紙の本
現代版鎖国という驚くべき妙案が提示されている
2006/08/18 21:15
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書、戦争の吹き荒れる二十一世紀に、世界第二の経済力を持つ日本が、指導力としてアピールできる長所はなんですか?という問いかけから始まる。
答えの一つ目は、異質な物や文化を社会に平気で取り入れ、他の国からみればあきれるほどの混合文化を作ることだ。花より団子の実利主義精神。イスラーム、キリスト教のような一神教の不寛容さは世界平和の攪乱要因になることは間違いない。そうした精神領域においてすら、融通無碍、悪くいえばいい加減な日本のあり方こそ、異質な他者との共存原理としてアピールすべきだという。二つ目は、日本人の深層心理にある「アニミズム的な世界観」。非寛容な一神教の世界観とは全く異なっている。
日本は、こうした特徴を持つ世界に誇るべき立派な国であるのに、外国のほうが優れていると多くの日本人が思いこむのはなぜかを分析する。本来秀れた日本人に自分たちは駄目と思いこませる、アメリカによる日本人のマインド・コントロールを例証するものとして、江藤淳「閉された言語空間」を挙げている。半透膜効果・部品交換型文明・魚介型文明といった説明概念は秀逸だ。最後に危うい状況を乗り切るための対策を提案している。
平和的な手段として、日本語を武器として、日本の意見を通し、有利な状況をもたらすべきだということを、著書は「レコード・プレーヤー」(このたとえ著者に対する悪意は皆無)の様に繰り返してきた。
原田武夫が「NOといえる国家」で、在日外国人に日本語を普及させるための、標準的日本語の確立を語るのは、日本語を日本の利益の最大化のために使うように提言する「武器としてのことば」という鈴木の発想とまさに重なる。
著者は、日本がロシア、中国、アメリカなどに翻弄されないようにするための意外な策を提案する。なんと現代版「鎖国」だ。日本国民の体質を変えて、いわば日本人全体の国際化をはかるという方針を大転換し、皆が英語を勉強するのはやめて、ごく少数の「防人」に英語学習と対外交渉はまかせてしまうものだ。アメリカが内向き国家になった時、あるいは中国が大混乱に陥った時をのりきるための一時的撤退作戦だという。英語習得、うまくいったとして二流、三流のアメリカ人となるだけ。グローバリゼーションというアメリカ化政策により、日本固有の美点長所が無くなってしまう。これも、アメリカ留学し、奥の院の手先となって戻る日本人に注意すべきであり、同時に、日本語という自然の情報障壁を、中高での英会話強化の為といって、アメリカ青年を採用して破壊するような愚劣な政策は考え直すべきという、原田説と驚くほど一致する。
外交官として有効な政策を考えつづけた原田と、言語学者として日本語を外交に活用しようと長年思考を深めてきた鈴木、二人の考えが一致するのは当然かも知れない。
言語を使って、政策を実現するには、武力行使で他国を制覇するような短時間ではなく、気が遠くなるような長い時間、膨大な投資、人材養成が必要だ。簡単な提案ではない。似たようなプロジェクトに、韓国ドラマのアジア輸出という例がある。韓国は存在感、価値観、ハイテク商品、言葉の売り込みに成功している。
この二人の提言、奇抜なものに見えようと、広く読まれる価値があるはずだ。
国際紛争の解決手段として、武力闘争を放棄した現状を評価する鈴木には賛成だが、中山治「誇りを持って戦争から逃げろ!」による「武装中立」という別提案も検討に値しよう。良質な保守主義者によるいずれの名案も、惜しむらくは永久に採用されないことが本書との共通点、かもしれない。
紙の本
世代格差
2006/08/17 14:34
22人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ご心配なく!今時の若者はちゃーんと日本を愛してますって。そりゃあ、貧乏くさい「三丁目の夕日」を眺めて育った昭和一桁世代の中には共産主義に走り、丸山真男あたりの反日思想の本を読んで、日本を嫌い、日本を嫌悪したおかしな連中もいたでしょう。その最たる奇態がパリを愛しパリで独身のうちに客死した森有正というお笑い的な存在だろう。しかし今やそんな馬鹿はほとんどいない。パリの街は犬のウンコだらけでくさくて歩けないし、地下鉄はしょっちゅうストで不便極まりない。ロンドンの地下鉄はストでは止まらないが、代わりにしょっちゅう故障して止まっている。ニューヨークの地下鉄は、ようやく落書きはなくなったが、でも昼間は危なくて乗れない路線がいまだにある。ロンドンもパリも東京に比べるとはるかに不便で狭く田舎くさい。要するに今やヨーロッパは憧れの地でなんでもなくなった。それだけ日本が豊かになったということでしょう。このことに鈴木さんともあろう人が気が付かないなんて情け無い。世代格差というのは確かにあるんですなあ。サッカーの試合を見ないのかな、この鈴木と言う人。サッカーの試合を見れば一目瞭然。今の若い人たち含む多くの日本人がいかに日本を愛し、自信を取り戻しているかと言うことを(これを「プチナショナリズム」なんてピントはずれなレッテルを貼って商売の種にしようとしてる香山リカなるおばかなオンナもいるが)。世界を旅行すれば、いかに日本が豊かで自由でエキサイティングで成長の種がいくらでもあるパワフルで平和な幸せ大国であるかがわかるというもの。80歳になる老人にこの日本の今の現実を正しく理解することは、もはや無理なのかも知れない。
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信仰の自由を掲げている日本で、キリスト教の布教率が1%を越えないのは「日本人は魚と農業の国だから」。
は?何で?
