視野が広がったが・・・
2017/09/10 23:17
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投稿者:しょひょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店で見つけて興味を持ち、電子書籍で購入して通読。
国際政治学者である著者による、本来は国際法上の概念である「自衛権」を憲法の中で語ろうとする(とりわけ東大法学部系の)憲法学者への批判の書。
アメリカが原案を策定した憲法なのに、戦前からの伝統であるドイツ法的な観念で憲法を解釈することの不当性が繰り返し主張される。
憲法9条についての議論は多々あるが、ドイツ法⇔英米法、主権論、といった観点で考えたことはなかったので、刺激的だった。初めての切り口だが、長年のモヤモヤを振り払ってくれるようなところもあり、視野が広がった。
ただ、憲法学者への批判がやや執拗と感じられ、逆に客観性を疑ってしまった。
また、引用がたくさんあり、巻末に注があるのだが、そこにリンクが貼られていないので、電子書籍では読みづらかった。
内容的にもやや難解なので、しっかり把握するなら、紙の本で読む方が良いかも。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本憲法学について、分かりやすく解説されていてよかったです。立憲主義など、もう一度、考えていきたいです。
民進党のやり方は非立憲?
2017/09/30 20:59
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投稿者:451 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の憲法学は何故ガラパゴスなのか?
成立と解釈のズレとの指摘は面白い!
また、憲法体制の二重構造など興味深い論点が多かった。
ただ、個人的には美濃部説は是なんですよね…。まあ、筆者よりはるかに学は浅いので、勉強を深めて自分の感覚を反証してみますか。
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本邦憲法学者による日本国憲法に対する専断をその歴史、背景、あるべき解釈も含めて鋭く解体する。
旧帝国憲法で主流となったドイツ国法学派が新憲法への移行時にその勢力を維持すべく、本来(英)米法、国際法に由来する新憲法を強引にドイツ国法学の文脈で解釈したのがすべての捩じれの発端。
国際法体系にはない統治権、生存権というドイツ国法学由来の概念を持ち出し、「八月革命」なる架空の概念をでっち上げ、現憲法における自衛権を制限した。
国家を擬人化するドイツ国法学体系に基づけば生存権に裏付けられた自衛権の存在は自明と思われるが、なぜ個別的自衛権のみを許容し集団的自衛権を否定するのか。
自らの政治力維持のため「抵抗の憲法学」なる神話に縋り、半世紀以上に亘り国政や司法を壟断してきた東大法学部系憲法学者たちの責任は重い。
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日本国憲法観が一変した。学校教育での社会科、行政書士試験を通して日本国憲法を学習し、さらに数多くの集団的自衛権論を学んできた自分であったが、基本概念である「主権」や3大原理についてさえ、理解に大きな隔たりがあったとは驚きだ。また、歴史的な意図にも無知だった。芦辺『憲法』に代表される東大法学部出身者が作り上げてきた論を痛快に批判し、成功している。
・立憲主義とは「法の支配」の貫徹。国民主権に対しても屈することがない。
・紛争後の和平プロセスにおいて、あるいはもっと平常な開発援助を通じた場合であっても、大量の外国人コンサルタントによって法制度が整備されていく場面は、あまりにも日常的な風景だ。
・背景には、過度な日本国憲法のロマン主義的理解、あるいは20世紀国際法の過小評価がある。
・伝統的な英米法思想においては、絶対主義の観念が弱い。それは意識的に維持されている仕組みのためである。主権が相対化され、法の支配の原理が協調される。主権者といえども制限されるという前提の中で、チェック・アンド・バランスの均衡が確保される。
・「統治権」がなくなってしまったら、いったい憲法学は何に対して「抵抗」すればいいのか。
・自衛権というのは、どこからやってくるのか?留保も放棄も出来ないとは、どういうことか?まず、自衛権は国際法の概念である。
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こういう論争を呼び込む議論を新書でしているのは、わくわくしますね!
