紙の本
家族でいることは当たり前ではない
2018/12/22 12:01
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学生のミドリ、父親の広、広の恋人の源三が共に暮らす様子を描いた連作短編集。学校でいじめられたり、流されるままの人生に嫌気が差したり、世間から歪んだ目で見られたり。それぞれが悩みを抱えつつ、不器用ながら家族でいようとする姿が切ないような温かいような。
この人の描く家族は壊れそうな脆さなのに、傍から見ていて良い関係だと思わせる絶妙さが癖になる。
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〝ふつう〟って何だろう。新しい家族、恋人のかたち
小学3年生のミドリは父親とその恋人♂の3人で暮らしている。母親はその状況が受け入れられず、離婚話も遅々として進まない。それぞれが理想の〝かたち〟を追い求めるなか、彼女たちが迎えた結末とは―。
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花世のボーイフレンド、いるいるこういう寒カル系。花世は花世で、こういう子おるわとなんか懐かしい。
それぞれの話、もっと長く読んでいたかった。
親のキスシーン見て複雑になるの、子の立場ではなく親の立場で読んで、うっ、となる。
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あまりにも柔らかな文筆なので読んでいる最中は大して気にしていなかったが、作品のテーマのなんて重たいことか。家族の形って多分、それぞれ漠然とした答えは皆持っているだろうけど、そこから少しでも外れただけで異質だと後ろ指さされたり(家族に限らずだが)言った側にしてみれば軽口にすぎない言葉が受取手側を傷つけたり。
少し冷静になって考えてみれば分かることなのに、わざわざ冷静になる必要もないと思っているのか、これくらいという甘え(あるいは悪意)が随所に散りばめられていた。
最後の迎えに行くかがその最終形態なのかもしれない。ミドリが何を見て、何を感じ取り母親と暮らすことを決意したのか知らない広と源三の独りよがりの『家族』たるミドリへの愛情が痛々しくもあり、愛おしくもある。
作品としては良い話しのようにして終わっているが万が一、ミドリが戻ってきた場合、果たして周囲は見守りに徹してくれるのだろうか? 作中と同じように心ない言葉で傷つけ、あざ笑い、孤独にさせるのではないかとついつい考えてしまった。
それを「子供っぽい」と一蹴してしまうミドリのこなれ感もまた母親の貴美子のような、どこか性格に難のある大人にしてしまうのでは、とも。
その後に想像を膨らませずにはいられない作品に出合ってしまいました。
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最初はほんわか、だんだん物語が現実の醜い部分を、現実のどうしようもない部分を見せてくる。
家族って難しい、と改めて思った作品です。
個人的には貴美子の話が一番心に残った。
2018.3.23
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ミドリちゃんの人生の序章にすぎないのかもしれない。明るい未来はまだ見えない状態で、でもこの夫夫はミドリと一緒に生きたいと決意を新たに再出発しようとしている。
でも心のどこかで、なぜ距離をとってあげられないのだろう…とも思う。親の…しかも男同士の営みなんぞ気付かせないでやってよ、、そこは小さい女の子が乗り越えなくて良い問題ではないかなぁ…
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LGBTQの本棚から
第49回「ミドリのミ」
今回紹介するのは『ミドリのミ』(吉川トリコ)です。
漫画や絵本が続いていましたが、久々にいい小説を見つけました。
この本はゲイのカップルの元で暮らす小学生の女の子のお話です。
作者の書き方が上手いので、あまり深刻な感じはしないのですが、ちょっと考えるとシビア、なんですよね。
父親が男の恋人と愛し合っていて、それが原因で学校でいろいろある女の子(ミドリ)。
しかも両親は離婚寸前で、二人の間で板挟み状態……。
「正しさ」に縛られたミドリの母親
ゲイであることを「へん」だと、町中から攻撃された父の恋人(源三)
解説に『「ミドリのミ」は呪縛の小説だったのではないかと認識を改めなければならないほど、次から次へ、様々な形の呪縛が出てくるのです。』とあるように、登場人物はみな、何かを抱えています。
登場人物の誰かの体験が自分自身の過去と重なることも少なくないでしょう。
そのとき気づくんです。
