
たぶん、大阪という街が、自由であり、終末であるからだと思う。
投稿元:
レビューを見る
社会学者が書いた小説。青春時代の詫しさ、人恋しさ、そして不安感が共感も持って描かれている。
鍵をかけたか不安で確かめに戻ってくることが多くなった。この本を読むと、それは不安からではなく、家から離れたくないからだと書いてある。さすが社会学者らしい分析だ。
投稿元:
レビューを見る
【ビニール傘】
『俺以外の全員がタバコを吸い、スポーツ新聞を広げ、コンビニおにぎりを食っている。みんなゴミを吸い、ゴミを読み、ゴミを食っている。』
『怖くなってもういちど横を振り向くと、彼女もこっちを見上げて、どうしたん? と聞いた。おれはますますポケットのなかの手をぎゅっと握りしめた。痛いやん。彼女は笑いながら、自分もありったけの力で握り返してきた。おお、意外に握力強いやんか。笑いながらもういちど握り返すと、彼女は大きな声でいたたたた、ごめんごめん、とゲラゲラ笑いながら手をポケットから出し、つないだまま大きく前後に振りながら歩いた。』
『俺たちが暮らしているのはコンビニとドンキとパチンコと一皿二貫で九十円の格安の回転寿司でできた世界で、そういうところで俺たちは百円二百円の金をちびちびと使う。』
『誰かが携帯の画面を親指でなぞるたびに、どうでもいいことがどうでもいいひとたちに流れていく。』
『もっといろいろな人と付き合ったら、そのうち幸せになれたんだろうか。でも、誰かと一緒にいるあいだは、ほかの誰かと一緒にいることができないから、ある人と付き合っているあいだに、時間ばっかり経っちゃって、そうしてるうちに私を幸せにしてくれる人は、とっとと誰かと付き合っちゃうんだろう。』
【背中の月】
『誰にでも脳のなかに小さな部屋があって、なにかつらいことがあるとそこに閉じこもる。』
『妙な話だが、幸せなとき、楽しいとき、遊びにいっているときよりも、急な葬式が入ったとき、人間関係でめんどくさいことがあったとき、仕事上のトラブルに巻き込まれたとき、ああ俺たちはふたりなんだなと思う。』
『隣のベッドの、美希がかつて寝ていたところに置いた手の甲に、月の光が当たっている。また行きたいね、あの店なんだっけと言いながら俺たちは結局、あの街にも、あの店にも、あの海にも、二度と行くことはなかった。俺はベッドから起き上がり、窓をしめてから、また横になった。大阪にまた、夏がやってきた。毎年のことだが、大阪の夏は今年もまた、耐え難いほど蒸し暑い。交通事故、交通事故、定休日。キャメルのコート、廃屋、環状線。夜の海の、白い魚。』
投稿元:
レビューを見る
「ビニール傘」と「背中の月」の2編を収載。本業・社会学者の著者による小説で「ビニール傘」は芥川賞の候補になったらしい。何というか、さすが芥川賞候補だけあってよくわからないお話だった。まだ「背中の月」のほうが自分好みだな。
いずれにしても、どちらも大阪を舞台に浮遊感というか、淀みのなかにいる人の姿が描かれている。これが東京だとどうだろうなと思いながら読んだ。自分にとって未知の街・大阪だから物語の舞台として受け入れられるけど、東京でこの物語だったら鼻白んだろう。
投稿元:
レビューを見る
全体的に寂しさが漂う小説。あっという間に読めるページ数なのだけど、ところどころで状況がよくわからなくなります。脈絡なく変わる状況に私の頭はついていけない箇所も多々あった。あれ?これはさっきの人と違うの?全く違う話?繋がってる?でもちょっと違う?と混乱。
この本はきっと詳細を読み込むよりも、全体に流れる寂しさを感じとるもの、そんな風に思います。
投稿元:
レビューを見る
大阪で生きる若者の姿を描いた作品。
何かでっかいことをやり遂げるわけでもなく、だからといって感動的な何かがあるわけではない。
そんな暮らしを描いた作品だったように思う。
人生とはなんぞやと考えさせられる作品だった。
投稿元:
レビューを見る
この先生の講義を受けて面白くて『断片的なものの社会学』が読みたくなったんだけど、図書館にこっちしかなくて読んだ。
生活史調査で得たであろう、本物の誰かの断片が繋ぎ合わされている感じで、どうでもいい描写に、やけにリアリティを感じる。それが、物語に深みを与えてるんだよね。
個人的には結構好き。こうゆうストーリーストーリーしてる訳じゃなくて、緩やかに繋がる様な繋がらないような日常の描写が淡々と続く感じ。
投稿元:
レビューを見る
大阪で暮らしている若者の実態を描いた短編が2つ.大阪に限ったものではないと思うが、街全体が下降線に乗り上げた感じで、寂しくなっていく状況をうまく描写していると感じた.
投稿元:
レビューを見る
帯の文に惹かれて購入。すごく不思議な小説だった。著者の本業が社会学者だというのも、関係あるのだろうか。
「パッチワークを作る時、普通は柄の違いに気を取られるが、岸さんは縫い代を見ている」という小川洋子さんによる帯の一文がとてもしっくり来る。
表題作には、名前のない男と女が複数登場する。1人でいたり、カップルでいたり。その人物(たち)がパッチワークを作る1枚の布だとしたら、たくさんの布によって構成されるパッチワークの、まさしく縫い代の部分を描いているように感じる。
人は濃かったり薄かったりする人間関係をたくさん持っていて、その中で予想外の人同士が繋がっていたりする。たくさんの組み合わせの布で作られるパッチワーク。現実の人間模様も、そのように構成されていると思う。
これは実際読んでみないと分からない感覚かも。毎度レビューは書いているけれど、言葉で説明するのがこれほど難しい小説と久々に出逢った。
ストーリーがどうとかで語れる類ではないのは確か。
表題作ともうひとつの「背中の月」にもよく読むと繋がっている部分があることに気づく。
短い2作のみの薄い小説だけど不思議な感触が印象に残った。
投稿元:
レビューを見る
大阪市に住んでいる、住んでいた人にはすぐ入ってきやすいと思う。地名や駅名がたくさん出てきて、あー、あのあたりなら、ありえるな〜と。
他の地域の人が読むとまた違うかも?
全体的に暗い。貧困がテーマかな?
ありえそうな、転がってそうな話で、短いのですぐに読める。最初、誰が語り手なのか分からないが2章で回収されている。
投稿元:
レビューを見る
短編2編で、ビニール傘は俺と私の物語。様々な視点で若者たちのやるせなさが描かれる。背中の月は若い夫婦の話。妻を失った喪失感を抱えながら生活する。どちらも、にぎやかではない朽ちていく大阪が描かれ、物語の雰囲気を作っている。著書は社会学者で初の小説。先が楽しみだ。
投稿元:
レビューを見る
生きている。
たいした出来事が無くても、カップラーメンなんかを食べて、毎日生きている。
楽しい事もある。
でもいつも、寂しさや虚しさみたいなものが隣にいる。
こんな小説に出会えるなら、まだまだ本を読んでみようと思う。