しかもその手法が既存の解釈に対して憲法典を忠実に読み込むことで反論とする、まるで現代の宗教改革みたいでおもしろいです。
読後の一番の感想は、法ナショナリズムへの欲求を我慢すれば改憲の必要はないのかも、ということでした。
本書では、戦前日本の軍事的挑戦を鑑みつくられたGHQ憲法と、当時の国際法との本来的親和性を強調します。目的は国際協調です。この議論でいう国際協調とはなにをイメージしたらいいのでしょうか。本書の筋で考えるとすれば、歴史的に見るべきでしょう。それは憲法成立時、国際法ならびに国際協調とは大戦の勝者、なかでもルーラーであった英米の考えるところのものです。過去日本は近代の超克やアジア主義などと称して、独自のルール作りや解釈をしてきたことを反省し、また反省させらたのです。戦禍を経て明治の不平等条約改正前の発想に立ち返ったのです。
では現代において国際協調とは何でしょうか。やはり引き続き英米的グローバリズムでしょうか。中華思想的秩序でしょうか。イスラム的価値観でしょうか。またその全てでしょうか。あらゆる価値観が相対しているように見えます。
現実日本のとっている選択肢は、英米的な法の支配という考えです。アメリカ追従とも揶揄されるそれです。多少良い言い方をするのであれば、メインストリームの国際協調にベッドしているということでしょう。本書の通り憲法の出自を考えれば当然です。そのベッドは憲法にプログラムされたものなのですから。
戦後の憲法学は改憲でなく9条に特化した憲法解釈で、別の言い方をすれば平和主義や平和国家という本書のいう顕教で、プログラムを否定してきました。日米安保や日米同盟を密教として視界から遠ざけながら。
しかし今、アメリカの影響力の相対的低下により、いかに顕教が密教に裏打ちされた議論であったかが露呈してしまったように見えます。密教たる日米安保のセーフティネットがあって初めて、平和主義を掲げることができたのです。そして憲法本来のプログラムを顕然化させることで、ついには密教の顕教化が進んでいる。そのように見えます。
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国際関係の研究者による戦後日本の憲法学を批判する書。なるほどこれまで憲法を勉強をする際には、当たり前のように芦部憲法を用いていたが、東京大学の憲法学以外の憲法の教科書を勉強してみたい気持ちも出てきました。それにしても、筆者は「8月革命説」を批判しているが、憲法改正の限界を考えるとき、明治憲法の改正による日本国憲法の制定を法的に説明するためのロジックとしては支持できるのではないかと考える。
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予想以上に、と言ってはいけないのだが、面白かった。
どっかの代表のおっさんが、憲法とは国の権力を制限するためにあることも知らんのか、と叫んでたのを見て、あれ、そうだっけと思って憲法関係の本を読んで見たかった。
憲法を素直に読もう。
そうか、そもそも英米法である日本憲法を大陸法で理解しょうとするところに無理はあるし、憲法村は東大法学部のお庭ななんだな。
「抵抗の憲法学」と言うことがも初めて聞いたけど、そう言うことか。
筆者は国際法の立場から憲法を眺めており、ちょっと、やっぱり解釈論だよねってところはあるが、9条だけでなく、日本と憲法を取り巻く歴史から語っており、わかりやすい。
つか、憲法学って今ある憲法の解釈に終始してて、そもそも日本に何が必要かって、考えないのよね。
ある意味不毛。
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憲法学者(の主流)って、英米法の世界であるアメリカ人が作った憲法を、大陸法のコンテクストで読み解こうとして遊んでる莫迦揃いだったのか!
だまされた!
「自衛権」は国際法上の概念だから、憲法に記載する必要が無い。それで全て終わってるんじゃねえか!
・9条1項は、1928年不戦条約の焼き直しであり、国連憲章2条4項を国内法で裏付けるするもの
・9条2項は、「国権の発動たる戦争」を否定したものであり、常に国際法に合致する形でのみ武力行使を行い、決して国権の発動たる戦争を行うことのない組織としての自衛隊は、9条2項の言う「戦力」ではなく合憲。
・「交戦権」はもはや現代国際法には存在しない概念。
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改めて「憲法とは?」を勉強する良い機会になりました!