この本は凄いぞ、と。
ズタズタに引き裂かれるような心情を、一見そうは感じさせないように書いているんですよね。
でも一度、そのオブラートの中にある辛辣で痛々しい、どこにでもある現実をみてしまうとひきこまれて、いつの間にか全部読んでしまう…。
最後にLGBTQ的な(?)話を少し……。
ミドリの父は自分がゲイなのかどうか、自分でもよくわかりません。
異性愛と同じで同性愛も『千差万別、十人十色、グラデーションになっていて一人として同じ人間などいない』と知り
『なんだそうか』
『ならばもう、うだうだ考えるまでのことはない』
と悩むことをやめます。
彼は『男でも女でも関係なく源三を愛している。それだけでよかった。』
と思うんです。
それって、人を「好き」だという気持ちの根本だと僕は思います。
恋愛を知らない子どものきれいごとだとか、同性愛を正当化するための言葉だとか思われたりもするでしょう。
でもこの言葉やこの考えが、人を愛することで悩んでいる人の助けになることも、少なからずあるだろうと思うとです。
人間は本当は簡単なことでも「知らない」と悩んでしまうから、こういう考え方もあるんだよ、と知らせてくれる本が身近にあるほうがいいですよね。
さて、ミドリが
『大人たちがふざけはじめるから、最後にはうやむやになってしまった。こういうことはよくある。というか毎日。あとすこしで「ほんとうのこと」に手が届きそうなのに、その直前で膝カックンされてしまうみたいなこと。』
と思うシーンがあります。
なんだかここが、僕の心には一番残りました。
小さな頃は
「なんで?なんで?」とうんざりするくらい聞いて、考えていたのに、いつのまにかそれをしなくなっている……。
それは生きていくのに効率がよく、自分を守ることにもなるからですね。
でもそのせいで大切なことまで見逃して、知らないうちに誰かをないがしろにしているのかもしれません。
例えば僕は、この人が苦手だなと思ったとき、どうして苦手なのかを考えます。
結果、過去に出会った嫌な人に似ているからこの人も…とか、同族嫌悪とか、自分の気づきたくなかった一面に気づいてしまうこともあります。
でもそこで落ち込んで終わりじゃなくて
「あーそうか、自分はこう思っていたんだなあ」
と自分の一面として受け入れることでなんとなく成長(?)している気がします。
「この人たちが嫌だ」
「理解できない」
そんな風に感じたときは、そこで思考停止しないでもう少しだけ考えてみてください。
もしかしたら気持ちが変わるかもしれないし、変わらないとしても「ちゃんと自分で考えてそう思っている」ことと考えないこととは雲泥の差です。
多くの情報を受け取るだけで精一杯で、自分で考えた気になっている時代に、この本は
『自分で考えること』を教えてくれるのかなと思いました。
あとは単純に
『この登場人物の気持ちは知っている……』
『この人と同じ経験をした……』
ということが、自分を勇気づけたり、慰めたりしてくれる……。
学生時代特有の女子のめんどくさい関係も巧みに描かれているので、中高生にもいいかも?
小学校には少し難しいかもしれませんが、ぜひ学校図書館にいれて欲しい一冊です。
思考停止したくない大人にもオススメですよ
2018年05月21日
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人にはそれぞれの正義がある。
人を認めることも、人を貶めることも、全てがその人の正義により行われる。
だから正義と悪は表裏一体だと思う。
その正義が人を強くすることもあれば弱く、痛めつけることもある。
しかし、それを貫くことが出来る人はとても少ないんじゃないか、そんなことを思いました。
人から醜いと思われようとも、そこをその人が守り抜ければ、それがその人の正しさなのではないかとおもいます。
社会の狭さを憂うことなら誰でも出来る。
それからのことは自分の正義を通せる人しか、結局は何かをなすことはできないと思う。
ぐいぐいと引き込まれました。
みんなの気持ちが痛いほど真っ直ぐ心に響きました。
解説にもあったように、すべてを肯定し、送り出す吉川さんの力が見える作品でした。
とても考えさせられるけれど、明日ほんの少し前を向うと思える作品でした。
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好きな男性が出来たため、妻と別居し、その恋人と暮らし始めた父親に引き取られた小学生の女の子の話。独特の世界観ではありましたが、こんな生き方をしている人もいるかもしれない、と思いながら読みました。
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やりての妻と別居するため、田舎の写真館に父とともに引っ越した小学三年生のミドリ。そこには、髪を伸ばし、派手な服装でオネエ言葉を使う源三がいた。父と源三はいつも楽しそうにふざけあっているが、ピアノもなく地元の同級生の意地は悪く…。