と思うかもしれませんが、その理由も分かりやすく書いてあります。
キリスト教だけでなく、日本が外交が苦手な理由などもこれで納得がいきます。
そして日本という国がいかに裕福で、そして世界に誇れる国だという事が、この本を読めば分かるはずです。
もともと日本を離れて合気道を教えている身なので日本のよさはつくづく感じていましたが、もっと日本を大切にし、日本文化を守っていかなくてはならないと思いました。
しかも日本の将来がどうのこうのではなく、国を越えて地球のレベルでそのように感じる事が出来ます。
今、科学の発展により、人間も量子レベルでは他の物質と変わらない事が分かっています。
「八百万の神」などあらゆるものに魂があると昔から考えてきた日本人の伝統。
全ての日本人に読んでいただきたい一冊です。
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もちろんタイトルにあるように「日本人はなぜ日本を愛せないのか」を、その歴史や地理的な背景にも言及しながら、ていねいに考察している。しかし、それだけではなく、日本が無意識に陥ってしまっている西欧崇拝や西欧中心主義の視点はなぜ生まれたのか、日本が失わなかった伝統的な文化の特色がなぜ今世界に必要とされているのか等々、日本人として自覚しておくべき大切なメッセージが、著者の熱い思いとともに込められた本だ。編集部の質問に答えるという対話体で書かれている。実際は、そういう形式をとって分かりやすく、しかし充分に考え抜かれた構成と内容で書かれた本だと思う。
著者は、日本が指導的大国として世界にアピールできる長所は何かと問いかける。多くの日本人は、それに即座に答えられないだろう。自分の国にそんな長所があるとは思えないのだ。しかし実際には、大いに自覚すべき長所がある。ひとつは、異質な文化や物を、自分の社会に抵抗なく取り入れて自分のもにしてしまう混合文化社会という日本社会の特長だ。世界の多くは、宗教的な制約などで日本ほど自由に文化の取り入れができない。日本は、強調的、混合文化社会という自らの文化の価値を世界に積極的にアピールすべきだ。
ふたつめは、日本文化の深層にあるアニミズム的な生命観だ。一神教的な世界観は、神を最高位に置く人間中心主義が濃厚だが、日本人の場合は、生命のみならず山や森にさえ魂を感じ、人も動物もひと続きの循環構造のなかを巡っているという古代的な生命観が、心の深層に流れている。
今、世界の主導権を握っているのは、強烈な自己主張と他者への執拗な排除攻撃を続ける「動物原理」を基本とするユーラシア文明だろう。その中心が一神教文明だ。しかし、世界は今、行き詰っている。アメリカは、これまでのようなずば抜けた超大国としては破綻する兆しが見えてきた。その代わり中国が台頭してきているかに見えるが、実際は無理に無理を重ねて背伸びをし、中華帝国再興を目指して走り続けている。しかし、中国も突如として内部の山積した矛盾が噴出して大混乱に陥る可能性が高い。
その時、世界は壊滅的な大津波に襲われるかもしれない。その危機に面したとき、これまでのあまりに人間中心的だった西欧的世界観の反省にたって、人類と地球環境の共存を最重視する戦線縮小の時代が始まるだろう。日本人には、元来、人間ももろもろの生物の中の一員として、他の生き物たちの「お陰で」生かされているという生命観があった。そうした生命観を自覚的に捉えなおして、そこに、21世紀の危機を乗り越えるのに大いに貢献すべき大切な何かがあることに目覚める必要がある。それが著者の主張だ。
かんたんに要約してしまったが、このような結論にいたるまでに、本書はじつにていねいに様々な具体例を挙げながら考察する。一神教的で牧畜型のユーラシア文明の欠点や、そのような一神教的世界観に立った西欧世界が、どのような横暴によってアジア、アフリカ、南米などを植民地支配してきたか、日本人がそうした西欧文明の悪の部分にいかに無自覚で、お人よしで、西欧コンプレックスから脱しきれていないか等々、興味が���きない考察が、随所に散りばめられている。
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徹底的に日本よりの立場からの意見表明。
序盤にある一文、「日本がどんなに素晴らしい国かを理解するために世界のひどさと恐ろしさを勉強する必要があるのです」にこの本の主旨が象徴される。
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今の自分の問題意識にピッタリはまった本。読み終わって、本当に気持ちが晴れた。自分の考えていた、悶々とした迷いは、決して間違いではなかった。
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タイトルの通り、なぜに日本人は日本を平気で嫌えるのかが世界的な視点から、歴史から書かれています。
う〜ん、なるほど!という一冊