読みながら分かっているようで分かってないことを理解。もう少し勉強が必要ですね。。。苦笑
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本書は日本国憲法の解釈の変遷をつぶさに読ませてくれた。
政治の都合による解釈、憲法学者のロマン主義による解釈、それがすべてであって、憲法の精神などというのは解釈する人間の言説にすぎないと思い知る。
この事実を見ると、現在戦われている憲法解釈、改憲論争など本当にどうでもいい感じがしてくる。ばかばかしい、としか言いようがない。
政治に都合がよく、憲法学者が容認し、世論が同調すれば、いかなる解釈も合憲になりそうだ。
著者が言うには
日本国憲法は世界的に見て特別なものではない。
もともとが国連憲章とアメリカの憲法思想に基づいて起草されたものである。
つまり英米的な、字句に捕われないスタイルの憲法であるのに、日本の憲法学者の伝統で大日本帝国憲法の形を引きずり、ドイツ国法学的な字句解釈に終始する解釈をやっているのが、そもそもの間違いであると。
その観点からすると、現在やっている憲法論争はまったくお門違いということになる。
なんだかなあ、憲法改正国民投票に備えたいだけという一般人としては、もう憲法の本を読むのはこれで終わりにしてもいいな と心底思いました。
一般人に必要なことは、憲法改正を考える時、字句の矛盾がどうとかいいう小難しい議論に深入りするのは騙されに行くようなもの。
シンプルに、これまともだわ と思うところへ一票投じれば良いだけだと思いました。
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国際協調主義の立場から憲法を解釈する事により「抵抗の憲法学」を批判する試み。戦前の顕密体制による国体(天皇制)が「8月革命」を経て、「表」と「裏」が入れ替わる形で9条と安保の顕密体制に移行しているという指摘は大変興味深い。また、冷戦終結までの両者の共存の枠組みの中で国際協調主義は衰退するものの、冷戦終結後は国際貢献が求められるようになり、国際情勢の変化により共存の枠組みが維持できなくなりつつあるという説明にも説得力がある。
結局、現在は英米法的解釈と抵抗の憲法学的(独法学的?)解釈との対立になっているようだが、昨今の世論調査では改憲必要派の方が多いので、大衆レベルでは前者が支持を集めているようにも思える。いずれにしても、賛否の立場の違いはあるにせよ、議論は進めていく必要はあるだろう。
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戦後、抵抗の憲法学は憲法の表と裏をうまく操りながら、憲法の狭い理解での解釈を定着させつつあるのだと理解した。
憲法は国連憲章、国際法の実情を踏まえて解釈する必要がある。
ドイツ国法学の解釈に頼ることも不適切だ。
憲法を素直に読むことの必要性を改めて感じた。
憲法は少なくとも一部の限られた憲法学者の解釈のために存在するわけではない。
筆者は国際関係学中心の専門的な知見と、憲法についても独自に深い洞察を加えながら、非常に素直に憲法を解釈していると感じた。
改憲するのかどうかは別として、憲法について議論することは有意義だ。本書をきっかけにあらゆる分野の人が憲法について再考することを祈念する。
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「戦後日本の国体」に於ける日本国憲法がどのような歴史を辿って来たのかを著した一冊です。日本の歴代の憲法学者の主張を分析し、本当の日本国憲法とはどのように解釈すべきなのかを提言した含蓄に満ちた内容でした。日本国憲法は「国民による政府の制限ではなく、憲法規範による社会構成員全員の制限によって定義される「立憲主義」」と「国際協調主義」に基づき憲法と国際法の調和を求めていると本書は説きます。日本国憲法が既に存在していた国際連合憲章を後追い的に追認するものであるというのは、腑に落ちました。この本の発行当時は安倍総理による集団的自衛権の行使に注目が集まっていた時期だったので、終章の著者の憲法9条に於ける意見も必読です。