ミドリ、広(父)、花世、源三、貴美子(母)のそれぞれの視点から、離婚しかけの家庭、同性愛に子供を受け入れる家庭、学校などを描くアンソロジー型の小説である。
「ミはミドリのミ」という、他愛のない話からスタートし、離婚の話、花世の話など、どんどん重いテーマになっていくが、それらを源三が「めんどくせーな」の一言で突っぱねていく。そこが本作の醍醐味であろう。
ただ、いかんせん、取材したウェイトもあるだろうが、源三のゲイの話を軸に重点を置きすぎたきらいが有り、そうかんたんにいじめられたりするもんかねえと思うのは、2021年だからかもしれない。
そういうこともあって、キーとなるミドリの父と母に対する葛藤、花世の難しさという、子供世代の登場人物について、悩み自体は描かれているものの、周りの情景がさほど見えず、キャラクター自身の魅力が引き出しきれていない。
終盤には、源三の過去やゲイの難しさ、おそらくそこが作者が一番書きたかったことだと思う、のあたりが、書きたい気持ちが先走って、読みにくいしどうしたいのかがよくわからない文章になっていたのは残念。もっとシンプルに「ミドリと暮らしたい」って方向で良かったと思う。ここが☆一つ減点ポイント。それ以外は☆4。
あとまあ、「日曜日はヴィレッジヴァンガードで」うん、これ書きたかったんだろうね。内容はいきいきして、他の作品よりも出来が良いけど、タイトルも含めて本の中で浮いてるわ。物を書くようになってから、こういう文章書きたいもの。わかる、わかるんだけど、タイトルもうちょっと薄めてほしかったな。
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電子書籍
4人の登場人物の視点でストーリーがどんどん進んでいく。1人1人の視点で話が進んでいくし、時系列も進んでいく。最後、ミドリちゃんを連れ戻すとこまで見たかったなぁー。
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重田ミドリは、小学3年生。父の広と、その恋人の源三と3人で暮らしている。母親とは別居中で、なかなか離婚の話が決まらない。楽しく暮らしてるけど、ミドリには抱えているものがあって…
あー、最近叫ばれてる「多様性」って、こういうことなのかなって思ったと同時に、田舎は何年経っても田舎なんだなって思った。田舎って本当に閉鎖的だし、そこで生まれて育って結婚して死ぬまで留まる。そういう人が親になって、しいねちゃんみたいな子供がどんどん増産され、同じことが繰り返され、換気されない部屋みたいになるんだろうな。
「差別とか偏見とか、そういうのはないつもりだったけど、いざ彼を前にしたら怖くなった。無意識のうちになにかまずい発言でもして怒らせたり傷つけたりしやしないだろうかって、こいつの前じゃへたなこと言えないなって身構えた。これって、もう立派な差別じゃないか?」
ミドリの父親の友人の新井の言葉が、もうグサって刺さった。きっと私もそうなんだって。LGBTとか正直よく分かってないけど、同性が好きでも異性が好きでも差別なんてしないよって思ってたけど、これって私がそういう人たちを前にしたことないからなんだなっって。変なこと言わないようにしよう、何か傷つけるようなことは言わないようにしようって絶対思っちゃうし、きっと「私は、あなたを理解しますし、差別なんてしませんよ」って態度も相手に透けて見えて、それも一種の差別になるんだろうなって。
もうなんかすごいものを読んでんしまった。しばらくは、余韻に浸ってミドリと広と源三の3人のことをふと思い出して、反芻するんだろうな。
2022.6.8 読了
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最初から最後まで、広のどこがいいのかさっぱりわからなかった。
甲斐性もないさえないおっさんは、真面目で優しくて誠実しか取り柄がなさそうなのにその「誠実」すら男との浮気によって失われたわけだし。
娘は、母と父どちらとの生活を選んでもきっと苦労するだろうなあ。
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大人びていて察しもいいミドリ、でもまだまだこどもで自分のまわりで起こることに対してどうしようもない気持ちになるのがつらい
出てくる人たちが皆、何かしらの思いを抱えているのがリアル
結末、何も問題は解決していないのだけれど、どうにかしたいという前向きさが救いかな
『小さな傷だろうと、その傷を負った時のたった一撃で無惨に死んでしまう可能性がある』という解説の一文にとても共感