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タイトルの「日本人はなぜ日本を愛せないのか」の答えが冒頭に載っています。それは、日本人が日本の本当の正体を知らずに、外国を美しく誤解したままで付き合ってくることができたから、と書かれています。
では、日本の正体とは?それは、6世紀末~20世紀半ばまで1300年以上にもわたって、色々な国と付き合いがあったにも関わらず。幸運にも他国から侵略されたり植民地化されたりしてこなかったことです。
そしてラッキーなことに、日本の発展途上に役立つようなことだけ外国と付き合ってきたため、自分たちの存在を脅かす存在という認識はもっておらず、「素晴らしい」外国に比べて日本は何もかも遅れているという劣等感が根付いてしまった、ということです。
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一度も異民族に征服された経験がない国、日本。ユダヤ人のような強烈な自己主張を苦手とし、外国文化を巧みに取り込んで"自己改造"をはかる国柄は、なぜ生まれたのか。世界でも珍しい"寛容"な民族の特質を、「半透膜効果」「部品交換型文明」「魚介型文明」などの視点から丸ごと分析。欧米でも大陸追従でもないこれからの道をやさしく語る画期的な一冊。(「BOOK」データベースより)
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日本人が何かにつけて「欧米ではうんぬん」と言いがちな原因なんかを、歴史的経緯から述べる本。
知らない事実が多く、読んでいて飽きなかった。
自分は歴史をきちんと学んでいないので、この本の内容のどこまでが常識でどこからがそうでないのかは判断できないが、とりあえず最近の海外志向のやたら強い意識高い(笑)人たちはみんな呼んだらいいと思う。
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慶応大学文学部英文科卒、慶応大学名誉教授で専攻は言語社会学。欧米各国の大学でも長く教鞭に。
日本人一般の西欧崇拝、自虐史観を戒める。さらに進んで、西欧列強の植民地支配や人種差別、奴隷制度などの負の面を紹介。日本人、日本語、日本の歴史にもっと誇りと自信を持つべき。
魚食と肉食の違いなど比較文化論的な部分はやや浅い感じがするが、日本人としてのアイデンティティをしっかり持って活躍されているいわゆる国際人というイメージで好感。
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世界有数の経済大国に発展したにもかかわらず、なぜここまで他国に対する劣等感を拭い去れないのか・・。
本書はそんな日本を、国の歴史や食習慣から今に至る国民性の素因を解明していく良書です。
他先進諸国との衣食住の違いによる価値観の相違や、土地柄・歴史的背景の日本独特の・・特異性が今現在の私たちの心象に投影されているという論理的解釈には舌を巻きます。
この本を読んだあとは、日本を見直しているはずです。
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日本人の考え方の特殊性についての鋭い考察。
日本人は混合文化を創る柔軟な才能をもっている。
反面、固有文化を大切にしないという点がある。
また島国という特殊性から国外のことに関しては半透膜効果が生じる。
外国をすべて良いものと考える蜃気楼効果は、外国との距離と時間によって生み出されたものである。
外国の醜いところが見えないバスト型外国感を持っている。
実は、欧米は日本人が一般に考えているよりもズルイ。
つい近年まで奴隷制、植民地、人種差別を行っていた。
非西欧社会に対して侵略と略奪を繰り返していた歴史を忘れてはいけない。
日本が欧米の侵略主義に立ち向かった第2次世界大戦をきっかけに世界が変わった。
日本は、いつまでも平和だと考えるのは不沈戦艦幻想。
日本は平和国家として独自性を追求すべき。
そのために外交に秀でたエリート集団(現代版防人)を育成して言論で立ち向かうことができる言力国家を目指すべき。
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新しい、日本の進むべき道。アメリカ志向、ヨーロッパ志向を脱し、自らの果たすべき道を進まなければならない。
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なぜ、カタカナ語が増殖するのか?
なぜ、外国のものがよく見えてしまうのか?
なぜ、必要以上に自虐的なのか?
とっても疑問でした。
ファクトとフィクションの違い、部品交換型、いいとこどりが出来た
希有な国だったからという理論にはかなり頷けます。
歴史は、勝者側が書いて広めるもの、負けた側なのに勝者の主張を鵜呑みにするのは日本人だけ。
テレビのコメンテーターなんてヒトは、こんな本をもっと読むべきです。